世界の人口問題と グローバル・ガヴァナンス

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Copyright © 2009 Pearson Education, Inc. Publishing as Pearson Addison-Wesley 第 4 章 人口と経済成長.
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世界の人口問題と グローバル・ガヴァナンス 世界人口の一般的傾向 人口増加とその傾向 人口増加率の低下傾向 知的エンターテインメント1, 2, 3 開発途上地域と高い人口増加率 都会への人口集中 人口急増の要因および緊急課題 人口増加に寄与した歴史的出来事 貧しい家庭の子沢山 グローバルHIV/AIDS 世界人口の高齢化 人口問題における「グローバル・ガヴァナンス」 第一回国際(あるいは国連)人口会議(ルーマニア、1974年) 第二回国際(or 国連)人口会議(メキシコ、1984年) 国際 (or 国連) 人口開発会議(カイロ、1994年) まとめ

世界人口問題とグローバル・ガヴァナンス 世界人口の一般的傾向 2006年5月8日、6:44 GMT現在、世界人口は、 6,514,532,573人(“World POPClock Project”of the International Programs Center, U.S. Bureau of the Census) http://www.census.gov/cgi-bin/ipc/popclockw 人口増加とその傾向 世界人口:1999年10月に60億人 西暦紀元前8000年頃=世界人口=:=500万人 西暦元年までに概ね2~3億人 1650年までに約5億人 1850年頃に10億人 1930年頃に20億人 1960年頃に30億人 1975年頃に40億人 1987年頃に50億人 1999年10月60億人

Countries With the Highest and Lowest Fertility Worldwide LIFETIME BIRTHS PER WOMAN HIGHEST Niger 8.0 Guinea-Bissau 7.1 Mali 7.1 Somalia 7.0 Uganda 6.9 Afghanistan 6.8 Angola 6.8 Burundi 6.8 Liberia 6.8 Dem. Rep. of Congo 6.7 Sierra Leone 6.5 LOWEST Belarus 1.2 Bosnia-Herzegovina 1.2 Czech Republic 1.2 Moldova 1.2 Poland 1.2 San Marino 1.2, Slovakia 1.2 Slovenia 1.2, South Korea 1.2, Taiwan 1.2, Ukraine 1.2 Countries with the Highest and Lowest Life Expectancy HIGHEST LIFE EXPECTANCY (YEARS) Japan 82 Iceland 81 Sweden 81 Australia 80 Canada 80 France 80 Italy 80 Norway 80 Spain 80 Switzerland 80 LOWEST LIFE EXPECTANCY (YEARS) Botswana 35 Lesotho 35 Swaziland 35 Zambia 37 Angola 40 Sierra Leone 40 Zimbabwe 41 Afghanistan 42 Liberia 42 Mozambique 42 Population Reference Bureau (PRB), 2005 World Population Data Sheet, p.2.

The World’s 10 Largest Countries in Population 2005 Rank Country Population (millions) 1 China 1,304 2 India 1,104 3 United States 296 4 Indonesia 222 5 Brazil 184 6 Pakistan 162 7 Bangladesh 144 8 Russia 143 9 Nigeria 132 10 Japan 128 2050 Rank Country Population (millions) 1 India 1,628 2 China 1,437 3 United States 420 4 Indonesia 308 5 Pakistan 295 6 Brazil 260 7 Nigeria 258 8 Bangladesh 231 9 Dem. Rep. of Congo 183 10 Ethiopia 170 Population Reference Bureau (PRB), 2005 World Population Data Sheet, p.2.

トーマス・マルサスの警告 (An Essay on the Principle of Population, 1798) 世界人口 トーマス・マルサスの警告 (An Essay on the Principle of Population, 1798) 人口増加は幾何級数的(あるいは等比級数的)に増加するが (A)、 耕地の量、すなわち食糧生産は等差(算術)級数的にしか増大しない (B)  (A) > (B) ∴大規模な飢餓と死。自然の人口調整の仕組み=人口過剰→食糧供給量不足→死亡率増大→生産される食糧が維持できるまで人口が減少。 ←悲観論者 vs. 楽観論者 指数関数的人口増加 Exponential growth: 22, 23, 24, 25, …28 Jカーブ 百合(蓮)の池の喩え

現在の人口増加傾向の意味: 現在概ね年間1.2% ほどの人口増加 で、約 7,700万人/年ほどの増加 世界人口 2002年現在のドイツの人口 = 約8,240万人 同年のベトナムの人口 = 約7,970万人 10億人という数の意味 同年の12.8億人強という中華人民共和国の人口の8割弱 ヨーロッパの人口(約7億2,800万人)と北アメリカの人口(約3億190万人)の合計よりわずかに少ない数。 国連人口部の2002年版将来人口推計(中位推計) 2003年に63億人以上 2050年には89億人以上(国連人口部、2002年版将来人口推計の中位推計)

(b) 人口増加率の低下傾向 1965-70年間の世界の人口増加率 = 2.04 %(ピーク) 1975-1980年の間は1.72 % 世界人口 (b) 人口増加率の低下傾向 1965-70年間の世界の人口増加率 = 2.04 %(ピーク) 世界人口の2/3を占めていた途上国での死亡率の低下と高率の出生率 1975-1980年の間は1.72 % 1995-2000年の間には1.33 % 2045-50年には0.34 %まで低下する(見込み)

(c) 開発途上地域と高い人口増加率 開発途上地域の世界人口比 開発途上国の人口増加率 開発途上国の人口が多い理由 1950年:世界人口の68%は開発途上国の人口 1995年:世界人口の80% 2025年:世界人口の85% (国連推計) 開発途上国の人口増加率 1965-70年:2.04%=先進国 (0.81%)、途上国(2.52%) 1990-95年: 1.48% = 先進国(0.40%)、途上国(1.77%) 開発途上国の人口が多い理由 人口増加率が高い。 集積された人口ベースが大きい。 先進地域と比べて結婚年齢が低く平均世代間隔が短い。 *人口モメンタム(Population momentum):年齢構造の若さに関連して、人口の内部に貯えられた人口置き換え水準の数だけ子供を産むようになると仮定した場合の人口規模を、現在の人口規模で割った率で表示される。

(d) 都会への人口集中 途上国:農村部→都会への人口移動が多い。 途上国の都市人口の推計30-40%が 世界の人口 (d) 都会への人口集中 途上国:農村部→都会への人口移動が多い。 途上国の都市人口の推計30-40%が 「掘っ建て小屋の町」(shanty towns)に住んでいる。 途上国の「百万都市」(megacities:人口500万以上の都市) 1950年:ブエノスアイレスと上海のみ 2000年までに 35 都市に増える(劣悪な住環境、公害、下水道施設の不備、安全な飲み水や適切な保健・衛生施設の欠如)。 世界的な都市人口の増大傾向 2000年:47%の人口が都市に居住 2008年:史上初めて、都会人口が農漁村人口を上回ると推定されている。 2030年には、世界人口の60%が都会住人との予測。

2. 人口急増の要因および緊急課題 (a) 人口増加に寄与した歴史的出来事 世界の人口 2. 人口急増の要因および緊急課題 (a) 人口増加に寄与した歴史的出来事 ・ 紀元前8000年頃始まった農業革命から産業革命までの一万年間に漸次人口増加←→主に疫病と栄養不良のため高い死亡率=人類全体としての人口増加率低める。 ・ 18-19世紀における先進開発国での産業革命→人口急増 ・ 1940年代に始まった科学的革新と経済活動の爆発的拡大→地球の食料生産能力向上+病気治療の飛躍的進歩。 ・ 第二次世界大戦後の人口急増:第三世界諸国に対する予防接種使用を含む公衆衛生施策の普及→天然痘、肺結核、黄熱及びコレラのような疾病を抑制。

・ 貧困家族では子どもも労働力。野良仕事や家事手伝い。 ・ 社会保障制度の不備→親は子どもに老後の世話を託す。 世界の人口 (b) 貧しい家庭の子沢山 ・ より多くの子どもの生存を望む。  ・ 貧困家族では子どもも労働力。野良仕事や家事手伝い。 ・ 社会保障制度の不備→親は子どもに老後の世話を託す。 ・ 子どもを就労させて家族の収入源の一つを確保。 ・ 伝統と宗教・大家族 ・ 避妊具等の産児制限用具の入手困難あるいは不能。 

世界の成人15~49歳人口の1.2%がHIV/AIDSに罹患→サブサハラ地域が最も深刻で、罹患率は9%。 世界の人口 (c) グローバルHIV/AIDS (Human immunodeficiency virus/acquired immune deficiency: ヒト免疫不全ウィルス/後天性免疫不全症候群) 世界の成人15~49歳人口の1.2%がHIV/AIDSに罹患→サブサハラ地域が最も深刻で、罹患率は9%。 世界中の4000万人の大人と子供がHIV/AIDSに罹患 南アフリカで500万人、インドで400万人弱 最も罹患率の高いのがボツワナ:大人の38.8%が罹患(推定)

(d) 世界人口の高齢化 ①世界的な人口の高齢化傾向 世界人口の高齢化率(65歳以上の人口比率)の推移: 先進地域・発展途上国ともに高齢化 世界の人口 (d) 世界人口の高齢化 ①世界的な人口の高齢化傾向 世界人口の高齢化率(65歳以上の人口比率)の推移: *1950年=5.1%、’60年=5.3%、’70年=5.4%、’80年=5.9%、’95年= 6.5%、2000年=6.8%,以後、2020年=8.8%、2040年=13.1%、2050年 には14.7%に達する見込み。 *1998年、 80歳以上が6,600万人(約100に1人)、2050年には3億7,000 万人に増加か? *1998年、100歳以上が13万5,000人、 2050年には220万人か? 先進地域・発展途上国ともに高齢化 アメリカ,東アジア,ヨーロッパでは,1950年以降高齢化率が上昇、アフリ カや東アジア以外のアジアでも1990年代から21世紀にかけて高齢化率が上昇 する。

+最近の出生率の低下(スウェーデンだけは,1989-93年にかけて合計特殊出生率が一時的に2.0以上に回復)。 世界の人口 ②主要先進諸国の人口の高齢化 1995年現在,世界で最も高齢化率の高い国はスウェーデン(17.3%) 、オランダ(16.0%)、ギリシャ(15.9%)、ノルウェー(15.9%)、ベルギー(15.8%)、イギリス(15.5%)、デンマーク(15.2%)、ドイツ(15.2%)、スペイン(14.9%)、フランス(14.9%)、そしてオーストリア(14.9%) (United Nations1995)。 +最近の出生率の低下(スウェーデンだけは,1989-93年にかけて合計特殊出生率が一時的に2.0以上に回復)。 *合計特殊出生率:特定の年の出生率の下で、一人の 女性が一生の間に産むとされる平均子供数。 *人口置き換え水準:与えられて死亡水準で新旧世代 交替に必要な再生産を保つための出生水準。つまり、 1カップルにつき彼らの人口の置き換えに必要な2人以 上の子供を生むこと。人口置き換え水準を維持するた めには合計特殊出生率が2.0を少し上回る必要がある( 死亡率の低い国で2.1)。

3. 人口問題における「グローバル・ガヴァナンス」 世界の人口 3. 人口問題における「グローバル・ガヴァナンス」 ―途上国人口問題解決のための三つ主な政策目標 (1) 家族計画による望まれざる妊娠の回避 アンメット・ニーズの充足(家族計画の知識・薬品・避妊器具へのアクセスによって、望まれざる妊娠の回避のニーズを満たす必要あり)。 約1億2,000万組のカップルのニーズの充足。 (2) 人間開発による家族規模縮小へのニーズの掘り起こし  幅広い教育活動、女性の地位と役割の向上 (3) 人口モメンタムの低減 過去の高出生率の蓄積結果である巨大な若い人口の存在、若い結婚年齢、短い出産間隔による人口増加の抑制=法的に結婚年齢を上げる。青少年に人口・家族計画教育を行うなど。

人口増加が貧困の原因なのか、低開発なのかをめぐって、富める国と貧しい国との間で論争が起こった。 世界の人口 国際人口会議@ルーマニア、1974年 人口増加が貧困の原因なのか、低開発なのかをめぐって、富める国と貧しい国との間で論争が起こった。 アメリカと他の先進諸国は、第三世界諸国における産児制限処置の必要を主張する一方、第三世界諸国は一層の経済開発が必要であると主張。 第三世界諸国の新国際経済秩序設立要求:富裕諸国からの海外援助の増大とより公平な貿易と投資慣習を要求。 同会議での妥協:経済開発と人口抑制がともに必要である。

(b) 第二回国連人口会議@メキシコ、 1984年 経済成長と人口増加との間の関係の問題が再び論議となる。 世界の人口 (b) 第二回国連人口会議@メキシコ、 1984年 経済成長と人口増加との間の関係の問題が再び論議となる。 レーガン政権の米国:市場経済主導の経済成長が人 口増加抑制に取って最良の方法である、と主張。 *米国は、産児制限技術として堕胎の使用を奨励する諸機 関への援助を削減すると発表→米国の国際社会からの孤立。 この会議は、第三世界の急増する人口を縮小するために産児制限処置と貧困を削滅させる努力と両方が必要である、という十年前の第一回会議に達した結論を支持。

世界の人口 (c) 国際人口開発会議(ICPD、あるいは国連人口会議)@カイロ、1994年 1994年のICPDの行動計画=人口増加に関する世界の見解と最善策を再定義 :「人口問題を持続可能な開発との繋がりのなかでとらえ、人口増加の安定化への手がかりとなる女性の地位向上を中心とした人間開発への投資の必要性を説く。そして、家族計画プログラムが、人口統計上の目標値を設定することを拒否し、家族計画をより広い女性の保健プログラムへと統合した。」 *妊娠中絶問題における宗教上の意見の対立、リプロダクティブ・ヘルス、家族と青少年のリプロダクティブ・ライツに関する定義をめぐって盛んに議論された。

関連する諸条約:世界人権宣言、市民的および政治的権利に 関する国際規約、女子差別撤廃条約など。 世界の人口 ICPDの行動計画第7章2項 「リプロダクティブ・ヘルスとは、人間の生殖システム、その機能と(活動)過程のすべての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す。従って、リプロダクティブ・ヘルスは、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力をもち、子供を産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由をもつことを意味する。この最後の条件で示唆されるのは、男女とも自ら選択した安全かつ効果的で、経済的にも無理がなく、受け入れやすい家族計画の方法ならびに法に反しない他の出生調整の方法についての情報を得、その方法を利用する権利、および女性が安全に妊娠・出産でき、またカップルが健康な子供をもてる最善の機会を与えるような適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利が含まれる。」 関連する諸条約:世界人権宣言、市民的および政治的権利に 関する国際規約、女子差別撤廃条約など。

個人と家族の幸福と女性の地位向上のための目標(2015年まで)(ICPD行動計画) 世界の人口 個人と家族の幸福と女性の地位向上のための目標(2015年まで)(ICPD行動計画) 家族計画と他のリプロダクティブ・ヘルス・サービス 初等教育完全実施 より多くの女子に対する中高等教育 乳児、幼児、母親の死亡率の低下など 政府ならびに民間への要求 貧困の緩和 環境保全 男性の家庭への関わりの強化 青少年に特有な健康面での需要に対する取り組み 以上、特にリプロダクティブ・ヘルスに関しては国連人口基金『世界人口白書 1997』を参照。

世界の人口 まとめ 1900年から1999年の間に世界人口は3倍強になったが、あらゆる分野での技術革新が、マルサスの予測した幾何級数的に増加する人口増加によって引き起こされるとした世界的な飢餓と病気の恐怖を回避してきた、といえなくもない。 しかし、地域によってはマルサスの指摘を支持する現象も起こっている。現在、世界人口の約5分1が一日当たり1ドル以下の生活を送っている。また、HIV/AIDSの世界的流行が国際社会の脅威となっている。 家族計画を始めとした保健プログラム、教育、女性の社会経済活動参加の拡大のための投資→世界人口の出生率の大幅減少に寄与。 ∴国際社会がこれらの分野への投資を継続するかどうかが、世界人口の将来の規模と人々の生活の質の向上に深く関係してくるだろう(Population Bureau Bulletin, 1999, p.40 )。