コミュニティ情報共有の技術と未来 オープンソースからオープンプロセスへ

Slides:



Advertisements
Similar presentations
一歩進んだインターネットの利 用 ~ Firefox と qwikWeb ~ 遠藤 美純. 今回の内容 ブラウザ Firefox の利用 – タブの利用 – スマートキーワード – 便利な拡張機能 メーリングリスト +Wiki : qwikWeb の 利用 – お気軽・簡単メーリングリスト –Wiki.
Advertisements

IBMユーザ研究会九州研T3 3.Web2.0を実際に使ってみた. Web2.0を実際に使ってみました 研究会をプロジェクトに見立 てて “ Google SpreadSheet ” で会議を開く “ SNS ” でコミュニケーションを補助する “ Wiki ” で成果物を共有する.
電子メールとグループウェア 情報A 第8回授業 Copyright(C)2010 Tsutomu Ohara All rights reserved.
Copyright (C) 2010 Cybozu, Inc. サイボウズ ガルーン 3 マルチレポー ト 活用支援資料 サイボウズ株式会社.
私ノート Keiko Kato. 私ノートとは iPad 版のエンディングノート 財産や相続、お墓など伝えておきたいことが登録できる。
コンピュータウイル ス ~ウイルスの感染を防ぐには~. ( 1 )コンピュータウイルスとはどんなもの なのか、 どんな被害を及ぼすのかを知る。 ( 2 )コンピュータウイルスに感染しないた めの 方法を知る。 1 課 題 ウイルスの感染を防ぐに は.
IBMユーザ研究会九州研T3 5章 Webの発展可能性. WWWの発展が企業に与えるもの 顧客・ユーザのリテラシー向上 顧客・ユーザの操作的な ” 常識 ” の変化 システム開発プロジェクトでの応用 ウェブの発展を、企業はどう捉えて、 自らをどう変えていく必要があるか? 新しいプラットフォームをより深く理解することで、
オートデスク・コラボレーション・サービス オートデスク株式会社
Processing + WiiRemote
情報基礎A 情報科学研究科 徳山 豪.
HG/PscanServシリーズ Acrobatとなにが違うのか?
今回学ぶこと 電子メールとは? 電子メールの受信と送信 電子メールの利用に関する設定 電子メール利用上のマナー.
Android と iPhone (仮題) 情報社会とコンピュータ 第13回
第2章 ネットサービスとその仕組み(前編) [近代科学社刊]
らくらく学校連絡網 スライドショーで見る操作ガイド -3- 登録 抜粋-管理者作業 escで中断、リターンキーで進みます
テキストベースの会議における議論の効率化に関する研究
OpenOffice.org で版管理 西木 毅 第2回関西OpenOffice.org勉強会 大阪電気通信大学
IM、プレゼンス、連絡先 IM 要求に応答する プレゼンスを設定または変更する ユーザーを検索する
コンピュータウイルス ~ウイルスの感染を防ぐには~
バージョン管理超入門 まだファイルコピーしてます?
『地域の活性化,豊かな社会形成のためのICT利活用の 検討について』
インターネット社会の脅威 (インターネット社会のセキュリティ) 開始 再生時間:5分20秒.
第2章 第3節 コミュニケーションにおけるネットワークの活用 情報Cプレゼン用資料(座学24) 担当 早苗雅史
IM、プレゼンス、連絡先 IM 要求を受け入れる Lync 2013 クイック リファレンス プレゼンスを設定または変更する ユーザーの検索
小型デバイスからのデータアクセス 情報処理系論 第5回.
共同ローカリゼーション フレームワーク 井上 謙次.
NetworkAssistTakaoka
一歩進んだインターネットの利用 ~Firefox と qwikWeb~
Garoon on cybozu.com 2014年2月版 新機能 Copyright© 2014 Cybozu.
高等学校 情報A (1)情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 いろいろな情報伝達の方法
第2章 第3節 コミュニケーションにおけるネットワークの活用 情報Cプレゼン用資料(座学24) 担当 早苗雅史
ネットワークコミュニケーション (教科書88ページ).
新規配信先リスト登録 配信実行及び経過確認 配信状況確認 メルマガ関連(オプション)
Microsoft Office 2010 クイックガイド ~応用編~
メッセージ機能 相手にメッセージを送信する 04 送信する相手を選んでメッセージを送信します。
2009/5/22 けーちゃん カンタン  Wikiで情報共有 あいさつ 2009/5/22 けーちゃん
かつしかの人を知る! 街を知る! かつしか地域づくりネット
パソコン同好会のホームページは今回WordPressに変わったのですが 使いづらいとの声が多いので投稿者用の手順書を作ってみました。
Microsoft Office 2010 クイックガイド ~応用編~
川口真司 松下誠 井上克郎 大阪大学大学院情報科学研究科
1 2 ワークスタイルを変えるOffice変革 クラウド導入をサポートする Microsoft CSPプログラムのご案内
メールの利用1 Webメールの利用方法.
京都大学 Open Journal Systems 講習会
すぐに「GIGAPOD」をお試しください
北海道大学 理学院 宇宙理学専攻 惑星宇宙グループ 修士2 年 三上 峻
製品情報 Windows Server 2003のサポート終了をむかえ、ファイルサーバーの入れ替えを検討されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?既存のファイルサーバーをいきなりクラウド化するとインターネット回線の影響で、エクセルやワードのようなサイズの小さなファイルでさえ、開くまでに時間がかかってしまうことがあります。
NASのアクセス履歴を記録・検索できる! マイナンバー制度対応のファイルサーバー(NAS)ログ管理ソフト
Netiquette ネットワークエチケット
すぐできるBOOK -基本設定編-.
オープンソース開発支援のための ソースコード及びメールの履歴対応表示システム
オープンソース開発支援のための リビジョン情報と電子メールの検索システム
メールの仕組みとマナー.
Winter Workshop in Kanazawa -プロセスと方法論-
『コラボレーション技法』 最終回 魅力的な場としてのSFCをつくる ※今日の配布資料1枚 (最終レポートと宿題について) 井庭 崇
情報コミュニケーション入門b 第11回 Web入門(2)
コンピュータにログイン 第1章 コンピュータにログイン 啓林館 情報A最新版 (p.6-13)
コミュニケーションと ネットワークを探索する
Peer-to-Peerシステムにおける動的な木構造の生成による検索の高速化
情報コミュニケーション入門e 第12回 Part1 Web入門(2)
情報コミュニケーション入門e 第12回 Part1 Web入門(2)
開発作業の形式化に基づく プロセス評価 松下誠 大阪大学.
常設チャット トピック フィードを作成してアクティビティをフォローする Lync 2013 クイック リファレンス
Microsoft Office 2010 クイックガイド ~応用編~
Microsoft® Office® 2010 トレーニング
ネット時代のセキュリティ3(暗号化) 2SK 情報機器工学.
オフィスの紙文書削減提案 ワンタッチでらくらく電子ファイリング こんなことはありませんか? サーバレスで 簡単導入 簡単操作で 電子データ
オープンソースソフトウェア開発に見る SCM中心型ソフトウェア開発
クリエイティブ リサーチ 2019/05/20 日本工学院八王子専門学校 M.Katsube.
著作権とライセンス.
5 つの方法 Outlook 活用の 最新の署名 次に、連絡先情報を追加します。 [新規作成] を選択し、署名に名前を付けます。
Presentation transcript:

コミュニティ情報共有の技術と未来 オープンソースからオープンプロセスへ 西本卓也 京都工芸繊維大学 工芸学部 電子情報工学科 助手 http://www-vox.dj.kit.ac.jp/nishi/ nishi@vox.dj.kit.ac.jp 2001/01/27

技術が社会のあり方を決めるべき時代 インターネットはなぜ進歩が早く変化が急なのか? → 仕事を加速する手段が確立されたから 革新的な技術: インターネットはなぜ進歩が早く変化が急なのか? → 仕事を加速する手段が確立されたから 革新的な技術: 既存の組織では追いつけない速度で進化 オープンソース・ソフトウェアになる 技術がもたらした革命 それを社会が受け入れざるを得ない その革命のプロセスを社会が後追いせざるを得ない 2001/01/27

オープンソースからオープンプロセスへ 「オープンソース」への社会の関心は高まる しかし、正しく理解されているとは言えない オープンソースとは: 単なる「価値の共有」ではない 「価値を生み出していくプロセスの共有」である 「オープンソース的な方法論」とは: 技術者に閉じた話題ではない 社会のあちこちで取り組むべき問題 2001/01/27

オープンプロセス・プロジェクト オープンソース・プロジェクト: 成果物のみオープン化 オープンプロセス・プロジェクト: 仕事のプロセスからオープン化 オープンソースはオープンプロセスの結果の一部 2001/01/27

オープンプロセスの技術と未来 インターネット技術/ソフトウェア開発から始まった 必要な技術と手法を、技術者みずから整備してきた その技術と手法は、社会に広まりつつある WWWは技術者の情報共有手段として発明された これから何が当たり前になっていくのか? どのような活動に応用可能なのか? 技術を正しく理解するために 技術を正しく活用するために 2001/01/27

メーリングリスト メール同報=サーバを持っていれば簡単に作れる 「メーリングリスト」システムの重要機能: 参加・退会の処理の自動化(管理者が楽になる) 「サブジェクト=題名」にMLの名前や番号をつける 返信先(reply-to)がMLになるようにする eGroups: 進化したML(メールグループ) 無料でいくつでも作れる メールソフトからもウェブブラウザからも使える さまざまな付加機能 2001/01/27

「引用」と「返信」 非同期型メディアによる双方向的な議論 → 発言の双方向的編集行為が不可欠 例:読んだ発言の一部を引用しコメントする 非同期型メディアによる双方向的な議論 → 発言の双方向的編集行為が不可欠 例:読んだ発言の一部を引用しコメントする どの発言に対する返答であるかを示す 発言のどの部分に注目しているかを示す テキストのカット&ペーストは偉大なる相互編集 2001/01/27

MLはなぜ無料でなくてはならないか? コミュニティへの帰属意識とは あるコミュニティ宛のメッセージを、 不快を感じることなく受け取り続けていること メールを受け取って読むこと=参加者のコスト Aさんだけ読みたくない/読ませたくないメールも 「ABC」のMLを作ると: 「BCだけ」のMLが欲しくなる 「ABCD」のMLも欲しくなる それを許容するような技術/マネジメントであるべき 2001/01/27

MLのセキュリティ対策 無差別広告メール(スパム)を配信しない 巨大なファイル・添付ファイルを拒否する 誤操作で送信されたメールを無限ループさせない メールが届かなくなったメンバーへの送信停止 2001/01/27

権利の管理 公開グループ 非公開グループ 受け取り専用グループ 公開グループ(誰でも投稿できる) 投稿には承認が不要 メッセージはメンバーのみ閲覧ができる メールマガジン/お知らせ専用グループ 管理者だけがメンバーに送信できる 2001/01/27

ファイルの配布と共有 WWW:ファイルをサーバに置いてみんながアクセス ファイルの受信が簡単になった ファイルの送信は簡単ではない eGroupsの共有フォルダ サーバへのファイルの送信が簡単になる 電子メールの添付ファイルよりも安全で確実 問題はバージョン管理 2001/01/27

バージョンとは バージョン: ファイルやシステムに改良や追加した場合に そのことを「世代」によって区別すること バージョン番号: 改良するごとに数字が大きくなる「世代番号」 バージョン管理: 修正や変更の内容や目的を履歴として残すこと 2001/01/27

人手でバージョン管理をすると 名前を変えて最新版とは区別して保存する 日付や通し番号をファイル名につけて保存する スペースの無駄 いつどこを変えたか調べるのが大変 2001/01/27

バージョン管理はどう役立つか バグを見つけるときに役立つ パッチを簡単に作成するしくみを提供する 以前のバージョンに簡単に戻すことができる 変更の統合を簡単にする グループ作業を簡単にする 2001/01/27

ファイルの整理術 管理したくなるバージョンを作る よい習慣 名前をつけて集中管理しよう 安定したファイル名やフォルダ名 置き場と置き方を決める 他の場所に他の置き方をしない 2001/01/27

「編集」情報の管理と共有 テキストファイルは行単位で編集される ファイルそのものではなく、 「どこをどう書き換えたか」という編集情報を表現したい こまめに書き換えるファイル、 大勢が並行して書き換えるファイルを効率よく管理 バージョン管理システムの基本思想 2001/01/27

テキストファイルの差分 古いファイル 新しいファイル 差分(diff) 古いファイル 差分ファイル マージ(patch) 新しいファイル 2001/01/27

CVS=並行バージョンシステム 1.1 1.1 1.1 1.1+変更B 1.1+変更A 1.2 1.2 1.2+変更B 1.3 1.3 リポジトリ=貯蔵庫 作業ファイル 作業ファイル 2001/01/27

散らばるファイルを片づける ロッキング方式: 情報を大勢で共有しつつ、バックアップも取りつつ 同時に一人しか使えないようにする 誰かが編集しているあいだ、他の人はロックが 解除されるまで待たなくてはならない コピー・マージ方式: 誰でも何回でも取り出せる 変更を登録する権利は先着順 先を越された人は、前の人の変更を まず取り込まなくてはならない 2001/01/27

コピー・マージ方式=CVS 誰もが手軽に最新バージョンを取り出して改良できる 並行して行われた他人の改良も取り込める 自分の改良を登録(コミット)するときだけ みんなに報告・相談すればよい 大規模なソフトウェアを何人かで分担して開発 インターネットを通じて不特定多数の人が協力 オープンソースソフトウェアの開発 複数人でのウェブサイトの執筆 2001/01/27

サーバ・クライアントとピアツーピア サーバ・クライアント eGroups : すべてサーバ経由で作業する CVS: 普段はクライアントで作業、 ときどきサーバにつなぐ ピアツーピア サーバがいらない あるいは、どこにあるのかわからない オンライン対戦ゲーム Groove 2001/01/27

共有情報の編集とは 編集とはそれ自身が価値創造プロセスである 編纂=コンパイル:機械的作業 編集=エディット:連想と要約を伴う創造的作業 編集とは人生のコストである ソフトウェアの時代 素材を生み出すコストの低減 素材を編集するコストの比率が増大、軽視されがち 編集しなくてすむことは編集しない 2001/01/27