宇宙大規模構造の最近の話題 計60分 松原隆彦 (名古屋大学) 東北大学 21COE研究会

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

東京大学大学院理学系研究科 ビッグバン宇宙国際センター 川崎雅裕 インフレーション理論の 進展と観測 「大学と科学」公開シンポジウム ビッグバン 宇宙の誕生と未来.
銀河物理学特論 I: 講義1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 遠方宇宙の銀河の理解のベースライン。 SDSS のデータベースによって近傍宇宙の 可視波長域での統計的性質の理解は飛躍的 に高精度になった。 2009/04/13.
重力波で探る暗黒物質の起源 齊藤 遼 重力波研究交流会
- Dark Energy in Dark Age -
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
宇宙年齢10億年以前におけるSMBHの存在 遠方宇宙の観測で宇宙10億歳(z~6)未満で10億M⦿程度以上の活動銀河核中のSMBHの存在を確認 赤方偏移 z SMBH質量 [M⦿] URAS J ~2×109 M⦿ 宇宙7.5億歳(z~7)
Wiener Hermite 展開を用いたゆらぎの成長の記述 天文学教室4年 望月悠紀
大規模構造の起源 北山 哲 東邦大学 理学部物理学科.
Cosmic web 交差点の X 線探索: 衝突銀河群 Suzaku J の発見
DECIGOのサイエンス ~ダークエネルギー関連~ 高橋龍一 (国立天文台PD).
Non-Spherical Mass Models for Dwarf Satellites
Persistent Homologyを用いた 宇宙の大規模構造の定量化
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
銀河物理学特論 I: 講義3-3:光度関数の進化 分光探査サンプルによる Lilly et al. 1995, ApJ, 455, 108
観測的宇宙論グループ 東京大学 宇宙線研究所 大内 正己.
Damped Lya Clouds ダスト・水素分子
WISHによる超遠方クエーサー探査 WISH Science Meeting (19 July 三鷹
大規模数値計算による原始銀河団領域に関する研究
WISHによるhigh-z QSOs 探査案 WISH Science Meeting (10 Mar. 三鷹
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
速度勾配依存 変動エディントン因子 Velocity-Gradient-Dependent Relativistic Variable Eddington Factor Plane-Parallel Case 福江 純@大阪教育大学.
ゴースト場凝縮と宇宙論 向山信治 (東京大学) 平成19年5月29日
104K以下のガスを考慮したTree+GRAPE SPH法による 銀河形成シミュレーション ~Globular Cluster Formation in the Hierarchical Clustering Universe~ 斎藤貴之(北大) 幸田仁(NAOJ) 岡本崇(ダーラム大) 和田桂一(NAOJ)
WISHでの高赤方偏移z >6 QSO 探査
銀河物理学特論 I: 講義1-4:銀河の力学構造 銀河の速度構造、サイズ、明るさの間の関係。 Spiral – Tully-Fisher 関係 Elliptical – Fundamental Plane 2009/06/08.
Photometric properties of Lyα emitters at z = 4
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの力学的安定性 星間ガスの力学的な安定性・不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
Cosmic strings and early structure formation
銀河物理学特論 I: 講義3-4:銀河の化学進化 Erb et al. 2006, ApJ, 644, 813
宇宙論的磁場の起源 高橋慶太郎 名古屋大学 2010年3月15日 @鹿児島大学.
銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
銀河物理学特論 I: 講義1-3:銀河性質と環境依存性 Park et al. 2007, ApJ, 658, 898
巨大電波銀河 3C 35 の「すざく」による観測 磯部直樹 (京都大学, kyoto-u. ac
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
X-ray Study of Gravitational Lensing Clusters of Galaxies
X-ray Study of Gravitational Lensing Clusters of Galaxies
ランダムグラフ エルデシュとレーニイによって研究された.→ER-model p:辺連結確率 N:ノード総数 分布:
棒渦巻銀河の分子ガス観測 45m+干渉計の成果から 久野成夫(NRO).
大離心率トランジット惑星HD17156bの ロシター効果の観測結果
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
COSMOS天域における ライマンブレーク銀河の形態
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
フレアの非熱的成分とサイズ依存性    D1 政田洋平      速報@太陽雑誌会(10/24).
瀬戸直樹 (京大理) 第7回スペース重力波アンテナDECIGOワークショップ 国立天文台
天の川銀河研究会 天の川銀河研究会 議論の種 半田利弘(鹿児島大学).
 DPF サイエンス検討会 宇宙論的な重力波源 東大ビッグバンセンター (RESCEU) 齊藤 遼.
瀬戸直樹(京大理) DECIGO WS 名古屋大学
バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~
Primordial Non-Gaussianity in Multi-Scalar Slow-Roll Inflation
宇宙の初期構造の起源と 銀河間物質の再イオン化
滝脇知也(東大理)、固武慶(国立天文台)、佐藤勝彦(東大理、RESCEU)
浮上磁場はこれからだ 茨城大学 野澤恵 2006/6/15 13:30-14:00 東大地球惑星
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
COE外国出張報告会 C0167 宇宙物理学教室 D2 木内 学 ascps
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
宇 宙 その進化.
銀河物理学特論 I: 講義3-6:銀河とブラックホールの共進化 Alexander et al
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
大規模シミュレーションで見る宇宙初期から現在に至る星形成史の変遷
2009/4/8 WISH 三鷹 小山佑世(東京大学) クアラルンプールの夜景.
COSMOS天域における 高赤方偏移低光度クェーサー探査
ASTE搭載用ミリ波サブミリ波帯 多色ボロメータカメラ光学系の開発 竹腰達哉 北海道大学修士課程2年 Collaborators:
形成期の楕円銀河 (サブミリ銀河) Arp220.
連星 Gold Mine を用いたDECIGO精密宇宙論
LCGT Design meeting (2004年4月9日 東京大学 山上会館, 東京)
Presentation transcript:

宇宙大規模構造の最近の話題 計60分 松原隆彦 (名古屋大学) 東北大学 21COE研究会 松原隆彦 (名古屋大学) 東北大学 21COE研究会 「初期宇宙の解明と新たな自然像」 9/20/2005

宇宙の大規模構造 銀河の赤方偏移サーベイ 銀河の後退速度を丹念に測定 宇宙の3次元構造をマッピング

3次元的大規模構造の発見 Bootes Void : Kirshner, Oemler, Schechter & Shectman (1981) 239 galaxies

3次元的大規模構造の発見 Perseus-Pisces chain: 21cm redshift survey Giovanelli & Haynes (1985), Giovanelli et al. (1986) 342 + 275 galaxies

3次元的大規模構造の発見 Bubble構造: CfA redshift survey de Lapparent, Geller & Huchra (1986) 1100 galaxies

Redshift Survey の大規模化 CfA II survey (1989-): 11,000 galaxies Las Campanas Redshift Survey (1996): 26,000 galaxies

最新のRedshift Survey 2dF Survey (-2003): 250,000 galaxies Sloan Digital Sky Survey (-2008): 1,000,000 galaxies (ongoing)

Sloan Digital Sky Survey SDSS (Sloan Digital Sky Survey) 2.5m 専用望遠鏡 [Apache point, New Mexico] 現在進行中 (2008まで) 1,000,000 galaxies, 100,000 quasars

Sky coverage の拡大

大規模構造の起源 初期宇宙の密度ゆらぎ ゆらぎの重力進化 初期宇宙のインフレーション期において量子ゆらぎが古典化して生成された(と信じられているが、詳細は不確定) 微小なゆらぎ ランダムガウス場(に極めて近い) ゆらぎの重力進化 重力:引力のみ ⇒ 密度ゆらぎの増幅 線形成長 & 非線形成長 非線形成長によるゆらぎの非ガウス化

大規模構造形成のシミュレーション Simulation by A.V.Kravtsov

大規模構造と宇宙論 宇宙論モデルによって異なる大規模構造の進化 時間 宇宙論モデル

構造の解析:空間相関関数 東辻・木原 (1969) dV1 r dV2 両方のセル中に銀河が含まれる確率 空間相関関数 銀河の空間相関関数の導入 銀河のクラスタリングパターンの定量化 dV1 r 両方のセル中に銀河が含まれる確率 空間相関関数 dV2

空間相関関数 直感的意味 : 大きい : 小さい

空間相関関数の観測例:非線形領域 例:CfA survey Davis & Peeblesによる解析 (1983) ベキ則モデルによるフィット

SDSS銀河の相関関数 SDSS射影相関関数 (射影相関関数) ほぼベキ則だが、多少のずれが確認される 数Mpcスケールに肩 Abazajian et al. 2005

Halo Occupation Distribution 非線形クラスタリングの現象論的モデル P(N|M) 質量MのハローがN個の銀河を持つ確率(モデル化) 1-halo correlation 2-halo correlation

HODモデルと数値シミュレーション Zehavi et al. 2003

パワースペクトル パワースペクトル 相関関数のフーリエ変換に対応 線形領域では、直接の理論予言量 宇宙の構成成分や、初期ゆらぎに敏感 (Linear Theory)

SDSSによるパワースペクトル測定 Tegmark et al. 2004

線形パワースペクトル、線形相関関数 線形理論により、宇宙モデル依存性がはっきり決まる Matsubara 2004

宇宙初期のバリオン音響振動 コールドダークマター + バリオン + 光子 → 宇宙の晴れ上がり以前において音響振動: コールドダークマター + バリオン + 光子 → 宇宙の晴れ上がり以前において音響振動: バリオン振動:波数 ~ 100 h-1Mpc

宇宙初期のバリオン音響振動と相関関数 バリオン音響振動によるピーク SDSS (Eisenstein et al. 2005) (y-axis is not standard) My prediction (2004) (y-axis is logarithmic)

(Extended) Alcock-Paczynski Effect (1) ダークエネルギー成分に敏感 real space   redshift space closed open

(Extended) Alcock-Paczynski Effect (2) Matsubara 2004

赤方偏移空間の相関関数 相関関数の等高線マップ(特異速度による変形も考慮) Matsubara 2004

バリオン音響振動とEAP効果による ダークエネルギーへの制限 近将来的な(高赤方偏移)銀河サーベイで期待される制限 Matsubara 2004

まとめ 宇宙の大規模構造 赤方偏移サーベイ 非線形相関関数 線形クラスタリング バリオン音響振動 赤方偏移サーベイによる、宇宙の3次元構造のマッピング 赤方偏移サーベイ 史上最大のSDSS:現在進行中(2008年まで) 非線形相関関数 ほぼベキ則、ベキ則からのずれ ← HODモデル 線形クラスタリング 大規模サーベイによって観測可能に バリオン音響振動 振動の見かけのスケールにより、ダークエネルギーを制限