当院健診施設における脂肪肝と糖尿病リスクの統計学的な検討

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今 日 の ポ イ ン ト今 日 の ポ イ ン ト 糖尿病人口は予備群を含めると 2,050 万人1.1. 糖尿病は血糖値が高くなる病気 ただし自覚症状がほとんどありません 2.2. 血糖値が高い状態を「高血糖」といいます3.3. インスリンの作用が弱くなったために高血糖に なったのですが、高血糖は必ず改善できます.
特定保健指導初回面接の 効果的な話法 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○ 滑田 梨沙 村山 利恵子 佐藤 由紀子 川本 麻里 田村 美香子 堀内 純 大前 利道 大前 由美 沼本 美由紀.
11-2 知っておくと役立つ、 糖尿病治療の関連用語 一次予防、二次予防、三次予 防 1.1. インスリン依存状態 インスリン非依存状態 2.2. インスリン分泌 3.3. 境界型 4.4. グルカゴン 5.5. ケトアシドーシス、ケトン体 6.6. 膵島、ランゲルハンス島 7.7. 糖代謝 8.8.
「職場のメンタルヘルス」 ~当院における離職について~
1. 動脈硬化とは? 2. 動脈硬化のさまざまな 危険因子 3. さまざまな危険因子の 源流は「内臓脂肪」 4. 動脈硬化を防ぐには
Fibro Scan502による肝線維化の評価 杉岡陽介 鈴木淳史 戸塚実 東京大学医学部附属病院検査部.
今回の調査からわかった主なことがら ○糖尿病で治療中の人の43.2%は健診で見つかっている ○健診で見つかった人は、合併症の発症率が低い
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○堀内 純 飯島 千恵美 寺田 よしみ 水嶋 裕美 沼本 美由紀 大前 利通 大前 由美
高感度CRPの新たな有用性 ~H.pyloriにおける検討~
より多くの人に糖尿病予防の生活指導ができるように
食事療法の摂取エネルギーを、いわゆる 「隠れ肥満」と「太りやすい体質」 を考慮して求める方法
図1 対象症例 H20.1/1-1/31までの入院・外来糖尿病患者総数 入院患者 15203名(内 透析患者 622名)
午後に特定健康診査を行う ことによる収益性の検討
A 「喫煙率が下がっても肺ガン死亡率が減っていないじゃないか」 B 「喫煙を減らしてもガン減るかどうか疑問だ」
高LDLコレステロール血症患者の栄養指導上の問題点について
特定保健指導対象外である 受診勧奨者への 外来栄養指導の効果
1. 血糖自己測定とは? 2. どんな人に血糖自己測定が 必要なのでしょうか? 3. 血糖自己測定の実際 4. 血糖自己測定の注意点
当院における透析間体重管理指導方法についての検討
特定保健指導値の血糖100mg/dl、HbA1c5.2以上適用後のインスリン測定の意義
汎用性の高い行動変容プログラム 特定健診の場を利用した糖尿病対策(非肥満を含む)
沼本 美由紀、 大前 利道、 大前 由美、 斎藤 智、 布施 智子、 滑田 梨沙、 田村 美香子、 永山 健二、 堀内 純
糖尿病 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 検査 診断 治療
改装によるサービス 向上への取り組み ~質の高い快適な空間作り~ 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 健診部
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○田村 美香子 大前 利道 堀内 純 大前 由美 沼本 美由紀
汎用性の高い行動変容プログラム 特定健診の場を利用した糖尿病対策(非肥満を含む)
当院マンモグラフィー健診の推移 医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○堀内 純 大前 利道 大前 由美
健診の腹部エコー検査で発見された 副腎腫瘤2症例の考察
循環器疾患領域の代表目標項目(17) 8 循環器疾患、9 糖尿病 循環器疾患の減少に関する代表目標項目(5)
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 沼本美由紀、大前利道、大前由美、堀内 純、 関澤悠希子、水嶋裕美
成功率90%の禁煙指導 医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○田村 美香子 大前 利道 吉野 貴美子 大前 由美 宮本 由希
高齢透析患者における口腔機能と栄養について
メタボリック シンドローム.
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 発表演者 藤城真央
医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 大前由美 大前利道 沼本美由紀 堀内純 金子仁美 株式会社メディカルネット 永山健二
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○畠澤 千里、大前 利道 関根 未穂、長谷 佳織、 髙野 真衣、轉石 里美
スパイロメータを用いた COPDスクリーニング
資料 1.「指導対象者群分析」のグループ分けの見方 特定健康診査及びレセプトデータによる指導対象者群分析 【フロー説明】
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市区町村別標準化該当比マップ (2013年度版) 岡山県保険者協議会 岡山県国民健康保険団体連合会.
特定保健指導に先駆けた 受診勧奨者への外来栄養指導
某健保契約の胸部CT検診報告 医療法人新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 南 香織 永山 健二 角谷 美佳 大前 利道 斉藤 智 大前 由美
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血液透析患者の足病変がQOLに与える影響の調査 ~SF-36v2を使用して~
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特定保健指導のe-mailの 活用法について
受検者自身のデーターを使って 医療法人新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○大前利道 田村美香子 大前由美 沼本美由紀 堀内純
1. 糖尿病の自覚症状は あてにならない 2. 主な検査の種類 3. 検査値の意味と 基準値・コントロール目標 4.
1.
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健診施設における デジタル心電計の有用性 医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○布施 智子 大前 利道 大前 由美
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%1秒量を用いた呼吸機能の 再評価 ~前年データより受診勧奨者を探る~ 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック
二次検査受診までの時間短縮、   便宜向上を目的とした      病診連携の取り組み        医療法人社団 新虎の門会           新浦安虎の門クリニック            塚田桂子・堀内純               大前利道・大前由美・沼本美由紀  人間ドック受診から結果報告書の到着までにはある程度の時間を要します。また報告書の内容に「要精密」との記載があった場合、受診者は二次検査に対応する医療機関を再度受診しなければなりません。この一連の過程には、医療機関間のシステムの相違、検査待
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○長谷 佳織 大前 利道
医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○斉藤智 大前利道 大前由美 沼本美由紀 田村美香子
医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○斉藤 智 堀内 純 沼本 美由紀 大前 利道 大前 由美
40歳未満にも メタボリックシンドローム基準の適用を
1. 糖尿病予備群って、なに? 2. 糖尿病って、どんな病気? 3. どんな時に糖尿病予備群と 言われるの? 4. 糖尿病予備群と言われたら
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A-3 女性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
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当院健診部における胃部レントゲン上の所見とピロリ菌との関係
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Presentation transcript:

当院健診施設における脂肪肝と糖尿病リスクの統計学的な検討 医療法人社団新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 斉藤智○  大前利道  大前由美  沼本美由紀  堀内純 水嶋裕美  関澤悠希子 布施智子 半村亜由美  よろしくお願いいたします。

はじめに 近年「糖尿病は肝臓の病気」として考 えられてきています。2型糖尿病の発 症には肝臓が糖を取り込み脂肪肝に なり、その後肝臓の糖取り込み率低 下により食後高血糖、糖尿病の発症 ということが知られてきております。 はじめに 近年「糖尿病は肝臓の病気」ということが証明されてきています。2型糖尿病は、肝臓が糖を取り込み、自ら脂肪肝となり、その後に起こる肝臓の「糖取り込み率低下」により高血糖状態となり、発症するということが知られてきています。

目的 脂肪肝と糖尿病の統計的に検証 目的 今回当院の健診受診者で腹部超音波検査にて「脂肪肝所見あり」とされた方について、糖尿病との関連性を統計的に検証した結果を報告します。

平成21年6月の1ヶ月 健診受診者1409名中の 腹部超音波を実施した694名 平均年齢 49.3歳 (男性61%、女性39%) 対象 平成21年6月の1ヶ月 健診受診者1409名中の 腹部超音波を実施した694名 平均年齢 49.3歳 (男性61%、女性39%) 対象 平成21年6月の1ヶ月間に当院健診を受診した1409名の中で、腹部超音波検査を実施した694名を対象としました。 平均年齢は49.3歳です。その内訳としては、男性61%、女性39%となっております。 また糖尿病の方や治療中の方は除外しております。

脂肪肝(+) : A群 脂肪肝(-) : B群 FPG、HbA1cをt検定 方法 脂肪肝(+) : A群 脂肪肝(-) : B群 FPG、HbA1cをt検定 方法 腹部超音波検査を実施した694名の中で、「脂肪肝所見あり」とされたグループをA群、 「脂肪肝所見なし」とされたグループをB群として、それぞれのグループに対して空腹時血糖、ヘモグロビンA1cについて、t検定を行い統計学的に有意差があるか検討しました。

A群 脂肪肝(+) 177名(26%) B群 脂肪肝(-) 517名(74%) 脂肪肝の割合 脂肪肝の割合です。 「脂肪肝所見あり」のA群では177名、「脂肪肝所見なし」のB群では517名、になりました。

106 97 102 96 95 16.6 8.8 FPGの統計データ A群 B群 平均 中央値 最頻値 標準偏差 空腹時血糖の統計データです。 A群の平均値106、中央値102、最頻値102となっております。 どのデータも、A群の方が高い値となっています。

5.4 5.1 5.2 5.0 0.7 0.3 HbA1cの統計データ A群 B群 平均 中央値 最頻値 標準偏差 ヘモグロビンA1cの統計データです。 A群の平均値5.4、中央値5.2、最頻値5.0となっております。 最頻値以外は、A群の方が高い値となっています。

FPG P<0.001 HbA1c T検定 FPGとHbA1cのP値 空腹時血糖とヘモグロビンA1cのP値 A群とB群でt検定を行った結果、 T検定                                                                                                                                                                                               FPG           P<0.001 HbA1c 空腹時血糖とヘモグロビンA1cのP値 A群とB群でt検定を行った結果、 空腹時血糖値でP値は0.001未満となり、ヘモグロビンA1cでも、P値は0.001未満となりました。

脂肪肝 (+) 考察 ・空腹時血糖、ヘモグロビンA1cともにA群、B群と有意な差があった。 ・脂肪肝と糖尿病は関係が示唆された。 ・空腹時血糖、ヘモグロビンA1cともにA群、B群と有意な差があった。 ・脂肪肝と糖尿病は関係が示唆された。 脂肪肝 (+) ・糖尿病に関与 ・FPG、HbA1cが高値 考察 空腹時血糖、ヘモグロビンA1cともにA群、B群には有意な差があるとわかったことより、脂肪肝と糖尿病は関係があるということが示唆されました。 今まで、健診現場では、脂肪肝は生活習慣、アルコール摂取などの「結果」とし説明されてきました。しかし今回の検討結果より、「脂肪肝」は結果ではなく「糖尿病などの原因」として説明するほうがよいのではないかと考えられます。 また、空腹時血糖、ヘモグロビンA1cの統計データを比較した場合、空腹時血糖値の最頻値はA群のほうが高い値を示しました。 この結果からも糖尿病に関与しているのではないかと考えられます。

・脂肪肝(+) →糖尿病予防の指導 ・脂肪肝(+)の分類をしたら・・・ →新たな指導のきっかけに? まとめ・今後 ・脂肪肝(+) →糖尿病予防の指導 ・脂肪肝(+)の分類をしたら・・・ →新たな指導のきっかけに? まとめ これらのことから当院健診施設において、「脂肪肝所見あり」となった場合、 糖尿病予防の指導の動機づけになりえるのではないかと考えられます。 今後、脂肪肝の重症度分類をしてさらに糖尿病との関連性がうらづけられれば、 より糖尿病の予防として、指導ができるのはないかと思います。 ◆脂肪肝の分類  重症度:深部減衰を含み1つ以上 中等度:深部減衰以外で3つ以上 軽度:どれか2つ以上 ・肝腎コントラスト ・深部減衰 ・血管不明瞭 ・高輝度な肝臓 ・まだらな肝臓