ヒートアイランド現象 地球の温暖化 温室効果 太陽エネルギーの成層圏外縁での収支
放射エネルギー収支
ヒ-トアイランドの原因 1)都市への人口集中による人工熱消費の増大と高密度化 都市が巨大な人工熱源になっている 2)都市の建築物の材料 都市が巨大な人工熱源になっている 2)都市の建築物の材料 コンクリ-ト構造物が都市建築の中心 コンクリ-トは木材に比べて熱容量が大きい (熱を蓄積しやすい)
3)道路の舗装 アスファルト,コンクリ-トは熱を吸収しやすい 4)地表面のアスファルト化 雨水の浸透が少なく,蒸発散量が減少し,潜熱による冷却効果を低下させる 5)都市の緑地,湖沼の減少 蒸発散による潜熱の放出源である緑地,湖沼は冷源効果を有しているが,この冷源の減少
6)建物の高層化 *建物からの長波放射が垂直な壁面で囲まれたストリ-トキャニオン内で乱反射し,宇宙空間への放出を妨げられる *ビルや家屋によって地表面近くの凹凸が大きくなり,風に対して抵抗として働く。この結果都市内での風速が減少し,顕熱輸送が減少する
*都市化に伴う土地利用形態の変化 *人工エネルギ-使用の高密度化 *夏季の熱帯夜が続く *冬の霜柱が見られなくなる 熱環境に変化を及ぼす ヒ-トアイランド現象(都市内外の気温差) *夜間の放射冷却によって安定した大気状態になる冬期に顕著に現れ,夏に小さい *最高気温より最低気温に顕著に現れる *風が弱い晴夜に大きく,日中は小さい *気温変化は市街地内部では緩やかで,境界付近で大きい
ヒ-トアイランド現象の指標
人口 *人口は都市化の進展度合いの目安 *都市部と郊外との温度差をヒ-トアイランド強度と定義 *人口の同じ程度の都市の比較 1)アメリカのヒ-トアイランド強度はヨロッ パ,日本より大きい アメリカでの一人当たりのエネルギ-消 費量が飛びぬけて大きいことと,高層化率 が高いことがあげられる
都市の規模 *日本は地震が多いためと,生活習慣,一戸建住宅への要望の為に高層化率が低い *一人当たりの人工エネルギ-消費量も多くない *日本では、人口30万人を境にしてヒ-トアイランド強度増加の傾向が異なっている 30万人程度の人口規模を境にして,建造物の高 層化,都市中心業務地区の都市中心への区分化など 都市構造が変化することを反映している 人口動向は,都市構造を規定しておりおり,その反映としてのヒ-トアイランド強度の指標になっている
天空率 建物の高さと間隔によって長波放射の程度が異なる。この建物の高さと間隔を天空率で評価する。
港区の大学周辺での測定結果 *真夏の夜の測定結果である *日中の測定では日射時間による影などにより,測定結果にはバラツキきが大きかった。
都市の風系と熱収支
*都市部に吹く風は,地表の状態によって異なった境界層を形成する *都市の建物がこの境界層の中に存在することによって熱の移動が種々制限されて,都市独特の熱環境を作り出す (1)都市キャノピ-層 建物の影響を受けて風速は弱く,建物や道路面からの人工熱の供給や蓄積が行なわれる (2)都市境界層 建物の上面から上層の大気安定層(逆転層)の下限までを呼び,都市キャノピ層から放出される熱を拡散し,さらに上層境界での熱のやり取りを行なう (3)田園の境界層 夜間の放射冷却によって地表面の温度は低下し,安定な気温の逆転層が形成される.
接地境界層での熱収支
Sg+AE=Rg+H+E+G Sg:正味の日射量 AE:人工熱量 Rg:正味の長波放射 H:顕熱量 E:蒸散に伴う潜熱量 G:地中への熱伝導量である 地表面温度 熱収支式と熱伝導式とを連立して解く
正味の日射量Sg *大気の上面に到達する日射量Sinfは,緯度,経度,日時よりKeplerの第二法則を用いて求めることができる
地表面での長波放射Rg 地表面は赤外放射に対し近似的に黒体とみなす 地表面での長波放射の正味のフラックスRgは 大気放射:地上から大気上端までの色々な寄子の総和
地中への熱フラックス 地中への 熱輸送フラックス 地中の温度は熱伝導方程式の解として求める Cg ,Kg は土壌の熱容量,熱伝導率
顕熱・潜熱フラックス 接地層における流速,温位分布は相似則で表す 大気の安定性を考慮して相似関数を与え、バルク法によって顕熱、潜熱を計算する。
観測からの検討 1.放射収支計で純放射量を測定 2.2高度で気温、湿度を観測
顕熱、潜熱(ボーエン比法)
熱収支の観測結果 (a) 裸地 (b)市街地 net radiation:純放射量 sensible heat:顕熱量 latent heat: IEは潜熱量 conduction to ground:地中への熱伝導量
*裸地の地中に吸収された熱が夜間に放出されない *スファルト舗装では日中は地中に吸収されているが,夜間に大気中に放出 *都市での公園は,熱環境の面からは比較的良好な空間
観測風景
数値計算での検討 Mellor・Yamadaの2.5クロージャーモデル
世界各都市での人工エネルギー使用量 都市名 人口(1000人) 一人当たりの電力消費 KWH/年 東京 11,692 4511 都市名 人口(1000人) 一人当たりの電力消費 KWH/年 東京 11,692 4511 ニューヨーク 7,165 3264 ロンドン 6,768 3062 パリ 2,189 4037 マニラ 1,728 2707 ソウル 9,646 947 バンコク 4,697 1709 メキシコシティ 8,831 808 ジャカルタ 6,503 492
都市人口と都市内外気温差との相関 人口1000万人以上の都市 5℃以上 数十万人程度の都市 3~5℃ 数何人程度の都市 2~3℃ 人口1000万人以上の都市 5℃以上 数十万人程度の都市 3~5℃ 数何人程度の都市 2~3℃ *過去1世紀の間のグローバルな気温上昇 0.4~0.7℃ *ヒートアイランド現象による寄与分 0.05~0.2℃と推測される
東京におけるエネルギー使用の集中 *東京は日本全体面積の0.57% 消費しているエネルギーは日本全体の6~9%. 日本全体の平均に比べて 消費しているエネルギーは日本全体の6~9%. 日本全体の平均に比べて 6/0.57~9/0.57 =10~16倍 のエネルギー消費が集中している. *東京区部でのエネルギー消費 人口は8209/11692=70%が集中 面積は 598/ 2162=27.6% 区部への集中度を見ると, 70%/27.6%=2.5倍 (東京全体の平均に比べて区部にその2.5倍が集中 *日本全体の平均との比較 10×2.5~16×2.5=25~40 倍の集中
都市化は生産地と消費地とを分離する 産業部門,転換部門(発電,石油精製など)でのエネルギー消費は都市周辺,遠隔地になるので,実際の集中度は上記の値より低い
東京全体のエネルギー消費量の見積もり エネルギ-を全て熱量に換算する (1) 電力消費量 32433 電灯 〃 15423 エネルギ-を全て熱量に換算する (1) 電力消費量 32433 電灯 〃 15423 47856×106 KWH 1KWH=860kcal 47856×106×860=41.2×1012 kcal (1) (2)ガス 27.4×1012 kcal (2) (3)ガソリン 3326×103kリットル ガソリン1リットル 燃焼すると8600kcal 3326×103kl×8600kcal/l×103 =28.6×1012 kcal (3)
(4)産業用,業務用,家庭用の石油製品 年間の燃料販売額の6.9%を東京で使用 ガソリンで換算してみる ガソリン1リッターが120円とすると 7666億円/120円×8600 又,エネルギー転換部門の消費量は一次エネルギー消費の1/3程度である。この一次消費量とエネルギー転換部門での消費量合計 7666億円/120円×8600×(1+1/3) =73.2×1012 kcal (4) (1),(2),(3),(4)を加えたトータル (41.2+27.4+28.6+73.2)×1012kcal=170.4×1012kcal
人工エネルギーと太陽エネルギーの比較 *1年間に東京が受ける太陽エネルギーは 1070×103 kcal/㎡ 東京の面積では, 東京の面積では, 1070×103×2162×106=2313×1012 kcal *人工エネルギー消費 / 太陽エネルギー ・区部での人工エネルギー 171×1012kcal x(8209/11692)=120x 1012kcal (人口比で算定) ・区部での太陽エネルギー 2313×1012kcal x(598/2162)=640×1012 kcal (面積比で算定) 120/640=19% 太陽エネルギーの20%近い人工エネルギーを消費して熱を放出 ヒートアイランド現象の引き金となっている
人工エネルギー消費がもたらす温度上昇 対策・・・・ハード、ソフト *ハード面 緑地、水域からの潜熱の放出 都市の風の通り道(海風) *ハード面 緑地、水域からの潜熱の放出 都市の風の通り道(海風) 都市キャノピーからの放熱の促進 透水性、浸透性舗装 *ソフト面 人工エネルギー使用量の削減
人工エネルギーの熱の1/2が地上20mまでの移動する大気を加熱し,残りの1/2が地表面,建物を加熱すると考える 風 24.5km 20m
温度上昇の簡単な見積もり *区部での人工エネルギーの1日平均の消費量 120×1012kcal/365日=328.8×109kcal/day *この熱の1/2が地上20mまでの大気を加熱し,残りの1/2が地表面,建物を加熱すると考える *東京都市部の地上を1日平均4m/sの風速で20mまでの大気の輸送量 大気の単位体積重量 1.293×10-3g/cm2=1.293㎏/m3 4m/s×20m×24.45㎞×3600秒×24時間 ×1.293㎏/m3 =21.85×1010㎏
空気の比熱は0.24kcal/㎏・℃(0.24cal/g・℃)で,空気1kgを1℃上昇させるのに,0.24kcalの熱が必要である. 1/2×328.8×109/(21.85×1010×0.24)=3.14℃ すなわち,日平均4m/sの風が吹いて上空の大気が入れ替わる場合には,東京で使用する日平均人工エネルギ-使用量による大気温度上昇は3.14℃であり,5m/sの風が吹く場合には同様に計算すると2.51℃の上昇である
ヒ-トアイランド現象破壊の限界風速 風が吹くことによって,温度上昇がコントロールされている 臨海部のように海風が都市内に入り込む場合には大気の気温が低い為に,人工エネルギ-消費による温度上昇を緩和する作用を有している. *人口100万人以上の大都市 uc=10m/sを越えてもヒートアイランドは形成 されている *数10万人の中都市 uc=8m/s *10万以の小都市
樹木による冷源効果 *10 ㎡に一本の樹木があり、日中(12時間)に40リッターの水が蒸散する *東京区部面積の4%が森林緑地である *樹木の本数 598×106㎡ x0.04/ 10 ㎡=2392000本 *樹木からの蒸散量 40kg x2392000=9.55x107kg *この水を蒸散させるのに必要な熱量 598kcal/kg x 9.55x107kg =5.72x1010kcal
*上空20mを4m/sの風速で12時間に通過する空気を1℃低下させるのに必要な熱量は 20mx24.45kmx4m/sx12x3600sx1.29kg/m3x 0.24kcal/kg=2.62x1010kcal/℃ 従って気温低下量は 5.72x1010kcal /2.62x1010 kcal/℃=2.2℃ 同様に水域の冷源効果についても見積もることができる