X線観測による銀河群の 高温ガスの研究 X-ray Study of Hot Gas in Groups of Galaxies

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X線観測による銀河群の 高温ガスの研究 X-ray Study of Hot Gas in Groups of Galaxies --- 重元素汚染と非熱的エネルギー --- 東京都立大学大学院 理学研究科 物理学専攻 宇宙物理実験研究室 森田 うめ代 2006/10/2 博士論文公聴会

銀河群とは? 数~数10個の銀河の集まり 数千万度の高温ガスで満たされている。 星 銀河 銀河群/銀河団 宇宙の大構造 星 銀河 銀河群/銀河団 宇宙の大構造 典型的大きさ 銀河: 単独で存在する例は少ない 銀河団: 百個~数千個の銀河の集まり、良く研究されている 銀河群同士が衝突・合体して形成された 銀河団は銀河も多いため、ガスと銀河同士の相互作用や個々のメンバー銀河の活動がわからない 銀河群研究は銀河と銀河団の研究の橋渡し 2006/10/2 博士論文公聴会

銀河群X線観測の意義 多くの銀河群の温度は ~1 keV (107 K) ⇒ X線放射 X線高温ガス 重元素からの輝線が強く出るため、詳細に分析が可能 重元素 O, Ne, Mg, Si, S, Fe, Ni などが観測可能 O, Ne, Mg, Si, S: 銀河形成初期の II型超新星爆発(重い星の爆発) Fe, Ni: 長期の Ia型超新星爆発(白色矮星の爆発)で生成 重元素組成比 =水素に対する原子の個数の割合 太陽組成を基準とする ⇒ solar アバンダンス 2006/10/2 博士論文公聴会

銀河群高温ガスの加熱問題 X線光度: LX ∝n2r 3T 1/2 ビリアル平衡: T ∝M / r ガス質量: Mgas ∝nr 3 ▲ 銀河団 ● 銀河群 log X線光度(erg s-1) n は電子の個数密度 LX∝T 2 (スケーリング則) LX∝T 2.7 (観測) log 温度(keV) 温度‐X線光度関数は、 低温度の銀河群ほど光度が低めにでる。 低温度の銀河群はガスの総量が少ない? または非重力的加熱がある? Mulchaey (2000) 2006/10/2 博士論文公聴会

(しばしば中心に質量の大きい銀河が存在) 構成銀河による銀河群の特徴 渦巻銀河 楕円銀河 spiral only 高温ガス 少 形成初期 elliptical dominant 高温ガス 多 形成の進んだ段階 (しばしば中心に質量の大きい銀河が存在) 楕円銀河 多 HCG 80 HCG 62 高温ガスが検出された銀河群には楕円銀河が存在 これまでの示唆 銀河群高温ガスは主に楕円銀河から供給 視線内に偶然集中? (重力的束縛系でない) 2006/10/2 博士論文公聴会

本研究の目的 高温ガスの性質と銀河の活動を調べる (HCG80) 高温ガスの物理的性質を調べる(HCG62) 形成初期の銀河群における 高温ガスの性質と銀河の活動を調べる (HCG80) ⇒ 銀河群における渦巻銀河の役割を明確にする ⇒ 銀河群高温ガスの起源に迫る 形成の進んだ銀河群の 高温ガスの物理的性質を調べる(HCG62) ⇒ 銀河群における楕円銀河の役割を明確にする ⇒ 星生成活動の歴史や重元素汚染の過程を明らかにする 銀河群の中心銀河の活動とその影響を調べる(HCG62) ⇒ 銀河群の非熱的・非重力的エネルギーの起源に迫る 銀河群の総合的な性質を明らかにする 2006/10/2 博士論文公聴会

研究対象 2006/10/2 博士論文公聴会

HCG 80 距離 127 Mpc (~4億光年) Hickson Compact Group (Hickson et al. 1989) X線観測は初めて spiral only group の中で、視線方向の高い速度分散 σv = 309 km s-1 をもつため、大きな重力ポテンシャルで 支えられており、高いX線光度をもつはず コンパクトな銀河分布をもつので (4つの銀河が直径61 kpc 円内に存在) それらは皆メンバー銀河と考えられる 可視光観測から、不規則銀河が 見られ銀河間相互作用を起こし ている可能性がある 100 kpc(~150万光年) 可視光イメージ 2006/10/2 博士論文公聴会

HCG 62 距離 61 Mpc(~2億光年)、 暗いものも含めると銀河63個 最も明るい銀河群のひとつ(LX = 2×1042 erg s-1 ) 重元素の中心集中がある (Finoguenov & Ponman 1999) 「あすか」衛星で 広がった硬X線放射が見つかった (Fukazawa et al. 2001) Chandra 衛星で2つのキャビティ構造 が発見された (Vrtilek et al. 2002) 電波観測 (Condon et al. 1998) を用いて 非熱的放射についての考察が可能 Lradio= 1.8×1038 erg s-1 (10 MHz - 5GHz) Chandra 衛星のX線イメージ 2006/10/2 博士論文公聴会

観測と解析 2006/10/2 博士論文公聴会

Chandra 衛星とXMM-Newton 衛星 1999/7 打ち上げ(米) どちらもCCDでイメージ&分光観測 Chandra XMM 視野 8′ 30′ 角分解能 0.5″ 15″ DE @1 keV ~100 eV ~80 eV 有効面積 550 cm2 @1 keV ~1000 cm2 XMM-Newton 1999/12 打ち上げ(欧) Chandra: メンバー銀河と銀河群ガスを切り分け 銀河群中心部を詳細に観測 XMM-Newton: 銀河群周辺を詳細に観測 2006/10/2 博士論文公聴会

HCG 80 Ota, Morita et al. (2004) PASJ 56, 753-764 2006/10/2 博士論文公聴会

Chandra によるX線イメージ a c d b a c d b 可視光 a c 観測:2003/8/18, ACIS-S 19.8 ksec 各データ点がX線光子に対応 0.5 - 2 keV 2 - 7 keV d b 10 kpc a b c d 銀河a: 軟X線が銀河面にほぼ垂直に広がった放射 銀河b: 点状の放射源(LX = 4×1041 erg s-1)AGN 銀河c: ~3σのX線を検出(LX ~ 8×1039 erg s-1) 銀河d: 有意なX線なし(LX < 4×1039 erg s-1) (Active Galactic Nucleus) 2006/10/2 博士論文公聴会

銀河a (広がりと強度) 4 kpc 銀河面 29 kpc 39 kpc 30 kpc 0.5 - 2 keV のX線イメージの拡大 銀河面に垂直に投影した表面輝度分布のモデルフィット 4 kpc ― データ ― モデル 銀河面 29 kpc 39 kpc 30 kpc 南側 arcsec 北側 銀河面 PSF+2ガウシアン(ディスク、ハロー)+バックグラウンド ⇒X線放射の広がりは銀河面の上下に ~30 kpc 130±12 カウント 2006/10/2 博士論文公聴会

ハローの正体 ・ 直径 4 kpc, 高さ 30 kpc の円柱を仮定: V =1.1×1067 cm3 ハローのLX = 4×1040 erg s-1 > 高温ガスを持たない銀河の光度 LB-X= 0.6×1040 erg s-1 (可視光光度に比例) エネルギースペクトル 星間吸収+熱的プラズマモデル 0.5 1 2 5 7 energy (keV) kT = 0.6±0.1 keV 元素比 < 0.17solar スターバースト(爆発的星生成):重元素生成とガスの流出 ・重元素汚染に寄与 代表的なスターバースト銀河 M82 ngc253 LX (1040 erg s-1)ハロー 0.4 0.1 M (M yr -1) 12.9 5.8 ・ 直径 4 kpc, 高さ 30 kpc の円柱を仮定: V =1.1×1067 cm3 スペクトルフィットの結果から: ne2V  1.4×1064 cm-3 ⇒ 質量: Mgas=mempneV  4.3×108M (me=1.2: 電子1個あたりの核子数) 音速を仮定すると質量放出率: M = 8.5 M yr -1 ・ y 15 kpc v 292 km s-1 -1 2006/10/2 博士論文公聴会

銀河群高温ガスの放射強度 強度分布 b a 銀河群高温ガスは有意に検出されず! < 92 カウント(3σ上限) 銀河群中心からの距離 r (kpc) a b バックグラウンドに使用 バックグラウンド r = 50 kpc r = 96 kpc 銀河群高温ガスは有意に検出されず! < 92 カウント(3σ上限) kT = 0.5 keV, Z = 0.1solar の X線ガスを仮定 ⇒ LX < 6.3×1040 erg/s 銀河 b (半径 6 kpc) 銀河 c, d (可視光のサイズ) (σ- LX から予想される光度は LX ~ 8.4×1041 erg s-1 ) 2006/10/2 博士論文公聴会

HCG 80 のまとめと考察 spiral only group を Chandra で初めて観測。 3つのメンバー銀河からのX線放射を同定。 銀河b はAGNを持つことをX線で確認。 可視光で最も明るいメンバー銀河である銀河a から、 銀河面の上下に約 30 kpc 広がった放射を発見。 ⇒スターバースト活動は銀河群における銀河同士の相互作用に よるものと考えられる。 銀河群高温ガスからの有意なX線放射はない。 上限として LX < 6.3×1040 erg s-1 ( kT = 0.5 keV を仮定) を得た。 半径 50 kpc の球を仮定すると ne< 8×10-4 cm-3, Mgas < 1010 M ⇒我々の銀河を含む局所銀河群の性質と似ている。 HCG80は銀河群高温ガスの進化の初期段階にあるのではないか 2006/10/2 博士論文公聴会

HCG 62 Morita et al. (2006) PASJ 58, 719-742 2006/10/2 博士論文公聴会

イメ-ジとスペクトル解析領域 可視光イメージ Chandra イメージ XMM イメージ 観測:2000/1/25, 49 ksec, 2003/1/15, 13 ksec 可視光イメージ Chandra イメージ XMM イメージ 1' = 18 kpc HCG 62a を中心に半径 r = 2'(36 kpc)以内の領域のスペクトルフィット結果はほぼ一致 r = 0-0.2', 0.2-0.4', 0.4-0.6', 0.6-1.0', 1.0-2.0' ⇒ Chandra r = 4-8', 8-14' ⇒ XMM r = 2.0- 4.0' ⇒ Chandra+XMM 同時フィット ここで、点源と銀河b と c の寄与は除いた。 2006/10/2 博士論文公聴会

スペクトル解析方法 光学的に薄い熱的プラズマの1温度と2温度モデルを使用 外側の寄与を考慮し、2次元から3次元へ deprojection (1-x 2)3/2 (1-x 3) 4/3πr23 (1-x 2)3/2 r2 4/3πr23 (1-x 3) 外側のモデルのnormalization にかける 2次元 3次元 ここで x ≡ r1/r2 Fe-L O Mg 銀河a からの距離 11-18 kpc のエネルギースペクトル Si S + データ ― モデル ― 低温成分 ― 高温成分 ― 外側の寄与 0.5 1 2 3 4 エネルギー(keV) 2006/10/2 博士論文公聴会

温度分布と密度分布 中心は冷たく、低温成分が 10 kpc 以内で支配的 14 < r < 70 kpc で2温度混在領域がある HCG 62a からの距離 r HCG 62a からの距離 r プラズマ温度(keV) プラズマの電子密度(cm-3) 中心は冷たく、低温成分が 10 kpc 以内で支配的 14 < r < 70 kpc で2温度混在領域がある 70 kpc あたりにピーク: 加熱の可能性 r > 70 kpc で温度が急激に減少、密度は平ら 2006/10/2 博士論文公聴会

重力質量分布の導出 半径 r より内側の重力質量: M<r= - r2 rgasG dPgas dr 2温度のガスが共存しているときの HCG 62a からの距離 r --- フィット結果 半径 r より内側の重力質量: M<r= - r2 rgasG dPgas dr ガス圧 (eV cm-3) 2温度のガスが共存しているときの 重力質量:圧力平衡を仮定して導出 圧力: Pgas=1.9 ne coolkTcool =1.9 ne hot kThot 低温成分の割合 f を仮定し、 Vcool≡fV, Vhot≡(1-f )V とする 半径 r より内側の重力質量: volume-filling factor f を仮定し、 Vcool≡fV, Vhot≡(1-f )V とする HCG 62a からの距離 r --- フィット結果 低温成分の割合 f = 1+ Thot Tcool Normhot Normcool 2 -1 電子の個数密度: ne hot= [3.6×1014Normhot(1+z)2/Vhot]1/2 ガス質量密度: rgas =memp[ f ne cool+(1-f )ne hot] 2006/10/2 博士論文公聴会

質量分布(微分形) 星の質量密度は < 30 kpc でガスを超える Fe と O は星の分布よりなだらか ⇒ 重元素が中心部から流出 重力質量 星 ガス 質量密度 (M Mpc-3) O Fe HCG 62a からの距離 r 星の質量密度は < 30 kpc でガスを超える Fe と O は星の分布よりなだらか ⇒ 重元素が中心部から流出 外側の重力質量の急激な低下 ⇒ 温度の急な変化を反映し、静水圧平衡にない可能性 2006/10/2 博士論文公聴会

重元素分布 Mg, Si, Fe は似た中心集中の度合 O のアバンダンスは少なく(~0.3 solar)、中心集中も少ない HCG 62a からの距離 r 重元素量(太陽組成比) Mg, Si, Fe は似た中心集中の度合 O のアバンダンスは少なく(~0.3 solar)、中心集中も少ない 2006/10/2 博士論文公聴会

Si と比較すると Fe/Si Mg/Si O/Si 1 Fe/Si と Mg/Si はほぼ同じ比率 r (kpc) r (kpc) r (kpc) Fe/Si と Mg/Si はほぼ同じ比率 O の比率は少なく、外側で Si を超える Fe (と Si )の中心集中は、中心銀河a の Ia型超新星で作られた Mg が多いのは、大質量星 (M >20M)の II型超新星の割合が 多かったため、あるいは、Ia型超新星でも作られる? O は軽いので銀河風で拡散し、広がった分布となる 2006/10/2 博士論文公聴会

cavity は真空か? + × cavity 部分の表面輝度はまわりの50%落ち 中心部のX線イメージ 36 kpc 滑らかな輝度分布からの残差との比 -1 -0.5 0 0.5 1 × + 36 kpc cavity 部分の表面輝度はまわりの50%落ち 銀河aと同距離にあり、真空の球と仮定したモデル(-線)とほぼ合う 2つの cavity とも半径約 4 kpc、中心から 6 - 9 kpc 2006/10/2 博士論文公聴会

cavity がX線吸収でないことの確認 cavity の境界に温度の段差はない: 衝撃波加熱の兆候はみえない 0.5 1 2 3 エネルギー (keV) エネルギースペクトル cavity方向 (赤・黒) non cavity(青・緑) 36 kpc ) cavity(真空) 温度マップ 0.4 1 1.6 keV 36 kpc cavity の境界に温度の段差はない: 衝撃波加熱の兆候はみえない 銀河群中心から等距離の cavity方向, non-cavity方向のスペクトルは有意に違わない: 星間ガスの吸収とは考えにくい 吸収に必要な HI の質量 ~ 109 M  銀河群全体の水素量 2006/10/2 博士論文公聴会

必要なエネルギー ⇓銀河群中心 ガス圧 浮力 cavity の年齢 ~ つぶれる時間 ~ 浮上する時間 tcavity~ 107 yr 重力 よりはるかに短い 重力 何らかの内圧 ⇓銀河群中心 一時的な現象を観測している? cavity を支える何らかの圧力が存在する? cavity を支えるためのエネルギー供給率は Lmech= 4 PgasV / tcavity = 1.8×1042 erg s-1 2006/10/2 博士論文公聴会

cavity を支える圧力 磁気圧 F PB= B2/8π と 宇宙線粒子圧 Pnon-th= K Pe を考える Pe: 相対論的電子の圧力、 Pe ∝ LradioB-3/2, K : 陽子/電子のエネルギー密度の比、 F : 相対論的プラズマの占める体積の割合、 電波観測より Lradio~ 9×1037 erg s-1 全圧=(K Pe+F PB) F PB log P 等分配 & K /F =100 を仮定 Pnon-th B = 11 mG, 全圧は Pgas の約1/3 Pgas= 1.9 nekT ~ 17 eV cm-3 cavity を維持するには K /F > 700が必要 K =100 K = 700 log B 11 mG 2006/10/2 博士論文公聴会

問題点 中心部に点源(AGN)はない: LX < 1039 erg s-1 現在のAGN光度は必要なエネルギーの1/1000以下 陽子/電子の圧力比が HCG 62 で特に大きい (銀河団ごとのばらつきも大 Birzan et al 2004,Dunn et al. 2005) 磁場や陽子のエネルギー集中が本当にあるのか 衝撃波のエネルギーが陽子に行った? 直接的な観測証拠・手段が現状ではない 今後の観測: キャビティのダイナミクス (浮上、膨張を観測的に直接知る) 非熱的放射の高感度観測 (電波、γ線、硬X線) 2006/10/2 博士論文公聴会

考えられるほかの可能性 希薄な高い温度の高温ガスがある? ne ~ 10-3 cm-3, kT > 2 keV ならば低い放射率のガスを作れる 熱伝導を考慮すると L はクーロン対数 = 36 2 π 3/2 (kT)5/2 k me1/2e 4Z lnL 熱伝導率 kspizer = 20 = 1030 cm2 s-1 rcavity 4 kpc 2 kT 2 keV -5/2 ne 10-3 cm-3 これより t = 5×105 yr で冷えてしまうが、磁場があれば~100倍くらい長くなる 中心銀河の運動? 中心銀河a が銀河群中心の周りをまわっていて、その痕跡を見ている。 ケプラー周期は ~108 yr、cavity の年齢は ~107 yr なので、トンネルを保つ機構が必要(磁場?) 2006/10/2 博士論文公聴会

HCG 62 のまとめ スペクトルは 0.7 と 1.4 keV の2温度(14 < r < 70 kpc)。 低温成分は中心に集中。 2. 重力質量密度は r > 90 kpc で急激に減少。 静水圧平衡になく、ガスの運動が存在している可能性。 3. O アバンダンスは Fe と Si の分布に比べて低く平ら。 銀河風で飛ばされたと考えられる。 4. Mg が I型、II型超新星でどのように作られたのか、 他の銀河群と比較し再検討が必要。 5. cavities は真空と考えて矛盾なし。cavities を支えるためには、陽子が電子の700倍以上のエネルギー密度が必要がある。 6. AGN 活動は見られない。cavity を作る別のメカニズムの検証、非熱的エネルギーの観測が今後重要。 2006/10/2 博士論文公聴会

まとめ 2006/10/2 博士論文公聴会

銀河群の高温ガスについて HCG 80 では、スターバーストによって重元素を含んだ高温ガスが流出することを見出した。 一方、高温ガスは渦巻銀河群には少なく楕円銀河群に多いことを明らかにした。 HCG 62 の重元素分布・質量分布を明らかにし、中心銀河による Ia型超新星爆発によって Fe、Si が中心集中する一方、II型超新星の作る O, Ne は広範囲に分布することを示した。 HCG 62 の cavity では、非熱的なエネルギーが支えているが、磁場と電子では圧力が不足し、中心銀河の運動あるいは他の何らかの非熱的エネルギーが関与していることを示した。 本研究により、非熱的エネルギーの重要性が明らかにされた。 今後これらを明らかにするためには、マイクロカロリメータによる高温ガスの運動の 直接観測(cavityの縁のドップラーシフトを調べ速度を求める)が最も有効な手段。 私が進めてきたカロリメータの開発が将来活かされると期待。 2006/10/2 博士論文公聴会

END 2006/10/2 博士論文公聴会