多層ネットワークモデルによる交通インフラの評価手法の開発

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Presentation transcript:

多層ネットワークモデルによる交通インフラの評価手法の開発 産業技術総合研究所 知能システム研究部門 篠田孝祐

自己紹介 2004: 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士課程終 了 (國藤研究室) 2004: 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士課程終 了 (國藤研究室) 2001-2004: (独)産業技術総合研究所 サイバーアシスト研究センター  テクニカルスタッフ 2004-2005: (独)防災科学技術研究所 震災フロンティアセンタ 研究 員 2005-2008: 防衛大学校 情報工学科 助教 2008- (独)産業技術総合研究所 知能システム研究部門 産総 研特別研究員 専門: 人工知能、社会シミュレーション 減災のための災害救助シミュレータの開発 複雑なネットワークの創発のためのシミュレーション

提案課題:概要 本課題における社会ネットワークとは 人類や地球というシステムにおいて、長い年月をかけて行われた インタラクションによって形成された「知」の地層 人の活動の中で、つながりが生まれ つながりの上での活動が、あらたなるつながりが生じ.... 埋め込まれた知見を発見、分析、活用することで、複合的な サービスの構造のデザインを可能とする 研究のコアとして 多層ネットワークモデルを提案 具体的な対象として 交通インフラのデータをもとに構築 情報技術の活用 観察と分析 Agent Agent Agent Agent 持続的培われた 知見 ・ 経験 ・ 結果 社会ネットワーク

背景 社会シミュレーション (2000-): Complex Networks (2004-): 災害救助シミュレーション: AAMAS WorkShop デマンドバス:IJCAIWorkShop Complex Networks (2004-): 複雑なネットワークの創発モデル:AAMAS'07,知能と情報('08) サービス構造のネットワーク分析 首都圏鉄道網の変遷: JAWS'06 高速道路網の変遷 書籍の推薦関係 国際会議ネットワークの分析: JSAI'09 首都高速網 首都圏鉄道網 国際会議ネットワーク

構造は積み重ねられていくのか? 疑問:社会ネットワークの成り立ちは、一日にしてならず? たとえば 人間関係 交通インフラ、道路 日々の出会いや、コミュニケーションから 交通インフラ、道路 路線があることのメリットがあり、そのメ リットを享受するために作られた路線によ り、新しいメリットや他の交通機関へと影 響を及ぼす 研究者ネットワーク 研究者がネットワーク上に発信すること で、新しい情報があつまり、新しい研究の 芽をつくりだす Environment Agent Networks Interaction Environment Agent Networks Interaction Environment Agent Networks Interaction Environment Agent Networks Interaction

構造の変化はどこからくるのか? ? 疑問:ネットワークを取り巻く周囲の状況しだいでも必要とさ れる構造が異なるのではないか? Agent Agent Agent たとえば、協力や最適な構造が サッカーチームでは 対戦相手のプレーの特徴で 災害救助シミュレーションでは 他の所属のエージェントの協力次 第で 研究者のコミュニティは 周辺分野の研究活動の活発さで デマンドバス、路線バスでは 鉄道の敷設や、移動需要次第で Agent Agent Environment Network A Network A' Network B Network B' ? Agent Agent Agent Agent Agent Environment

既存研究の状況は? 考古学のような、天文学のようなアプローチからネッ トワークを分析する道具と対象が必要 主な研究アプローチは ひとつの関係性に着目し、ネットワークを抽出 特定の構造をもつネットワーク生成のモデルを提案 ネットワークが変化・変遷することは対象外 私が知りたいことは ネットワークがどのような変遷過程(一生)があるのか あるネットワークが付近のネットワークにどのように影響を与えい ているのか 考古学のような、天文学のようなアプローチからネッ トワークを分析する道具と対象が必要

多層ネットワークという視点の導入 仮定:複数の分離可能な関係性を内包 コミュニケーション:通信手段、組 織 交通インフラ: 移動手段 目的:関係AからなるネットワークGAの変化が、 関係BからなるネットワークGBに影響を及ぼすの か、また、その要因を特定可能か?:        「関係」の「関係」を分析 例えば、 鉄道の伸長による、路線バスへの影響 twitterの利用者の伸びによるSNSの利用状 況への影響 交通インフラ 関係性ごとに分解 ネットワーク(路線) GA GB GC 影響?

複雑なネットワークを創発するモデル [ShinodaMatsuoモデル](AAMAS’07,知能と情報'08) ShinodaMatuoモデル(SMモデル)の狙い 特定の構造の生成を目的とするのではなく、ノードの視点 から創発される、ネットワークとはどうなるのか ノードは重要な立場になることように振る舞うと仮定 重要性を示す指標としてネットワーク中心性を用いる ネットワークの中心性とは 次数、距離、媒介値など、何かしらの意図をもってネット ワーク内でのノードの重要度を示すのを目的とした指標 SMモデルの特徴 ネットワークの構造の変化を捉える 1 2 3

SMモデルを用いたネットワークの創発 Scale-free network Random graph ? Complete network (2) Closeness (1) Degree Complete network + isolated nodes Regular graph ? (4) PageRank (3) Betweenness N=100, c=200, l=105

SMモデルの多層ネットワークへの拡張 SMモデルでは 拡張ポイント 交通インフラデータを用いてモデルの構築 基本的にひとつのネットワークの構造変化のみに着目 拡張ポイント 実データをもとに、ネットワークの成長パターンの抽出を試みられ るようにする:            時間軸方向の変遷 影響を受けているであろうネットワークデータから、特徴の抽出、 相関関係などを明らかにする:  「関係」の「関係」の分析 機械学習などの導入も検討 交通インフラデータを用いてモデルの構築 多層ネットワークとして直感的に捉え易い 路線データ・利用データの取得が可能 実サービスへ還元が行える

研究内容・計画(1年目) 擬似データを用いた検討を行うことで、実デー タ分析のための知見を明らかにする。 多層ネットワークモデルの検討 目的 擬似データを用いた検討を行うことで、実デー タ分析のための知見を明らかにする。 ネットワークの構造の変化が他のネットワー クの構造へ与える影響をモデル化 不完全なデータの分析の有効性を検討 内容 バス、鉄道路線を想定したシミュレータを作成 任意の移動需要に対する最適なネットワーク を形成 移動需要の変化による影響を観察・分析 レンタサイクルなど他の交通インフラの導入 による、移動需要の消化率の変化と、他の インフラへの影響を観察・分析 ネットワークデータのデジタル化

研究内容(1,2年目) 交通データの分析 多層ネットワークモデルの構築 目的 時系列的に十分なデータが収集できた場合 ネットワークの変遷、移動デマンド、変化の影響などの推定 時系列的に十分なデータが収集できた場合 ネットワークの時系列的な変化における特徴的なパターンの抽出、分類を 試みる 空間的な近さを慮ったうえで、構造の変化の波及状況を明らかにする 空間的に十分なデータが収集できた場合 ネットワークの構造的な変化と、移動デマンドの推定を、国勢調査などから 行う 既存の交通インフラにおける、移動デマンドに対する満足度の評価を行う 多層ネットワークモデルの構築

研究内容(2、3年目) 移動需要の予測 新しい交通インフラの導入による需要の変動予測 概要 既存の交通インフラは、移動需要のすべてを満たすことはないため に、都市部であれば違法駐輪、地方であれば交通渋滞などが生じ ていることが考えられる。交通インフラの変化とその波及状況から、 現在の移動需要の予測を試みる。 新しい交通インフラの導入による需要の変動予測 既存の交通インフラでは、インフラの特性から需要に適さない移動 需要があることが考えられる。それらを補完することはもちろん、ダ イナミックな移動需要を予測することを目的としてセルフサービスレ ンタサイクルを導入した状況下での、各交通インフラの最適な構造 を探ることで、新しいインフラの導入のための方法論を議論する。

交通利用状況データの入手 現時点での状況 交通白書などの統計データから、擬似データの生 成 産総研: 福祉バス(白鳥村) 筑波大学:   鉄道、バス(つくば市) 研究開始後(1年以内をめどに) 路線バスを中心に、鉄道、タクシー、道路の路線 や利用状況のデータ収集交渉を行う レンタルサイクルの利用状況のデータ提供を交 渉 東京都世田谷区「がたリン」 千葉県柏市「レンタルサイクル相互利用の実 験」など

成果の普及・将来展望 交通インフラ評価として 将来的には他の社会サービスへ応用 移動需要の擬似データ、擬似エージェントとして提供 フランス・ドイツなどで実際に展開されているサービスとの共同実 験への展開 バス、タクシー会社への運用評価サービスの実施、運用改善の提 案 将来的には他の社会サービスへ応用 他の社会サービスのネットワーク視点からの分析を行えるように 整備する 農業、漁業などの商圏分析 健康や防犯などを考慮した安心・安全社会の実現に寄与

研究費計画(年間) 計:11.0 百万円/年 (初年度 6.0百万円) 研究補助員(博士・修士学生) 2,3名:3.5 旅費: 2.0 データ整理・実験補助、プログラミング補助:筑波大 大学院生、公募など 旅費: 2.0 国際会議出張、交通データ収集、交通インフラ設備調査 設備費: 4.0 開発用PC、サーバ、ストレージ、計算用レンタルサーバ その他:1.5 印刷、特許出願、英文校正、会議費、通信費等 計:11.0 百万円/年 (初年度 6.0百万円) 他の助成金との関係 特になし