「ストレスに起因する成長」に関する文献的検討

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「ストレスに起因する成長」に関する文献的検討 障害に係わる対人援助職の 「ストレスに起因する成長」に関する文献的検討 ―バーンアウト、レジリエンス、感情労働を中心とし、ポジティブ心理学を背景に― ○松浦 淳1  菅原 弘2・3  橋本 陽介2・4  熊井 正之2 青森中央短期大幼児保育学科1 東北大学大学院教育情報学研究部・教育部2 仙台市立川前小学校3日本学術振興会特別研究員4 目的 〇対人援助職とは Human service →人との係わりを行う職域 +個人の職業人としての側面 職務上の肯定的な変化を 本研究では 「成長」と表記 〇成長を分析する視点 「つまずき、成長の分析」 「実践・専門性に係わる視点」「広範囲の現象を扱える視点」 バーンアウト レジリエンス の三点に注目 感情労働 〇ストレスに起因する成長 Posttraumatic growth →実際はより広義で用いられる +障害に係わる対人援助職は? より広い心理状況・出来事を 対象に調査を行うことが必要 障害に係わる対人援助職の成長について、ストレスに起因する成長の視点で文献整理、比較検討を行い、今後の展望を明らかにすることを目的とする POINT「成長」「ストレス」の表記 →より広範囲の現象を分析対象とする 方法 〇方法1:Geniiによる文献検索  キーワード群①   バーンアウト、レジリエンス、感情労働…等  キーワード群②   障害、教育、福祉、医療、看護…等        ※①②とも類似する言葉を含めて検索対象とした 〇方法2 方法1の検索結果のうち 「ストレスに起因する成長」に関連する文献を収集 →内容の吟味、比較を行う 結果 〇結果1 「教育」等と「障害」と、それぞれ単独     →一定の件数あり 「教育」等と「障害」との両方で絞り込む     →少ない件数 看護・教育において、他より多くの蓄積があると示唆 〇結果2 バーンアウト(論文11,書籍4) 〇職業を絞った調査・検討が中心 レジリエンス(論文7,書籍2) 〇表記・定義に幅がある段階 主体性の有無 自己と他者の双方の存在 の二点がその背景となる 感情労働(論文5,書籍1) 〇「感情労働」を観察可能に 「感情公共性」として 対人援助職の 成長モデルを提案しうる ○バーンアウトのリスク要因 ①個人内要素:共感性,勤勉さ ②中間的要素:職場の人間関係 ○共通点:人間本来の可塑性のポジティブな発現 ○発現に必要な要素: 外的刺激、刺激への適応、 双方への肯定的な認知…獲得的な要素 〇多面的な分析による発見 ①対人援助職の成長を含む変化 ②職務内容・感情・意図・行動の関係 〇内省による発見:戦略として自己の労働をとらえなおす意義 成長に関連する サポート資源に なる可能性がある 考察 考察①各視点の記述の特徴から バーンアウト:現状、過去へのネガティブな認知 レジリエンス:外的刺激への適応、対人援助職の状況認知 感情労働:外的刺激への適応、対人援助職の感情 ◆背景に想定されるもの  〇心理臨床家の成長には自己の参与と変容が必須  〇実践現場では被援助者の特徴を長所として活用するアプローチが主流  〇ポジティブ心理学の隆盛 ◆今後の展望 ~対人援助職の成長に重要な過程について~ 〇ストレスを伴うネガティブな経験 〇実践の中で生じる自身の変化  …上記2点をポジティブな体験として肯定的に認知できるようになる過程が重要なのではないか 考察②障害に係わる意義から 〇障害に付随してあらわれるアンビバレントな経験が家族レジリエンスに影響している 〇感情労働の進展の先には、感情公共性が想定されている 〇レジリエンスの発現には他者からのフィードバックあるいは承認(自己と他者の双方の存在)が重要 ◆今後の展望 ~障害に係わる対人援助職の成長過程について~  〇対人援助職が障害に付随したアンビバレントな状況に直面・適応していく過程  →成長の一元型となっている可能性がある ~成長自体の意義について~ 〇社会的にネガティブな意味を持つ状況に参与する 〇身近な他者とともに再構築する 〇それによる変化を、ともに肯定的に捉えていく  …状況を社会的に肯定的な意味の与えられるものへ結び付けることが、成長の意義ではないか ◆今後の課題 ①主観の色濃く反映される手法を用いること 例:ライフヒストリー   クリティカル・インシデントなどへの注目 ②多様な現象とその背景に迫り、記述すること 例:個人的文脈、時代背景、地域的特色   などへの注目