[第2報] 1%メトロニダゾール(フラジール) 軟膏の有効性と製剤の安定性の検討 株式会社サノ・ファーマシー 佐野薬局中通一丁目店 軟膏の有効性と製剤の安定性の検討 [第2報] 株式会社サノ・ファーマシー 佐野薬局中通一丁目店 ◎堀野玄 加藤健一 小森陽介 一般社団法人 秋田県薬剤師会試験センター 鳥海良寛 小丹知子 嶋田逸大 仲小路皮ふ科医院 佐藤静生
【目的】 1%メトロニダゾール軟膏は、院内製剤として、酒さや皮膚癌の悪臭予防などに使用されているが、軟膏調製後の安定性データに関しては報告数が少ない。第1報では製剤の有効性や副作用などについて検討した。 今回(第2報)は、製剤の含有量の経時的変化、外観の変化および、重量の変化(追加)について検討した。
1%メトロニダゾール軟膏の調製方法 フラジール膣錠 250mg 8錠を錠剤粉砕機にて粉砕 微細粉末化 プロピレングリコール 8mL 親水軟膏( 日興 ) 全量 200g フラジール膣錠 250mg 8錠を錠剤粉砕機にて粉砕 微細粉末化 プロピレングリコール 8mLを加え泥状化 軟膏調剤機「あわとり練太郎」にて1分練合 親水軟膏を少量ずつ加え、全量約 50g、100gの時点で軟膏調剤機にて各1分練合 さらに親水軟膏を加え全量 200gとし、軟膏調剤機にて1分練合する 参考文献:1 ) Bleichar P.A. et al. : Arch.Dermatol., 123, 609‐614 ( 1987 )
【実験方法】 調製した軟膏を5段階(上部1~下部5)に分けたのち、中間層3を定量試験用とした。透明な気密容器( プラ壺 20mL )に充填し、条件①4℃以下・遮光、条件②30℃±2・遮光、条件③30℃±2・光照射の3条件で保存した。 機器 ・恒温器 1上部 2 3中間 4 5下層 ・約 1000lux 白色蛍光灯下保存 ・冷蔵庫 ・ラミジップ+缶 温度及び湿度変化についてはサーモレコーダーで記録を行った また、測定時期はフラジール膣錠 250mgの旧インタビューフォームに基づき、 調製後0日、 3日、7日、14日、21日、30日、60日、90日後とした
【試験方法】 1)外観試験 色調変化等を目視、写真撮影にて確認した 2)定量試験(有効成分メトロニダゾール) HPLC法を用い、測定波長320nmでメトロニダゾールと内 標準物質とのピーク面積比から算出した(n=3) 3)重量試験(追加) 測定時期の重量を計量した(n=3)
【結果】 1)外観試験 条件3のみ21日目から淡黄色がみられはじめた 1)外観試験 条件3のみ21日目から淡黄色がみられはじめた 参考:フラジール膣錠の製剤安定性試験においても、20~26℃・約1000lxの光照射において、時間経過とともに徐々に黄白色~緑色を帯びた黄色への変化が認められている
写真1 試験開始時 写真2 試験開始14日後 写真3 試験開始21日後 写真4 試験開始90日後
※メトロニダゾールはフラジール膣錠の 安定性試験データを抜粋 2)定量試験 14日目以降、条件③では明らか な下降曲線(0.179%/日)が 見られた ※メトロニダゾールはフラジール膣錠の 安定性試験データを抜粋
3)重量試験(追加) 3平均での90日後の変化率は 条件①99.32% 条件②96,18% 条件③96.43% となり、重量では4℃と30℃±2 では5から6倍の変化となった。
【考察①】 外観試験の結果から、条件3のみ21日目から淡黄色への変化が観察されており、光による外観変化はあり、遮光保存により防ぐ事が出来ると考えられる。 【考察②】 定量試験の結果から、14日目までは残存率に大きな 差はないが、14日目以降では、条件3では明らかな低下が認められるため、光が残存率に与える影響はあると考えられる。 【考察③】 重量試験の結果から、30℃±2保存条件では、経時的に重量が低下していくことが確認されたため、含水量低下などによる相対的な残存率増加を引き起こす可能性が考えられる。
【結語】 全条件下の残存率は90日間で88.1%から104、8%であり、軟膏での有効成分含有量の誤差を10%程度と考えれば、1%メトロニダゾール軟膏は安定性は高いと言える。しかしながら、14日目以降は光や温度による影響が予想され、保存に関しては考慮が必要である。さらに、患者レベルでの実使用状況となれば、落下細菌や汚染の問題もあるため、総合的に考えると冷所・遮光保存を推奨する。 第1報では、その有効性と安全性が確認され、今回、安定性を確認することができた。この結果が、酒さ、皮膚癌の悪臭予防などに悩まれる患者様の治療に寄与する事を望む。
ご静聴ありがとうございました