「SOxによる大気汚染とその克服」 ~四日市公害と中国の環境問題~ 鬼頭浩文 四日市大学総合政策学部 環境政策担当

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「SOxによる大気汚染とその克服」 ~四日市公害と中国の環境問題~ 鬼頭浩文 四日市大学総合政策学部 環境政策担当 2005年10月7日 ICETTにて 鬼頭浩文 四日市大学総合政策学部 環境政策担当 Tel 0593-65-6615 FAX 0593-61-0770 kito@edu.yokkaichi-u.ac.jp www.yokkaichi-u.ac.jp/~kito

四日市から世界へ SOxによる大気汚染の深刻さと 対策の重要性について伝えたい。 そして、地域環境を守るノウハウを 四日市から世界に発信していきたい。

研究のながれ 四日市公害の発生と環境改善への取り組み 環境政策の効果を計測する ICETTより受託(1994~1996 )      ICETTより受託(1994~1996 ) 中国が四日市公害と同じ問題に苦しまないために 天津市に四日市の経験を活かすために      ICETTより受託(1997~1999) 中国における環境政策と穀物増産 排煙処理によってできる「石膏」で土壌改良を      日本学術振興会未来開拓プロジェクト      ( 1997~2001 )

四日市公害-健康被害・環境政策 1992年発行『四日市公害記録写真集』 四日市公害記録写真集編集委員会より

四日市公害 1967年公害訴訟 工場の煙に含まれる硫酸で、 花に斑点ができている。 煙に含まれる二酸化いおうは、 ぜん息の原因に。 1992年『四日市公害記録写真集』 四日市公害記録写真集編集委員会より

四日市公害―1972勝訴― 1992年発行『四日市公害記録写真集』 四日市公害記録写真集編集委員会より

四日市公害の歴史 1967年公害訴訟 1972年勝訴

四日市公害の歴史 経済発展→コンビナート操業(1959) →「ぜんそく」患者発生(1961) 国 ばい煙規制法施行(1962)排出濃度規制 国 ばい煙規制法施行(1962)排出濃度規制 市 市単独の医療給付開始(1965)国に先行 国 大気汚染防止法(1968)着地濃度規制 国 公害救済法施行(1971) 県 三重県公害防止条例(1971)国に先行して総量規制 国 総量規制(1972)の導入 国 公害健康被害補償法施行(1974)

SOx公害発生と対策 燃料 対策 熱 炭素+酸素 二酸化炭素 地球温暖化 いおう+酸素 二酸化いおう 健康被害 低いおう燃料 燃焼効率アップ 排煙脱硫 高煙突化 工場立地 対策 資源開発 燃焼工学 化学工学 都市計画 医学 熱

四日市地域の患者数と排出の変化

現在の四日市地域のSOx濃度 0.005ppm 0.009ppm コンピュータによる 大気拡散シミュレーション

SOxを1万トン排出した場合の濃度 0.031ppm 0.017ppm

患者発生と年度末患者数の推計シミュレーション SOxによる健康被害を予想する 煙源データ 気象データ 煙源1 位置 SO2排出量 煙突高 煙源2 位置 SO2排出量 煙突高 煙源3 位置 SO2排出量 煙突高 風向・風速 大気の安定度 地形データ 各メッシュ標高 工学 SO2拡散シミュレーション 濃度データ 人口データ 毎年の各メッシュSO2濃度 毎年の各メッシュ人口 医学 患者発生と年度末患者数の推計シミュレーション 都市計画 モデルの結果 環境を考慮した都市計画による人口分布の変更を想定 等級別の患者発生数の変化 年度末の等級別患者数の変化 毎年度の死亡者数 総量規制 K値規制 燃料規制 による排出 量と煙突高 の変更想定 コンピュータによる統合モデル分析 政策形成

天津市-四日市の研究を応用 30階建てマンション 石炭火力発電所 約500m 天津市街地にある石炭火力発電所

発電所

天津市郊外の発電所

煙突は240m 脱硫装置なし 現在発電能力100万kw 2003年には、さらに 120万kwが稼動

炊事・暖房用の燃料にも硫黄が含まれている

中国に豊富に存在する石炭を燃焼すると、 SOxが発生する。→対策が必要 脱硫装置の設置・稼動の可能性をさぐる

天津市人民政府外事弁公室 への表敬訪問

天津社会科学院との共同研究

天津市環境保護局への表敬訪問

アイデア 土壌改良に使用 健康被害予測 小規模な畑での実験 健康被害の抑制効果を予測 脱硫装置の設置・稼動 その費用を回収するため ⇒ばく大な投資費用と経常経費が必要 その費用を回収するため 脱硫副産物の石こうを 土壌改良に使用 四日市の経験から 健康被害予測 小規模な畑での実験 健康被害の抑制効果を予測 土壌の専門家が参加

天津における土壌改良の実験

天津における土壌改良の実験

天津における土壌改良の実験

天津における土壌改良の実験

天津市SOx濃度現状シミュレーション

天津市、環境改善シミュレーション 家庭・レストランでの 石炭使用を半分に 大工場3つに 脱硫装置を設置

天津市、環境改善をおこたると

天津市、早期に対策をとると

天津市、対策が3年遅れると

遼寧省瀋陽市

遼寧省瀋陽市でのプロジェクト 簡易脱硫装置設置・運転の費用・効果比較 バイオブリケット製造装置の設置・運転 大規模農場での土壌改良実験 日本学術振興会未来開拓プロジェクト (1997~2001 ) 簡易脱硫装置設置・運転の費用・効果比較 バイオブリケット製造装置の設置・運転 大規模農場での土壌改良実験 省別経済モデルに脱硫アクティビティ導入

都市部はガス化が進んできたが、 工場からのSOx排出・・・大気汚染

農村では、暖房などに石炭を使用

アルカリ土壌・・・作物が育たない

脱硫装置の設置・運転の実験

石炭バイオブリケットについて 民生用燃料における脱硫技術として効果的 石炭(70-80%)+バイオマス(20-30%)+脱硫剤(Ca(OH)2 )                (高圧ブリケッティング:2-4t/cm2) Merit 高い燃焼効率 DeSOx: 80% DeNOx: 40%  =安価な脱硫&脱硝 炉の改良は必要ない 効果的な灰= CaSO4 など Demerit  コスト高(1.2-1.6倍)

土壌改良実験 脱硫装置から出た石膏 バイオブリケットの灰(石膏が含まれている) 土壌改良実験  脱硫装置から出た石膏  バイオブリケットの灰(石膏が含まれている)

土壌改良の実験で、差を確認

水田においても効果を確認

土壌改良して植林し砂漠化をとめる

多くの木が定着して育ち始めていた

本研究の枠組み 大規模煙源に湿式脱硫装置設置・運転 バイオブリケット装置の設置・運転 小規模煙源・民生部門でのバイブリ利用 土壌改良効果 装置設置・運転が経済に与えるインパクト 健康被害に対する抑制効果

瀋陽市のローカルな環境シミュレーションを可能とするモデル構築 経済モデル 労働者数 ( 非農業 ) 省別・産業別生産量 国内財 省別・産業別付加 I/O オープ コンポジット財価格 価値(所得) ンモデル 農業部門の労働者 ( 一国全体 ) 数、生 産量、賃金 利子率 省別消費支出 産業連 産業別賃金 関表の 投資財需要 省別家計消費費目 投入係 数 省別・産業別生産量 SO 排出 脱硫アクティビティ導入シミュレーション 2 煙源・気 工場別 SO 排出 ( 瀋陽 ) 象に関す 2 るデータ 副産物の石こう排出 メッシュ別 SO 濃度分布 大気拡散モデル 2 土壌改良効果 メッシュ別患者発生・症状変化 都市構造・人 土壌改良モデル 口データ 医療需要 労働力減少 患者発生モデル 瀋陽市のローカルな環境シミュレーションを可能とするモデル構築

評価するシナリオ 脱硫アクティビティを経済モデルに組み込む。 その際、脱硫アクティビティから生じる副産物を土壌改良に利用することの費用便益を評価する。 1)バイオブリケット導入  ① 石炭・石炭製品・鉄鋼・電力部門以外の全ての産業    部門に導入  ② 民生用(家計部門)に導入 2)脱硫装置導入  ① 大型石炭火力発電所に脱硫装置を導入(脱硫率90%) ② 大型石炭火力発電所に脱硫装置を導入(脱硫率95%)

瀋陽市の大気拡散計算場と煙源位置

本研究の現状 静学モデルに脱硫アクティビティ導入完了 静学モデルによるシミュレーション試算 モデルの動学化を進めている ローカルな大気拡散モデルが完成 患者発生モデルの精緻化を進めている 土壌改良効果を評価するモデルが完成 インターフェイスの整備を進めている 瀋陽市に焦点をしぼるモデル構造が決定 瀋陽市の煙源データの精度を確認中