Journal Club 2015.3.31 西部救命 3年目 桝田志保 PMID:25776532 2015.3.17 online published 西部救命 3年目 桝田志保
Back Ground 1/4 早期目標指向型治療(EGDT)は早期の敗血症性ショックの患者の蘇生治療として国際ガイドラインで推奨されている しかし適応は限られており、その有効性については不明確なままであることから、再評価が必要 2014年3月の米国によるProCESS trial,2014年10月のANZICSによるARISE trialに引き続き、EGDTを検証した最後の大規模RCTとして、本研究は施行された
Back Ground 2/4 EGDT (2001) 米国、単施設RCT、263人 従来治療群 vs. EGDT群 補液・昇圧剤使用し Rivers E, et al : N Engl J Med2001;345:1368-1377 米国、単施設RCT、263人 従来治療群 vs. EGDT群 補液・昇圧剤使用し CVP≧8mmHg MAP≧65mmHg ScvO2≧70% Ht≧30% or Hb≧10g/dL を6時間以内に達成 【結果】 28日死亡率 46% → 30%に減少 【問題点】 ・単施設研究 ・対象患者の重症度が高い(CVP low,ScvO2 low) ・CVP:8-12の根拠に乏しい・前負荷の指標としての信頼性が低い・前負荷のみを水分負荷の指標とすることは危険 ・ScvO2:組織酸素接種率が決定因子。組織酸素接種率が低いsepsis患者ではScvO2は高い。正常値が必ずしも組織低酸素を否定する訳ではない Surviving sepsis campaign 2012 CVP:8-12mmHg MAP≧65mmHg Urine output≧0.5ml/kg/h ScvO2≧70%or mixed venous≧65%
Back Ground 3/4 ProCESS study (2014.3.18) 米国31施設 RCT 1,341人 EGDTプロトコル群 N Engl J Med2014;370:1683-93 米国31施設 RCT 1,341人 EGDTプロトコル群 標準治療プロトコル群 通常治療群 ★60日・90日・1年死亡率 ★臓器支持療法の必要性 ⇒3群間に有意差なし 60日死亡率(Primary outcome) EGDT 21.0%,標準 18.2%,通常 18.9% ・APATCHⅡ EGDT 20.8±8.1,通常治療群20.6±7.4と死亡率が低い ・抗菌薬投与までの平均時間が3時間、ランダム化から6時間以内に97%の症例で抗菌薬投与されており、早期の抗菌薬治療開始が死亡率低下に影響したか ⇒初期治療の重要性を示唆する結果 標準治療プロトコル群 ・CVは静脈確保目的に使用。規定の目標を達成出来れば20Gでも可 ・過剰輸液の定義:頸静脈怒張・肺ラ音・酸素化低下 ・A-lineは必須でなく、Baselineの10%以内の低下、かつ低灌流の兆候なければsBP>100とみなす ・低灌流の定義:MAP<65,lactate>4,mottled skin(皮膚斑状変化?),乏尿、意識変容 ・輸血Hb<7.5で施行 fluid challenge Rivers >20ml/kg 30min 、 2010年以降 > 1000ml以上 30min
Back Ground 4/4 ARISE study (2014.10.1) 【結果】 ★90日死亡率(Primary outcome) ・EGDT 18.6% ・通常治療群18.8% ⇒2群間に有意差なし 生存期間 院内死亡 臓器支持療法 入院期間 ARISE study (2014.10.1) N Engl J Med2014;371:1496-1506 AUS,NZの51施設 RCT 1600人 EGDT群 vs 通常治療群 ・最初の6時間、平均輸液量・循環作動薬投与・赤血球輸血・ドブタミン投与:EGDT群>通常治療群 ・ARISE studyのAPATCHEⅡ:EGDT 15.4±6.5,通常治療群15.8±6.5と重症度が低い ⇒(?)死亡率・輸液量も比較的少ない ⇒2群間に有意差なし
Study design 英国56施設 2011年2月〜2014年7月 統合費用対効果分析を用いたRCT 24時間電話を用いてランダム化 Usual care群とEGDT群を1:1に割り付け Permuted block methodで層別化 ICNARC Case Mix Program Databaseを使用
Patients 【Inclusion Criteria】 18歳以上 感染症疑い、または既知の感染症 救急室来院後6時間以内にクライテリアを満たした患者 クライテリアを満たしてから2時間以内に割り付け 【Inclusion Criteria】 18歳以上 感染症疑い、または既知の感染症 SIRSのクライテリアに2つ以上あてはまる 補液1L以上行った1時間後血圧 ⇒sBP<90mmHg, MAP<65mmHg Lactate>4.0mmol/L
Treatment EGDT群 Usual Care群 右記プロトコルを6時間以内に施行 ScvO2測定デバイスはランダム化後1時間以内に挿入 Intervention periodでは最低1人の訓練されたstaffが必要 Usual Care群 介入方法は臨床医に一任
Outcome measures 90日死亡率 【Primary Outcome】 【Secomdary Outcome】 SOFA score(6-72 hours) ICU滞在期間 在院日数 生存期間 28日死亡率 退院時死亡率 1年死亡率 EQ-5D 資源利用 90日・1年時点でのコスト 30日間有害事象
Statistical Analysis ICNARC Case Mix Program Database Stata/SE software,version 13.0 使用 <検定方法> Primary outcomeの比較:Fisher’s exact test Secondary outcome Subgroup analysis Cost-effectiveness analysis :Fisher’s exact test,Wilcoxon rank-sum testなど
Result 1/6 6132人から1260人を抽出、ランダム化 EGDT群 339人 Usual Care群 332人 のデータを解析
Result 2/6 Baselineは2群間で 差はなし
Result 3/6 Usual care群でのCV挿入は補液のため 6時間以内の輸液量はEGDT群>Usual Care群 6-72時間の輸液量はUsual Care群>EGDT群 両群とも膠質液より晶質液を多く投与 MAP輸血患者数はEGDT群に多いが、MAP輸血量はUsual Care群が多い 血小板とFFP投与患者数に差は無いが、投与量はEGDT群に多い EGDT群で昇圧剤をより多く使用
Result 4/6 Primary outcome (90日死亡率) ⇒有意差なし Secondary outcome ・<6h SOFA ・循環サポート ・ICU滞在期間 で有意差あり 全てEGDT群で高い
Result 5/6 EGDTを採用するとコストUPし、それが費用効果的である可能性は20%未満の見込み *EQ-5D:qualityof life 5 demensions *コストも有意差はないものの、EGDT群が高い印象 EGDTを採用するとコストUPし、それが費用効果的である可能性は20%未満の見込み QALYs(quality-adjusted life-years)は同等
Result 6/6 90日死亡率 EGDT 29.5% Usual Care 29.2% Relative Risk 1.01(0.85-1.20) p-value 0.90 Odds ratio 0.95(0.74-1.24) p-value 0.73 両群間に生存率の有意差なし
Discussion 1/3 今回のstudyでEGDTとusual careで90日死亡率に有意差なし Riversの2001年の報告以来、Sepsisの初期治療は多くの側面から変化した 【Riversの報告と本研究を比較】 ①死亡率著明に低下 ②無作為化されるされるまでの時間が長い ③患者群の重症度が低い(lactate,APACHEⅡ) ④無作為化の前に抗生剤投与開始 ⑤補液量少なく、血管作動薬を多く使用
【ProCESS,ARISEと本研究の比較】 ProMISE Publish 2014,May 1 2014, Oct 16 2015,March 17 国/施設数 US / 31施設 AUS・NZ / 51施設 UK / 56施設 症例数 EGDT Usual care 903 445 458 1600 796 804 1260 630 APACHEⅡ 20.8 20.7 15.4 15.8 18.7 18.0 90日死亡率 31.9% 33.7% 18.6% 18.8% 29.5% 29.2% 6時間輸液量 2.8L 2.3L 1.9L 1.7L 2.0L 1.8L ⇒重症度・補液量と90日死亡率に正の相関あり?
Discussion 3/3 【本研究の評価すべき点】 ARISEやProCESSより早急に患者を集められた 90日時点でのQOLと費用効率についても報告した ・EGDTを採用するとコストUPし、それが費用効果的である可能性は20%未満の見込み ・QALYs(quality-adjusted life-years)は同等
Limitation 週末や時間外受診の患者のリクルートメントが困難 盲検化出来ていない 死亡率が予想より低い
Yes Yes No Yes Yes 1.ランダム割り付けか、ランダム化のリストは隠されているか 2.研究に登録されたすべての患者が、結論に含まれているか、ランダム化された群で分析されているか 3.患者と医師が盲目化されているか 4.経験的な治療以外、各群は同等な治療を受けているか 5研究開始時、各群は同様か 29.2% 29.5% 1.0% -0.3% 333
マリアンナ救急としての方針 ・Septic shock全例でCV圧やScvO2測定目的でのCV留置する必要はなさそう ・2001年以降、敗血症治療は飛躍的に進歩しており、それはEGDTに依るところが大きいと考える ・EGDT各プロトコルについての取捨選択は、引き続き検討の余地がある