当院における糖尿病患者の 自己効力に関する調査

Slides:



Advertisements
Similar presentations
学習目標 1 .セルフマネジメントモデル,学習援助型教育とは何か を理解する. 2 .セルフマネジメント支援のために必要な構成要素につ いて理解する. 3 .セルフマネジメントにおいて看護職に求められる能力 と責任について理解する. SAMPLE.
Advertisements

はじめに 近年、飲酒が関与する重大な交通事故が発生しており、未成 年の時からのアルコールについての正しい教育がより重要と なってきている。 タバコは学校において健康被害等の防煙教育が徹底されてき ているが、アルコールは喫煙と異なり健康を促す側面もあり全 否定できないため防酒教育導入の難しさがある。しかし、一方.
34-2 今 日 の ポ イ ン ト今 日 の ポ イ ン ト 現代社会とストレスと糖尿 病 1.1. ストレスによる 血糖コントロールへの影響 2.2. QOL障害によるストレ ス 3.3. 糖尿病とうつ 4.4. ひとことアドバイス 5.5.
カウンセリングナースによる 新しい治療システム -ストレスケア病棟での治療体験と カウンセリングナースの導入- 福岡県大牟田市 不知火病院 院長 徳永雄一郎.
オンライン血液濾過透析にお ける置換量と透析効率 優人クリニック (1) 東京大学医学部付属病院腎臓・内分泌 内科 (2) 、血液浄化部 (3) 冨田兵衛 (1) 、青柳直樹 (1) 、大原智香子 (1) 、根岸康介 (2) 、田中珠美 (2) 、野入英 世 (2) 、中尾彰秀 (3)
設置者・管理者の責務② ~職員の育成指導等~ 平成 26 年度 青森県障害者虐待防止・権利擁護研修 公益社団法人 日本社会福祉士会 平成 26 年度障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修から.
心理検査の持ち帰り実施が 結果に及ぼす影響について
「職場のメンタルヘルス」 ~当院における離職について~
日本理学療法士協会会員を対象とした 託児室設置に関するアンケート調査
~おうちごはんを楽しむ~ 担当:西川真梨恵
特別養護老人ホームさくら園 副施設長 金谷 龍太郎
インスリン治療費に関する 医師・患者意識調査結果
DM・ HYBRID療法 (簡単・糖尿病初期寛解療法) (内科開業医御用達バージョン)
1.「時間感覚」のズレを直す 2.「他者の承認」の仕組みを生かす
糖尿病患者におけるPWV (脈波伝播速度) 当院通院糖尿病患者648名からの解析
“想い”を受け継ぎ,“想い”を繫ぐ ~生活期からの発信!「連携シート」の活用を試みて~ 長崎県 介護老人保健施設 恵仁荘
今回の調査からわかった主なことがら ○糖尿病で治療中の人の43.2%は健診で見つかっている ○健診で見つかった人は、合併症の発症率が低い
体重増加 短期間で 急に太った いつもと同じ食生活をしているのに… 定期的に運動をしているのに…
1. 糖尿病腎症の治療と 食事療法の目的 2. 腎症の食事療法のポイント 3. 腎症の食事療法の実際 4. 「食品交換表」や「食品成分表」を
今 日 の ポ イ ン ト 1. 糖尿病治療のための食事は「健康食」です 2. まず初めに、食生活の基本をチェックしましょう 3.
ホスピス外来における STAS-Jを活用した看護の実際
糖尿病こころのケア研究会 第1回セミナー 日時:2013年3月28日(木) 18:40~21:00 会場:ラフレさいたま
第3回はままつCDE研究会 アンケート集計結果
PT、OT、ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業(新規) 平成20年度予算額(案) 42,790千円              
4.「血液透析看護共通転院サマリーVer.2」 の説明
はじめに 糖尿病の患者数も予備軍を含めて1600万人と増加しており、一方糖尿病専門医は3000人あまりとその診療能力には限界があります。糖尿病療養指導士はそのような中で必要不可欠な存在ではありますが、その資格の位置づけなど問題もあります。 現在約1万人の糖尿病療養指導士が活躍しており、第1回資格取得者は4年目を迎え5年の任期を目前とし、資格更新のために努力していると思われます。
アンケート② 病棟体制.
栄養領域の代表目標項目(7) 2 栄養 栄養状態、栄養素(食物)摂取に関する代表目標項目(5) ・ 成人の肥満者の割合の減少
2型糖尿病患者におけるナテグリニドと メトホルミン併用療法の有効性と安全性の検討
メタボリック症候群(MetS)の有無と、成人以降の体重増加とCKDの関連
家族の介護負担とメンタルサポート (part II)
趣旨  平成22年4月1日厚生労働省(医政発0401第17号) 各都道府県知事にあて発令された文章を受けて 県内各施設における医療的ケアを実践的に 指導できる看護職員を養成することを目的
高LDLコレステロール血症患者の栄養指導上の問題点について
在宅ホスピスケア実施におけるSTAS-Jの有用性
1. 血糖自己測定とは? 2. どんな人に血糖自己測定が 必要なのでしょうか? 3. 血糖自己測定の実際 4. 血糖自己測定の注意点
糖尿病と眼合併症 元住吉眼科 廣澤 恵子.
当院における透析間体重管理指導方法についての検討
糖尿病 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 検査 診断 治療
女子大学生におけるHIV感染症のイメージと偏見の構造
健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン(概要)
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○田村 美香子 大前 利道 堀内 純 大前 由美 沼本 美由紀
アンケート調査結果よりわかった主なポイント・協議会での委員の意見
高齢透析患者における口腔機能と栄養について
採血を受ける幼児へ説明する「ことば」の地域差の検討
CKD患者に対する食事記録が 食事療法に及ぼす効果の検討
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○畠澤 千里、大前 利道 関根 未穂、長谷 佳織、 髙野 真衣、轉石 里美
基礎看護の授業を通して思考力,判断力,表現力,技能を育成する指導方法の工夫改善についての研究
特定保健指導に先駆けた 受診勧奨者への外来栄養指導
健診におけるLDLコレステロールと HDLコレステロールの測定意義について~高感度CRP値との関係からの再考察~
血液透析患者の足病変がQOLに与える影響の調査 ~SF-36v2を使用して~
平成29年国民健康・栄養調査結果の概要.
指導日時 平成 年 月 日( 曜日) AM・PM : ~ : . 指導内容
1.
4.「血液透析看護共通転院サマリーVer.2」
心理科学・保健医療行動科学の視点に基づく
高齢慢性血液透析患者の 主観的幸福感について
STAS-Jでの情報収集に困難を感じるのはケアの困難さと関連があるのか
実地医療研究    メーリングリストの紹介 いがらし内科医院          五十嵐 秀之.
平成25年度 日本産業衛生学会産業看護部会 研究活動費助成事業 研究成果の概要
食事の意義と食生活の課題 (2)-ア-a-D1.
ナラティブ・アプローチの看護への有効性の検討
SWOT分析 看護師 転職例 強み (Strengths) 弱み (Weaknesses) 機会 (Opportunities)
事前指示書作成における当院血液透析患者の現状意思調査
1. 糖尿病の患者さんは 血圧が高くなりやすい 2. 糖尿病に高血圧が併発して 合併症が早く進行する 3. 血圧コントロールの 目標と方法
看護学生への喫煙教育による認識の変化からみた禁煙支援
STAS導入を試みての 経過報告と今後の課題
在宅医療をご存じですか? 編集:○○○○○ 訪 問 診 療 往 診 在宅医療を利用できる方(例) 在宅医療で受けられる主なサービス
(2)-ア-a-A 食事摂取基準.
衛生委員会用 がんの健康講話用スライド.
在宅医療をご存じですか? 編集:○○○○○ 訪 問 診 療 往 診 在宅医療を利用できる方(例) 在宅医療で受けられる主なサービス
Presentation transcript:

当院における糖尿病患者の 自己効力に関する調査  当院における糖尿病患者の 自己効力に関する調査 武田クリニック  古田 史  クリックするとページが進みます

目   的 安酸が開発した「自己効力感刺激要因尺度」を測定することにより、当院における糖尿病患者の傾向を把握し、今後の患者教育充実のための方向性、課題を明らかにする クリックするとページが進みます。

研究方法 1)研究対象 3ヶ月以上当院へ通院歴がある患者の中から、無作為に抽出した 130名 2)調査方法   3ヶ月以上当院へ通院歴がある患者の中から、無作為に抽出した 130名 2)調査方法   「自己効力感刺激要因尺度」に基づくアンケート調査 3)調査期間   平成15年4月14日~平成15年4月25日 4)倫理的配慮   調査への参加や中断は自由意志であり、それによってなんら不利益を被ることはない、調査結果は統計的に処理するため個人の名前や回答が公にならないことを口頭および書面にて説明し、同意が得られた場合には署名をいただき施行した クリックするとページが進みます。

対象者の背景 ・男性:83名 女性:37名 総数:120名 ・有効回答率:92.3% ・平均年齢:57.75±11.97歳 ・男性:83名  女性:37名  総数:120名 ・有効回答率:92.3% ・平均年齢:57.75±11.97歳 ・HbA1c:7.0±1.1% ・BMI:24.71±3.96% ・病歴:8.8±6.3年 クリックするとページが進みます。

遂行行動の達成 代理的経験 言語的説得 生理的情動的状態 ■よく体験する ■たまに体験する ■まったく体験しない 1.1日の食事内容を食品交換表の表1~表6、付録に分けて計算する 2. 宴会の席や、正月のような特別の日でも自分の指示カロリーを考えて食事を取る 3. 外食のメニューを指示カロリーの範囲内でバランスを考えて選ぶ 4. 指示カロリーの食事を自分で計算して実際につくる   5.食事療法を続ける工夫を同病者から聞く  6.私と似た生活環境で食事療法が守れている人の話を聞く  7.食事療法に成功している人のビデオやテレビを見る  8.食事療法に成功している同病者の体験談を聞く 言語的説得 生理的情動的状態 9.友人から食事療法を続けていて感心だとほめられる  10.医師から食事療法についてほめられる  11.家族から食事療法を守るようにと励まされる  12.看護婦から食事療法についてほめられる  13.栄養士から食事療法について指導を受ける 14.食事療法を守っていると、自覚症状がよくなる   15.食事療法を守っていると、健康的な気分になる   16.食事療法をしていると、体の調子がいい ■よく体験する ■たまに体験する ■まったく体験しない クリックするとページが進みます。

結   果 対象者の背景は男性83名、女性37名、総数120名(有効回答率92.3%)であり、年齢は57.75±11.97歳。治療法は食事療法のみが22名、経口血糖降下剤使用者が85名、インスリン使用者が25名であった。HbA1cは7.0±1.1%、BMIは24.71±3.96%、病歴は平均8.8±6.3年。合併症は神経障害68名、網膜症27名、腎症29名であった。自己効力感刺激要因とその体験度の結果として、「遂行行動の達成」は〈1日の食事内容を食品交換表の表1~表6、付録に分けて計算する〉〈指示カロリーの食事を自分で計算して作る〉を体験したことがあると答えたものは5割前後、〈宴会の席や正月のような特別の日でも自分の指示カロリーを考えて食事を取る〉もしくは〈外食のメニューを指示カロリーの範囲内でバランスを考えて選ぶ〉を体験したことがあると答えたものは7割以上であった。「代理的経験」は4つの項目すべてにおいて半数以上が体験していないと回答している。HbA1c6.9%以下をコントロール良好群、7.0以上を不良群として統計分析を行ったところ、「遂行行動の達成」「代理的経験」において有意差がみられた(p≦0.05)。「言語的説得」は家族からの励ましは7割以上が体験しているが、医療者からの「言語的説得」は8割以上が体験していないと回答している。「生理的情動的状態」は食事療法を守ることによって7割以上が身体的、精神的に軽快感を持ったことがあることがわかった。 クリックするとページが進みます。

考案 この結果からいえることは、「代理的経験」と医療従事者からの「言語的説得」に関する情報が少ないということであり、これは先行研究に一致する。「代理的経験」によって自己効力を高めるアプローチとしてはピアラーニングが知られていることから、患者同士が各々のセルフケアの方法や糖尿病に対する思いを語りあえるような会の企画や、インターネットを用いた患者同士の情報交換できる場をつくるといった方向性で検討していきたい。また「言語的説得」に関して安酸は、医学データ依存から脱却し、行動をきちんと評価する視点を持たなければならないと述べている1)。これを可能にするのがエンパワーメントの理念に基づく実践であると考える。またエンパワーメントの理念に基づく実践は「言語的説得」のみならず、「遂行行動の達成」の支援にもつながると考えられる。そのためスタッフ間で理解を深め、患者教育充実を図る上での基礎としたい。 【引用文献】 1)安酸史子編著.成人看護学-慢性期.建帛社,1999,p45 クリックするとページが進みます。