NO. 18 都市部花粉アレルゲン特性調査プロジェクト すべての粒径範囲のタンパク質溶液において、3-ニトロチロシンが検出 プロジェクト参加者: 森田 淳(M1)呉 迪(M2) 指導教員: 王 青躍 学外連携組織: 国立環境研究所、廃棄物処理企業、埼玉県環境科学国際センター In Japan, Japanese cedar (Cryptometria japonica) and cypress (Chamaecyparis obtusa) pollens are considered to be the major unique allergens which can give rise to severe pollinosis and their extent of dispersal is quite wide, especially in the urban area. Cry j 1 is a causative substance of Japanese cedar pollinosis, and it may deteriorate by Cry j 1 invasion to a lower respiratory tract. We observed airborne particles containing Cry j 1 by an immunofluorescence technique using a fluorescence microscope. We evaluated a Cry j 1 reacted with various air pollutants by liquid phase reaction. My study will pay attention to pollen morphological observation, allergenic measurement of airborne pollens and cross-antigenicity evaluation in Japanese urban areas, also including the investigation of various pollens in Chinese urban areas. Morphological changes of pollens will be observed by an optical microscope, a fluorescence microscope and a scanning electron microscope to confirm the existing evidences of visualized suspended particulate matter containing the Japanese cedar and cypress pollen allergens. Abstract Ⅰ、スギ花粉アレルゲンの変性 Ⅱ、スギ・ヒノキ花粉アレルゲン共通性 【Cry j 1の移流と変性可能性】 飛散期はスギ花粉が2月-4月、ヒノキは3月中旬-5月といわれている。スギ花粉は最も重要な花粉症の原因で社会問題ともなっている。感作、発症も低年齢化しているといわれ、幼児のスギ花粉症例も報告されている。スギ花粉が飛散し終わった直後の4月に、ヒノキ花粉が飛散する。スギ花粉飛散終了後のヒノキ花粉飛散時期でも症状が持続すると報告されている。スギ花粉とヒノキ花粉は構造が非常に似ているので、スギ花粉症の80%以上の人間がヒノキ花粉症にもなっていると言われている。 関東地域主要花粉カレンダー ①スギ花粉飛散期、山間部からスギ花粉粒子が飛散 ②Cry j 1を含むユービッシュ小体の剥離 ③都市部の大気汚染物質によるユービッシュ小体中Cry j の変性可能性 変性したCry j 1が 呼吸により気道内へ侵入 都市部におけるスギ花粉症の有病率が増加?? スギ ヒノキ 目 的 Cry j 1タンパク質はアミノ酸であるチロシン残基を16個有する Cry j 1中のチロシン残基も同様に、NO3あるいはOHラジカルと反応し3-ニトロチロシンへと変化する可能性 スギ花粉とヒノキ花粉は、花粉に含まれるタンパク質のうちのアレルギーの原因となる物質(抗原)においてIgE抗体の産生に関して共通の作用があり、これを共通抗原性という。実際にスギ花粉症患者さんの約8割がヒノキ花粉に対するIgE 抗体を持っていることが報告されている。本研究では、スギ花粉・ヒノキ花粉飛散期において、大気サンプリングを行い、スギ花粉とヒノキ花粉の花粉形態観察し、実際に大気中に飛散しているスギ花粉・ヒノキ花粉および花粉アレルゲンを粒径別に捕集し、花粉間の抗原共通性の評価を行うことを目的する。 目 的 都市部におけるスギ花粉症有病率の増加 →3-ニトロチロシン含有Cry j 1の上気道・下気道への侵入 本研究では 3-ニトロチロシン含有Cry j 1の定量法の開発 3-ニトロチロシン含有Cry j 1の細胞に対する 毒性の評価 を目的とする。 実験方法 表面プラズモン共鳴法(SPR) 【大気サンプリング】 実験方法 片側ELISA法 サンプリング期間 : 2010年4月12日~26日 地点 : 埼玉大学廃液処理センター サンプリング装置 : アンダーセンハイボリウムエアサンプラー (AHV) 流量 : 566 L/min 捕集時間 : 一週間 【大気サンプリング】 サンプリング期間 : 2010年3月14日~16日 地点 : 埼玉大学廃液処理センター サンプリング装置 : アンダーセンハイボリウムエアサンプラー (AHV) 流量 : 566 L/min 捕集時間 : 71時間 使用したフィルター : 1段目 (> 7.0 m)、2段目 (3.3 ~ 7.0 m)、5段目 (< 1.1 m) 【片側ELISA法の実験手順】 ①、AHV大気捕集フィルターから抽出したタンパク質含有溶液をウェルに100 L添加し、37℃で2時間インキュベートした。 ②ウェル内の溶液を除去した後、BSA/PBSをウェルに100 L添加し、37℃で2時間インキュベートした。(ブロッキング) ③ウェル内の溶液を除去し、Tween 20含有PBS (TPBS)とPBSによるウェルの洗浄の後、3-ニトロチロシン抗体 (PBSで1 : 100に希釈) をウェルに100 L添加し、37℃で2時間インキュベートした。 ④ウェル内の溶液を除去し、TPBSとPBSによるウェルの洗浄の後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識IgG抗体 (PBSで1 : 5000に希釈)をウェルに100 L添加し、37℃で1時間インキュベートした。 ⑤ウェル内の溶液を除去し、TPBSとPBSによるウェルの洗浄の後、発色基質であるo-フェニレンジアミンをウェルに100 L添加し、室温で30分間静置した。 ⑥発色を停止させるため1 M H2SO4をウェルに100 L添加し、プレートリーダー (測定波長492 nm, 対照波長630 nm)にて吸光度を測定した。 抗Cry j 1抗体をセンサーチップの金薄膜表面に固定化させておいて、サンプルをセンサーチップに流したときにサンプル中のCry j 1と結合反応すれば、チップ表面上の質量が増加し、これを表面プラズモン共鳴の変化として捉えれば抗体と結合したCry j 1濃度が定量できる。 Fig. 1. Principle of One Side ELISA Method. 結 果 結 果 片側ELISA法によるタンパク質中の3-ニトロチロシンの検出 スギ花粉モノクロ抗体を用いて 測定した結果 すべての粒径範囲のタンパク質溶液において、3-ニトロチロシンが検出 3-ニトロチロシン残基を含む タンパク質が大気中に存在 ポリ抗体で同じサンプルを測定した結果とモノクロ抗体で測定した結果の比較すると、スギ花粉以外の花粉アレルゲンを存在することが分かった。 Fig. 2. The result of One-Side ELISA method (n = 3). 大気中においてCry j 1は粒径1.1 m以下の粒子範囲に存在 5段目 (< 1.1 m) のタンパク質含有溶液中に3-ニトロチロシンが検出 花粉形態観察によってこの時期スギ花粉とヒノキ花粉を存在すること 大気中におけるスギ花粉とヒノキ花粉アレルゲンの共通性が示唆 大気中における3-ニトロチロシン含有Cry j 1の存在が示唆