現場から見た 超高齢者社会の終末期ケアの実態 芝久保内科小児科クリニック 玉置 肇
1.要介護高齢者と医療・介護の関わりと実態 高齢者とは 65歳以上→75歳以上(後期高齢者) 後期高齢者(75歳以上)→85歳以上(平均寿命) 要介護者とは (介護保険:要支援1,2 要介護1,2,3,4,5) A)介護予防:要支援1,2 B)軽度要介護:要介護1,2 C)中~高度要介護:要介護3,4,5
超高齢化社会(2025年問題) 2025年は始まる時期であって,最も深刻な時期は, 2040年以降(団塊の世代が85歳~90歳に到達する) 2025年は始まる時期であって,最も深刻な時期は, 2040年以降(団塊の世代が85歳~90歳に到達する) ・寿命は伸び,健康寿命も延びたとしても,老化や老衰は確実に進行する。そして必ず死を迎える。(多死時代の到来) ・医療介入年齢もすでに高齢化している。 ・医療費,終末期ケア費用の自然増も飛躍的に増加する。 (先進医療の他にも治療医学の進歩) ・終末期ケア対象年齢も高齢化し介護費用も増加する ・このままでは急増する社会保障費に対応して,高所得者の自己負担増,消費税の15~20%UPは必然の状況 (アベノミクスの第3の矢は期待できない)
介護施設 特養(特別養護老人ホーム) ・終末期ケアまで想定 ・医療費と介護費のマルメ方式 ・介3以上の入居制限 ・大部屋対応 ・入居費用7万円/月と安価 ・入居待ち3~5年以上
介護施設 老健(老人保健福祉施設,介護老人保健施設) ・在宅復帰を目的としたリハビリ施設 ・3~6ヵ月の入居制限(3ヵ月が原則) ・在宅復帰困難者急増(基礎疾患の重症化,老化老衰の進行) 医療に戻る(介護型,医療型療養病床) 他の老健を廻る ショートステイを介して老健に 特養入居の待機場所 ・最長12ヵ月が限界 ・結果として終末期ケアの受け入れ(看取りの促進政策)
介護施設 医療との関わり ◎嘱託医の裁量?と限界 ◎介護職の終末期ケアに特に看取りの受け入れと教育 ◎医療機関の提携を謳っている内容は? ◎家族のインフォームドコンセント(十分な説明と同意),信頼関係の構築,初対面の家族ほど理解ができない
75歳以上人口の年齢別推移(東京都) - 75~79歳 - 80~84歳 - 85~89歳 - 90歳以上
出典:医療経済研究機構「要介護高齢者の終末期における医療に関する研究報告書」
治し支える医療 患者Aさんの“専門医” 健康 生活能力 病期発症 健康 老衰 不治の病 健康管理 維持期医療 急性期医療 回復期医療 終末期医療 死 継続して診る医療 外来・在宅 時間経過
在宅療養のニーズ 市の調査(※)では、市内高齢者の約32%が長期医療の必要がある場合に、自宅で療養を続けたいと考えています。 しかし、そのうち約70%は「家族に負担をかける」、「急に病状が変わったときの対応への不安」等により、現実は難しいと考えています。 自宅で療養したい 現実は難しい 約32% 約70% ※西東京市福祉部高齢者支援課 「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(第6期)策定のためのアンケート調査報告書」(平成26年3月)
在宅療養を進めるための国の制度 地域包括ケアシステムの姿 医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアステム)の構築を実現 高齢化の進展状況には大きな地域差。保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていく。
2025年の西東京市の姿とニーズ 高齢者人口の増加 2025年(平成37年)には、人口が減少する中、 65歳以上の高齢者人口が増加し続け、西東京市の高齢化率は25.9%になると予想されています。 (万人) 高齢化率 22.8% 高齢化率 35.8% 高齢者人口が 13%増 ※「西東京市人口推計調査報告書」(平成23年12月)
75歳以上高齢者が増加 2025年にはいわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、西東京市でも、これまでのような医療・福祉・介護の体制では高齢者を支えきれなくなることが予想されます。 75歳以上高齢者 が32%増 75歳以上 人口 65~75歳 人口 ※「西東京市人口推計調査報告書」(平成23年12月)
高齢者の単身世帯が増加 37.5% 32.0% さらに、高齢者の増加に並行して高齢者の単身世帯の 増加も予想されています。 7600世帯 (世帯) 37.5% 高齢者世帯のうち 単身世帯の割合 32.0% 7600世帯 ※「西東京市人口推計調査報告書」(平成23年12月)
都内で認知症高齢者が増加 また、都内で見守りや支援が必要な認知症高齢者(日常生活自立度Ⅱ以上)も急激に増加することが予想されています。 なお、西東京市においては、認知症高齢者(日常生活自立度Ⅱ以上)は、平成27年3月末現在で5千人を超えています。 (万人) 13.3% 高齢者人口のうち 認知症高齢者の割合 9.9% 27万人 認知症 高齢者人口 ※「西東京市人口推計調査報告書」(平成23年12月)
なぜ看取りの体制整備が必要なのか 2030年の全国の看取りの将来予測 2030年の西東京市の看取りの将来予測 結論 まずはじめに、看取りの場所として、今後病床数の大幅な増加は期待できず、地域によってはむしろ削減される可能性がある。 また、介護施設(老人保健施設や老人ホーム等)での看取り数を2006年時点の2倍、自宅を1.5倍に拡大すると仮定したとしても、どこにも看取りの場所がない「その他」の人数が約47万人になると予想されている。 2030年の西東京市の看取りの将来予測 2030年の全国の人口が約1億1662万人、西東京市の人口が約19万8000人と仮定すると、 単純計算で 19.8万人/11,662万人 × 47万人 = 797.97 ≒ 約798人/年 となり、西東京市における看取りの場所がない市民は年間798人と推測される。 結論 以上のように、看取りの場所がないと予想される市民(798人)を受け入れるため、 住宅(自宅や居住系介護施設等)あるいは介護施設(老人保健施設や老人ホーム等)での看取りの数をそれぞれ増やす必要がある。このため、将来を見据えて住宅や介護施設での看取り体制を今以上に整備することが求められている。
診とり場所の将来推計
医療(在宅医療の確立) 居宅内での医療行為が可能(居宅を病室と見做す) 在宅専門医療機関と優遇政策 介護施設における在宅医療の見直し 24時間365日体制という重荷 在宅医療支援診療所の実績評価 社会的入院(+老人医療の無料化)→老人病院 ・介護型療養病床 ・医療型療養病床 介護施設の医療 ・施設嘱託医と在宅医 ・在宅医療の主治医(施設連携医、在宅専門医、一般在宅医)
その他の居住系施設(特養・老健を除く) 1.低所得向け(介護度A,Bの一部) 2.疾患別対応型(認知症) 15~18万円/月 サ高住(サービス付き高齢者向け住宅),12万/月 ・シルバー住宅,ケアハウス,高専賃,などの流れ ・高齢者の寮生活化(介護・医療の連携体制?) 2.疾患別対応型(認知症) 15~18万円/月 ・グループホーム(介護度A,B 軽度の認知症) ・家族的環境,集団生活(介護・医療の連携体制?) 3.在宅生活維持の支援型(レスパイト)15~18円/月 ・小規模多機能型住宅(お泊りデイ)
4.中~高所得者向け 介護付き有料老人ホーム,月20万~50万 在宅での終末期ケア(独居者向け) 4.中~高所得者向け 介護付き有料老人ホーム,月20万~50万 ・入居料にどこまでのサービスが含まれているか ・オプション費用は適切か ・レクレーション設備の使用料は ・入居金の償却は適切か,額は妥当か ・医療との連携の内容と質 ・介護の質 ・終末期ケア体制(職員教育と同意) 在宅での終末期ケア(独居者向け) ・家政婦の雇用(24時間,365日,1~2名) 月40万 ・期限が不確定 ・家族の家政婦の監視・指導(金銭管理等) ・医療・介護との連携
4のポイント(終末期ケアの費用について) 入居金500万円以下,月20~35万(オプション含む)の中で優良な施設を選択する 家族の住居と入居先の住居との移動時間30分以内 介護と医療の質の担保と吟味(施設内で穏やかで安らかな看取りができるかどうか) 豊かな老後資金は1人3000万では不足。 5000万位と想定して計画を立てる 子供に費用負担はかけないように考える リバースモーゲージや居宅の賃貸を積極的に考える ◎核家族化と超高齢化は時代の流れ ◎誰が何処でどのような看取りをするのかを考える
これからの地域包括ケアシステム構築の要点(私案) ・従来の循環型地域包括ケアシステムは維持期にしか対応していない ・終末期ケアでがん末期ケア(緩和ケア,ホスピス等)は病院側の強い要望で,システムはほぼ出来ている ・問題は,種々基礎疾患(心・杯・脳・腎・骨・筋 等)の有無や軽症に拘らず,老衰の進行から看取りに至る終末期ケアのシステム構築に焦点を絞るべきである ・認知症のケアシステムの立ち遅れ ・老衰(老化)の認識を高めるべきである ・介護職の看取り参加には実務経験(教育)が不可欠 ・介護職の待遇改善が急務(今の待遇では質の担保が維持できない) ・在宅医療のグループ化と住み分け役割分担が必要 ◎モデル施設の設立と運営を試みるべき
老衰(老化)とは (老年医学会) 1.ロコモティブ症候群(運動機能の低下) 2.フレイル(筋力低下→サルコぺニア) 3.認知症(MCI、認知機能の低下) ◎食思不振 ◎気力低下
在宅療養における後方支援病院連携事業 延命治療についての確認書
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