大阪大学大学院国際公共政策研究科 教 授 大久保 邦彦 法学部 1年生配当科目 民法入門 第4講 契約の成否と内容確定 大阪大学大学院国際公共政策研究科 教 授 大久保 邦彦
【契約】⇒【債権・債務】 契 約 債権 債務 有効に成立した
契約の成否と有効要件 契 約 内 容 成 立 不成立 無 効 有 効 取消し 取消可 取消不可 取消権消滅 確定的有効
契約のプロセス 契約 成立 契約 終了 契約締結過程 契約履行過程 契約内容 債務 発生 債務 履行
〔ケース1〕 YはX画廊でゴッホの「ひまわり」を見つけ、 それを20億円で購入した。 しかしその後、その「ひまわり」は それを20億円で購入した。 しかしその後、その「ひまわり」は 贋作であることが判明した。 契約は成立するか? 契約が成立するとして 如何なる内容の契約が成立するか? www.korega-art.com/img/art/gogh/g01.jpg www.korega-art.com/img/art/gogh/g01.jpg
〔ケース2〕 Yは蚤の市でゴッホの「ひまわり」を見つけ、 それをXから20万円で購入した。 しかしその後、その「ひまわり」は しかしその後、その「ひまわり」は 贋作であることが判明した。 契約は成立するか? 契約が成立するとして 如何なる内容の契約が成立するか? www.korega-art.com/img/art/gogh/g01.jpg www.korega-art.com/img/art/gogh/g01.jpg
b.の可能性 売 主 X 所 所有権移転債務 買 主 Y 占 引渡債務 ①その本物の絵を渡す ②その絵を渡す 金 代金支払債務
特定物のドグマ 「特定物売買において、瑕疵のあ る特定物の給付も、瑕疵のない 完全な履行である」とする考え方。 これによると、特定物の性質は、 効果意思に入りえないので、 債務内容には含まれない。
①「その本物の絵を渡す」 債務が存在する場合 本物の絵を引き渡す 必要がある 偽物の絵を引き渡した 債 務 現 実 債務不履行
債権者の救済方法 債務不履行 の事実 ① 強制履行 ② 損害賠償 債務不履行 の事実 + 帰責事由 ③ 契約解除
契約解除の効果(民545) 売 主 X 所 買 主 Y 解除 占 原状回復請求権 金 原状回復請求権
②「その絵を渡す」 債務しか存在しない場合 その絵を引き渡す 必要がある その絵を引き渡した 債 務 現 実 債務はきちんと履行されている
②「その絵を渡す」 債務しか存在しない場合 「この絵を20億円で売ります」 売 主 X 買 主 Y 本物のゴッホの絵を買おう 「その絵を20億円で買います」 錯誤 その絵の売買が成立する
【錯 誤】⇒【無 効】 ? 錯 誤 無 効 要素の錯誤 表意者のみ 主張可能 重過失の不存在
契約既履行⇒給付利得 売 主 X 所 所 買 主 Y 無効 占 給付利得返還請求権 金 給付利得返還請求権
契約のプロセス 契約 成立 問題 契約 終了 問題 債務 発生 債務 履行 契約締結過程 契約履行過程 どちらに問題があるか 決めるのは 契約内容 債務 発生 債務 履行
契約の問題の所在 問題の所在を知るには、 「契約内容」「債務内容」 をまず、 知る必要がある。
契約の成否
【契約】⇒【債権・債務】 契 約 債権 債務 有効に成立した
契約の成否と有効要件 契 約 内 容 成 立 不成立 無 効 有 効 取消し 取消可 取消不可 取消権消滅 確定的有効
売買契約の成立 買 主 X 申込み 売 主 Y 「このパソコン28万円に なるなら買うんですけど」 「いいですよ」 承諾 30万円
両当事者の意思表示、つまり、申込みと承諾という意思表示が合致する ことによって成立する法律行為 契 約 両当事者の意思表示、つまり、申込みと承諾という意思表示が合致する ことによって成立する法律行為 申込み X Y 承 諾
売買契約の不成立 買 主 X 売 主 Y 「このパソコン25万円に なりませんか?」 「それは勘弁してください」 30万円
売買契約の不成立 買 主 X 売 主 Y 「この店ではパソコンを 配達してくれるのかね?」 「もちろんお届けします」 30万円
契約の成立 契約内容の 核心的部分につき 合意があれば、 契約は成立する。
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申込みの誘引 他人を勧誘して申込みをさせようとする意思の表示。 貸家の広告はその例。 貸家の広告に応じて他人が借りたいという意思表示をしても、直ちに賃貸借契約が成立するわけではなく、広告をした者はその相手方に貸すかどうかを判断する自由を持っている。 このように相手方の意思表示だけで直ちに契約が成立しないという点で「申込み」と異なる。 『法律用語辞典〔第3版〕』(有斐閣) 出典:『法律用語辞典〔第3版〕』(有斐閣)
コンビニでの売買
自動販売機での売買
契約自由の原則 個人は、契約によって、自由に法 律関係を形成できる、という原則 締約の自由 相手方選択の自由 内容形成の自由 方式の自由
要式行為・要物契約 申込み A B 承 諾 +α 法令の定める 一定の方式 物の引渡し
保証契約(民446) 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
諾成契約と要物契約 諾成契約 要物契約 合意だけで成立する契約 物の引渡しを成立要件とする契約。たとえば、 (例)消費貸借、使用貸借、寄託 合意だけで成立する契約 要物契約 物の引渡しを成立要件とする契約。たとえば、 (例)消費貸借、使用貸借、寄託 非典型契約では、質権設定契約、 供託、敷金設定契約、手付契約
交叉申込み 売 買 主 主 X Y 申込み 申込み 「甲パソコンを28万円で 買いたいんですけど」 「甲パソコンを28万円で 売りたいんですけど」 申込み
意思実現(民526Ⅱ) 宿 泊 客 X 申込み Y ホ テ ル 「5月1日から2泊、シングル ルームを予約したい」 部屋の 準備
X 母 申込みと承諾の合致による 契約成立 花屋 「甲の花束を母に届けてください」 「わかりました」 花 花屋の広告を見て 甲の花束を母に 贈ろうと思って 母
申込みと承諾の合致による契約成立 花屋 「甲の花束を届けてください」 X 花 花屋の広告を見て 甲の花束を母に 贈ろうと思って 母
意思実現による 契約成立 花屋 「甲の花束を母に届けてください」 X 花 花屋の広告を見て 甲の花束を母に 贈ろうと思って 母
ネガティブ・オプション Y 通 販 業 者 X 特定商取引法59 申込み 「ご不要の場合は1週間 以内に返送してください。 期間内に返送されないときは 購入を承諾していただいたものと みなします。」 申込み 特定商取引法59
特定商取引法59条1項 (売買契約に基づかないで送付された商品) 販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合・・・において、その商品の送付があつた日から起算して14日を経過する日までに、その商品の送付を受けた者がその申込みにつき承諾をせず、かつ、販売業者がその商品の引取りをしないときは、その送付した商品の返還を請求することができない。
事実的契約関係 合意によらずに契約成立を認める見解 行為能力制度の不適用 意思表示の効力に関する規定の不適用 普通の契約(民9但)、侵害利得
意思表示
意思表示 意思表示とは、 一定の私法上の法律効果 を発生させるという意思を 表示する行為である。 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』108頁 意思表示とは、 一定の私法上の法律効果 を発生させるという意思を 表示する行為である。 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』108頁 出典: 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』108頁
意思表示の構造 動機 効果意思 表示意識 表示行為 “友達が結婚するので、 お祝いをしよう”と思うこと “甲時計を5万円で買いたい” “「甲時計を5万円で買います」 と言おう“と思うこと 表示意識 「甲時計を5万円で買います」 と言うこと 表示行為
意思表示の効力発生時期 意思の表白 発 信 到 達 了 知
意思表示の効力発生時期 《原則》 到達主義(民97Ⅰ) 《例外》 発信主義(民526Ⅰ)
例外の例外 電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律4条 民法第526条第1項及び第527条の規定は、隔地者間の契約において電子承諾通知を発する場合については、適用しない。
契約内容の確定方法
契約内容 契約内容 契約目的 債務 内容 取消権 解除権
契約内容の確定方法 契約 欠缺 合意 補充 狭義の 解釈 付随的部分 核心的部分 公序良俗違反 補充的解釈 慣 習 任意法(規) 修正的解釈 目的物の引渡場所 代金の支払時期 核心的部分 目的物 補充 代金 狭義の 解釈 公序良俗違反 補充的解釈 慣 習 任意法(規) 修正的解釈
任意規定による欠缺補充 〔ケース3〕ワンルーム・マンションを借りた。 契約書には、賃貸借の目的物と家賃が 月6万円であることは書かれているが、 《いつ、どこで家賃を支払うべきか》については何も書かれていない。 家賃は、いつ、どこで支払えばよいか? 〔解決〕毎月末に、債権者(賃貸人)の住所で 支払うべき(民614, 484)。
パンデクテン体系 民法総則 法律行為 物権編 債権編 親族編 相続編 債権総則 契 約 事務管理 不当利得 不法行為 契約総則 売 買 契 約 事務管理 不当利得 不法行為 契約総則 売 買 消費貸借 賃貸借 雇 用
任意規定の区別 -補充規定と解釈規定- 任意規定 補充規定 解釈規定 意思表示の意味が 契約欠缺を 不明確な場合に、 補充する規定 この区別は 理論的に不可能実益も乏しい 任意規定 補充規定 解釈規定 森田修『新版注釈民法(3)』228頁。 意思表示の意味が 不明確な場合に、 その意味を確定する規定 契約欠缺を 補充する規定 出典: 森田修『新版注釈民法(3)』228頁
慣習による欠缺補充 〔ケース4〕〔ケース3〕で、このワンルーム・マンションは大阪府にあり、大阪府には《建物の賃料は前月末までに支払う》旨の慣習が仮にあったとしたらどうか? 〔解決〕建物の賃料は前月末までに支払うべき(民92)。 慣習>任意規定
補充的解釈による 欠缺補充 〔ケース5〕建物賃貸借の契約書に 「建物内で犬猫を飼ってはならない」 と規定されているとき、 借主は建物内で猿を飼うことができるか? 〔解決〕《もし当事者が補充を必要とする点-〈猿を飼えるか〉という問題-について合意をしていたとすれば、いったいどのような合意をしていたであろうか》を問題にして補充をする。
契約欠缺の補充方法 ① 補充的解釈 ② 慣 習 ③ 任意法(規) 強行法規>当事者の合意> 補充的解釈>慣習>任意法規 ★当事者により身近な基準が優先する ① 補充的解釈 ② 慣 習 ③ 任意法(規) 強行法規>当事者の合意> 補充的解釈>慣習>任意法規
契約の解釈 磯村保「法律行為の解釈方法」 『民法の争点Ⅰ』30-33頁、 石田喜久夫編/磯村保執筆 『現代民法講義1』(法律文化社・ 1985)142-150頁、159-163頁。
契約の解釈 狭義の解釈 補充的解釈 修正的解釈 本来的解釈:当事者の付与した主観的 意味が一致する場合 規範的解釈:当事者の付与した主観的 意味が一致する場合 規範的解釈:当事者の付与した主観的 意味が一致しない場合 補充的解釈 修正的解釈
契約内容の確定方法 契約 欠缺 合意 補充 狭義の 解釈 付随的部分 核心的部分 公序良俗違反 補充的解釈 慣 習 任意法(規) 修正的解釈 目的物の引渡場所 代金の支払時期 核心的部分 目的物 補充 代金 狭義の 解釈 公序良俗違反 補充的解釈 慣 習 任意法(規) 修正的解釈
(広義の)法の解釈 欠缺補充 (狭義の)法の解釈 反制定法的法創造
規律を要する事態 制定法の欠缺 制定法 欠缺補充 狭義の 解釈 反制定法的 法創造
狭義の解釈
契約内容の確定方法 契約 欠缺 合意 補充 狭義の 解釈 付随的部分 核心的部分 公序良俗違反 補充的解釈 慣 習 任意法(規) 修正的解釈 目的物の引渡場所 代金の支払時期 核心的部分 目的物 補充 代金 狭義の 解釈 公序良俗違反 補充的解釈 慣 習 任意法(規) 修正的解釈
共和汚職事件 阿部文男長官 共和・森口五郎 レンガ1個は1000万円 「レンガを3つ持って来い」 レンガ1個は1000万円 「承知しました」
丸紅ダイレクト事件 顧 客 丸 紅 パソコンを 198,000円で売ろう パソコンを 19,800円で買おう 「パソコンを19,800円で売ります。」 丸 紅 顧 客 「パソコンを19,800円で買います。」
両当事者の意思表示、つまり、申込みと承諾という意思表示が合致する ことによって成立する法律行為 契 約 両当事者の意思表示、つまり、申込みと承諾という意思表示が合致する ことによって成立する法律行為 申込み X Y 承 諾
意思表示 意思表示とは、 一定の私法上の法律効果 を発生させるという意思を 表示する行為である。 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』108頁 意思表示とは、 一定の私法上の法律効果 を発生させるという意思を 表示する行為である。 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』108頁 出典: 山本敬三『民法講義Ⅰ〔初版〕』108頁
〔ケース6〕 XがYに 「鉛筆1グロスを1万円で売りましょう」 と言ったところ、 Yは「それなら買う」と答えた。
意思表示の構造 動機 効果意思 表示意識 表示行為 “鉛筆が切れてるので 鉛筆を買おう”と思うこと “鉛筆12ダースを1万円で 買いたい”と思うこと 効果意思 “「鉛筆1グロスを1万円で買 います」と言おう“と思うこと 表示意識 「鉛筆1グロスを1万円で 買います」と言うこと 表示行為
売買契約の成立 買 売 主 主 X Y 鉛筆12ダースの売買が成立する 12 12 意思 意思 「鉛筆1グロスを1万円で 売ります。」 鉛筆を 12 ダース 買おう 鉛筆を 12 ダース 売ろう 「鉛筆1グロスを1万円で 買います。」 意思 意思 鉛筆12ダースの売買が成立する
契約の拘束力の根拠 私的自治の原則・自己決定原理・意思原理 自己責任の原則(契約信義・帰責原理) 信頼原理・取引安全 等価性原理 基本的な人格的利益の保護 自由原理 経済的効率性
〔ケース7〕 〔ケース6〕で、Xは1グロスが12ダースであることを知っていたが、Yは1グロスを20ダースだと誤解していた場合、契約は成立するか? 成立するとして、何ダースの鉛筆の売買契約が成立するか? また、この契約は有効か?
〔ケース7〕 の前に 買 売 主 主 X Y 契約は成立しない 20 12 「鉛筆12ダースを1万円で 売ります。」 鉛筆を 20 ダース 買おう 鉛筆を 12 ダース 売ろう 「鉛筆20ダースなら1万円で 買います。」 契約は成立しない
〔ケース7〕 買 売 主 主 X Y 錯誤 鉛筆12ダースの売買が成立する 帰責性 20 12 意思 信頼 「鉛筆1グロスを1万円で 売ります。」 売 主 X 買 主 Y 鉛筆を 20 ダース 買おう 鉛筆を 12 ダース 売ろう 錯誤 意思 「鉛筆1グロスを1万円で 買います。」 信頼 鉛筆12ダースの売買が成立する
契約の拘束力の根拠 私的自治の原則・自己決定原理・意思原理 自己責任の原則(契約信義・帰責原理) 信頼原理・取引安全 等価性原理 基本的な人格的利益の保護 自由原理 経済的効率性
錯 誤(民95) 意思表示は、法律行為の要素に 錯誤があったときは、無効とする。 ただし、表意者に重大な過失が 錯 誤(民95) 意思表示は、法律行為の要素に 錯誤があったときは、無効とする。 ただし、表意者に重大な過失が あったときは、表意者は、自らそ の無効を主張することができない。
【錯 誤】⇒【無 効】 錯 誤 無 効 要素の錯誤 表意者のみ 主張可能 重過失の不存在
契約の拘束力の根拠 私的自治の原則・自己決定原理・意思原理 自己責任の原則(契約信義・帰責原理) 信頼原理・取引安全 等価性原理 基本的な人格的利益の保護 自由原理 経済的効率性
〔ケース8〕 〔ケース6〕で、Xは1グロスを10ダースだと誤解し、Yは1グロスを20ダースだと誤解していた場合、契約は成立するか? 成立するとして、何ダースの鉛筆の売買契約が成立するか? また、この契約は有効か?
学 説 客観的解釈説(伝統的通説) 意味付与比較説(近時の有力説) 契約の解釈とは、当事者が合意した 学 説 客観的解釈説(伝統的通説) 契約の解釈とは、当事者が合意した 表示の客観的意味を明らかにすることであり、 当事者の内心の意思を探求することではない。 意味付与比較説(近時の有力説) 契約当事者がそれぞれ表示に付与した意味のうち いずれが正当であるかに従って 契約の意味を確定すべきだとする。
× × × × 〔ケース8〕 買 売 主 主 X Y 契約は成立しない 20 10 意思 意思 正当な 信頼 正当な 信頼 「鉛筆1グロスを1万円で 売ります。」 売 主 X 買 主 Y 鉛筆を 20 ダース 買おう 鉛筆を 10 ダース 売ろう × × 「鉛筆1グロスを1万円で 買います。」 意思 意思 × × 正当な 信頼 正当な 信頼 契約は成立しない
〔ケース9〕 〔ケース6〕で、Xは1グロスを6ダースだと誤解し、Yは1グロスを10ダースだと誤解していた場合、契約は成立するか? 成立するとして、何ダースの鉛筆の売買契約が成立するか? また、この契約は有効か?
〔ケース9〕 買 売 主 主 X Y 客観的解釈説によると 鉛筆12ダースの売買契約が成立する 10 6 「鉛筆1グロスを1万円で 売ります。」 売 主 X 買 主 Y 鉛筆を 10 ダース 買おう 鉛筆を 6 ダース 売ろう 「鉛筆1グロスを1万円で 買います。」 客観的解釈説によると 鉛筆12ダースの売買契約が成立する
〔ケース10〕 〔ケース6〕で、XもYも1グロスを10ダースだと誤解していた場合、契約は成立するか? 成立するとして、何ダースの鉛筆の売買契約が成立するか? また、この契約は有効か?
〔ケース10〕 買 売 主 主 X Y 鉛筆10ダースの売買が成立する 10 10 意思 意思 「鉛筆1グロスを1万円で 売ります。」 鉛筆を 10 ダース 買おう 鉛筆を 10 ダース 売ろう 「鉛筆1グロスを1万円で 買います。」 意思 意思 鉛筆10ダースの売買が成立する
誤表は害さず falsa demonstratio non necet 契約当事者間で真意が認識されたか共通であるときは、その真意と通常の意味において一致しない表示が誤ってなされたとしても、契約はその真意に即して妥当する。 小林一俊「契約における合意と誤表」『現代契約法大系 第1巻』286頁。 出典: 小林一俊「契約における合意と誤表」『現代契約法大系 第1巻』286頁
修正的解釈
例文解釈 (東高判S31・8・17) 契約書の 条項などに書く 決まりきった文章 ・・・・・・前記特約条項は全部が印刷のされたものである。ところで世人がかような用紙を用いて証書を作成しこれをさし入れるにあたっての当事者の意思はたんに貸借について証書を作るというだけであって、その記載内容中、当事者の具体的意識にのぼるのはその用紙に書入れをしなければ意味のない部分にかぎられその他の印刷のみの記載内容は全く問題としていないのが通例であり、したがつてかかる場合には、その調印し、さし入れた証書にハツキリと印刷してあるに拘らず、たんに例文にすぎず、当事者においてこれに拘束せられる意思を有しないものと解するのが相当である。
契約の修正的解釈 しかし、当事者の現実の意思は 契約文言に対応しており、 《その意思どおりの効力を 認めることが相当でない》 しかし、当事者の現実の意思は 契約文言に対応しており、 《その意思どおりの効力を 認めることが相当でない》 という裁判所の価値判断が、 法律行為の解釈の名の下に なされている。
契約の解釈⇒内容規制 契約の解釈 例文解釈 修正的解釈 内容規制