第5章: 偏微分の応用(§3~§5) 極大・極小の判定 陰関数定理 (平面曲線) 条件付き極値、特にラグランジュの乗数法 (最大・最小)

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第5章: 偏微分の応用(§3~§5) 極大・極小の判定 陰関数定理 (平面曲線) 条件付き極値、特にラグランジュの乗数法 (最大・最小)

極大・極小 (§3 (p.183~)) 「局所的に(=十分狭い範囲では)」最大・最小 以下 f (P) = f (x,y) は微分可能とする。 点 A(a,b) が広義極大(極小)点では:                  (極点=極値をとる点である必要条件) A を「停留点(stationary point)」と言う。

停留点の判定(分類) (5.3.5) 停留点: この時テーラー展開は: 2次式 F=Ax2+2Bxy+Cy2 の符号が問題 停留点の判定(分類) (5.3.5) 停留点: この時テーラー展開は: 2次式 F=Ax2+2Bxy+Cy2 の符号が問題 3次以上の項は、h, k が十分小さければ2次の項(さらには全体)の符号に影響しない。 

2次曲面の分類 F(x,y)=Ax2+2Bxy+Cy2 で表される曲面: Δ(x,y) = AC-B2 により分類。 変数変換により: 楕円型のとき「極点」(極大または極小) 双曲型のとき「鞍点(saddle point)」 放物型のときは、広義極点

2次曲面の分類(2) 前ページの標準形は、2次形式: において、間の行列を対角化したことにあたる(対称行列なので、必ず対角化可能:線形代数の授業参照: P は適当な回転行列)

記号についての注意 高校以来、おなじみの判別式 D= B2-ACは教科書 (p.184, 5.3.4) にあるヘッセ行列式 : とは正負が逆になっている。 どちらがわかりやすいかは問題だが、混乱を避けるため、できるだけ教科書の流儀に合わせていく。しかし個々の場合について意味を考えることが大事。

停留点の分類 (定理 5.3.5) Δ(a,b)>0 (楕円型) Δ(a,b)<0 (双曲型) 停留点の分類 (定理 5.3.5) 停留点: fx(a, b)= fy(a, b)=0 Δ(a,b)>0   (楕円型) fxx(a, b), fyy(a, b) は同符号 fxx(a, b)>0: 極小点、fxx(a, b)<0: 極大点 任意の断面について極大/極小 Δ(a,b)<0   (双曲型) (a, b) を「鞍点 (saddle point)」と言う。 必ず等高線(2本)が交差し、等高線を境にして、 f (x, y) の正負が入れ替わる。 ある断面については極大、別の断面については極小、等高線沿いには定数関数(変化なし)。

停留点の分類(続き) Δ(a,b)=0 いろいろな場合がある 放物型: 広義の極大/極小点 その他 放物型: 広義の極大/極小点 その他 f (x,y)=x4+y4 (高次の極大・極小) 等高線が3本以上 f (x,y)=xy(x2-y2) 等高線が1本: f (x,y)=y3 等高線が0本(2次元領域で定数) 等々 テイラー展開の3次以上を見る必要がある。

極大・極小の判定手順(1) 微分可能でない場合: 個別に調べる。 上は円錐面で、原点で極小(最小)だが、原点では微分不能。 微分でわかる以外の性質(対称性、周期性等)について事前によく考察しておく。 (それにより後の計算も楽になる。)

極大・極小の判定手順(2) fx, fy を計算して停留点 fx(a, b)= fy(a, b)=0 を求める。 実際にはこの計算がかなり大変。 Δ(a,b)= fxx(a, b) fyy(a, b) ー{fxy(a, b)}2 を求める。 Δ(a,b)>0 なら極大・極小点、 Δ(a,b)<0 なら鞍点。 Δ(a,b)=0 の場合は、テイラー展開の3次以上を求める、個別に考察する等。

陰関数定理 (5.4.2) 陰関数 f (x, y) = 0 ⇒ f (x, y(x)) = 0 が 陽形式 y=φ(x) と表せるための条件。 (a, b) の近傍で fx , fy が連続、 f (a, b)=0, fy(a, b)≠0 このとき (a, b) で接線を持つ y=φ (x) が存在。 また 要するに、等高線が引けるための条件。

陰関数の微分 実際にはすでに高校でもやっている。 全微分の観点からは: 陰関数定理(2変数版)はy’ の存在保証。 例:円の方程式 x2+y2=r2 両辺を x で微分して整理 全微分の観点からは: 接線方向には全微分は 0: 陰関数定理(2変数版)はy’ の存在保証。 y’ しか与えないので、y を得るには積分が必要

陰関数定理: 特異点 陰関数定理: Fx(a,b)=Fy(a,b)=0 のとき: 特異点 (singular point): 後述の停留点でもある。 正則点(特異点以外の点)では F(x,y) は1つの方向にだけ水平; それが y’ の方向。 特異点では複数の方向に水平である可能性がある。

参考: 陰関数定理(3変数) 定理 (5.4.3) の n=2 の場合。 F(x,y,z) = 0 を満たす x, y, z に対し、   z = f(x,y) となる f(x,y) が存在するための条件。 このとき: さらに多変数→多変数(写像)への一般化、 条件が多い場合等 (5.4.4) 写像の「線形性」が前面にでてくる。

平面曲線 f (x,y)=0 を満たす(x,y) 全体の集合 参考:別の定式化:パラメタ形式 例: リサージュ曲線 一般に f (x,y)=0 で与えられた曲線は、 y=g(x) やパラメタ形式で簡単に表せない。 ⇒ どうやって形状を調べるか?

平面曲線(2) 通常点(正則点)の場合 特異点(停留点)の場合 (5.5.1) 停留点の分類に呼応して: 近傍では等高線がただ1本ある(陰関数定理) 特異点(停留点)の場合 (5.5.1) 停留点の分類に呼応して: Δ(a,b)>0: 孤立点 Δ(a,b)<0: 結節点(等高線が2本交わる) Δ(a,b)=0: 別途調べないとわからない。

ラグランジュの乗数法 (5.6.2, 5.6.4) 条件付きの極大・極小問題 ラグランジュの乗数法 (5.6.2, 5.6.4) 条件付きの極大・極小問題 原理: 2曲面 C(x,y,z)=0 と F(x,y,z)=k とは、 k の値を変えていくと: 共通点を持たない 接する 交わる といった状態を移り変わるだろう。 b, c のとき、C=0 という条件を満たす点が F 上にある。 b のとき、F は C=0 という条件下での極値(極大/極小)をとりうる。(いつでもそうとは限らないが。)

ラグランジュの乗数法(2) (2変数版の場合: (5.6.2)) g(x,y)=0, f (x,y)=k が (a,b) で接するなら、その点での法線ベクトルが一致する: これを満たすλ, a, b を求めればよい。 λ がいわゆる「未定係数」である。

ラグランジュの乗数法(3) (3変数版の場合) g(x,y,z)=0, f (x,y,z)=k が (a,b,c) で接するなら、その点での法線ベクトルが一致する: これを満たすλ, a, b, c を求めればよい。

最大・最小問題 ポイント: 有界閉領域で連続な関数には最大値・最小値が存在する。 (5.7.9) したがって、連続関数の場合: ポイント: 有界閉領域で連続な関数には最大値・最小値が存在する。 (5.7.9) したがって、連続関数の場合: 有界閉領域での最大値は、極大点か境界上の最大点。最小値についても同様。(5.7.13)     開領域(境界を含まない領域)では、最大(小)値が存在するなら極大(小)点で最大(小)。 (5.7.10)

補足:Jacobi 行列、行列式(Jacobian) x = x(u,v), y = y(u,v) のとき: u = u(x,y), v = v(x,y) のとき: 上の2つの行列は互いの逆行列である (2つ目の行列の)行列式を と書き、「関数行列式」、「Jacobi 行列式」 (Jacobian)などと言う。 (重積分の変数変換で使う。)

教科書訂正 p.208 (5.7.14): p.187 問題1 1) と同じ