誘電泳動現象を利用した液体クロマトグラフィー用高度濃縮分離法の開発

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誘電泳動現象を利用した液体クロマトグラフィー用高度濃縮分離法の開発 尾形・仁科研究室    望月亮 2002/2.14.15 修士論文公聴会

(-) (-) (+) (+) a) 均一電場 b) 不均一電場 電場 電気力線 中性粒子 誘電泳動とは、不均一電場中で中性粒子に誘起される分極(誘電分極)により生じる粒子の並進運動のことであり、電荷を持ったものしか動かすことのできない電気泳動とは異電荷を持たないものでも動かすことができる特徴がある。 2002/2.14.15 修士論文公聴会

本研究の目的である誘電泳動を用いた液体クロマトグラフィー分析原理 分配剤微粒子を斥力モードで排出   分散媒に分散させた分配剤微粒子を流す 分配剤微粒子を引力モードで捕集する サンプルを流す 濃縮・分離 (図の説明の後)この様に、誘電泳動を利用して印加電圧や周波数を変化させることにより、引力モードと斥力モードが選択でき、これを利用して、カラムへの充填剤の充填(引力モード)・排出(斥力モード)する。このように従来の目的物質に特化した専用のカラムを必要としない、同一カラムで繰り返し利用可能なHPLC測定装置 の開発を目指している。 2002/2.14.15 修士論文公聴会

フォトリソグラフィーによるマイクロパターニング電極の作製法 誘電泳動を起こすには、500V~1kV/mm程度の電場強度が必要である。 FGの電源の限界が10V程度なので、電極間隔を10μm~20μmが必要。 フォトリソによる微細加工。  エッチング法(Al電極の場合) リフトオフ法(Pt電極の場合) 2002/2.14.15 修士論文公聴会

デジタルハイスコープ スラリー マイクロパターニング電極 拡大 2002/2.14.15 修士論文公聴会

電極上のシリカODSのデジタルハイスコープ映像 + 電極 -電極 電極間 引力モード 斥力モード 4V,400Hz 4V,1MHz 電極表面の電場強度は800kv/m 粒子の直径よりも電極間隔が大きい電極の場合、電極間に固定はできるものの、その後沈んだまま電場の影響を受けることができなくなってしまい、粒子の動きはみられなかった。また粒子のサイズを30~50μmにしたとき(粒子が電極のサイズに対して大きい場合)、複数の電極間に粒子がまたがってしまい、固定することができなかった。     分配剤微粒子: シリカODS(φ15μm)  分散媒:エタノール    Pt電極  電極幅:15μm  電極間:5μm  2002/2.14.15 修士論文公聴会

分散媒と周波数の関係 - 分散媒 比誘電率 水 78.30 (25℃) 32.63 (25℃) 24.55 (25℃)  分散媒と周波数の関係 分散媒 印加電圧 引力モードの周波数 比誘電率 水 4 V rms - 78.30 (25℃) メタノール 80 Hz ~ 1 kHz 32.63 (25℃) エタノール 40 Hz ~ 1.6 kHz 24.55 (25℃) イソプロピルアルコール 30 Hz ~ 300 Hz 19.92 (25℃) アセトン 5 kHz ~ 630 kHz 20.70 (25℃) アセトニトリル 100 Hz ~ 160 kHz 37.50 (20℃) 分配剤:シリカODS    電極:くし型マイクロバンドアレイ電極(Pt) 電極幅:15μm  電極間:5μm 2002/2.14.15 修士論文公聴会

フローセル ※ シール剤はエポキシ樹脂を使用 廃液パイプ ガラス板 溶液の流れ スペーサー 送液パイプ マイクロパターニング電極   フローセル スペーサー 廃液パイプ 送液パイプ 溶液の流れ マイクロパターニング電極 ガラス板 ポリイミドチューブ(内径300μm 外径400μm) テフロンテープスペーサー厚さ100μm 流路(幅1mm) スペーサーに厚さ100μmのテフロンテープを電極とガラス板の間にはさみ、内径300μm外形400μmのポリイミドチューブで送液・廃液管を取り付け、シール剤はエポキシ樹脂(アラルダイト)を使用した。 ※ シール剤はエポキシ樹脂を使用 2002/2.14.15 修士論文公聴会

送液法は落差法により流速をコントロールした 2002/2.14.15 修士論文公聴会

フローセルにおいても、捕集・排出することができた。 電極間(10μm) 電極幅(10μm) (分散媒:エタノール) 引力モードで固定された。 Nucleosil 10SB (φ10μm) 多孔質シリカゲル粒子に陰イオン交換基(トリメチルアンモニウムクロライド)を修飾したもの。  印加電圧:5Vrms,周波数: 500kHzの時電極間に固定された。(引力モード)  印加電圧:5Vrms,周波数: 100Hzの時固定されていたNucleosil 10SBは排出された。 (斥力モード) フローセルにおいても、捕集・排出することができた。 2002/2.14.15 修士論文公聴会

斥力モードで排出 5V,100Hz 引力モードで捕集 5V,500kHz フローセルの顕微鏡映像 斥力モードで排出 5V,100Hz  引力モードで捕集 5V,500kHz 2002/2.14.15 修士論文公聴会

フローセル中での種々の分配剤粒子の保持の挙動 100k 1 10 10k 1M Hz 100 1k 周波数 印加電圧:  5 V 粒子の保持の強さ: 弱 強    特に強 Mightsil RPー18 (φ15μm) (エタノール) Nucleosil 10SB(φ10μm) (エタノール+水=1:1) Nucleosil C18(φ10μm) Nucleoli(φ10μm) 2002/2.14.15 修士論文公聴会

試作セル写真 マイクロキャピラリーカラムサイズ スペーサ-:テフロンテープ(厚さ100μm) 流路幅:1 mm 流路長:16mm 電気化学検出器 マイクロカラム 試作セル写真 電極リード接合部 スライドガラス基板 櫛形マイクロバンドアレイ 電極幅: 10 μ m 電極間: 電極数: 750 本、 375 対 電極材: Pt 5 mm 15 6 16    マイクロキャピラリーカラムサイズ スペーサ-:テフロンテープ(厚さ100μm)  流路幅:1 mm  流路長:16mm  流路高さ:0.1mm  カラム容積:1.6µl 2002/2.14.15 修士論文公聴会

濃縮実験中のキャピラリー内の顕微鏡写真 濃縮前 濃縮開始から2時間半後       1×10-4Mメチルオレンジエタノール溶液  流速約4μl/ min Nucleosil 10SB:多孔質シリカゲル粒子(φ10μm)に陰イオン交換基        (トリメチルアンモニウムクロライド)を修飾したもの。                    濃縮前 濃縮開始から2時間半後 試作品評価法として、分配剤微粒子に図5.1に示すように非検体を取り込み、濃縮帯を形成させる方法を試みた。実験条件を以下に示す。 2002/2.14.15 修士論文公聴会

Fe(CN)63- イオンの分離/検出応答 1mM Fe(CN)63 - : 流速25 µl/min 電位差0.25V 分配剤微粒子: Nucleosil 10SB:多孔質シリカゲル粒子(粒径10μm)に陰イオン交換                                            基(トリメチルアンモニウムクロライド)を修飾したもの。   2002/2.14.15 修士論文公聴会

結論 誘電泳動による液体クロマトグラフィー分析装置への応用が可能であることを実証した。 誘電泳動現象によって適切な分散媒と周波数を選択することで捕集(引力モード)・排出(斥力モード)を自在に選択でき、分配剤微粒子を自由に捕集・排出操作できることが実証できた。 メチルオレンジ/エタノール溶液 により分配剤微粒子がオレンジ色に染まったこと、またフェリシアンイオン Fe(CN)63- の電気化学検出により濃縮を確認できた。 誘電泳動による液体クロマトグラフィー分析装置への応用が可能であることを実証した。 2002/2.14.15 修士論文公聴会