第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)

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第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)

星間分子 (「理科年表」) 主成分はH2、次に多いのはCO。約130種。

分子スペクトル線の励起 分子からのスペクトル線放射(輝度温度) 励起温度Tex は、H2, Heとの衝突励起・逆励起と自発放出確率(場合によって自己吸収や外部放射の吸収による励起)に依って決まる。 衝突励起と自発放出で決まる場合は(二準位)

臨界密度 A21=C21となる衝突相手の数密度

分子雲から原始星へ 分子雲の比較的高密度な部分(分子雲コア)は、冷えていてガス圧が弱く、重力収縮しやすい。

分子雲から原始星へ(2) 収縮のため中心部の密度が上昇し、不透明になるとガスの冷却効率が低下し、温度が上がる。このためガス圧が上って力学平衡となり「原始星」が誕生する。

星の誕生の現場の例: 可視光でみた散光星雲IC1396 (ケフェウス座) 可視光では中心の大きな星を取り囲む電離した水素ガスや、チリに散乱された大きな星からの光が星雲全体を光らせています。 黒い「しみ」は吹き払われずに残ったチリの雲です。

「あかり」でみたIC1396 (中間赤外線)

「あかり」が捉えた新しい星の誕生の現場

分子雲から星へ 星の原料が集まりはじめると重力がつよくなり、 さらに星間ガスがあつまってきます。 3万年 10万年 原始惑星系円盤 集まるガスは、ある方向に回転していることが多く、そのために、集まったガスは円盤状になります。

このような若者星は、エネルギーをもてあまして、 外に向かってジェットを発生します。

その結果、そのジェットはまわりのガスを 吹き飛ばし、だんだんと星が見えてきます。 円盤から惑星系が形成されていきます。 (SCScI)

ガス円盤が影になって見える例もあります。 オリオン大星雲を背景としてみえたうまれたばかりの星々。(STScI)

分子雲から星へ Tタウリ型星:核融合の起こる前の重力エネルギーの解放で光っている段階

Tタウリ型星の想像図 原始星 Tタウリ型星の特徴 赤外線超過(ダストからの熱放射) Hα等の輝線(高温領域の存在) Tタウリ型星

SEDによる原始星の分類 (1) SED: Spectral Energy Distribution Andre (1994) ‘Cold Universe’

SEDによる原始星の分類 (2) SED: Spectral Energy Distribution

惑星系の形成シナリオ (太陽質量の星の)

(a) 分子雲コアの収縮 原始星と原始惑星系円盤の形成 原始円盤:大きな角運動量を持ったガス 分子流(アウトフロー)が活発

(b) 降着円盤を通して原始星が成長 円盤の質量は、0.01太陽質量まで減少 観測的診断方法 赤外線:円盤(表面)の温度、ダスト鉱物学 サブミリ波: 円盤質量 ミリ波分子線(CO, HCO+. CN, HCN, ・・・) 

(c) 円盤中心面へダストが沈殿 中心星は、Tタウリ型星段階 微惑星の形成 ダスト密度が上昇するとお互いに衝突しやすくなり、ダストの合体成長が進む(微惑星の形成) ダストの吸収係数:   b=0-1.5 (粒子サイズが大きくなるため

(d) 微惑星の衝突・合体  原始惑星へ 「寡占的成長」により原始惑星が誕生 0.1 地球質量@地球のあたり (~106 yrs)

(e) 円盤ガスの降着  木星型惑星が形成 中心星はWTTS 原始惑星は、地球程度の質量に(岩石主体) 円盤ガスが降着し、ガス惑星が誕生。木星以遠では、氷も材料 Z

第5回の問題 問. 重力収縮のタイムスケールを、一様密度のガス球(ガス圧力無視)の場合に考える。 1)運動方程式 (5.7) を積分し、 (5.8) を示せ。 2)上式(5.8)を         と置き、さらに積分を実行し( ただし、        )、 結果が (5.9) となることを示せ。