熊本県企画振興部交通政策・情報局統計調査課

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 容積率緩和の便益: 一般均衡論的分析 唐渡 広志 ( 富山大学経済学部 ) 八田 達夫 ( 東京大学空間情報科学研究セン ター ) 2003 年 9 月 19 日.
Advertisements

就職活動の経済波及効果 風神ゼミ 3班 1. 研究の目的 就職活動に向け準備を進める中で、交通費や スーツ代などの費用の負担が大きいことに気づ いた。そこで私たちが就職活動のために払って いる費用がいかに経済に貢献しているかを明確 にしたいと考えた。 2.
国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
2016 年度 計量経済学 講義内容 担当者: 河田 正樹
需要と供給. 需要と供給の概念 需要:ある財の価格の下で、消費者が買 いたい(消費したい)と思う量。 (注意:実際に買った量だとは限らない) 供給:ある財の価格の下で、企業が売り たいと思う量。 (注意:実際に売った量だとは限らない)
IS-LM 分析 マクロ経済分析 畑農鋭矢. 貨幣の範囲 通貨対象 M1M2M3 広義流動性 現金通貨(日銀券 +補助通貨) 預金通貨 (普通預金・当座 預金など) 主要銀行・信 用金庫など ゆうちょ銀 行・信用組合 など 準通貨 (定期預金など) 主要銀行・信 金など ゆうちょ銀 行・信用組合 など.
経済の仕組みと経済学. 経済学とは 「経世済民」経済 世の中を治め、民の苦しみを救うこと 人々が幸せに暮らすためのしくみでありその活動 = 経済学とは: 「希少な資源を競合する目的のために, 選択・配分 を考える学問」 2.
陰関数定理と比較静学 モデルの連立方程式体系で表されるとき パラメータが変化したとき 如何に変数が変化するか 至るところに出てくる.
ポストオリンピックにおけ る 景気維持策 愛知大学経済学部 國崎ゼミ 前田 翔 持塚将裕 田口瑛葉.
第9章 国民経済計算 ー 経済統計 ー.
第4章 ABC/ABMと原価情報 原価計算・原価低減の新技法 1.ABCとは何か 2.ABCの有効性 3.ABMとは何か 4.ABMの有効性.
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
経済と株価ー講義② 企業活動と付加価値①・・・GDP上の考察 ・マクロ経済学上の付加価値 ・GDP統計の相互関係 ・GDP統計とは①~③
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
国際収支表をどう読むか 国際収支の均衡 国際収支とGDP
生ごみからエネルギー ~バイオガス発電の効果を考える~
ミクロ経済学第10回 企業と費用3:費用関数.
入門 計量経済学 第02回 ―本日の講義― ・マクロ経済理論(消費関数を中心として) ・経済データの取得(分析準備) ・消費関数の推定
マクロ経済学初級I 第6回.
第1章 国民所得勘定.
地域社会論 第6回 Ⅵ.産業構造 11月16日.
マーケティング・プログラム: 価格設定戦略
デフレの正体 第11講 「労働者ではなく外国人観光客 ・短期定住客の受入を」
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
国民経済計算 System of National Accounts
初級ミクロ経済学 -生産者行動理論- 2014年10月20日 古川徹也 2014年10月20日 初級ミクロ経済学.
第3章 原価計算制度と原価情報 1.原価計算目的と原価計算制度 2.実際原価計算 3.標準原価計算 4.新しい原価計算
マクロ経済学 I 第3章 久松佳彰.
5 国際貿易の構造と理論 ーーグローバル化と貿易理論ーー
市場の効率性と政府の介入.
国内総生産(GDP)の概念.
経済と株価ー講義① 企業活動と付加価値①・・・会計上の考察 ・企業の付加価値と株価 ・貸借対照表(B/S)上の利益
“世界をリードする大阪産業”の 現状と今後の取り組み ~大阪の経済成長と産業構造~
<キーワード> 生産関数、労働、資本 限界生産物
イントロダクション.
平成17年度 卒業論文発表資料 ゼロエミッションをめざした 産業ネットワークの形成に関する研究
前回分(第1章 準備,1-1):キーワード ・ 生産,分配,消費 ・ 市場と組織 ・ 競争市場と均衡 ・ 市場の失敗と政府の介入
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
担当者: 河田 正樹 年度 経済統計講義内容 担当者: 河田 正樹
短期均衡モデル(3) AD-ASモデル ケインジアン・モデルにおける物価水準の決定 AD曲線 AS曲線 AD-ASモデル
豊かさとは? 経済学B 第2回 畑農鋭矢.
GDPに関連した概念.
国民経済計算(SNA)とは 国際連合が示す基準に従って、世界各国が比較可能な形で、それぞれの経済の毎年の循環の姿を、体系的に明らかにすることを目的としたもの。 日本では、内閣府経済社会総合研究所   国民経済計算部が、年1回   「国民経済計算年報」を発行.
第4回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
政府の勘定 プライマリー・バランス ドーマー条件
マクロ経済学 II 第10章 久松佳彰.
マクロ経済学初級I 第4回.
マクロ経済学初級I 第5回講義.
中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察
第4章 投資関数.
熊本県企画振興部交通政策・情報局統計調査課
平成23年熊本県産業連関表からみた 熊本県の経済構造
都市・港湾経済学(総) 国民経済計算論(商)
マルクスの基本定理の 数式を使わない証明 2016年10月 松尾匡.
経済学とは 経済学は、経済活動を研究対象とする学問。 経済活動とは? 生産・取引・消費 等 なぜ、経済活動を行うのか?
地域経済循環分析 担当課:大臣官房総合政策課( ) 制度 施策番号:30 知っていますか? あなたの街の経済のハナシ
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年11月9日
* 兵庫県企画県民部 兵庫県立大学政策科学研究所 芦 谷 恒 憲
第8回講義 マクロ経済学初級I .
GDPで読み解く世界経済 跡見学園女子大学 山澤成康.
総合戦略の基本目標:地域の稼ぐ力を高め、良質な雇用を創出する
循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow 家 計 企 業 (価格メカニズム) 市場機構 が働く p p 消費財市場 y
第9章 国民経済計算 ー 経済統計 ー.
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
兵庫県及び県内市町版経済波及効果 分析ワークシートの見方・使い方
大阪における夜間経済の指標化について 2018年 一定の仮定の下で推計を行っていることから、結果については、相当な幅を持ってとらえる必要があります。
Presentation transcript:

熊本県企画振興部交通政策・情報局統計調査課 産業連関表 虎の巻 その1 産業連関表の概要 (仕組みと利用方法) 熊本県企画振興部交通政策・情報局統計調査課

皆さんは、「産業連関表」という言葉を聞かれたことが ありますか? 産業連関表を読み取ることで、産業構造や産業間の  皆さんは、「産業連関表」という言葉を聞かれたことが ありますか?  産業連関表を読み取ることで、産業構造や産業間の 相互依存関係等を把握・分析することができます。  また、経済波及効果分析等にも応用できるため、世界 各国で作成されています。(5年ごとに作成) そこで、今回は、産業連関表についての理解を深めてい ただくために、その仕組みと利用方法について説明します。

産業連関表とは  ある地域(熊本県)において、一定期間(通常1年)に生産された財・サービスの流れを産業相互間や産業と最終需要(家計・政府・県外)との取引関係として行列(マトリックス)の形で一覧表に取りまとめたもの

産業連関表の構造

産業連関表の利用方法 2 係数による分析 3 経済政策の効果測定 1 取引基本表による分析 1 取引基本表による分析   生産、需要、供給などの状況をもとに県経済の規模や産業構造を分析するもの 2 係数による分析   生産、粗付加価値、最終需要、移輸入の関係を投入係数や逆行列係数等を利用して分析するもの 3 経済政策の効果測定    公共投資、企業誘致、イベント等の経済波及効果を分析するもの

取引基本表 ○ 平成23年の取引基本表(生産者価格評価表、3部門)は以下のとおり 取引基本表(生産者価格評価表) ○ 平成23年の取引基本表(生産者価格評価表、3部門)は以下のとおり  取引基本表(生産者価格評価表) (単位:百万円) 注:生産者価格評価表:商品の流通に要した費用(流通マージン=商業マージン+運輸マージン)を価格からはぎ取って、別に設けた商業や運輸部門に計上した価格で表す表    購入者価格評価表                           

取引基本表からわかること ○ 表をタテ方向にみると、生産に要した費用の投入構成がわかる ○ 表をタテ方向にみると、生産に要した費用の投入構成がわかる      第1次産業は、第1次産業、第2次産業、第3次産業から、それぞれ54,360百万円、87,477百万円、70,888百万円の原材料等を購入(投入)し、新たな価値184,311百万円を付加して、397,036百万円を生産した。 ※前ページの取引基本表参照 ○ 表をヨコ方向にみると、生産した財・サービスの販路構成がわかる 第2次産業は、生産した財・サービスと移輸入した財・サービス(計5,593,454百万円)を、第1次産業に87,477百万円、第2次産業に1,175,158百万円、第3次産業に732,054百万円原材料等として販売するとともに、最終需要として3,598,765百万円販売した。 ※前ページの取引基本表参照

投入係数表 ○ 投入係数とは 投入係数を産業別に計算して一覧表にしたものが「投入係数表」 投入係数表 取引基本表 ○ 投入係数とは  取引基本表の中間需要の各列ごとに、原材料等の投入額を当該産業の生産額で除したもの 投入係数を産業別に計算して一覧表にしたものが「投入係数表」 取引基本表 投入係数表 ※aij=xij /Xi 、vi=Vi/Xi (i は行を、j は列を表す)

投入係数表からわかること ○ 表をタテ方向にみると、ある産業が生産物1単位を生産するために必要な各産業からの投入額がわかる 投入係数表(3部門) ※投入係数:産業連関表をタテ方向にみた場合の費用構成 ○ 表をタテ方向にみると、ある産業が生産物1単位を生産するために必要な各産業からの投入額がわかる 例:第1次産業が生産物を1単位生産するためには、第1次産業で0.136915、第2次産業で0.220325、第3次産業で0.178543、そして粗付加価値0.464217の投入が必要である。

逆行列係数表 ○ 逆行列係数は、投入係数から数学的に求められるもの 開放型逆行列係数(3部門) ○ 逆行列係数は、投入係数から数学的に求められるもの 開放型逆行列係数(3部門) 閉鎖型逆行列 ※開放型逆行列:逆行列係数の型の一つで、県外からの移輸入を想定したモデル 列     和:最終需要(県産品)が1単位発生した場合の、産業全体に与え            る生産波及の倍率 影響力係数:他の全産業に与える波及効果の大きさを示す相対的指標 感応度係数:他の全産業から受ける波及効果の大きさを示す相対的指標

逆行列係数表からわかること ○  最終需要が1単位増加したときに、各部門の生産額が直接・間接を含めて最終的にどれだけ増加するかの波及効果がわかる。 ※全ての産業に与える総効果は、列和で表される。 例:第1次産業で最終需要が1単位増加したとき、第1次産業で1.120033、第2次産業で0.104893、第3次産業で0.243121、合計1.468047の波及効果を及ぼす。(前ページ開放型逆行列表参照) ^ -1  逆行列表〔I-(I-M)A〕 新規増加分 新規増加分 中間需要 A産業 B産業 b11 b12 b21 b22 最終需要 △F1 △F2 生産額 △X1 △X2 × =

経済波及効果のイメージ 需要誘発要因 新たな県内最終需要額 うち中間投入 うち粗付加価値 うち雇用者所得 直接効果 第 1 次 波及効果 第 1 次 波及効果 第1次生産誘発額 うち粗付加価値 うち雇用者所得 第 1 次 間接効果 総合効果 民間消費支出額(家計消費) 第2次生産誘発額 うち粗付加価値 うち雇用者所得 第2次間接効果 (第2次波及効果)

需要増による生産波及効果のフロー 県産品需要額 (直接効果) 1次効果 (直接+間接) 雇用者所得誘発額 需要増額 自給率 逆行列係数 雇用者所得率 消費転換係数 民間消費支出 パターン 部 門 別 消費誘発額 2次間接効果 消費誘発額 逆行列係数 自給率 ※次ページに用語解説掲載

需要増による生産波及効果のフロー(2) 用語解説 ○ 自給率 ○ 自給率    原材料等の県産品の割合を示すもので、県内需要(総需要-移輸出額)を県内に提供される生産額(県内生産額-移輸出額)で除して求める ○ 雇用者所得率    生産が増えた場合、どの程度、労働者の賃金が増加するかを示すもの(雇用者所得の投入係数)で、雇用者所得を県内生産額で除して求める ○ 消費転換係数  労働者が賃金をどの程度消費に回すかを示すもので、家計調査年報の消費支出を実収入で除して求める ○ 民間消費支出パターン         消費者が各産業からどのような割合で財・サービスを購入しているかを示すもので、最終需要部門の民間消費支出の各産業の構成比を使用      

生産波及効果分析 消費や生産等の増による効果分析  消費、生産、投資、観光客等の増加が県内の生産額に与える波及効果を分析(県HPの分析ツール参照) 1 「消費・投資等の需要増」の分析ツール ※一般的な需要増に応じた分析。他の分析ツールを使用しない場合に対応 2 「観光・イベント」の分析ツール ※観光やイベントによって観光客が増加した場合に対応 3 「生産増加・設備投資」の分析ツール ※県内企業が生産を増加(新たに操業)した場合に対応 4 「建設・公共事業」の分析ツール ※建築や土木、公共事業などに対応

波及効果分析の事例 企業誘致の効果測定 1 造成工事(建設投資)による波及効果 2 生産増加にともなう波及効果 1 造成工事(建設投資)による波及効果 2 生産増加にともなう波及効果 3 企業立地による雇用誘発効果 ※「生産増加・設備投資」の分析ツールを使用 経済波及効果による税収の増加

波及効果分析の問題点 波及効果分析には、以下のような限界や問題点があり、分析結果については注意が必要です。 1 分析の前提条件、仮定の置き方、与件データが分析者によって様々であり、同じ産業連関表を使っても分析結果が異なることがある。 2 生産を行ううえでの制約が一切無いものとしている。 例:自給率を一定としている 3 生産拡大や技術革新による費用の逓減を想定していない。 例:需要量が2倍になれば、原材料等の投入量等も2倍になる 4 時間という概念がないため、波及効果が達成される時期は不明 5 需要の増加にはすべて生産増で対応し、必ず販売されるという前提 例:在庫の取り崩しや移輸入品の増加による波及の中断は想定していない 6 2次効果以降の対象を雇用者所得のみとしている。 7 分析の前提となる経済情勢は、産業連関表作成年次のものである。

わかっていただけたでしょうか? 県のホームページには、産業連関表 (平成23年表)やイベント等の波及 効果を分析できるツールを掲載して    産業連関表がどのようなものか    わかっていただけたでしょうか?    県のホームページには、産業連関表 (平成23年表)やイベント等の波及    効果を分析できるツールを掲載して    います。ぜひ一度ご覧ください。l http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_8525.html