高齢者の嚥下について 福岡県前原市 特別養護老人ホームマイネスハウス グループホーム ひなた庵 施設長 太田 千恵 最後まで自分の口でおいしく食べよう! 福岡県前原市 特別養護老人ホームマイネスハウス グループホーム ひなた庵 施設長 太田 千恵 介護職 久保薗 友子
福岡県前原市 人口; 6万6千923人(平成15年2月末現在) 高齢化率; 14.9% 全国平均 ; 17.2%(2000年) 前原市
マイネスハウス 社会福祉法人 千草会 デイサービス、ホームヘルプサービス、居宅介護支援事業所、 在宅介護支援センター(前原市委託) 社会福祉法人 千草会 マイネスハウス 特別養護老人ホーム、グループホーム ひなた庵、ショートステイサービス、 デイサービス、ホームヘルプサービス、居宅介護支援事業所、 在宅介護支援センター(前原市委託) 関連医療機関: 太田脳神経外科 小笹歯科(委託歯科)
グループホーム ひなた庵 開設日:平成13年4月1日 全室個室 ・ 平屋造り 室内風景
目的 「食べる」ということは、人間が生きるうえで楽しみの一つであり、可能な限り自分の口で味わい、自力でおいしく食事ができることを望んでいるといえる。 痴呆ではあるが、介護度は軽度の人が多いと言われるグループホームにおいても、食事中にむせるといった状況を目にする。 そこで我々は、出来うる限りむせずにかつ、誤嚥を起こさずに食べるための嚥下反射の維持、強化、および口腔周辺の筋肉の廃用萎縮の防止を目的として嚥下体操を行った。 今回、主観的および客観的評価を用い、嚥下反射の回復の程度を測定したので報告する。
方法 対象;全入居者18名 Aユニット9名;男性1名、女性8名 Bユニット9名;男性3名、女性6名 平均年齢;81.7歳 対象;全入居者18名 Aユニット9名;男性1名、女性8名 Bユニット9名;男性3名、女性6名 平均年齢;81.7歳 平均要介護度;2.27 障害老人の日常生活自立度;A-1 痴呆性老人の日常生活自立度;Ⅱ- a ~Ⅲ- a
1、嚥下反射測定 使用器具; 舌圧子 (医師の指導の下) 測定部位; 軟口蓋、口蓋垂 評価法 ; ①主観的評価 嚥下反射の程度 使用器具; 舌圧子 (医師の指導の下) 測定部位; 軟口蓋、口蓋垂 評価法 ; ①主観的評価 嚥下反射の程度 強度、中度、弱度、無の4段階 ②客観的評価 ASMT;旭式発話メカニズム検査 (一部引用)
嚥下反射(客観的評価法) 大項目 小項目 1 2 3 実測値 呼吸機能 呼吸数分/1分 最長呼気持続時間 ろうそく消し 発声機能 4 嚥下反射(客観的評価法) ( ASMT ; 旭式発話メカニズム検査を一部引用) 大項目 小項目 1 2 3 実測値 呼吸機能 呼吸数分/1分 最長呼気持続時間 ろうそく消し 発声機能 4 最長発声持続時間 鼻咽喉閉鎖機能 5 /a/発声時の視診 6 Blowing時の鼻漏出 運動機能 7 舌の突出 8 舌の右移動 9 舌の左移動 10 上唇をなめる 11 下唇をなめる 12 硬口蓋をなめる 13 右の頬を押す 14 左の頬を押す 15 頬をふくらませる 16 口唇の閉鎖 17 口唇を引く 18 口唇の突出 その他 19 嚥下(水分)
2、嚥下体操 1、顔体操 2、舌体操 3、発声練習 ① 口を大きく開け、ぱっと閉じる ② 頬を突き出す(「う」の形」)、唇を横に引く(「い」の形) ③ 頬を膨らませたり、へこませる 2、舌体操 ① 舌を突き出したり、引っ込める ② 舌の上下運動 ③ 舌の左右運動 3、発声練習 ① /a/,/i/,/u/,/e/,/o/ ② /pa/ ・・・・・ ③ /ra/ ・・・・・
結果 嚥下反射測定 図1 経時的変化(月ごと) 対象者18名 =100%
図2 初回と最終測定時の比較
図3 ASMT測定:平均得点の比較 (点) N=7
図4 各個人(15名)の嚥下体操全メニューの達成率 図4 各個人(15名)の嚥下体操全メニューの達成率 (%) (名)
症例報告 対象者;Sさん (84歳) 既往歴;脳梗塞、心房細動、糖尿病 要介護度;2 障害老人の日常生活度;A-1
嚥下反射測定、ASMT 嚥下(水分) Blowing時 の鼻漏出 ろうそく消し 嚥下反射測定
発声練習、嚥下体操 /a/発音時 頬を膨らませる
Sさんの結果 (ASMT測定項目中、「嚥下(水分)」測定で 1、 嚥下反射は「弱」から「強」に改善した。 むせが見られた。しかし、他はほぼ良好に回復した。) 3、 嚥下体操全メニュー達成率は2月時は 86%であったのに対し、4月時では100 %に向上した。
考察 図1、2の主観的評価法の嚥下反射測定の結果、全体的に若干ではあるが回復傾向が認められた。これは、毎日行った嚥下体操により、口腔内外の諸器官に良好な刺激が与えられた結果と思われる。しかしながら、短期的な測定結果、術者側の初期段階での手技の不安定さ、対象者の日々の体調の変化という点からばらつきが認められたと考えられる。よって、今後長期的な観察、測定が必要である。 図3の客観的評価法のASMTの結果は、47.3点から51点に上昇した。 これは、ASMTの検査項目中に嚥下体操メニューと対応する項目が含まれる為、嚥下体操の効果の現われと思われる。(対象者7名全員が高得点に移行)
図4の嚥下体操全メニュー達成率は66%から69%と上昇した。これは、嚥下体操を毎日、朝の体操時に組み込んで行うことにより、入居者の方々が日課として受け止め、高齢者においても軽度の負荷的運動ならば日々の繰り返しでプラスの影響を及ぼす可能性があることを示唆している。 嚥下反射測定、嚥下体操の取り組みを始めて日が浅く、今回十分な結果を出せたとは決して言えません。また、現在食事中にむせるといったことも見られます。 しかし、短期間の中で、今回示した結果以外にも改善したと思われる点が、いくつかありました。嚥下体操を開始した当初は舌があまり出なった方が今ではよく出せるようになり、また発声練習の声の大きさも当初と比べるとほとんどの方が大きく出せるようになりました。 今回の取り組みは嚥下反射の向上、維持にとって無駄なものではないと思っています。これからも取り組みを続けると同時に入居者全員がおいしく食事をして頂けるにはどうしたらよいか勉強していきたいと思います。
リハビリ中 つくし取り(3月) お花見(4月) 歩行訓練中
運動会(11月)
図 1 月ごとにばらつきは見られるものの、「無」の割合が 減少、「強・中・弱」の割合が増加し、全体的に回復 傾向が認められる。 図 2 変化なしの割合は多いものの(短期間測定の為)、 若干の回復傾向が認められる。 図 3 1ヶ月間で若干ではあるが、呼吸、発声、鼻咽喉閉鎖 機能、舌及び口腔周囲の運動機能、嚥下の総合的な 回復が認められる。 図 4 2月から4月にかけて、全体的に達成率の向上が 認められる。