地域の入院のシステムが 大きく変わります。 病床の機能分化と在宅推進。 26年診療報酬改定の影響 高齢者・重度障害者の 地域の入院のシステムが 大きく変わります。 病床の機能分化と在宅推進。 26年9月 玖珂中央病院 吉岡春紀
7対1看護の急性期病院が大幅に減らされようとしています。 在宅復帰率の導入により、特に在宅の難しい高齢や難治性の重度の疾患を持った患者さんは、希望する病院に転院できなくなるシステムができあがりました。
なぜ、今 強引に7対1病棟の 変換策を作ったのか なぜ、今 強引に7対1病棟の 変換策を作ったのか 手厚い看護が出来る7対1看護の病棟誘導の際に、入院医療費アップで優遇した。その為大学病院・地域の大病院以外に、予想外に多くの一般病院も7対1看護を申請し、結果的に医療費が高騰した。 また急性期の高度医療行う病棟を目的としたが、重度の看護を要さない患者も7対1病棟に入院していることも要因
医療機関の機能分化・強化と連携、 在宅医療の充実等 改訂説明資料から 医療機関の機能分化・強化と連携、 在宅医療の充実等 改訂説明資料から 1.入院医療について ① 高度急性期と一般急性期を担う病床の機能の 明確化とそれらの機能に合わせた評価 ② 長期療養患者の受け皿の確保、急性期病床と 長期療養を担う病床の機能分化 ③ 急性期後・回復期の病床の充実と機能に応じた 評価 ④ 地域の実情に配慮した評価 ⑤ 有床診療所における入院医療の評価
今回の改定では7対1病棟の基準を厳格化する ことにより、7対1病棟を減らす方向。 ① 90日以上入院する患者を対象として、出来高算定 とするか、療養病棟と同等の報酬とする (3ヶ月以上入院させると大幅な入院費削減) ② 看護・処置・管理の重度の患者に限る ③ 在宅復帰率75%。平均在院日数18日 ④ 短期滞在手術について、対象の手術を拡大し検査 も一部対象とする。また、本点数のみを算定する 患者について、平均在院日数の計算対象から除外 する。 ⑤ データ提出加算の届出を要件化。
33万 25万 10万 21万 その他精神科病棟 約35万
入院患者の「在宅復帰」の推進が掲げられました。 診療報酬で、餌をまき、在宅への移行を促すのは今に始まったことではありませんが、特に7対1病棟からの地域包括ケア病棟変換にはこれまでにないほど強力な誘導策が盛り込まれており、地域包括ケアシステムの構築に向けた厚労省の強い意思が感じられます。果たしてスムーズに移行できるのでしょうか。
在宅復帰率とは、期間中の入院患者の退院先が自宅等に退院した割合を言いますが、「自宅等」とは、 自宅、 他院の回復期リハビリテーション病棟、 他院の地域包括ケア病棟、 他院の療養病棟(在宅復帰機能強化加算) 居住系介護施設または 介護老人保健施設(在宅強化型) とされました。(後に自院の地域包括ケア病棟等は算定から除外と変更)
7対1病院 DPC対象 10対1病棟 13対1病棟 15対1病棟 一般病床 地域包括ケア病棟 回復期リハ病棟 医療療養病床 療養病床 急性期高度 救急救命病院 一般病床 地域包括ケア病棟 10対1病棟 新 13対1病棟 15対1病棟 回復期リハ病棟 在宅復帰機能強化加算 療養病床 医療療養病床 有床診療所 新 強化型老人保健施設 老人保健施設
7 対 1 病棟 自 院 他 院 7対1等の一般病棟 自宅 療養病床 在宅復帰 居住系介護施設 有床診療所・その他の介護施設 回復期リハ病棟 地域包括ケア病棟 療養病床 在宅復帰 他 院 7対1等の一般病棟 回復期リハ病棟 地域包括ケア病棟 在宅復帰 認められない 療養病床 在宅復帰強化型 在宅復帰強化型以外 療養病床 計算除外 居住系介護施設 在宅強化型老人保健施設 有床診療所・その他の介護施設
在宅復帰率が 地域医療を混乱させます。 今後は急性期の7対1病院からのお年寄りや重度の管理が必要な患者さんの転院は、7対1病院だけで無く、受け入れる転院先の病院にも在宅復帰率という縛りがかかり、入院期間がさだめられ、療養病床にも一部設定されたことで看取りの施設がなくなり、地域の入院医療が大混乱することが予想されます。 また、本当にこの在宅復帰率が可能な数字なのかどうか疑問に思います。
特に在宅医療が難しく入院治療が必要な患者・家族には、今でも救急入院したら直ぐに転院先を探すように指示されるのに、今後は転院の先々で入院期間の制限が有り、転院先にも条件が付くことになるので大変なことになります。 そこで浮上するのが、「高齢者をどこまで治療をするか」という問題です。 制度にも診療報酬にも最近「年寄りは治療するな」という政策が目に付きます。
今後の入院の流れ 在宅復帰率が問題となる7対1急性期病院からの入院医療の流れは回復期リハ病棟、新設される地域包括ケア病棟、在宅復帰機能強化加算届け出した療養病棟、認可を受けた老人保健施設などになります。 10対1、15対1看護の一般病棟や在宅復帰機能強化加算のない療養病床は、この7対1の急性期病院の受け皿にはなっていません。
これらの施設がバランス良く地域に無ければ、地域の患者さんの入院医療は地域で完結できなくなり、7対1病棟から、地域外の施設に転院させられることにもなります。 それこそ自宅に帰れない、医療・看護の難しい重症の患者さんの地域医療圏外へのたらい回しが起こりそうです。 患者・家族はこんなシステムしりません。不満と不安の混乱です。
高齢者の入院受け入れが 難しくなります。 7対1の急性期病院では、10対1、15対1などの一般病院からの紹介は、その後安定して転院させても在宅復帰にならないので、急変時の受け入れは厳しくなり、また介護施設からの急変の紹介は改善してもその施設に退院の目処が立たず、長期化するため入院そのものを受け付けてもらえなくなることも考えられます。現実にあります
このように、どの病院も高齢者を長期入院させることが難しくなります。 かといって、介護だけで無く、医療が主体の患者さんには自宅に帰ることも困難です。 そうなると現場では、長期入院につながる延命的な治療をすべきかどうかという選択を迫られる局面が増えると考えられます。しかし逆に急性期病院は救命の目的があり、何もしない入院は断られます。
病院の種類と入院費 病院によってどのくらい入院費が違うのか、入院期間はどれくらいか、簡単に説明します。 入院基本料だけの比較ですので、出来高払いと包括。手術や検査・治療により異なります。特に急性期病院では手術・検査・治療が一段落すれば入院費が減るので長期入院はできません。
一般病棟 7対1看護病棟 入院基本料 1日1,566点 手術・検査・投薬・処置など別に加算 1日平均 約5万円〜6万円 7対1看護病棟 入院基本料 1日1,566点 手術・検査・投薬・処置など別に加算 1日平均 約5万円〜6万円 月には 150-180万円 また7対1病棟の中でも、大学病院や、地域の大病院ではDPCという診療報酬体制があり疾患や入院時の状態で入院期間や入院料が決められています。 1日6-8万円。1ヶ月200万円位。 ただDPCは入院期間も定められていますので、早期退院が条件になります。
入院できる期間は平均14日、3ヶ月以上は原則難しくなります。 急性期病院 平均在院日数の縛り ほとんどが14日前後 但し重度の意識障害・肺炎・心不全・がん等では在院日数は延長可能ですが長期は困難 7対1病棟では 在宅復帰率 75% 救急医療行っていれば何とかクリア 入院できる期間は平均14日、3ヶ月以上は原則難しくなります。 在宅復帰率には再入院の制限もあります 退院後短期間の再入院は出来ない事もあります
地域包括ケア病棟 今回新設された地域包括ケア病棟 の入院料 2区分 治療検査など包括 1日 2,558点 2,058点 月 約65-80万円 地域包括ケア病棟 今回新設された地域包括ケア病棟 の入院料 2区分 治療検査など包括 1日 2,558点 2,058点 月 約65-80万円 7対1病棟からの変換を目的にしており、7対1病棟で安定した患者の受け入れには、比較的高額な入院費に設定されているが、この診療報酬はいつまでなのか。甘い餌になるのか 在宅復帰率70% 入院期間は60日まで 2ヶ月以上入院できません
回復期リハビリテーション病棟 回復期リハビリテーション病棟入院料 (1日につき) 包括 3区分 1,911点 1,761点 1,611点 月に 約50-65万円 在宅復帰率70%以上 ・重症患者の割合 20%以上 ・重症患者改善率 30%以上
回復期リハビリ病棟のルール 疾患によって入院期間が決められている 在宅復帰率 70% 入院期間 およそ2-3ヶ月 入院期間 およそ2-3ヶ月 疾患によって入院期間が決められている 在宅復帰率 70% 回復期リハ病棟への入院は、病名と、病気・怪我を発症してから入院するまでの期間が決められています。 たとえば、脳梗塞や脳出血などの脳卒中、大腿骨頚部骨折、脊髄損傷、頭部外傷、肺炎や外科手術の治療時の安静による廃用症候群などでは発症または手術後「2か月以内」、股関節・膝関節の神経や 筋、靭帯損傷後は「1か月以内」で、入院期間はそれぞれ違います。
療養病床病棟の入院料 医療区分とADL区分により9区分の 入院費・包括化 最低は月22万から月50万位 平均35万円程度 説明困難な入院費の設定になっています
療養病棟入院基本料1を届け出ている病棟において、 在宅復帰率が50%以上等の基準を満たす病棟 医療区分2.3が80%を超える 在宅復帰機能強化加算の療養病床 新設 療養病棟入院基本料1を届け出ている病棟において、 在宅復帰率が50%以上等の基準を満たす病棟 医療区分2.3が80%を超える 入院期間に原則制限は無いが回転率が必要 入院期間1ヶ月以上の要件 1日加算10点 誘導にもならない低額設定 老人保健施設 強化型老人保健施設 在宅復帰率 50% ベッド回転率10%以上、要介護4.5の入所35%以上 入所費1日加算 約60点 老健の方が高額誘導
追加の話題 「緩和ケア病棟」について がん末期などで、がんを告知され、積極的な延命治療や抗がん剤治療は行わないこと、患者や家族の同意があることなどを満たせば、緩和ケア病棟に入院できます。主に疼痛管理と精神的な援助ですが、病院によって治療できる内容は異なっています。 入院30日以内の場合、医療費は1日4,926点 かなり高額な1日約5万円の設定 その他に食事療養費や室料差額などの医療保険適用外の費用がかかります。月150万円 31日〜60日以内の場合は1日4,412点 61日以上の場合は1日3,384点と大幅減
今回の地域包括ケアシステムの手本となっている北欧では、寝たきり高齢者の在宅介護がほとんど存在しないとのこと。食事を経口摂取できなくなったような場合、経管栄養などで延命を図らずに「自然な形」で看取ることが一般的??であり、寝たきりになる前に亡くなることが多いとのこと。 しかしわが国では、かなりの重度の疾患でも入院すれば救命されるので、自然な看取りがすぐに受け入れられるのか、介護施設での看取りも少ない現実。増大する寝たきり患者に、在宅で対応することは難しいとみられます。
急性期病院で積極的な治療を受けると、今は、命だけは助かり PPK ピンピンコロリになりなせん。 意識障害や重度の障害を残して在宅退院を勧められますが、独居・老々家族では家庭の看護環境は乏しく、在宅医療や訪問看護、在宅介護サービスなど受ければ、入院費よりも高額になります。 介護施設に入れても施設の看取りは困難で、急変すればまた救急病院への現実。
日本の老人医療の今後 ○高齢者の重症患者は積極的な延命をしない ○介護施設からの延命転院は受け取らない 介護施設での看取りも積極的に行えるよう、 施設・家族にも了解をえる ○それ以上の延命や治療を望むなら自己負担 を増やすことで抑制するしかない。 ○今の入院システムではいずれの病院も在宅復 帰が記載されて看取りの病院がなくなる。 ○多くの若者や介護費用が、寝たきり老人に 費やされている現実は皆が考えねばならない こんなことが現実になりつつあります。