次の周産期医療システムを考える 海野 信也 「周産期医療の広場」:http://shusanki.org/ 2011年10月15日 長野県立こども病院 総合周産期母子医療センター 開設10周年記念祝賀会 次の周産期医療システムを考える 海野 信也 北里大学医学部・産婦人科学単位・産科学教授 北里大学病院副院長・周産母子センター長 日本産科婦人科学会 周産期委員会委員長・医療改革委員会委員長 「周産期医療の広場」:http://shusanki.org/ Twitter: NobuyaUnno
2000年1月27日臨時院内カンファランス 長野県立こども病院 産科の開設にあたって 東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 病棟医長 海野信也
2000年1月27日臨時院内カンファランス 開設後3-5年間のRoad Map 産科救急体制の確立 3次施設としてのidentity 院内各科・部との連携の確立 ハイリスク妊娠管理体制の確立 周産期専門医研修体制の確立ー人的供給体制の確立 胎児異常診断体制の確立 地域周産期施設との連携 周産期センター機能の獲得 周産期情報センターの組織化 出生前診断体制の確立 胎児治療・着床前診断等の先端医療への挑戦
周産期医療システム 患者と情報 の流れ 周産期医療協議会 総合周産期母子医療センター 周産期医療情報 周産期研修 地域周産期 一般周産期 MFICU・NICU 周産期医療情報 周産期研修 地域周産期 母子医療センター 緊急帝王切開 NICU 一般周産期 医療施設
周産期医療システム 周産期医療協議会 総合周産期母子医療センター 地域周産期母子医療センター 母体・胎児集中治療管理室(MFICU) 新生児集中治療管理室(NICU) 麻酔科を有する、産科複数当直、新生児当直 血液検査・X線検査・胎児監視が常時可能 搬送の受け入れ 周産期医療システムの中核として地域各周産期医療施設と連携 周産期医療情報・研修センター機能 地域周産期母子医療センター 30分以内に帝王切開術による児の娩出が可能 →帝王切開術が必要な場合に迅速(おおむね30分以内)に手術への対応が可能 小児科当直 地域の周産期医療施設との連携、入院・分娩に関する連絡調整
長野県立こども病院在籍当時の私の任務と 支えて下さった方々 産科の起ち上げと人員の確保 東京大学・信州大学・富山大学・帝京大学の産婦人科教室 「こども病院型総合周産期母子医療センター」を有する「周産期医療システム」の確立 胎児・新生児救急症例への全面的対応 新生児科・麻酔科・検査科 胎児診断・管理・カウンセリング体制の確立 産科外来・新生児科・循環器科・脳神経外科・小児外科・遺伝科・臨床心理士・総合母子保健課・病理科 母体救命救急症例発生状況調査 長野県の重症母体症例の実態調査報告 長野県産婦人科医会 故 飯沼博朗先生
「周産期医療の広場」施設検索 http://shusanki.org/
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当時の周産期医療体制整備指針の問題点 母体救命救急に関する記載の欠如 2010年1月 厚労省医政局指導課 「周産期医療体制整備指針」の 改定 2006年 奈良県 町立大淀病院母体脳出血事例 2008年 東京都 都立墨東病院母体脳出血事例 周産期情報システム及び周産期搬送先照会システムに関する記載の空虚さ 2007年 奈良県 未受診妊婦死産事例 県外・広域搬送に関する記載の欠如 「戻り搬送」に関する記載の欠如 2010年1月 厚労省医政局指導課 「周産期医療体制整備指針」の 改定 搬送コーディネータ 神奈川県 大阪府 札幌市 千葉県 東京都 埼玉県 2012年 南関東1都3県の広域搬送システム稼働予定
周産期医療システム 1996年:「周産期医療体制整備事業」開始 2000年:「長野県立こども病院総合周産期母子医療センター」開設 2002年: 「周産期医療体制整備事業」微修正 2010年: 「周産期医療体制整備事業」大幅改定 2011年:47全都道府県に「周産期医療システム」及び総合周産期母子医療センター設置 次に必要なのはなんでしょうか。
日本産科婦人科学会 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子 産婦人科医師数:年間最低500名の新規産婦人科専攻医を確保する。 助産師数:助産師養成数を年間2000名以上まで増員する。 助産師養成システムの再検討を行う。 助産師がすべての分娩施設で分娩のケアにあたる体制を整備するため、特に診療所への助産師の配置に対してincentiveを付与する。 勤務環境: 分娩取扱病院:勤務医数を年間分娩500件あたり6-8名とする。 月間在院時間240時間未満を当面の目標 産科診療所: 複数医師勤務、助産師雇用増等により、診療所医師の負担を軽減、診療規模の拡大を志向 地域周産期医療体制: 診療機能及び妊産婦・患者のバランスのとれた集約化と分散により、安全、安心、効率化の同時実現を目指す 施設間連携を強化し、周産期医療における安全性の向上を図る 麻酔科、新生児科、救急関係諸診療部門を擁し、施設内連携が良好な周産期センターを中心とした周産期医療システムを各地域に整備 分娩管理の効率化と多様性を確保するため分娩数全体の2分の1から3分の2を産科診療所または産科専門施設で担当 診療ガイドラインの作成やその普及等により周産期医療の標準化を推進し、周産期医療の質の向上に寄与する。 上記施策を5年間継続し、成果を確認した上で、計画の再評価を行う。
「次の周産期医療システム」 キーワード 地域との連携:「周産期における地域連携パス」 患者参加型:一般住民・患者さんが自ら選択できる 施設間連携の強化:流れを明示する 産科一次施設・周産期センター産科・周産期センター新生児科・地域小児科・在宅医療・行政 医療の可視化 Clinical indicatorの明示 縦割り構造の排除 患者参加型:一般住民・患者さんが自ら選択できる 情報開示:妊産婦自身による診療情報の保持 県境を越えた連携 補助金依存からの脱却 地域一次分娩施設の確保 チーム医療 専門職としての誇り、自信、責任 専門職の交流・移動 災害医療における周産期医療の位置づけ 国際貢献
緊急時、迎え搬送機能を有する周産期センター 「次の周産期医療システム」 論点整理 分娩施設のあり方 既存の枠組み:【助産所、診療所、二次病院、周産期センター】を続けるのかどうか 各施設類型にはそれぞれ長所、短所がある。長所を生かしつつ短所を解決する方法はないか? 助産所 診療所 二次病院 周産期センター Plan A: 院内助産システムを有する周産期センター 安全性 多様性 人間的環境 Plan B: 緊急時、迎え搬送機能を有する周産期センター
新しい周産期センター Plan A:院内助産システムを有する周産期センター Plan B:緊急時、迎え搬送機能を有する周産期センター アクセスの問題 多数の助産師を雇用する必要 その地域に正常分娩が相当数存在する必要 Plan B:緊急時、迎え搬送機能を有する周産期センター 間に合わない症例の存在を受け入れられるか? どちらも、これまでよりコスト高になる。 分娩経費を倍に増やすことができれば可能ではにないか? 政治的な決断の問題
もう少し現実的に 次の周産期医療システムへのステップ 「地域連携への評価」 一次周産期施設の充実(入口であり出口でもある) 可視化の推進 「患者の権利」 補助金依存からの脱却: 赤字体質にならない診療報酬制度 県・県境から自由になる。 人材確保: 「地域周産期医療拠点」以外の特長をもつこと 教育研修活動:新生児呼吸療法FORUM, NCPR,サマースクール, ALSO 災害医療:”mother and child assistance team MCAT” 国際貢献: チーム医療: 特殊診療:胎児手術