証券ゼミナール大会 第3テーマブロック (Aブロック) 「わが国における起業環境改善策」 立教大学 北原ゼミナール
章構成 第1章 起業環境改善について 第2章 諸外国との比較からみる日本の起業環境の問題点 第3章 ファイナンス支援面の改善策 第1章 起業環境改善について 第2章 諸外国との比較からみる日本の起業環境の問題点 第3章 ファイナンス支援面の改善策 第4章 インフラストラクチャー支援面の改善策 以上の章構成で、起業家とベンチャー企業、そしてそれらの支援主体が「様々な選択肢を持つことができる起業環境の構築」に焦点を絞り、論じていくことにする。
起業環境改善とは、エクスパンション・レイター期へと移行する企業が増加することだと考えている。 1.イノベーション促進 第1章 起業環境改善について 1-2 成長ステージ別にみる現状 1-1 起業環境改善の意義と必要性 起業環境改善とは、エクスパンション・レイター期へと移行する企業が増加することだと考えている。 1.イノベーション促進 成長段階で資金調達先に違いがあってはならない。 つまりベンチャー企業が資金調達先について多様な選択を行えるようにするべきである。 2.雇用促進 起業時 3.経済の成長及びその活性化 創業期 起業環境改善が改善し起業活動が促進されると、以上の3点が達成されると考える。 出典:平成19年版 情報通信白書 成長期 出典:ベンチャー企業の経営戦略に関する調査研究 資料編2.アンケート調査票及び単純集計結果 P.39,40
第2章 諸外国との比較からみる 日本の起業環境の問題点 2-1 各支援主体 2-2 公的支援 2-3 起業家精神 2-4 IPO・M&A 第2章 諸外国との比較からみる 日本の起業環境の問題点 2-1 各支援主体 2-2 公的支援 2-3 起業家精神 2-4 IPO・M&A 以上の4つの観点から実状を諸外国と比較すると共に、わが国において、様々な選択肢を持つことができる起業環境の構築のための施策を打つ上での問題点を述べていくことにする。
2-1 各支援主体(VC) 日本はM&Aの比率が著しく低い。 日本と他国の投資残高の乖離 キャピタリストの専門性の不足 ① 投資資金の不足 VCの投資残高の推移(日米欧) VCの内部収益率(日米) ③ 投資出口としてのM&Aの少なさ 出典:「ベンチャーキャピタルを通じた資金供給」 P.4 出典:「ベンチャー企業の資金調達課題」 P.4 出典:「ベンチャー企業の資金調達課題」 P.4 出典:平成19年度 年次経済財政報告 P.132 出典:平成19年度ベンチャーキャピタル等投資動向調査報告 P.21 日本はM&Aの比率が著しく低い。 出資者構成に占める年金基金の比率が低い。 日本のVCは、運用パフォーマンスが低い。 日本と他国の投資残高の乖離 キャピタリストの専門性の不足
2-1 各支援主体(エンジェル投資) エンジェル投資の日米比較 エンジェル税制度改正の度に利用実績が上昇 ↓ 一層の税制整備が必要 2-1 各支援主体(エンジェル投資) ① エンジェル税制の制度不備 エンジェル投資の日米比較 エンジェル税制度改正の度に利用実績が上昇 ↓ 一層の税制整備が必要 出典:平成20年度 エンジェルネットワークの 形成促進に関する調査報告書 出典:TXアントレプレナーパートナーズ 日本において年間投資額は200億円であり、かつエンジェル投資家は1万人いるが・・・ 年間投資総額は2.5兆円 エンジェル投資家は23万人存在。 ② エンジェルネットワークによるマッチング不足 日本は数十程度のエンジェルネットワーク 米国では300近く 州政府による援助 米国におけるエンジェルネットワークの数の推移 日本と米国とのエンジェル投資市場の発達の違いは明らかである。 出典:平成20年度エンジェルネットワークの形成促進に関する調査報告書 P.41
2-2 公的支援 研究開発費となる資金は多く、かつ継続的に必要である。 2-2 公的支援 米国において中小企業支援法が成立し、中小企業株への新規投資によるキャピタルゲインについて1年間非課税となることが盛り込まれた。 2-2-2 ビジネスインキュベーターによる支援 2-2-3 研究開発への支援 2-2-1 各公的支援による支援 ① スキームの不備 研究開発費となる資金は多く、かつ継続的に必要である。 売上高に占める研究開発費の比率 より円滑にベンチャーを育成する為の強固な産学連携が必要不可欠である。 ② ソフト面支援の不足 出典:平成18年科学技術研究調査、2008年日本ベンチャーの企業成長と資金調達構造 わが国においては施設整備等ハード面に比重がかかりすぎることが多く、人材確保やソフト事業の費用が不足している傾向にある。 政府負担研究費における産業への支出割合 出典: 創業・ベンチャー国民フォーラム 調査報告書 税制の改正は政府は敬遠しがちだが、より柔軟な起業支援を行っていく為にリスクを許容していく必要がある。 国際的に日本は民間企業へ支出される比率は少なく、3.8%に留まっている。 ・また、世帯普及率においても日本を上回っていることから、アメリカでは日本より投資信託が普及していると述べた。 出典: 平成22年版科学技術白書 第1部 第2章 人を活かし知をつなぐ科学・技術システム P.74 出典:米国との比較による我が国ビジネス・インキュベーションの特徴 P.1
2-3 起業家精神 日本では起業という職業選択に対する評価、起業家の社会的地位に対する評価が低い。 学歴よりも起業家精神が大きく関わっている 2-3 起業家精神 ① 起業家の社会的地位が低い 日本では起業という職業選択に対する評価、起業家の社会的地位に対する評価が低い。 平成21 年度創業・起業支援事業(起業家精神に関する調査)報告書より筆者作成 ② 起業家教育とその時期 学歴よりも起業家精神が大きく関わっている ↓ 早期段階での起業家教育が必要。 起業家の最終学歴比率 ・フランスについてもアメリカと同様に、 ・日本に比べ株式市場における投資信託の地位は高く、 ・普及度でも日本を上回っていると述べた。 出典:第一回 新規開業企業アンケート調査 (2009) P.15
2-4 IPO・M&A 2-2 海外と日本の比較 新興市場の信頼性低下 IPOのメリット低下 2-4 IPO・M&A 2-2 海外と日本の比較 ① 新興市場に対する信頼の薄れ 新興市場の信頼性低下 IPOのメリット低下 出典:平成21年度これからのベンチャー投資活性化に関する調査 P.56 ② M&Aの際の企業価値の相違 ・以上のことからアメリカやフランス等の投資信託先進国に比べ、 ・日本では投資信託が普及していないという結論をだし、日本が見習う点は多数あると考えた。 ・これを踏まえたうえで、 買収する側は売却する側の企業価値を低く見積もり、売却する側は自社の価値を高く見積もる →双方の同意や買収価格の決定を妨げる一因
第3章 ファイナンス支援面の改善策 3-1 ベンチャーキャピタル 3-2 エンジェル投資 これら2つに視点を置き、 第3章 ファイナンス支援面の改善策 3-1 ベンチャーキャピタル 3-2 エンジェル投資 これら2つに視点を置き、 それぞれについての改善策を述べていくことにする。
VCの利益相反的行動を 制限する条項を設けるべき! 安定したリターンにつながる 数%でもVCに流れるようになれば、 3-1 ベンチャーキャピタル 投資資金の不足⇒❶資金流入先としての年金基金 VCとファンド出資者間で結ばれるファンド規約について、日本では定められていないものが多い。 年金基金等の出資者側は出資するか否かの判断が、米国と比べて難しい! 公的年金の未公開株への投資が禁止されている 解禁すべき! 数%でもVCに流れるようになれば、 VCからベンチャー企業への投資は 活発になると考える。 確実にリターンを得られるような 投資先を選ぶ現状を打開する! 安定したリターンにつながる ベンチャーキャピタリストの 運用能力が必要。 VCの利益相反的行動を 制限する条項を設けるべき! 例)組合員代表が過半数を占める顧問委員会の設立 他社ファンドへの投資の禁止 年金基金からのVCへの出資が欧米に比べて少ない。 年金基金がVCを含めたPE投資に 関して、リスク回避的であるため! そのために
報酬体系は出来高制にする! 親会社からの出向・転職者が多いため十分な教育がなされていない。 3-1 ベンチャーキャピタル 3-1 ベンチャーキャピタル 日本特有のVCの組織形態 ⇒❷ベンチャーキャピタリストの質の強化 親会社からの出向・転職者が多いため十分な教育がなされていない。 ≪ベンチャーキャピタリストの別枠採用≫ ≪ベンチャーキャピタリストの教育強化≫ 日本のベンチャーキャピタリストは “サラリーマン”キャピタリストと呼ばれ、責任感や向上心に欠け、また教育が十分に施されていない。 報酬体系は出来高制にする! ⇒ベンチャーキャピタリストに自主性と 責任感を付与 VCの実績向上のインセンティブ ベンチャーキャピタリストの 別枠採用、及び雇用を行うべき! 専門家や起業家を呼び込み、 教育を強化すべき!
ベンチャー企業とVCの双方が セカンダリー投資を 希望しやすくする仕組み 3-1 ベンチャーキャピタル 3-1 ベンチャーキャピタル 投資出口の偏り ⇒ ❸セカンダリーファンド市場の創設 【セカンダリーファンド】 既に発行されている未上場企業の株式、VCが投資を終えた株式を買取るという投資手法をとるファンド。買い取った企業を正常化するために経営陣に働きかける。 ⇒VC投資からこぼれおちた企業、またそ の企業の株主にとって必要な存在! セカンダリー投資をしてほしいというベンチャー企業が埋もれている可能性を考慮し、両者が申請できる仕組みであることが必要。 しかし! <私たちの考えるセカンダリー市場の特徴> ベンチャー企業とVCの双方が セカンダリー投資を 希望しやすくする仕組み -現在- VCが案件をセカンダリーファンドへ持込む ⇒セカンダリーファンドにおいて精査を行う ⇒買取りをするか決める
“金融所得”に 範囲を拡大すべき! ①全国の起業家がその土地で簡単に プレゼンを行うことができる。 ②VCとエンジェルネットワークとの 3-2 エンジェル投資 エンジェルネットワークによるマッチング不足 ⇒❷ネットワーク・ファンド並行モデルの導入 エンジェル税制の設計不備 ⇒❶エンジェル税制の制度改正 現行のエンジェル税制において、繰越控除の対象所得の範囲は株式譲渡所得のみ。 “金融所得”に 範囲を拡大すべき! 損失控除繰越 譲渡により生じた損失を、その年の翌年以降3年にわたって繰り越し、他の株式譲渡益から控除できる。 株式譲渡益の1/2圧縮課税 譲渡により、譲渡益が生じた場合、その譲渡益を1/2に圧縮して課税する優遇を受けることができる。 ※2008年度の制度改正で現在は廃止 1/2圧縮課税制度を復活させ、 損失控除繰越期間を延長すべき! 株式売却損益発生時点の優遇措置拡充と損失控除の対象範囲の拡大を提案する。 ①全国の起業家がその土地で簡単に プレゼンを行うことができる。 ②VCとエンジェルネットワークとの シナジー効果が期待できる。 企業発掘とプレゼンの開催を全国の金融機関が、デューデリジェンスと実際の投資を金融機関系VCやエンジェル投資家が行う。
第4章 インフラストラクチャー支援面の改善策 第4章 インフラストラクチャー支援面の改善策 4-1 公的支援 4-2 起業家教育 4-3 IPO・M&A これら3つに視点を置き、 それぞれについての改善策を述べていくことにする。
◇設備投資に対する減税 ◇法人住民税の均等割の免除 ◇法人税を18%へ引き下げ 時限的な減税及び税制控除を行うことを提案する。 4-1 公的支援 BI⇒❶BIスキームの強化 研究開発支援⇒●SBIR制度の拡充 ❷ソフト面支援の強化 公的機関⇒●税制措置の拡充 会社設立から5年までのベンチャー企業に対し ◇設備投資に対する減税 ◇法人住民税の均等割の免除 ◇法人税を18%へ引き下げ を提案する! <改善策> ●評価基準等を統一した運用ガイドライ ンを作成。2段階方式を全省庁で導入。 ●VC等の市場メカニズムへの移行を前提 に、SBIRを導入。 ●各省庁の科学技術予算から一定割合を 課す方式へ予算設定方式を変更。 【日本のSBIR制度】(米国SBIR制度と比較) ◆各省庁のガイドライン統一が不完全 ◆2段階競争選抜方式は一部の省庁で採用 省庁横断型の支援制度として 未成熟な点が多い。 ≪インキュベーションマネージャー(IM)の 増加及びスキル向上促進≫ JBIA等がIM養成研修を積極的に行う! BI施設に常駐し各入居者への指導を行えるIMの数を増やすべき! ≪スイスのCTI Start-up プログラムの導入≫ 公的機関も起業環境の必要性を再認識し、起業家のニーズに応えていくべきである! 時限的な減税及び税制控除を行うことを提案する。 出典:CTI Start-up Promotion P.3 導入し支援をすれば、BIも充実かつ的確な支援をすることができ、起業家側も段階ごとに力をつけていくことができる! それぞれの機関から教員や経営コンサルティング業務に慣れた人材を呼び込み、その際の費用は中小企業庁や経済産業省から補助金を受け取り、充てる。 [特徴] □プログラムに沿った、積極的な支援と大学等の専門家 の助言を与えていく。 □事業化段階に至り、一定の基準を満たす案件には 「スタートアップラベル」という資格を与える。 取得すると、積極的な公的支援を受ける権利の取得、およびVCからの資金調達への道が開かれ、投資家を含む様々なステークホルダーの関心を集めることが可能になる。
起業家精神・起業の知識に触れた時期と、起業志望者の割合 4-2 早期起業家教育の推進 早期起業家教育 ⇒●フィンランドの起業家教育プログラムの導入 起業家精神、起業の知識に触れた時期が早い方が、起業志望者が多い。 起業家精神・起業の知識に触れた時期と、起業志望者の割合 出典:松田修一(2003)『ベンチャー企業の経営と支援』日本経済新聞社 起業化教育を教科の一つとして設けるのではなく、教科を横断した学習や地域社会に根ざした学習を通して起業家教育を行っていくことが奨励されている。 バーサ市での起業家教育プログラム 出典: 「起業家教育」を取り入れた中学校総合的な学習の時間に関する研究 P.4 わが国においても総合的学習と同じような意義を持って、早期の教育段階から導入するべきである!
新興市場全体の信頼・期待を回復させるべき! 4-3 IPO・M&A M&A⇒●企業価値算定方式の改善 IPO⇒●上場廃止基準の厳格化 未上場企業とのM&Aで使用される株価の算出は様々な方式が用いられている。 いずれの方式も曖昧な部分が多く、双方の企業で行った計算が食い違ってしまう。 どの勘定科目で計算するのかを法律で厳密に定めるべき! 上場廃止基準を厳格化し、 新興市場全体の信頼・期待を回復させるべき! 新JASDAQ市場で用いられている新規則に付随した監視区分と上場管理料請求制度を、他の新興市場にも導入することを提案する。
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