脂質代謝
脂質代謝 生体内(血漿中)の主な脂質は中性脂肪、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸 中性脂肪はエネルギーの貯蔵物質として脂肪細胞内に蓄えられ、リン脂質はコレステロールなどとともに細胞の膜を構成する
リポ蛋白 カイロミクロン (chylomicron) VLDL (very low density lipoprotein) IDL (intermediate density lipoprotein) LDL (low density lipoprotein) HDL (high density lipoprotein) 密度 低 密度 高
脂質の消化、吸収 食事中の脂質は消化管の機械的消化と消化液(主に膵液)の作用により分解(中性脂肪はモノグリセリドと遊離脂肪酸、コレステロールエステルは遊離コレステロール)されて小腸から吸収される。 大部分は中性脂肪(TG)で日本人では60g/day
吸収されたモノグリセリドと脂肪酸は小腸粘膜上皮細胞内でふたたびTGに合成され、アポ蛋白(apo B-48)の存在下でカイロミクロンとして組み立てられ、リンパ流を経て静脈に流れ込む
肝での脂肪合成 肝臓では糖質から合成された脂肪酸や、脂肪組織からの血中遊離脂肪酸をもとにTGが合成され、肝細胞内で合成されたアポ蛋白(apo B-100)とともに超低密度リポ蛋白(VLDL)粒子として組み立てられ、血中に分泌される
LPLによるリポ蛋白の代謝 小腸や肝で合成、分泌されたカイロミクロンやVLDL中のTG(中性脂肪)は、脂肪組織や筋肉の毛細血管内皮細胞表面の LPL (lipoprotein lipase) の作用で水解される LPL は内皮細胞表面にヘパラン硫酸の鎖でつなぎとめられており、ヘパリンの静注で血中に遊離してくる (LPLの測定法)
カイロミクロンの代謝 小腸で生成されるTG含量の多い(85%)リポ蛋白で、apo A-I, B-48, Cを含む リンパ流を経て血流で輸送され、脂肪組織、筋肉のLPLによりTGを失い、カイロミクロンレムナントとなって肝に取り込まれる
VLDLの代謝 肝臓で合成されるTG含量の多い(55%)リポ蛋白で、apo B-100, C, E を含む 脂肪組織、筋肉の LPL によりTGを失い、被膜成分とアポ蛋白の一部を失って、IDL(apo B-100, E)やLDL(apo B-100のみ)となる IDLやTG含量の多いLDLは、肝臓のHTGL(肝性トリグリセリドリパーゼ)によってTGを水解され、最終的に大部分が肝に回収される
LDLの役割 アポ蛋白としてapo B-100のみを含み、HTGLによってTGを失う一方、CETP(コレステロールエステル転送蛋白)によってHDLからコレステロールを受け取り、コレステロール含量が多い LDLはIDLとともに末梢のさまざまな細胞にコレステロールや脂溶性ビタミン(特にビタミンE)を供給する
LDLやIDLは細胞表面のLDLレセプターによって取り込まれる
HDLによるコレステロールの逆転送 HDLは肝臓、小腸で作られるほか、カイロミクロンの代謝の過程でも作られる Apo A (A-I, A-II), Cを含み蛋白含量が多い 動脈壁を含む末梢組織からコレステロールを引き抜く このコレステロールはエステル化されてから、血漿中のCETP(cholesterylester transfer protein)によりapo B含有リポ蛋白(IDL,LDLなど)に転送される。
脂質異常症 高LDL血症 LDL-C ≧ 140 mg/dl 低HDL血症 HDL-C < 40 mg/dl 高TG血症 TG ≧ 150 mg/dl (空腹時採血)
以前は空腹時総コレステロール(TC)220 mg/dl 以上、中性脂肪150 mg/dl 以上のいずれかまたは両者を示すものを高脂血症と呼んでいた。 動脈硬化の主要な促進因子であるLDLコレステロールはFriedewald の式 LDLC = TC – HDLC – 0.2×TG でおおよそ推定できる
リポ蛋白と動脈硬化 動脈壁内皮下に浸透したLDLがなんらかの原因で変性(酸化、糖化、凝集等?)すると、異物としてマクロファージに取り込まれる この取り込みに関与するのがスカベンジャーレセプターである この取り込み量が多いと内膜に脂肪蓄積を引き起こし、アテローム動脈硬化(粥状硬化)に進展する
動脈硬化(粥状硬化、アテローム硬化 ) 冠動脈に起こると 心筋の虚血 ⇒ 狭心症 心筋の壊死 ⇒ 心筋梗塞 冠動脈に起こると 心筋の虚血 ⇒ 狭心症 心筋の壊死 ⇒ 心筋梗塞 脳動脈に起こると 神経細胞の壊死 ⇒ 脳梗塞 下肢動脈に起こると 足壊疽