重症児のケアについて 枚方療育園 リハビリテーション科 上原 隆浩 上原 隆浩 講議のまえに、今回この重症児のケアについて発表させていだく内容の中にビデオを撮影した所がありますが本人による撮影の許可が得られなかった為、親に同意を得て撮影しております。
1.特徴 1)筋の緊張状態について 筋の緊張が過剰に強い場合: 手足の緊張が高く、関節の動きが少ない 反り返り全身の緊張を高める 筋の緊張が過剰に強い場合: 手足の緊張が高く、関節の動きが少ない 反り返り全身の緊張を高める 筋の緊張が低い場合: 手、足、首、体の緊張が低く弛緩して いる 重症児とは重度な身体的な障害と精神的な障害をあわせ持った子供のことをいいます。 これから、重症児についての特徴、接し方について説明していきます。 これから説明の中に緊張という言葉が多く出てきますが、この緊張とは精神的に緊張するということではなく、筋肉の緊張のことで、筋肉が緊張して手足が固くなったり逆に筋肉の緊張が緩み過ぎてブラブラになるような状態のことをいいます。 では、重症児の特徴について説明します。 重症児も他の脳性麻痺児と同様に脳の障害により筋肉の緊張の異常が起こります。重症児場合、この筋肉の緊張の異常が手、足、首、体など全身に及んでいることが多く、大きく二つのタイプに分けられます。 一つは筋の緊張が過剰に強い場合で、手足の緊張が高く、関節の動きが少なく、また反り返り、全身の緊張を高めることが多いです。 もう一つは筋の緊張が低い場合で手、足、首、体の緊張が低く、弛緩している状態です。
2)運動について 運動が見られない、または動かせても 過剰な努力を必要とし狭い範囲のみの運動 なぜ? 動けない。 動けない。 どう動かしていいかわからない。 動こうとしない。 次に重症児の運動について説明します。重症児の場合、一般健常人や他の脳性麻痺児と比べ、姿勢を変えること、手足を動かすことなどが難しいです。また、何らかの介助がないと横向きで寝る、座る等も出来ません。 なぜこれらのことが出来ないかと言うと普通、脳から体を動かすといった指令が神経を伝わり、筋肉を動かし運動になるのですが、脳性麻痺児の場合脳が障害されることで、この伝達がうまく働かず、動けなかったり、どう動かしていいか解らなかったりします。動かすことが可能な場合でも過剰に筋の緊張を高めてしまいスムーズに動かすことが難しくなります。筋の緊張が強い子の場合動こうとすると全身的に反り返るなどの一定のパターンに支配されることもあります。また体、手足の感覚が麻痺していることでどの位置に手足があるか解らないこともあります。さらに脳の障害に加え生活全般を介助してもらったり、同じ姿勢で長時間過ごし刺激の少ない生活をすることで周囲の環境に対し興味が薄れ動こうとしなくなります。
常に仰向けでいることによって起こる障害 拘縮 便秘 床ずれ 変形 呼吸障害
3)二次的障害 呼吸障害:気道の閉塞障害 呼吸運動障害 摂食障害:筋緊張異常による咀嚼・嚥下 障害胃食道逆流症 変形・拘縮:脊柱変形 呼吸運動障害 摂食障害:筋緊張異常による咀嚼・嚥下 障害胃食道逆流症 変形・拘縮:脊柱変形 上下肢拘縮 排泄障害:便秘症、イレウス(腸閉塞) 循環障害:起立性低血圧、褥そう 自ら動くことが難しい子供が、日常的に体を動かすことや、姿勢変換せず、背臥位(仰向け)でいると次ぎ様な二次的な障害が起こります。 呼吸障害では大きくわけて二つの障害があります。一つは空気の通り道である気道の閉塞障害で、しっかりとした咳が出せず、痰をうまく吐き出したり飲み込んだりすることができなることで、気道に痰がたまりやすなり、肺に酸素を十分に取り込むことが難しくなります。また背臥位でいると舌が喉に落ち込み、気道を塞いでしまうこともあります。 もう一つは呼吸運動障害で全身の筋の緊張が過剰に高かったり、逆に低かったりして呼吸に必要な筋肉を動かすことができなっかたり、胸郭(肋骨)が変形や固くなっていたりすることで、呼吸をするのに必要な胸郭の動きが得られず、息を吸おうとしても十分に肺に酸素を取り込めなくなることがあります。 また背臥位で口を開けて寝ていると細菌、ウイルスの感染の確立が高くなり上気道感染(のどの感染)を起こす危険性があります。 摂食障害では、口や首の筋の緊張強かったり、弱かったりすることで、食べ物をうまく取り込む、噛む、飲み込むといった食べる為に必要な運動が難しくなります。また口や喉の周囲の筋肉がうまく働かなかったり、咳がうまく出来なかったりすることで気管への唾液等の流れ込み(誤嚥)による肺炎を起こすことがあります。 変形拘縮についてですが、重症児の場合、脳の障害により筋の緊張の異常、感覚の異常、反射の異常などがあり、子供はこれらの障害の持ちながら毎日を過ごしています。緊張の異常は、からだの右半身、左半身、、手、足の曲げる方向、伸ばす方向などで筋の緊張の強さは異なり、この緊張の強さの影響により関節が動かなくなってきたり、同じ姿勢を取り続けることで背骨がまがってきたりします。また筋の緊張の異常はあるものの、一定の方向であれば動くことができる場合、その方向へ注意が向きやすかったり、同じ動きばかりするようになり、長年続くことで変形を招くことも考えられます。感覚の異常のある子供は感覚が過敏な所があれば、その部位の周囲緊張を高めたり、さける為に体をひねったりし、感覚が鈍感になっていれば、その部位を床につけようとし なくなることがあります。しかしこれらのことは自分で姿勢を変えたり移動することは出来ませんが自分が置かれている環境に適応しようとしている反応であり、すべてが悪い反応ではありません。 排泄障害:常に緊張が強かったり、弱かっったりすること、食べ物を自分で噛んで飲み込むといったことが少ない子供は内臓の動きも弱まり、便秘症などを起こすことがあります。また長期間てんかんのお薬を飲んでいると副作用として便秘になりやすくなります。
4)骨折について 健常人の場合: 運動による筋肉の活動や立ったり、 座ったりすることによる重力の働き により強い骨が作られる。 運動による筋肉の活動や立ったり、 座ったりすることによる重力の働き により強い骨が作られる。 重症児の場合: 運動や座る・立つことが少なく、栄養 障害、抗痙攣剤の服用、日にあたる時 間が少ない等により骨の形成が不十分 で骨の強度が弱くなる。 次に重症児と接するにあたって特に注意が必要なことについて説明します。 重症児と関わる際、絶対さけなければならない事故として骨折が挙げられます。 健常人の場合、通常十分に栄養がとれ、運動による筋肉の活動や立ったり、座ったりすることによる重力の働きにより強い骨が作られます。しかし、重度児の場合、運動や座る・立つことが少なく、栄養障害、抗痙攣剤の服用、日照不足等により骨の形成が不十分で骨の強度が弱くなります。
重症児の場合、骨の強度が低い為 小さな力で骨折する。 骨折の起こりやすい部位 ・大腿骨、上腕骨、脛骨、指 関わる際の注意 ・抱く、座る、着替え等の際、手足を強く 曲げたり、伸ばしたりしない。 ・腕、足の下に突起物があると、テコの原 理で骨折することがある。 ・移動の際、物などに手足を当てたり 引っ掛からないように注意する。 骨折の起こりやすい部位としては大腿骨(太もも)、上腕骨(肘より上の腕)、脛骨(すね)、指があります。 骨折を起こさない為の関わる際の注意点として ・抱く、座る、着替え等の際、強く曲げ足り、伸ばしたりしない。 ・腕、足の下に突起物があると、テコの原理で骨折することがある。 ・小さな衝撃でも骨折することがあるので移動の際、物などに手足を当てたり引っ掛かからないようにないよ うに注意しましょう。
5)発作について 全身を固くこわばらせる。手足をピク ピクさせる。同じ動作をくり返す等、 様々なパターンがある。 全身を固くこわばらせる。手足をピク ピクさせる。同じ動作をくり返す等、 様々なパターンがある。 家族にどのような発作で、時間がどの くらい続くかなど、特徴を聞いておく。 次に重症児の合併症としててんかん発作を持っていることが多くあります。 この発作は全身を固くこわばらせたり、手足をピクピクさせたり、同じ動作をくり返したり、 様々なパターンがあります。 一見発作と分かりにくい場合があるので、家族にどのような発作で、時間がのくらい続くか 等特徴を聞いておくようにしましょう。
発作が起こった時の対応 ・慌てずに衣服を緩めた状態で見守りのみ で対応する。 ・唾液、吐物の誤飲の可能性がある場合は 顏、体を横に向ける。 で対応する。 ・唾液、吐物の誤飲の可能性がある場合は 顏、体を横に向ける。 医療的な処置が必要な場合 ・いつもより長時間続く場合。 ・呼吸状態が急激に悪くなる場合。 ・短時間の間に頻回に起こる場合。 発作が起こった場合は、ゆすったり、叩いたり、水を飲ませたすると長引いたり、誤嚥するこ とがあるので、基本的には衣服を緩めた状態で見守りのみで対応。唾液、吐物の誤飲の可能性 がある場合は顏、体を横に向ける。その他は家族から聞いた対応を取るようにしましょう。 次にあげることが起こった場合は医療的な処置が必要なことがありますので注意して下さい。 ・いつもより長時間続く場合。 ・呼吸状態が急激に悪くなる場合。 ・短時間の間に頻回に起こる場合
2.重症児との接し方 日常的に仰向けで寝ている場合が多い。 ・急な環境の変化に対応できない ・動かされたり、触られたりすることに 対し過剰に緊張を高めてしまう ・動かない生活が多いので受け身になり がち では次に、これまでに説明した重症児の特徴、注意する点を踏まえた上で、子供と接する際のポイントについて説明します。 日常的に仰向けで寝ている場合が多い子供は ・急な環境の変化に対応できない ・動かされたり、触られたりすることに対し過剰に 緊張を高めてしまう。 ・動かない生活が多いので受け身になりがち になることが多いです。 これらのことに対しての対応としては ・声かけをしながら優しく大きな面で触る。 ・強引な姿勢変換や移動をしない ・いろんな姿勢を取るようにし、また自発的な運 動を促す。 といったことが必要となります。 これらのことを注意せず、声かけをあまりしなかったり、急に強く握ったり、動かしたりを、長年行っていると、人が触ることに対して拒否し緊張を高めてしまうようになることがあります。 ・声かけをしながら優しく大きな面で触る ・強引な姿勢変換や移動をしない ・いろんな姿勢を取るようにし、また自発的な運動を促す
3.ポジショニングについて 自分で姿勢を変えることや保つことが 出来ない ・活動が制限される ・二次的な障害が起こりやすくなる 自分で姿勢を変えることや保つことが 出来ない ・活動が制限される ・二次的な障害が起こりやすくなる クッション等を用いポジショニングを行う 自分で身体を動かすことの出来ない子供を寝たきりにせず、楽しく、また二次的な障害を予防するには介助者が姿勢を変えてあげる必要があります。姿勢を取ることをポジショニングといい、ポジショニングには大きくわけてリラックスして過ごしたり、夜間の姿勢保持の為の安楽肢位、手を動かしたりなどの活動する時の活動肢位があります。今回は一日の中で多く取り、二次的障害予防にも多くの影響を与える安楽肢位について説明します。 ポジショニングはクッション等を用いて行うことでリラックスした姿勢を取ることが可能です。
・全身的に少し丸い姿勢を作るとリラックスしやすい。 ・短時間で姿勢を変えることが望ましい。 ・ポジショニング後、呼吸状態、誤嚥、 ポジショニングのポイント ・基本的には左右対称的な姿勢が望ましい が、変形が強いお子さんに対しては無理 に関節を伸ばし、真直ぐにしない。 ・全身的に少し丸い姿勢を作るとリラックスしやすい。 ・短時間で姿勢を変えることが望ましい。 ・ポジショニング後、呼吸状態、誤嚥、 一部の関節に負担がかかり過ぎていない か確認する。 ポジショニングのポイントとしては まず基本的には左右対称的な姿勢が望ましいが、変形が強いお子さんに対しては無理に関節を伸ばしたりせ ず、緊張が弱くなるところを見つけることが大切です。また全身的に少し丸い姿勢を作るとリラックスしやすくなります。 短時間で姿勢を変えることが望ましいです。同じ姿勢を取り続け一定の部位に体重がかかっていると約2時間でその部位の血流はなくなり、とこずれの原因になることがあります。 ポジショニング後は呼吸状態、誤嚥、一部の関節に負担がかかり過ぎて赤くなっていないか?確認するようにしましょう。 特に普段行わない姿勢(腹臥位等)についてはPTに相談するようにしてください。
各姿勢の特徴 仰向け(背臥位): ・一番やりやすく、取ることが多い姿勢 であるが、重力の影響で動きにくい であるが、重力の影響で動きにくい ・舌が喉に落ち込みやすく呼吸しにくい ・全身性の緊張性反射を誘発しやすい ・視界が天井のみになる では各姿勢の特徴について説明します。 背臥位についてですがこの姿勢は一番やりやすく、取ることが多い姿勢ですが、重力の影響を多く受け動きにくいです。また舌が喉に落ち込みやすく(舌根沈下)呼吸しにくく、その他に全身を緊張させ反り返り固まるなどの全身性の緊張性反射を誘発しやすかったり、視界が天井のみになります。
横向き(側臥位): ・上側の手を動かしやすい ・舌根沈下が軽減できる ・右向きでは胃からの食べ物の逆流が 起こりにくい(胃排出促通) ※注意 ・上側の手を動かしやすい ・舌根沈下が軽減できる ・右向きでは胃からの食べ物の逆流が 起こりにくい(胃排出促通) ※注意 下側になる腕が圧迫され循環障害になら ないようにする。 側臥位では ・上側の手を動かしやすい ・舌根沈下が軽減できる ・右側臥位では胃からの食べ物の逆流が起こりに くい(胃排出促通) などの効果があります。 注意点としては下側になる腕が圧迫され血行が阻害されないように体のまえに腕を出しておくなどする必要があります。
うつ伏せ(腹臥位): ・頭を上げたり、両手を動かしやすい ・緊張が強い子でもリラックスしやすい ・痰が出しやすい ・肺後面の機能改善 ※注意 ・頭を上げたり、両手を動かしやすい ・緊張が強い子でもリラックスしやすい ・痰が出しやすい ・肺後面の機能改善 ※注意 うつ伏せにする際、特に頭、肩、股関節に 負担がかかっていないか、ねじれたりして いないか注意。 呼吸が浅い子供では、胸やお腹が圧迫され 呼吸しにくくなることもある。 腹臥位では ・頭を上げたり、両手を動かしやすい。 ・緊張が強い子でもリラックスしやすい。 ・痰が出しやすい。 ・肺後面の機能改善 注意点としては 腹臥位にする際、特に頭、肩、股関節に負担がかかって いないか、ねじれたりしていないか注意する。 呼吸が浅い子供では、胸やお腹が圧迫され呼吸しにくく なることもありますのでとくに注意が必要です。 腹臥位は特に呼吸機能に影響を及ぼす危険性があるので理学療法士の相談のもと行うようにしてください。
座位: ・最も重力に抗した活動ができる ・視界が広くなる ・循環器や内臓の働きをよくする ・呼吸機能改善 ・骨成長促通 座位では ・最も重力に抗した活動ができる ・視界が広くなる ・循環器や内臓の働きをよくする ・呼吸機能改善 ・骨成長促通 座位では ・最も重力に抗した活動ができる。 ・視界が広くなる。 ・循環器や内臓の働きをよくする。 ・呼吸機能改善 ・骨成長促通 といった特徴があります。
4.重症児の抱き方・移動介助に ついて 介助者の位置 ・出来るだけ子供に近づく。 ・低い所に子供がいる場合は腰を曲げる ついて 介助者の位置 ・出来るだけ子供に近づく。 ・低い所に子供がいる場合は腰を曲げる のではなく、足をしっかり曲げる。 次は重症児の抱き方・移動介助について説明します。 まず介助者の位置ですが、出来るだけ子供に近づくことがじゅうようです。 低い所に子供がいる場合は腰を曲げるのではなく、足をしっかり曲げるようにしましょう。 抱き方(一人介助)についてですが、 ・関節に無理な負担がかからない程度で出来るだけ丸く なる姿勢を取る。 ・頭をしっかりと支え、手足が伸びていないか注意する。 ・自分の体に子供を引き寄せる感じで抱え込む。(前か がみになり過ぎない) ・足を伸ばし立ち上がる。 といったことを注意しましょう。 無里な抱き方は介助者の負担も増え、腰などを痛める原因にもなります。また子供も不安になります。
抱き方(一人介助) ・関節に無理な負担がかからない程度で 出来るだけ丸くなる姿勢を取る。 ・頭をしっかりと支え、手足が伸びてい ないか注意する。 ・自分の体に子供を引き寄せる感じで抱 え込む。(前かがみになり過ぎない) ・足を伸ばし立ち上がる。
車椅子座位の調整 簡易的な調整の仕方 クッション・バスタオルなどを 使用する
5.まとめ 重症児とは重度な身体的な障害と精神的障害を合わせ持った子供のことをいう ・運動や意思表示をうまく出来ない ・呼吸や内臓の障害を持っていることが多く、 また骨折、脱臼などの危険性もある 周りの人による関わり方がその子供の生活、 人生、生命の質を大きく変える。 子供の身体的な特徴や注意する点を踏まえ よい環境を作ったり、よい刺激をあたえ、 よい反応を引き出してあげることが重要。 では最後にまとめます。 重度児とは重度な身体的な障害と精神的障害を合わせ 持った子供のことをいう。 ・運動や意思表示をうまく出来ない。 ・呼吸や内臓の障害を持っていることが多く、また骨折、 脱臼などの危険性もある。 これらの障害や危険性を持った子供に対して周りの人による関わり方がその子供の生活、人生、生 命の質を大きく変える。子供の身体的な特徴や注意する点を踏まえた上でよい環境を作ったり、よい刺激をあたえ、よい反応を引き出してあげることが重要です。