治療構造と治療機序
日本精神分析学会と協会が二つあるという話から:精神分析的精神療法 頻度:週4回以上、場面:カウチ使用、方法:自由連想法 精神分析的精神療法 精神分析から、低頻度・対面設定の力動的精神療法を含む広いスペクトラム あるいは500以上の心理療法がある。
精神分析的理解のプロセス 2 基本概念を知る 3 アセスメントを行い、力動的定式化を作成する 4 心理療法を開始する→留意する事柄 1 治療構造論を理解する 2 基本概念を知る 3 アセスメントを行い、力動的定式化を作成する 4 心理療法を開始する→留意する事柄 5 介入する→何をいうか、何をするか 6 治療機序を考える(目標を考える) 7 抵抗と転移を扱う 8 夢と空想を用いる 9 逆転移を同定し、効果的に利用する 10 心理療法を終える(終結期へ) 11 SVと訓練分析を活用すること
フロイトの分析状況についての仕事 第一期:精神分析の前身(催眠療法)から抵抗の除去を目指した、短期的、集中的な治療の時期 第二期:基本原則の明確化による、転移神経症の発見の時期 第三期:タナトスと悲観主義:治療の長期化と終わりなき分析についての着想
はじめに:治療構造論 日本で開発されたもっとも強力な力動学派の初期の業績のひとつ はじめに:治療構造論 日本で開発されたもっとも強力な力動学派の初期の業績のひとつ 甘え、阿闍世、見るなの禁止などの概念装置は、内面の心理状態を記述するための道具 治療構造論は技法的な道具であり、しかも精神分析に固有の道具ではなく、その拡張をもくろむもの(日本特有の文脈)
心理療法において重要な枠 Robert J Langs 精神分析から基本原則などの枠がもっとも重要だと考えた体系的な心理療法=コミュニカティブ心理療法を創始した人。
枠のある精神療法1 (2)明確な対人関係の境界線 (3)患者の現実との接触、現実検討を行う キャパシティを無意識的に支持する (1)基本的信頼感 (2)明確な対人関係の境界線 (3)患者の現実との接触、現実検討を行う キャパシティを無意識的に支持する (4)健全な治療的共生を生むような関係の基礎となる (5)本当の洞察を通じて治癒が生じる様式 の基盤となる
枠のある精神療法2 (6)治療者のものではない患者の狂気の 周辺にある力動や発生論の状況提示 (7)健全なアイデンティティと自己愛を持って 周辺にある力動や発生論の状況提示 (7)健全なアイデンティティと自己愛を持って いる人として治療者のイメージを持ち、 それを取り入れる (8)正気な治療者像 (9)充分に抱えられて、庇護されているという強い感覚 (10)適切な欲求不満と健全な満足の状況
枠のある精神療法:不安 (1)閉所恐怖的な不安..適切な庇護がもたらす窮屈さと不安 反対に制限でもあるので、 (1)閉所恐怖的な不安..適切な庇護がもたらす窮屈さと不安 (2)迫害的で被害妄想的な不安..治療が狂気にとっては驚異であるために (3)分離不安.治療者が答えてくれないさびしさ (4)病的な充足、関係性がないこと、精神療法家において狂気が欠けているということが危険なものと感じられる。
枠からの逸脱=狂気 (1)反恐怖症的な防衛によって、行動化する (2)躁的防衛を利用して、抑鬱的にならない (3)病的な防衛や関係性を形成する
小此木啓吾 1954年 - 慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。 1972年 - 慶應義塾大学医学部助教授 1988年 - 日本精神分析学会会長 1990年 - 慶應義塾大学環境情報学部教授(医学部兼任担当教授) 199X年 - 東京国際大学人間社会学部教授
歴史:小此木の自由連想法体験 医局の中での生き方とそれとは別の自由連想法 自宅臨床場面=研究日 自由連想法の体験 自宅臨床場面=研究日 自由連想法の体験 古澤からの教育分析とスーパーヴィジョン 東京精神分析研究会(1953) ルドルフ・エクシュタイン古澤訳 精神療法の構造的側面 → チェスのたとえ ↓ 第一次操作反応の研究 九州と東京の二極化(別の道)
小此木(1955~)の操作構造論 第一次操作反応 POR(第一回目の自由連想法において最初の説明以後の反応のすべて) (1)連想不能型 第一次操作反応 POR(第一回目の自由連想法において最初の説明以後の反応のすべて) (1)連想不能型 (2)拒否攻撃型 (3)積極型 (4)従順 (a)積極型 従順 (b)細心型 従順 (c)依存型 (5)(a)連想欠乏型 (b)沈黙型 (6)不安 (a)沈黙型 不安 (b)依存型
逆転移の葛藤から自律するため、つまり自我と 自律性とを守る枠組みとしての操作構造(役割) という発想。 小此木(1957)らから第二次操作反応 第二次操作反応 SOR の研究 木村(馬場)礼子とのロールシャッハ研究 「『逆転移』の操作構造論的研究 –治療者の役割の葛藤性と自律性をめぐって-」(1962) 逆転移の葛藤から自律するため、つまり自我と 自律性とを守る枠組みとしての操作構造(役割) という発想。 →操作構造論の確立 児童治療における治療的退行(1971) 慶応グループの治療的操作構造論と退行による治療の理論化
治療における構造と退行 構造を提供すると、治療的な退行が起きる(児童治療における体験) ⇒治療的な退行は、心理療法の基本原理である 治療における構造と退行 構造を提供すると、治療的な退行が起きる(児童治療における体験) ⇒治療的な退行は、心理療法の基本原理である 心理テスト、特にロールシャッハの反応は、図版やテスト状況(構造)に対する退行であり、反応である。
治療構造的機能 定点観察 参与しながらの観察にとっての準拠枠 病理の彫塑 枠組み=基準=社会的合意事項 参与しながらの観察にとっての準拠枠 病理の彫塑 枠組み=基準=社会的合意事項 ⇘治療構造を決めると、いろいろと専門的な概念が生かせる。
治療構造論の展望 1.治療者が意図的に設定するもの(治療設定) 2.治療者の意図を超えて与えられたもの 治療構造=準拠枠 治療構造=準拠枠 3.治療経過中に自然に形成されるもの 構造転移ほか →自我の分裂や変容的解釈論、そして等距離性
治療構造論の転移・逆転移における機能 ①.治療状況におけるコミュニケーション媒体機能 ②.転移現象と投影の発生を規定する現実要因 ③.投影ないし転移の分析を支持する機能 ④.転移に対する受容器ないし抱える環境としての機能 ⑤.転移現象に対する境界機能 ⑥.転移を認識する先験的な準拠枠としての機能 →逆転移を浮き彫りにする
構造的な認識 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事をするようになったのか 構造的な認識 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事をするようになったのか 自分がどのような臨床場面にいるのか、そしてそれはどんな構造をしているのか 自分でその構造は、どの程度、設定として変化させられるのか、それとも変化させられないのか
治療態度による構造
フェレンチィ問題 フロイトに反する意見を述べながら、そのサークルに居続けた。 積極的技法の提唱(1913-1923) 「精神分析における積極的技法の発展」(1921) 緩和的技法の提唱(1924-1933) 「積極的分析技法における禁忌」(1926) 「精神分析技法における柔軟性」(1928)
フェレンチィ(1873-1933) 積極技法の提唱 禁欲 リラクセーション技法 フロム、バリントらブタペストのハンガリー学派を形成した(晩年、フロイトとの関係が問題になり、長く隠蔽された) →フェレンツィ的態度VSフロイト的態度
言語的理解と知的洞察禁欲原則abstinence rule 隠れ身analytic incogitio フロイト的治療態度 治療態度中立性neutrality 受身性passivity 言語的理解と知的洞察禁欲原則abstinence rule 隠れ身analytic incogitio 匿名性と医師としての分別arztliche Diskretion エディプス-父性的柔軟性能動性activity フェレンチィ的治療態度 人間的な温かみ 能動性 情緒交流 非言語的コミュニケーションと 相互調節治療者のパーソナリティ・逆転移 前エディプス-母性的
治療者が動くと効果が変る フェレンチィが語ったことは、心理療法家が積極的に働きかけることが、精神分析の効果に異なる結果を生み出すということであった。 心理療法家の態度は、精神分析的であればある程、構造的な側面が前面に出る。 ⇒積極的に働きかけるかどうか 精神分析的態度論
病態による構造
変数と適応 →定数と変数(パラメーター) 精神病 境界例 児童分析 ①児童・思春期治療、並行父母面接 ②境界例・分裂病の家族面接 変数と適応 →定数と変数(パラメーター) 精神病 境界例 児童分析 ①児童・思春期治療、並行父母面接 ②境界例・分裂病の家族面接 ③入院治療、ATスプリット ④バリント療法 ⑤組織分析
Widening scope 1954年 Leo Rangell「精神分析と力動的精神療法の類似点と相違点」 Leo Stone「精神分析の適応範囲を広げる」 Edith Jacobson「重症うつ病の精神分析」 Anna Freudのコメント →精神療法の適応範囲を広げるための試み
自我の防衛抵抗の再建のために寝椅子、転移、抵抗分析を放棄する。(=H.S.Sullivan) 自由連想法の変化 P.Federnの精神病の精神分析(1943.47) 自我の防衛抵抗の再建のために寝椅子、転移、抵抗分析を放棄する。(=H.S.Sullivan) 高橋(1955)の整理 (1)寝椅子法(主として自由連想法) (2)腰掛法( 同上) (3)対面法 (4)90度法(主として精神病)
フェダーン(Federn,P) 1. 精神病との間に陽性転移を確立する 2. 自我備給の回復と抑圧の再確立 自我感情、自我境界、自我備給、自我状態 1. 精神病との間に陽性転移を確立する 2. 自我備給の回復と抑圧の再確立 3. 一対一対の治療関係ではなくて、 治療環境の協力 4.上記の条件で健康な部分をよりどころ とした洞察や現実検討 →シュヴィング
精神病患者にはどう対応するか 態度を支持的にするかどうか(前掲) チームで働くかどうか 分担治療をするかどうか 精神病患者にはどう対応するか 態度を支持的にするかどうか(前掲) チームで働くかどうか 分担治療をするかどうか そうした構造のなかで、病態によって構造を変化させる必要があるかどうかということを考える。 ⇒治療の構造化について
児童治療における論争
フロイト-クライン論争(2) クラインとアンナの亀裂 1938年のフロイト家亡命という問題 論争の激化と収束 クライン学派の形成 E.Sharpらのロンドン クラインとアンナの亀裂 1938年のフロイト家亡命という問題 論争の激化と収束 クライン学派の形成 1940年代の淑女協定までの間の感情的論争(母と娘の闘争) →独立学派の登場
論点 Ⅰ.当初の主な論点 1)児童分析における導入期の必要性 A.フロイト(以下A)=児童は自発的な決心で治療に訪れないし、病気に対して洞察を持たず、治療への意志を持たない。患者の気分に適応して、分析者を興味ある人物と思わせて、患者にその有用性を伝え、現実的な利益を確認させる「導入期」の必要性 M.クライン(以下M)=その必要性はない。子どもの治療は原理的に大人と一緒である。 2)児童分析における家族の参加 A=情報の収集や状態を把握するために、そして教育的な面でも有用 M=家族の葛藤を巻き込むためにマイナス
3)児童の感情転移 A=児童分析では治療者は鏡というよりも、積極的に働きかけていることが多い。しかも子どもは起源的な対象関係の神経症的な関係を発展させている途上にあるのであって、まだそれは実際の両親との間で現在進行中で、古い版になっていない。そのため感情転移は起こりにくい。 M=3才までに対象関係の原型は作られているので、それ以後においてはすべて起源の神経症を大人の神経症と同様に形成している。感情転移、特に陰性の感情転移こそ治療において重要である。 4)エディプス・コンプレックス A=3-6才の間に形成される。超自我はエディプス葛藤の解決によって形成される(攻撃者との同一化) M=早期エディプスコンプレックスの形成。3才までに完成している。これ以後の子どもは処罰不安を持っている理由はそのためである
5)児童分析での教育 A=教育的要素の必要性。児童は現在も自分のモデルを取り入れ中で、治療者が教育的な視点から「自我理想」であることが重要。 M=分析と教育は違う。早期から形成されている罪悪感や対象関係を深く扱うのが精神分析である。 6)死の本能 A=死の本能よりも自我と精神装置を重視 M=死の本能を理論の根幹に据える 7)解釈 A=自我から本能へ。防衛の解釈からイド解釈へ M=超自我を緩めるための深層解釈。象徴解釈を多用する。
動かせない構造と動かせる設定 治療のなかで動かせないもの(構造)は、動かせるもの(設定)とがある。 動かせない構造と動かせる設定 治療のなかで動かせないもの(構造)は、動かせるもの(設定)とがある。 動かせないものなかには、さまざまな人間関係があるが、それはたぶんに治療者の人間関係に左右される(自然と出来てしまうものを含む)。 面接者が活用できる要素 設定 姿勢 言葉の力
治療設定
外在的な基準という発想 寝椅子を使う 多頻回のセッションを組む セッションを維持してお金を取る 資格を持つ分析家が行う 外在的な基準という発想 寝椅子を使う 多頻回のセッションを組む セッションを維持してお金を取る 資格を持つ分析家が行う ⇒こうした定義はさまざまな臨床場面に対応しているわけではないので、包括的な定義が必要である。
例えば、設定のモダリティ 寝椅子と対面法一つをとっても、精神分析的状況は異なる機能をもたらす。問題は何を治療構造の前提とするかにかかっている。 フランスは、対面法と寝椅子法との違いを選択するというコンテクストがある。だから対面法でできることと、寝椅子でできることを分けていく必要がある。
自由連想法と対面法 セッションあたりのポーズの割合(%) 自由連想法と対面法 セッションあたりのポーズの割合(%) n-=25, *<.o5
Interview Settings and Communications(1)
Interview Settings and Communications(2)
寝椅子を用いた 精神分析の特殊性(Waelder,R. 1956) 患者は苦しんでいて、助けを期待して治療に来る。大人に対する子どもの立場に近い。 人生の親密な部分を包み隠さずに暴露する。大人の前で丸裸な子ども 自由連想法の分析規則が目的的な行動や衝動への防衛を放棄させる。自我とエスのバランスを変え、退行をもたらす。 無意識的不安に対する分析家による安心がもたらされる。守られた子どもの立場になる。 分析家の受動性によって、患者の空想が守られる。外界の行動で空想が疎外されない。
内在的な基準とは? 内側でやっている作業は、どのようなものか? 無意識を取り扱うために、基準となるのは何か 内在的な基準とは? 内側でやっている作業は、どのようなものか? 無意識を取り扱うために、基準となるのは何か 精神分析的な設定のうち、さまざまなスペクトラムに共通する要素は何か? などの疑問に答えられることが必要である
Donnet(2005)の「分析する状況」 問題:方法の談話であると同時に、方法に抗う談話であるというジレンマがある。精神分析を設定とプロセス、構造と機能に分けることそのものに無理がある。 Donnetは設定とプロセスを「分析場Siteと分析状況analyzing situation」との分ける。前者は意識的な構造化、構築であり、後者は無意識を取り扱う状況である。
寝椅子を用いて、他頻回に、そして時間を開かれたものにしていくことで生み出される心的な変化 ⇒寝椅子:見えないこと、そして寝ていて(運動していて)目覚めていること、だからこそ幻覚と夢の方向に進む。 多頻回:多くの時間で事後的に、そして償うことができるため、時間が無限に開かれている。設定を維持する。 分析する人が「親密な分離」のなかで、考える、解釈する可能性を導く方向性
精神分析の内的基準 設定⇒退行:Grunberger(1971)の自己愛の臨床的な意義に近い場 抵抗の克服:沈黙する分析家と連想阻害 精神分析の内的基準 設定⇒退行:Grunberger(1971)の自己愛の臨床的な意義に近い場 抵抗の克服:沈黙する分析家と連想阻害 転移:談話のなかに含まれている無意識的な要素を意識する。 Viderman(1971)が転移を生み出すと同時に逆転移を生み出すような「精神分析的空間」の構築
設定か構造か 小此木-北山の論争 ウィニコット(深津)を通じて、慶応における治療構造の抱える環境論の追加 ウィニコット(深津)を通じて、慶応における治療構造の抱える環境論の追加 →設定状況論(ウィニコット)との差異 北山:可変的要素は設定と呼ぶべきであるという議論
小児医学から精神分析へ 1941年「設定状況における幼児の観察」 舌圧子 医師 母親と子ども
第一段階 驚きから「ためらい」の段階 第二段階 欲望を受け入れて、口で噛む、空想する 遊べる段階 第三段階 捨てられる。放っておいても大丈夫な段階 生後5ヵ月から13ヵ月(13ヵ月過ぎると幅が広がってしまう)に典型的なやりとり。
移行対象 1951年「移行対象と移行現象」 生後4、6、8、12ヶ月に発見される 最初の所有物 1952年「精神病と子どものケア」 中間領域と移行対象の理論、そして精神病 ↓ 1. 枠組みと治療空間、間の体験 2. スクウィッグルと相互作用 3. 内と外、パラドックスの発見と理解
治療相談therapeutic consultation 精神療法面接とは異なる技法 二三回あえば治る症例に対するもので 転移と抵抗を扱うよりも 間の体験のなかでクライアントのニードに合わせた体験を提供する。 スクィグル技法 オンディマンド法 在宅などの環境の活用
構造化という発想
細部に宿る構造 面接の場面で考えると、 病院や場所 人間関係や性格 動かせない
心理テスト構造 テスト依頼状況とテストの習熟度 テストバッテリー (テストの種類によって構造的なものと解釈の自由度が高いものがある) 心理テスト構造 テスト依頼状況とテストの習熟度 テストバッテリー (テストの種類によって構造的なものと解釈の自由度が高いものがある) 依頼の文脈/自我や対象関係などの解読の可能性が設定によって変化していくし、治療導入の方法が変化する
治療構造化 親子治療などの治療的退行論から発展して、さまざまな状況で構造を組み立てるという発想が育ってきた。 治療構造化 親子治療などの治療的退行論から発展して、さまざまな状況で構造を組み立てるという発想が育ってきた。 治療を与えられた状況でどのように可視的なもの、構造的なものにしていくかという発想から組み立てられた議論→主に、岩崎、狩野といった小此木の弟子たちがその発想を病院や治療場面に拡張したもの
Split treatment(分担治療) Split treatment(分担治療) 親子並行治療? 投薬医―療法家 管理医―療法家 他 【二つのコミュニケーション】 治療者に知らせる 他の治療者の役割を尊重する
Main 「特別な患者」 「特別な患者」:看護者たちが職務をまっとうできないようになって治療が必要にまでなる。その背景にあるのは、特殊な患者たちとの関係であることが発見されたのである。この患者たちは同情心をかきたて、治療スタッフは万能感を呼びおこされる。スタッフとそれらの患者は密で排他的な治療関係を築き、このingroup関係に対して、outgroupのスタッフは批判的になり、スタッフのなかで分裂を生む。つまり彼らは「強烈な同情心と万能感を治療者に起こさせて、治療の客観性を失わせ、際限なく治療上の特別待遇をかちとっている患者」であり、スタッフのなかに、メインが「病いailment」と呼んだ状態を生み出す。
親子並行治療は是か非か 家族システムはIPを作る クライエントが治る→システムが変わる →別のクライエントが生まれるか、もとに戻るか(均衡) クライエントが治る→システムが変わる →別のクライエントが生まれるか、もとに戻るか(均衡) 治療者は誰を変えるのかという疑問が親ガイダンスや並行治療を求めてきた歴史→個人治療と家族治療
力動フォーミュレーション
精神分析があっているか 分析家が設定ができるという前提なら、 Lemma(2003)が指摘しているように 精神分析があっているか 分析家が設定ができるという前提なら、 Lemma(2003)が指摘しているように 患者が関心があって、初歩的な、自己内省の能力があるかどうか 患者が自己探求を行うための治療関係のなかにある固有のフラストレーションに耐えられるだけの自我の力を十分に持っているかどうか。 行動化なしで心的な痛みに耐えられるかどうか(自他に害を及ぼさない)。 行動化の危険性があるなら、治療が行われる設定の中でマネージできるかどうか 患者は個人的そしてあるいは職業的に治療の困難な時期の間に自分を維持するように支えられるかどうか
主訴や問題を記述する ①問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴は誰が作ったかわからないことも多い。 主訴や問題を記述する ①問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴は誰が作ったかわからないことも多い。 患者から見た問題:何に、あるいは誰に患者が反応しているのか 患者の「核となる痛み」は何か:彼が最も恐れている、そしてあるいは避けようとしているものは何か? の二点から、主訴を見直してみる。そうすると経過のなかに、誰が誰にということが見えてくることが多い。
治療同盟、あるいは作業同盟 観察自我【1934から】 Zetel(1956) Greenson(1967) 精神分析の関係:転移、作業同盟 治療同盟、あるいは作業同盟 観察自我【1934から】 Zetel(1956) Greenson(1967) 精神分析の関係:転移、作業同盟 現実的関係の三つがある。 :自分の悩みを克服するために分析家と協同したいという合理的な患者の願望と分析家の指示と洞察とに従う彼の能力によって促進される。→同一化
分析可能性-治療同盟-作業同盟 主訴の特定から文脈の特定 分析可能性-治療同盟-作業同盟 主訴の特定から文脈の特定 経過として誰が誰に何を問題としているか? 主治医から言われている。 「ここに来たの、何が問題なの?」 64まず事例ですが、これは良くある不登校で、これはほとんどよくある一般化した事例で、教育相談所にいたころにはよく出会ったものです。なんとなくぶらぶらしていて、お母さんが心配して連れてくる、で本人はあまり病気だとは思っていない、いつかおなかが痛くなくなればって思っている。そこで子供面接にはいって、なんとなく乗る気なさどうで、抵抗が強そう、で「ここに来たの、何か心の問題なの?」って最初に聞いたら、これでほとんどアウトですね。っていうのは、なぜとかどうしてとか聞くのもそうですが、本人がくさるほど聞いているせりふを治療者が重ねていることにもなるし、本人の問題として非難していると聞こえてしまう。 治療者 自分で来たの?NO 主治医から何と言われているか
うつという診断でカウンセリングが必要だと主治医が考えているので 「ここに来て相談する必要がある経緯かどうか」を確認する ラポールと治療同盟⇒作業同盟 うつという診断でカウンセリングが必要だと主治医が考えているので 経過 治療者 65(pp3)だから「連れてこられるのが嫌なのかな」って抵抗を取り扱いますね。そして当たり前ジャン、なんで俺が来なきゃって、SCではありがちなシチュエーションでしたね、これ、担任に言われてきたとかね。でもここからが力動学派の腕の見せ所で、なら、「来られないようにするには?」っていうスタンスで、最近子供が不登校になり、困った母親が連れてくる」この文脈に戻って、『何を思ってお母さん連れてきたのかなあ』っていうわけです で連れてこられるようなことがおきないようにするにはどうしたらいいかなって考え始めてくれるようにする。 照合reflection 「ここに来て相談する必要がある経緯かどうか」を確認する
カウンセリングに来る必要性、理由は何か? ラポールと治療同盟⇒作業同盟 カウンセリングに来る必要性、理由は何か? 治療者 66(pp4)もちろんこれだけで、カウンセリングははじめられます。どうしたら「連れてこられないようにするか、考えてみよう」。実際に家族システムの問題だけなら、これでいい事例も結構あって、そうやってカウンセリングをしていく、つまり本人の精神力動をいじらないケース、SCをしていたときなんかは結構ありました。「担任がむかつく」「そうかじゃあ担任とどうつきあうかね」みたいな。でも力動的にはじめたいなら、こういう問い、いまではreflectiveというあるいはMentalizationなんて立派な言葉があるのですが、そういう方向性にもっていくには、不登校という問題がなければ、母親はこんなことしないのかなってそういう質問をするのです。 精神分析が必要なのだろうか? うつと呼ばれる恐怖症
問題に名前を付けていく作業 ②問題の心理的なコストを記述する 患者の機能の中でのどのような限界、あるいは他者や自己の知覚の中の歪みがその問題から生じているのだろうか?つまり主訴は誰をどのように困らせているのか、だからその問題はどんな名前がふさわしいのかと、言い換えてみる。診断名はあくまで精神医学的名前でDSMのおかげで共通語になった部分もあるが、それでも患者の主観からは遠いことが多い。
今ここに来る私との間でする作業の背景や理由を考えて、自分としてはどうしてだと思うか?誰のために誰が、何をしに来ているのか? 作業同盟から分析可能性への道 今ここに来る私との間でする作業の背景や理由を考えて、自分としてはどうしてだと思うか?誰のために誰が、何をしに来ているのか? 治療者 68それでもし、彼がそうだなあ、なぜ不登校になったか分からないし、考えたこともないけど、こういう面倒なことになるなら、考えてみるかぐらいの方向性ができれば、今度はその不登校の問題を「どういうわけか学校に行けなくなる人がいる。そこには何か心の問題があるといわれているけど、思いつく限り、そこらへんのことを教えてくれる、私も原因があなたの話から分かっているわけではないけどね」って言うのですね。 うつと呼ばれる不安ヒステリー
力動的フォーミュレーション1 ③問題を文脈化する:関連している前提になっている要素は、心理療法に乗るかどうかという問題をはらんでいるので、それらの要素を文脈化してみる。 環境要因:トラウマの歴史、トラウマに影響を及ぼしている発達要因、家族の布置、他の関連したライフ・イベント 生物学的な所与:身体、気質、身体的な問題:それらのなかで現在の問題に関連したものを考えるなかで、文脈を考える
問題を文脈化する 対象関係 治療選択 経緯 現病歴 心理療法の選択 生育歴 症状
④患者のもっとも主たる、繰り返されている対象関係を記述する 患者は他者との関係で自分自身をどう体験しているだろうか。その問いが治療のなかで、転移を考える上でもっとも重要な問いなので、対象関係がだいたいわかると、なぜ今ここに彼が訪れたのかがだいたいおおまかにわかる。そのために次のようなことを考える 患者の内的な世界を支配している対象関係は何か 誰が誰にどんなふうに、そして関連した情動を発見する これらの内在化した対象関係は現在の患者の人生でどんな不運現れているだろうか? 自己や他者の表象は、どんなふうに影響を及ぼしているのか、現在の関係によって影響を受けているのだろうか これらの対象関係がどんなふうにあなたとの間で現れているだろうか?
分析可能性:距離として 風景としての精神分析 治療者 異化された主観的問題 パースペクティブ 分析可能性:距離として 風景としての精神分析 治療者 異化された主観的問題 72そうして彼が自分の人生を振り返り始めたら、これで力動的な治療はパースペクティブの法に動き始めたなって、私は思います。 パースペクティブ
Unknown elements of Unconsciousness 分析可能性から精神分析への道 治療者 不安ヒステリー 今ここに来る私との間でする作業の背景や理由を考えて、自分としてはどうしてだと思うか?誰のために誰が、何をしに来ているのか? Unknown elements of Unconsciousness 73驚き、発見された未思考の余地 分析可能性が生まれてくると、そこには治療者にとってもクライエントにとってもよく分からない、けれどもクライエントのパースペクティブのなかにある、なにかが分析の対象になる。⇒「分からない」という言葉は、これまでの準備が整っていないと、非難に聞こえる。そうでなければ、⇒協働して、共視体験を共有する領域
患者がもっているさまざまな症状を生み出した防衛は、変化の可能な結果は何かとの関連で、心理療法の対象になるだろう。その場合、 ⑤防衛を発見する 患者がもっているさまざまな症状を生み出した防衛は、変化の可能な結果は何かとの関連で、心理療法の対象になるだろう。その場合、 患者が心的な痛みを対処している習慣的な方法 神経症的なあるいは原初的な防衛を用いているなら、それを記述する ⑥治療の目標を発見する (治療者のニードに対して)患者は何を求めている、何をニードしているのか
治療者:構成の仕事としての精神分析 精神分析が構成の仕事であるというFreudの理解 パースペクティブというGillの理解 治療者:構成の仕事としての精神分析 精神分析が構成の仕事であるというFreudの理解 パースペクティブというGillの理解 歴史的真実と物語的真実というSpenceの理解 社会構成主義的な空間として、過去、現在、未来、を構成する精神分析というHoffmanの理解 75分析可能性、治療同盟、作業同盟の連続性について ・作業同盟についてGreensonらの議論は、転移との区別を中心に議論されているので、しばしば片手落ちであるが、治療を構成する文脈、あるいは治療構造の視点から見ると、分析可能性と治療同盟の概念を密接に関連していることが分かる。 来談経路から主訴の特定のなかに、動き出すさまざまな力動的要素がある。 (pp6から7) ちなみに精神分析的心理療法は、ブリーフや家族との違いは、そこにはっきりとした無意識の対象関係の反映を見るって言うことです。ブリーフも同じように、主訴の特定はしますが、そこでこの家族のシステムや関係性を短期的に変える方向に行く。でも精神分析は無意識、つまり対象関係の布置の表れって、思い、そこに長い間の累積した歴史を読み込もうとするのです。で、そうやって構成されていく、歴史のなかに埋もれていた、防衛を受けて忘れられていたり、今ここでの関係の中に組み込まれている無意識の対象関係を発見する。例を挙げましょう。 強迫神経症の事例で、病院臨床をしていた、最初の分析的なヴァイズの事例ですけど、このケースは中学校ぐらいからひどい手洗いなどの強迫がはじまって、引きこもって入院治療しないといけない状態になった事例です。お父さんが自営業者で、一代で工場を経営するようになった人で、たたき上げの人でした。長男の彼は小さいときから、強くなれ、自分のようになれと、つまり自分はダメなやつというレッテルを張られながら育ったわけです。治療が始まった経緯として、父親からのメッセージで主治医、この人は初老の男性で、ちょっと弱くて院長の前で何もできない副院長という感じの人でしたが、父親に言われて、仕方なく、カウンセリングへまわしてきたのです。まあうるさい人を回すみたいなことですね。アセスメントのときにも父親が一度尋ねてきましたが、ちょっとあきらめ口調で、だめなカウンセラーにあたちゃったなあっていう感じでしたね。アセスメントのときわかったとても大切なことは、小さいときに火事があって、彼がいたずらをしていて、火がひどくなり、お母さんがやけどをおったと、彼はこのことをとても気に病んでいたのです。で、治療が週三回から四回の入院治療でしたが、始まってからもやはりお父さんがたずねてきましたが、非常に横柄で、強い、で一緒にあっていた彼が萎縮してしまって、お父さんのことをすごいと、なんかかわいそうになりましたが、そこで火事のことを聞いてみたのです。でも小さいときのことで、やけどっていたって、目立たないし、ぼや程度でしたよって、お父さんは言うのです。治療者のほうは、「火のないところに煙は立たない」って連想していましたが、面接をしているとどうしても彼は母親のやけどや迷惑を気になるのです。お母さんや周りの人が苦労して、自分が迷惑をかけているって。で私にも迷惑だと思っているのかなって、解釈していくわけですが、どうしてそんな風に思うのかなって、それを取り上げていく。でわかってきたのが、お父さんの工場がほとんど倒産の危機にある状態で、それが長く続いていたっていうことと、それを母親はじっとがまんしているわけです。まあ火の車っていうことです。ここで何か、彼が私との間でどういうわけか迷惑をかけてしまうって思う、それで、何かお父さんが強くって、お母さんの家事が火の車だってことがわかる。これって不思議と家事と火事、火の車の工場とやけどを負っている家のなか、っていう図式、面白いけどつながるわけですよね。これは不思議なことで、これを治療者が取り扱うと、彼は今までそんなこと考えてそんなことを考えたことはないので、へって感じです。
患者の語り:風景-寝椅子に寝てもらう- 自由連想法の寝椅子は、クライエントの心の風景をゆっくりと眺める。 自由連想の基本原則は、確固とした構造でクライエントを抱える。 毎日分析の設定は、クライエントの心のなかをゆっくりと悠長に眺める。 精神分析の分析的スクリーンはクライエントの心のなかを映し出し、そのため治療空間のなかに転移と抵抗とを浮き彫りにする。 76こうした作業に関しては、寝椅子はなかなか便利です。 これって距離をとってみれば、なるほどって思える。 治療者の最初の理解も含めて、ある意味で絶えず、分析的なスタンスを取り続ける。フォーミュレーションし続ける姿勢が必要です。
共視論、スクリーン・モデル、共同的経験主義 77北山先生の言う、共視論ですね。あの着想はいいです。 先ほどの事例で言えば、イメージはこです。 Th Cl(y) (x)
治療開始から契約までの条件 最初の主訴の特定のときから、治療の動きは方向付けられている。 分析可能性は観察できる関係づくりに左右される。 治療開始から契約までの条件 最初の主訴の特定のときから、治療の動きは方向付けられている。 分析可能性は観察できる関係づくりに左右される。 分析可能性‐治療同盟‐作業同盟は連続したプロセスと見なしていく。 分からなかったことに気づく驚き、そして「分からないこと」を共有できる同盟関係、その双方が一つのプロセスとして発展できるようにする。 生育歴から経緯を構成していく作業のなかに、「分からないこと」、つまり問題を位置付けていく作業が可能にする。 同盟可能で分析可能なら、自由連想と寝椅子の効果を使える方向付けを行う。
治療機序
まず暗示について フロイトは催眠療法を否定することで精神分析を作ったので、暗示を理論から排除することに必死であった。 まず暗示について フロイトは催眠療法を否定することで精神分析を作ったので、暗示を理論から排除することに必死であった。 今日、暗示的な要素が治療の中に全くないとは考えないが、それよりも治療同盟、観察自我、そして無意識が意識的なものになっていくための抵抗の方を取り扱うようになっている。
1.初期のフロイトの思索 できるだけ効果的に抑圧を解除すること=抵抗の分析と克服 抵抗の克服 力動の整理 1.初期のフロイトの思索 できるだけ効果的に抑圧を解除すること=抵抗の分析と克服 抵抗の克服 力動の整理 ⇒短期力動療法:1925年からシフニオスやアレキサンダーの仕事を基盤として、1970年代にMalanとDavanlooとが出会って、短期力動療法が爆発的に進歩した。
マーラー 1860-1911 G.マーラー:夫婦関係の悩み、特にインポテンツのためにフロイトを訪れ、4時間ほど(4セッション)散歩をするセッションをもち、精神分析への理解と動機の高さのため治癒した、という。
フロイトの事例: カタリーナ Aurelia Kronich 1893年に避暑地ホーエン・タウエルンの山小屋で で出会った田舎の女性で、シングルセッションで、ヒステリー症状、息苦しいなどの症状が改善した事例
連想抵抗→抵抗暴露モデル 沈黙 連想1 連想2
短期療法のエッセンス1
短期療法のエッセンス2 抵抗解除の中心力動シークエンス 治療の最初に患者の訴えを探索して、報告されている問題の特定の例を調べる。 現在の訴えのなかにある感情を体験することにプレッシャーをかける。患者の特徴的な防衛を導く。 防衛についての仕事 防衛の同定(あなたの話は漠然としていることに気が付いていますか) 防衛の機能を明確化する(漠然とさせることで、自分の感情を避けているのがわかりますか) 結果を吟味する(漠然としたままで感情を避けていると、あなたの問題の原因を発見できません)
防衛についての仕事が(防衛が軽い患者たちでは)基盤となっている感情に到達する、あるいは(中程度の防衛、あるいは防衛が強い場合)複雑な転移感情が起きて、転移抵抗が結晶化する。 転移の中での抵抗と正面衝突。 患者の過去の重要な人物たちへの感情と記憶とが脱抑圧を受けて、複雑な転移感情のブレイクスルーが起きる。 歴史が得られるに従って、過去、現在、そして転移現象をプロセスのなかで結びつける洞察が得られるように、解釈と結合とが起きる。
2、転移神経症の発見 フロイトは、身体表現的な、解放を目指した治療を続けていく中で、抵抗を中心として発展していくなかで、もっとも大きな抵抗は、転移抵抗であることが理解され、転移の中に、これまでの幼児神経症と精神神経症とを反復する形で転移神経症が作られると考えるようになった。 治療はStracheyの言う変容的な解釈、そしてSterbaの言う自我の乖離が中心になった。
性格分析 Reichの『性格分析』(1933)にはじまる、長期的な防衛のまとまりを分析するための手法⇒ 普通の分析つまり神経症的な傾向の分析ではなく、Charcter 性格分析 「深層」(Heimann)、「超治療」(バリント) 「性格分析」(ギテルソン) →転移の分析から人格の問題に
基本原則 Freud 分析家の禁欲原則 分析家の匿名性 分析家の中立性 平等に漂う注意/自由連想法 平等に漂う注意/自由連想法 1910年代にフロイトが書いた精神分析の臨床技法に関する論文で明確にされた。 ⇒精神分析における構造
Sylvia Pyneの指摘 沈黙その他の転移抵抗現象 解釈 1920年 転移表現 転移反応 転移反応 解釈 解釈 相互作用現象
想起、反復、徹底操作 :思い出すこと、繰り返すこと、やり遂げること(1914) 強い抵抗=忘却 抑圧抵抗の克服 分離を隠蔽記憶他の連想素材に関連付けて行く 反復強迫:思い出すのではなく行為にあらわす 転移の操作:治療中のさまざまな障害,悪化のなかで、起源を転移神経症にする 解釈を投与して、抵抗を克服するために徹底的にやり遂げる
転移の意味に反復が付け加わる →転移神経症論 転移の意味に反復が付け加わる →転移神経症論 夢判断からドラへの転移 リビドーエネルギーの源泉から移動、そして対象と目標を発見するという意味での転移 反復強迫現象のなかでの転移 古い幼児期の人間関係が現在の人間関係に反復されるという意味での転移 Loewald(1960)
対象選択 愛の対象として特定の人、特定の人格の型を選択する行為 小児期と思春期の研究から 「ナルシシズム入門」へ a)依託的対象選択 小児期と思春期の研究から 「ナルシシズム入門」へ a)依託的対象選択 b)自己愛的対象選択
基本原則から転移神経症 精神分析の基本原則のなかで、転移神経症が発見され、反復強迫と解釈の反復投与によって実現する治癒モデルの完成 基本原則から転移神経症 精神分析の基本原則のなかで、転移神経症が発見され、反復強迫と解釈の反復投与によって実現する治癒モデルの完成 ⇒対象関係論的な転移のモデルへの発展 枠があって見えてきたもの 設定とプロセスについての議論が、どのような変化をもたらすかの議論と一体になって起きてきた。トポロジカルな、力動的な、そして経済的な視点から変化を議論する。
精神分析的設定の議論 英国では精神分析は毎日分析を前提とするクライン学派が中心だった。 精神分析的設定の議論 英国では精神分析は毎日分析を前提とするクライン学派が中心だった。 米国では50年代に設定についての議論があり、訓練分析のなかで精神療法をどのように位置づけるかの議論があり、Langsがframeとして厳密化したりした。 フランスでは、Lacanの影響で設定に対する議論が盛んで、週3回のフランスモデルができるような弁証法的な議論のなかでスペクトラムという議論が生み出された。
分析的状況を作るための前提 フロイトの初期の発想から転移神経症論、そして対象関係論へと大きな状況変化が起きてきた。 分析的状況を作るための前提 フロイトの初期の発想から転移神経症論、そして対象関係論へと大きな状況変化が起きてきた。 被分析者によって求めている水準は異なるので、これは分析家の要求ではないし、欲望でもない。だから精神分析を前提にできない日本の文化のなかでは、精神分析は、オプションである。
治療の長期化と治療機序 Characterは病気のもとになる(精神医学で言うところの病前性格)習慣的なパターンで、その部分を分析が取り扱いながら、転移の理解を含めていった。 神経症的な性格以外にもさまざまな性格が治療の中に持ち込まれる。衝動的性格=境界例パーソナリティや自己愛パーソナリティ障害
長期化による治療機序1 Sterba(1934) 転移による自我の乖離が生じる⇒自我が観察することで、それを転移として理解する=ずれの認識 長期化による治療機序1 Sterba(1934) 転移による自我の乖離が生じる⇒自我が観察することで、それを転移として理解する=ずれの認識 自我心理学の基本的なメカニズム 1.自我の治療者の健全な自我の取入れintroject⇒内面化internalization⇒同一化identification 2.自我の観察による発展
長期化による治療機序2 さまざまな転移⇒長い間に転移を収束していく⇒転移神経症の形成(あるいはさまざまな転移が治療の中に持ち込まれてあるパターンができる) Strachey(1934)のmutative interpretation Kleinの取入れと投影の循環的な関係のなかで、超自我が緩和していくように、変容惹起的な解釈を行っていく。
長期化による治療機序3 抱えること、包含すること holding,containing 長期化による治療機序3 抱えること、包含すること holding,containing 一方は治療者の思考や理解の方向付けを行うのに対して、もう一方は退行をもたらす。 一方は投影同一化による治療者の側の容器の機能が重視されている、 もう一方は治療的な退行が重視されている。
訓練の姿=信念と愛 R.Ekstein(1953) 1.精神分析的トレーニングの歴史について フロイト「自身も受けた人が集まる」 フロイト「自身も受けた人が集まる」 でも去っていく人も多い。 ⇒サークルの形成「リングを持つ人たち」 →中央委員会 1920年代 「分析を受ける」「健康なら受けなくてもよい」の間 例外:アメリカでの専門化⇒力動精神医学 (1)優れた訓練形式を維持する (2)研究方法と臨床技法との両立を守るための困難を回避する (3)他の社会科学や生物学と十分に密な関係を確立する
分析可能性ほかの議論と確立されてきた人格査定を含むメニンガーのようなシステム 2.候補生の選択 分析可能性ほかの議論と確立されてきた人格査定を含むメニンガーのようなシステム ⇒精神的なものへの興味:客観的には人間理解、主観的には自分の病気⇒ ①訓練分析 ②統制分析 ③セミナー 3.訓練分析:分析を通しておきること:自分の人生を振り返る⇒転移を体験する⇒逆転移を理解する
逆転移の歴史的文脈から a. S.Freud(1910) →治療者の無意識の感情のクライエントへの悪影響 b. M.Balint,A.Reichら →転移反応に対する逆転移を指摘 D.W.Winnicott(1958) 「逆転移のなかでの憎しみ」=客観的な逆転移 c. P.Heimann(1950) →分析の道具としての逆転移の感情を指摘。 d. B.Joseph,W.Bion以降 →投影同一化の受け皿としての逆転移
盲点と長期的な視点 訓練分析によって得られる自己分析 ↓ 自分の盲点の理解 =一生のもの(終わりなき分析) 訓練分析によって得られる情緒 ↓ 自分の盲点の理解 =一生のもの(終わりなき分析) 訓練分析によって得られる情緒 人に依存し、相談することで生じる転移(退行)の姿
治療的退行の理論 治療構造論の研究と密接にかかわっている。 治療的退行の理論 治療構造論の研究と密接にかかわっている。 中間学派、特にウィニコットやバリントがその着想を導入した。例えば、バリントのnew beginning フロイトにおいて退行は、局所論的、形式的、そして時間的な局面があった。 これは退行を、精神分析の長期化との関連で、特に寝椅子との関連で理解しやすいものにする。
ウィニコット(1954) 「精神分析設定内における退行的および臨床的側面」 ウィニコット(1954) 「精神分析設定内における退行的および臨床的側面」 1963年「幼児のケア,子どものケア,分析的設定における依存Jにつながる発想 抱える環境=分析設定:雰囲気であって、ここには触ることなどは含まれていない。この設定が依存への退行を生み出す素地になり、信頼感から転移を育む素地を生み出す。 ⇒退行する元来備わっている内的組織 1.偽りの自己の発達をもたらす自我組織の失敗 2.元の失敗が修正できる可能性
依存への退行と解凍 分析設定のなかでの転移関係として生じるのは依存への退行である(依存への退行と退行した患者とは違う)。 依存への退行と解凍 分析設定のなかでの転移関係として生じるのは依存への退行である(依存への退行と退行した患者とは違う)。 環境としての母親はかつて融合(子供が母親を空気のように感じる)状態と呼んだものであり、対象としての母親とは出自が違う。抱えることのなかに自我組織がある。 考えない記憶には、外傷が凍結されていて、そこには自我組織がある。
依存への退行 退行には二つある。一つは早期の失敗状況に戻ることであり,もう一つは早期の成功した状況に戻ること…環境の失敗状況が問題となるような症例でわれわれが目にするのはその個人によって組織化された個人的な防衛の証しであり,これは分析を必要とする。より正常な,早期の成功した状況を有している症例でわれわれがよりはっきりと目にするのは依存の記憶であり,それゆえわれわれは個人的な防衛の組織よりはむしろ環境の状況に出会う。
分析家の失敗の意義 この新しい環境にとって,分析家の失敗は重要な要素である。それは転移,すなわち早期の失敗状況の再演(re-enactment) のなかで生じなくてはならない。よって分析家の失敗は,上演(enactment)であり,適切なタイミングで生じる必要がある。しかしながら,患者にとっての癒しの効果を持たせるためには,分析的枠組みがいったん確立した後においてのみ生じる
失敗による成功 限定された文脈では誤解されていることに耐えなくてはならない…。今や患者は分析家を失敗,元は環境の要素から生じた失敗のゆえに憎むが,その失敗は幼児の万能的コントロール外のものだったものが,それは今は転移のなかで演じられる。それゆえ,最後には私たちは失敗する一患者のやり方に失敗する一ことによって成功するのである。これは修正体験による治癒という単純な理論とはかなりかけ離れている。
それ以外の治療機序 ラカン学派の技法:スキャンション=句読点を打つこと それ以外の治療機序 ラカン学派の技法:スキャンション=句読点を打つこと 治療の時間を短くすることで、その談話の区切りを入れて、未終結の状態に主体を置くことで生み出される、事後的な意味作用を使う。 終結のための技法:マンの時間制限療法:対象との別離や終結の時間で対象喪失を再演する。