セレクトショップのリニューアルに関する一考察 拓殖大学 商学部 今村 哲
序 テーマのねらい 「経営改善に対応した売場リニューアルを計 画しているセレクトショップ(select shop)に焦点をあてる」
Ⅰ ファッションと生活者 1.ファッション(fashion)とは Ⅰ ファッションと生活者 1.ファッション(fashion)とは (1)作ること・活動・党派などを意味するラテン語のファクティオ(factio)が語源。 (2)一般的に我々が使っている意味合いとしては、流行、はやりの型が日常的に最も多く、仕方、様式、型、スタイルなどを指す場合。
2.生活者の説明 生活者は、二つの側面をあわせ持っている。 (1)消費者の側面~「買って、消費する」 (2)勤労者の側面~「生産し、所得を得る」
3.フッションと社会の関わり (1)変化する複数の社会現象に対して、生活者が自己表現する世界であり、直接触れたり、着たり、目にしたりすること。 (2)ファッションは、生活者が社会情勢や社会傾向の中で共感し、自己を表現するために取捨選択していくこと。
Ⅱ アパレルとアパレル市場の変遷 1.アパレル(apparel)とは何か Ⅱ アパレルとアパレル市場の変遷 1.アパレル(apparel)とは何か 英語で衣服、服装を意味しているが、一般的に、既製服を指す言葉として広く浸透されている。 2.アパレル産業(アパレルメーカー)とは アパレルの生産や卸売を担っている会社 (春夏向け、秋冬向け既製服コレクション)
3.アパレル市場の変遷 (1)1960年代 マス・マーケットを対象~主に実用衣料品を安価なコストで生産・供給。 (2)1970年~80年代 ①ナショナル・ブランドの確立と消費者への浸透を推進。ファッション性を強調した商品。 ②新興アパレル企業~デザイナーズ・アンド・キャラクター・ブランドの登場。 ※マス・ファッションとの差別化。
(3)1990年~2000年代 ①自ら生産した商品を消費者に直接販売する ショップを持つ取り組み。 ②アパレル製造小売業=SPA(specialty store retailer of private label apparel)と呼ばれる業態。 ③素材の調達、商品の企画開発、生産、在庫管理、物流、販売、顧客管理など、 ※ITを駆使して
Ⅲ 小売業におけるセレクトショップ 1.セレクトショップの特徴 Ⅲ 小売業におけるセレクトショップ 1.セレクトショップの特徴 (1)一つのブランド商品や特定デザイナー商品だけでなく、ショップオーナーやバイヤーの主張や選択眼で商品を仕入れ、陳列し、販売している。 (2)その店のセンスによって、独自のファッションを提案している場合が多く、世間ではあまり知られていない商品、これから売り出そうとしている新進デザイナー商品を積極的に扱う。
2.セレクトショップのマーケティングの特質 (1)立地条件が便利で、地区の周辺環境が充実している。 (2)店内の環境が整備されている。売場規模、商品構成、売場レイアウト、店内雰囲気など。 (3)商品の品質や比較検討できるような商品陳列、品揃え、販売価格に対する信頼度など。 (4)IT機器を利用した選択や購買に役立つ情報的提供、商品説明ツールなど (5)親身なサービスに心かける。
Ⅳ リニューアルの必要性 1.店舗(売場)のリニューアル (1)セレクトショップが生き残り、繁栄していくための方策。 Ⅳ リニューアルの必要性 1.店舗(売場)のリニューアル (1)セレクトショップが生き残り、繁栄していくための方策。 (2)ストア・イメージ戦略を展開する上で。 (3)市場環境や消費者志向の変化、ファッショントレンドへの対応。 (4)入店客数の減少による売上対策。
2.店舗のライフサイクル 売 上(収益) 営 業 年 数 上 昇 期 最 盛 期 衰 退 期 未改装の売上 1年 2年 3年 4年 5年 売 上(収益) 営 業 年 数 上 昇 期 最 盛 期 衰 退 期 未改装の売上 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 改装後の売上 売上 改装 出所:波形克彦著『感性からのストア・イメージ戦略』経営情報出版社、1986年、44頁。
3.セレクトショップのストア・ライフサイクル (1)上昇期~オープンしてから3年程度 (2)最盛期~3年から6年程度 (3)衰退期~6年から8年程度
4.店舗管理について ~フルフレッド・E・パルマンの言葉 (1)店をオープンして2年経ったら、このままでよいか検討せよ。 (2)5年間改装もしなかったら、これでよいのか疑え。 (3)10年経った店は思い切ってスクラップ・アンド・ビルドでつくりかえよ。
Ⅴ 1号店のリニューアル主旨と対象 1.主旨 基本コンセプト Ⅴ 1号店のリニューアル主旨と対象 1.主旨 基本コンセプト 「常に時代に先駆けたフッションや文化、ユニークで価値のある情報を店舗空間・商品・サービスを通じて社会に発信していこう」
2.目標 (1)競争力のあるショップ体質の構築 (2)MD政策や販売政策の見直し (3)販売スタッフのモチベーションを高める (4)明確な主張を持ったショップへ変革
3.対象項目 (1)館自体の効率化を図る (2)坪効率、人員効率の見直し (3)MD力、販売政策を浸透させる (4)顧客満足につながる接客 (5)情報力、サービス力の強化 (6)顧客が安心・安全に買物できる効果
5.対象顧客
6.誰のショップであるか・・・主張を明確にする (1)顧客側にとって このセレクトショップが「私にとって最適なショップである」というイメージを持ってもらうことは重要。 (2)セレクトショップ側にとって 来店して欲しい客を選択して、対象顧客を描くことは、経営戦略上において不可欠な要素。
Ⅵ 坪効率と人件費の検討 売場レイアウトを決定する際~ 取扱商品の売上高構成比とその使用面積比との相互関係で効率を考える。 1.坪効率 Ⅵ 坪効率と人件費の検討 売場レイアウトを決定する際~ 取扱商品の売上高構成比とその使用面積比との相互関係で効率を考える。 1.坪効率 (1)254.8坪 ⇒ 230.8坪 24坪減少(9.4%減) (2)現状 345.4万円(推測) ⇒ 10.4%程度の改善
2.人件費 (1)販売員数合計29名 ⇒ 25名(4名減) (2)人件費 ⇒ 1,808万円(推測)削減(13.8%減) (3)労働生産性 1,256.7万円(推測) ⇒ 1,457.8万円(16%上昇)
Ⅶ リニューアルの展望 1.経営計画の中に定期的なリニューアルを盛り込み、経営改善の手を打つ。 Ⅶ リニューアルの展望 1.経営計画の中に定期的なリニューアルを盛り込み、経営改善の手を打つ。 2.1号店の使命は、「金のなる木」のショップとして、その地位を確立する。 3.1号店から生み出す利益を使用して、新たなる「金のなる木」のショップを育成する。
おわり 1.売場リニューアルは、あまり多額な投資費用をかけなくても、高いコストパフォーマンスを得ることができるか。 2.企業論理を優先して、顧客論理を疎かにすると客離れにつながる。 3.売場リニューアルが成功すると、組織に活力が生まれる。