シンポジウム「電磁界生体影響問題の最近の動向」 H1-4 磁気の医療応用研究の動向

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シンポジウム「電磁界生体影響問題の最近の動向」 H1-4 磁気の医療応用研究の動向 平成21年4月から3年間の調査期間で設置された,「磁気応用による医療・医用へのシーズ技術調査専門委員会」の調査経過についてご説明します。 山田外史(金沢大学),中園 聡(電力中研),岩坂正和(千葉大学) 伊良皆啓治(九州大学),本田 崇(九州工大) 電気学会・磁気応用による医療へのシーズ技術調査専門委員会

発表の目次 1.はしがき 2.委員会の調査研究 3.調査研究 4.まとめ 本委員会の目的 調査分野と内容概略 3.1 磁界の生体影響評価分野 3.1 磁界の生体影響評価分野  3.2 磁気刺激・作用分野 3.3 磁気センシング分野 3.4 磁気アクチュエータ分野 3.5 磁気エネルギー分野 4.まとめ  今回の発表は,2年目を過ぎた調査の中間報告として概要を説明します。 まず,調査専門委員会の目的,調査項目,調査内容の概要を5つに分けてご説明します。

磁気応用による医療へのシーズ技術調査専門委員会 目 的  磁性材料,永久磁石,磁気センサの進展,磁気生体作用の解明などによる新規な医療へのシーズ技術を調査し,新しい医療技術として提供  本委員会を立ち上げるに至って,「磁気と生体」とのに関する歴代の調査経過を考慮して今回の「磁気応用による医療・医用へのシーズ技術」の調査を主体とする調査目的を設定した。  すなわち,「磁気と生体科学」,「電磁界のガイドライン」の整備,「磁気技術・材料の進展」を考慮して,今回の新しい調査の目的を設定した。 磁気と生体科学 ガイドラインの整備 磁気技術の進展 磁気利用による医療へのシーズ技術 医療分野への技術提供 情 勢 活 動 成 果

磁気機能の分類と調査分野 磁気の機能を 4種類に分類 医療応用技術を調査 ① 刺激作用, ② センシング, 磁気の機能を 4種類に分類 医療応用技術を調査  ① 刺激作用,    ② センシング,  ③ アクチュエータ, ④ エネルギー  磁気の医療機器での評価・ガイドライン     医療機器での磁気利用の指針 (2) 生体の磁気刺激と医療技術     磁気の刺激作用 (3) 生体計測における磁気応用技術     磁気のセンシング機能 (4) 磁気アクチュエータ技術の生体応用     磁気の電磁作用 (5) 生体内へのエネルギー・信号伝達     低侵襲な磁気エネルギー伝達  そこで,磁気応用による医療・医用へのシーズ技術を調査するに当たり,磁気の機能として4つに分け医療技術を調査することにした。  医療機器のガイドラインを含めた,5項目について以下にこれまでの調査経過の概要を説明する。

(1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン 医療機器での磁気利用の指針 調査分野の分類 (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン     医療機器での磁気利用の指針 (2) 生体の磁気刺激と医療技術     磁気の刺激作用 (3) 生体計測における磁気応用技術     磁気のセンシング機能 (4) 磁気アクチュエータ技術の生体応用     磁気の電磁作用 (5) 生体内へのエネルギー・信号伝達     低侵襲な磁気エネルギー伝達 まず, (1) 医療機器での磁気利用の指針として,磁気の医療機器での評価・ガイドラインについて述べます。

磁気の医療機器での評価・ガイドライン ガイドラインの必要性 医療施設においては多数の電子機器 強力な電磁界を発生する装置  強力な電磁界を発生する装置  電磁界の影響を受けやすい装置 医用電気機器が誤作動,健康に悪影響の可能性防止     悪影響を防止するための指針(ガイドライン) 医用電気機器をEMC規格に適合    電磁妨害波の放射を制限したエミッション規格    外来ノイズからの耐性を規定したイミュニティ規格  医療機関において,高感度な電子機器の導入,また一方で強力な電磁界を利用する電気機器 両方が設置されている  医療機器の誤動作が人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。  医療機器のガイドラインとしては通常の電気機器と同様なEMIやEMCが適用される。 医用電気機器をEMC規格に適合 医療電気機器 エミッション規格 EMI イミュニティ規格 EMS 電磁界 医用電子機器

磁気の医療機器での評価・ガイドライン ガイドラインの現状 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドライン 注意喚起 !! 医療機器の誤動作による間接的な影響は防護の対象とされていない。 医療機器に対する国際ガイドラインとして、IEC 60601-1-2がある。                   (最新版はIEC 60601-1-2 Ed.3(2007) ) 日本の規格は、JIS T 0601-1-2(2002), IEC 60601-1-2(1993)に準拠 本JIS規格は,IEC規格の第一版に基づいており、低周波の磁界に関するエミッション,イミュニティに関する要求事項はない 。 IEC 60601-1-2 Ed.3(2007)では、電源周波数磁界に対して、 3 A/mのイミュニティ試験レベルで、   「部品故障」,「プログラム可能なパラメータの変化」 、 「工場出荷時の既定値へのリセット」 、 「動作モードの変化」 、 「誤警報」 、 「あらゆる意図した動作の停止または中断」 を起こさないことを要求。 医用機器のガイドラインの現状  ICNIRPでは,医療機器の誤動作による生体影響については対象外とされているが,注意喚起している。 IEC並びにJISには,医療機器に対するガイドラインが設定されている。 直流・低周波に対する規制は設定されていない,電源周波数において,具体的なレベルと条件が示されている。

磁気の医療機器での評価・ガイドライン ICNIRPガイドラインにおける注意喚起(1) 静磁界に関する新ガイドライン 一般公衆に対する参考レベルは400 mT(身体の任意の部分の曝露) 医用機器への影響は考慮されていない。 間接的な有害影響の可能性と防護レベルについて言及。 静磁界の影響が観察されている医用機器 心臓ペースメーカ、特に磁気スイッチ付きのもの、心臓除細動器、 ホルモン用注入ポンプ、神経筋刺激機器(膀胱括約筋用) 神経刺激機器、電子工学的操作の人工器官(四肢用,内耳用など)  などの埋め込み型の医用機器 これまでの研究から   0.5 mT以下の静磁界がこれらの機器に、健康ハザードを起こすに十分な力やトルクを及ぼすという証拠はない。  ICNIRPにおいて,静磁界に対する生体への参考レベルは示されているが,医療機器へは考慮されていない,しかし間接的な影響について注意喚起するとともに言及はしている。  影響されると予想される医療機器は示唆されているとともに,0.5 mT以下の静磁界に対して影響があったという証拠はないとしている。

磁気の医療機器での評価・ガイドライン ICNIRPガイドラインにおける注意喚起(2) 低周波電磁界の新ガイドライン 基本制限の指標や参考レベルに変更があったものの、従来と同様に参考レベルの決定には医療機器を介した間接的な影響については考慮していない。 医療機器、特にペースメーカなどの埋込み式医療機器に対してはICNIRPガイドラインで勧告している参考レベルを下回るレベルでも影響が起きる可能性がある、との認識はされている。 「本ガイドラインが満たされても,金属性人工器官、心臓ペースメーカおよび埋め込み型助細動器、人工内耳などの医用機器との電磁干渉、あるいはそれらの機器への影響が必ずしも排除されるわけではない。」としている。 医療機器のEMC規格に関しては、 IEC60601-1-2および関連規格にて対応。  また,低周波電磁界に対しても,医療機器による間接的影響には考慮していない。 しかし,一部医療機器では生体に関するガイドラインのレベル以下も起きる可能性を指摘している。 今のところ,医療機器に対しては,IEC規格に対応することとなる。

磁気の医療機器での評価・ガイドライン IEC60601-1-2国際ガイドラインの動向 医用機器を使用する環境を4種類のカテゴリー(大病院,医院・クリニック,家庭,輸送機関)に分類し、それぞれの使用環境での最も高い電磁環境レベルを試験レベルに設定 医療従事者のいない環境(家庭・輸送機関など)での電磁障害から防護されるようになると期待できる。  医用機器としては,現在はIEC規格に準拠させる。IECでは新しい4版への改定作業が進んでいる。  その考え方として,使用する環境に分けたガイドラインの設定,これにより,医療従事者がいない環境での医用機器からの防護 はかれると期待される。

調査分野の分類 (2) 生体の磁気刺激と医療技術 磁気の刺激作用 (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン 医療機器での磁気利用の指針 (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン     医療機器での磁気利用の指針 (2) 生体の磁気刺激と医療技術     磁気の刺激作用 (3) 生体計測における磁気応用技術     磁気のセンシング機能 (4) 磁気アクチュエータ技術の生体応用     磁気の電磁作用 (5) 生体内へのエネルギー・信号伝達     低侵襲な磁気エネルギー伝達

磁気刺激と医療技術 磁気閃光現象 生体磁気刺激法 磁気刺激作用の創成技術 科学的な電磁界生体影響  ー 正弦波 >20 Hz, 10 mT IEEEガイドラインの策定       「誘導電流」 から 「磁場時間勾配(dB/dt)」 生体磁気刺激法 8字コイルによるベクトル的な磁気刺激(電流刺激) 経頭蓋磁気刺激法 - 脳科学などの医学応用 磁気刺激作用の創成技術 動物の磁気感覚     生体内マグネタイト、ラジカル対、時間タンパク との作用解明 磁界配向作用 - 生体物質生成プロセス ナノ磁性粒子の磁界作用 - ドラックデリバリー、細胞操作 など  磁気の科学的生体刺激として磁気閃光現象が知られている,ガイドラインの作成に関しても近年注目されている。  脳機能の解明に8の字コイルのベクトル的刺激が注目される。  そのほか。

生物由来の薄膜多層反射干渉光における磁気消光効果 キンギョ(和金) 鱗(ウロコ)  ここではそのほかについて,  磁場配向による生体物質の応答が、260ミリテスラという比較的低い直流磁場にて発見されました。  この図は,キンギョの鱗にグアニンという光をよく反射する物体があります。 磁場を変化させ,CCDカメラで観測します。 色素胞 (紅色素胞) 13

磁気消光効果 (2) 鱗(ウロコ) ~0T 1T 2T 3T 4T 5T 磁界増加 Bar, 20 mm 14

水溶液の凍結プロセスに対するパルス磁場効果 生体由来組織(食品など)の凍結保存技術の需要急増 パルス磁場による誘導電場刺激 生体組織の凍結プロセスにおける さまざまな物性変化を検証 時間変動磁場は磁気刺激を効率的に電場刺激として生体作用させることは、神経磁気刺激などで活用されています。現在、食品などの冷凍プロセスにおける、電磁誘導の応用も進められています。そのコンセプトはこのスライドに書かれてあるようなものです。 均一で亀裂のない氷結晶 →  細胞を傷つけない 15

凍結プロセスに対するパルス磁場効果の評価 磁場あり(7mT, 10Hz) 磁場なし 吸 光 度 凝固点 9℃ 500~1000nm 再凍結点 効果1) 凝固点~再凍結の間の時間 が延長された。この間,いったんは 凝固した氷結晶の融解がみられた。 効果2) 凍結開始(9℃)~凝固点 の間の時間が延長。  例えば、水を冷やして過冷却状態から凍結状態へもっていく際に、7mT、10Hzの矩形波の変動磁場で磁気刺激しますと、凍結プロセスのパラメータに変化が起きたことが報告されました。  このデータは水溶液の吸光度(すなわち濁度)が氷結晶の成長に伴い増加する様子を示していますが、磁場ありなしで違いがみられます。 効果3) 磁場ありのサンプルの方が, 再凍結後の氷の吸光度(濁度)変動 が少ない。安定した氷が形成された。 氷結晶のフロント同士の 衝突による亀裂 16

調査分野の分類 (3) 生体計測における磁気応用技術 磁気のセンシング機能 (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン     医療機器での磁気利用の指針 (2) 生体の磁気刺激と医療技術     磁気の刺激作用 (3) 生体計測における磁気応用技術     磁気のセンシング機能 (4) 磁気アクチュエータ技術の生体応用     磁気の電磁作用 (5) 生体内へのエネルギー・信号伝達     低侵襲な磁気エネルギー伝達

磁気センシング分野 SQUID磁束計 脳磁計 ハードウェア的にはここ10年ほとんど進歩なし  脳磁計    ハードウェア的にはここ10年ほとんど進歩なし     Neuromag社製 306ch SQUIDシステムがほぼ標準   電流源推定法など解析法が進歩  測定対象を特化したシステムの開発    心磁図、胎児の脳・心磁図、モバイル心磁計    乳児脳磁図、脊髄誘発磁場、小動物用 等 生体計測にからむ磁気センシングとしては,まずはSQUID磁束計,SQUIDグラジオメータがある。 この分野の動きとしては,測定対象に特化したシステムが開発されている。 18

測定対象を特化したSQUID磁束計例 胎児用SQUID(上) 乳児用SQUID(上) 脊髄磁場計測装置(上) 胎児聴覚誘発脳磁図(下) 胎児や乳児用のSQIUD脳磁計 脊髄磁場計測装置 脊髄障害のの箇所を特定するt目に脊髄神経信号を検出。障害ならびに途切れている個所を診断 胎児用SQUID(上)  胎児聴覚誘発脳磁図(下)     CTF Systems inc. 乳児用SQUID(上)  乳児体性感覚誘発脳磁図(下) http://www.tristantech.com/pdf/babySQUID_v1.1.pdf TRISTAN TECHNOLOGIES       脊髄磁場計測装置(上)  脊髄周辺電流分布(下)  資料提供 金沢工業大 http://www.kitnet.jp/news/index.cgi/id/00445/          19

モバイル型心磁計 ○高温超伝導 SQUID ・非微分型ピックアップコイルを持つDC-SQUID ・有効磁場感度面積 : 0.5 mm2 ・感度 : 3.8 nT/F0 ・最大変調電圧 (Vpp) : 7.0 mV <High-Tc SQUID> 35 mm ○クライオスタット ・市販の魔法瓶を使用 ・液体窒素容量 : 0.5 L これは,High-Tc のSQUIDセンサで,小さなクライオスタットとなっている。 ポータブルな心磁計となっている。 <Cryostat> 資料提供 岩手大学 小林先生 20

インダクション磁気センサ インダクション磁気センサの特徴 極めて広帯域で線形応答可能な周波数特性 フラックスゲートセンサに比べ高感度 その他の動きとして,サーチコイルコイルによるインダクショングラジオメータが 9chインダクショングラジオメータ インダクション磁気センサの特徴 極めて広帯域で線形応答可能な周波数特性 フラックスゲートセンサに比べ高感度 液体冷媒を必ずしも必要としない 検出コイルを常温で使用したい用途 検出対象をコイル内に通過させたい用途 21

マイクロテスラMRI 超低磁場MRI MRIの磁場をマイクロテスラオーダの超低磁場化 SQUID磁束計でNMR信号を検出 MRI,fNMRによる脳診断とSQUID磁気センシング(MEG)による脳信号とが同時に観測可能になった。 マイクロテスラMRIのコイル構成 MRI イメージング例 左:マイクロテスラMRI 右:1.5T MRI V.Zotev, J. Magn Reson. 2008 Sep;194(1):115-20 22

調査分野の分類 (4) 磁気アクチュエータ技術の生体応用 磁気の電磁作用 (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン     医療機器での磁気利用の指針 (2) 生体の磁気刺激と医療技術     磁気の刺激作用 (3) 生体計測における磁気応用技術     磁気のセンシング機能 (4) 磁気アクチュエータ技術の生体応用     磁気の電磁作用 (5) 生体内へのエネルギー・信号伝達     低侵襲な磁気エネルギー伝達

磁気アクチュエータ技術の特徴 非接触,ワイヤレスで動力を伝達 電磁力(トルク) 電磁力機能の用途 患者のQOLの向上,診断・治療の低侵襲化 磁界勾配,回転磁界,進行波磁界 の利用 電磁力機能の用途  (1) 回転力 - ポンプ         人工心臓用ポンプ,回転推進 など  (2) リニア駆動力 - 輸送・推進      カテーテル誘導,人工食道 など  (3) 開閉力 - バルブ      脳髄液排出バルブ,人工肛門括約筋 など   生体内のアクチュエータ動作において,磁気とのかかわりは非接触・ワイヤレスによる低侵襲での動力の伝達。

磁気アクチュエータを利用した 医療機器の開発動向 磁気駆動技術 留置形態 医療機器 開発段階 磁気浮上・磁気カップリング 埋込型 補助人工心臓用遠心ポンプ・軸流ポンプ 臨床応用 外部磁界よる経皮的駆動 挿入型 カテーテル誘導補助 大腸内視鏡誘導補助 動物実験 磁気アンカー 臨床試験 圧可変バルブ マイクロポンプ 基礎研究 自走型 カプセル内視鏡 磁気マイクロマシン 赤色のものを紹介します 25

体内埋込型補助人工心臓 磁気浮上式遠心ポンプ(テルモ社のDuraHeart) 2010年12月に日本での製造販売が承認 テルモ 社会・環境報告書 2008より引用 磁気浮上式補助人工心臓 磁気軸受と磁気カップリングによる浮上・回転機構 耐久性・信頼性の向上 血栓・溶血の抑制 2010年12月、日本での製造販売が承認 26

磁気ナビゲーションシステム カテーテルアブレーション*1による不整脈治療への応用 アブレーション用カテーテル X線透過装置 可動永久磁石 http://www.stereotaxis.com/より引用 NdFeB磁石 カテーテルの磁気ナビゲーションシステム  磁気トルクによるカテーテル先端部の屈曲  ベッド両脇の永久磁石による磁界方向の制御  不整脈のアブレーション治療のため,心筋の部位を高周波により加熱し、ピンポイントに凝固壊死させる療法  X線透過装置と組み合わせ遠隔操作を実現 可動永久磁石 Stereotaxis社の磁気ナビゲーションシステム アブレーション用カテーテル *1 不整脈の原因となる心筋の部位を高周波により加熱(50-60℃で30-60秒)し、ピンポイントに凝固壊死させる 27

胃用視鏡の誘導 オリンパスとシーメンスの共同開発で臨床試験(2010年10月発表) 胃用カプセル内視鏡の誘導  水を満たした胃の中で,カプセル内視鏡を誘導磁気トルクと勾配磁界による位置制御 オリンパスメディカルシステムズニュースリリース http://www.siemens.com/ より引用 オリンパスとシーメンスの共同開発で臨床試験(2010年10月発表) 28

自走機能を有する医療デバイス 生体組織内を移動する磁気マイクロマシン (東北大学) 自走機能を有する小腸用カプセル内視鏡 自走機能を有するカプセル内視鏡・自走デバイス  らせん構造による摩擦力で推進  回転磁界による推進と回転面による方向制御 生体組織内を移動する磁気マイクロマシン (東北大学) 自走機能を有する小腸用カプセル内視鏡 (東北大学とオリンパスの共同研究) ハイパーサーミア、DDS等への応用 29

調査分野の分類 (5) 生体内へのエネルギー・信号伝達 低侵襲な磁気エネルギー伝達 (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン (1) 磁気の医療機器での評価・ガイドライン     医療機器での磁気利用の指針 (2) 生体の磁気刺激と医療技術     磁気の刺激作用 (3) 生体計測における磁気応用技術     磁気のセンシング機能 (4) 磁気アクチュエータ技術の生体応用     磁気の電磁作用 (5) 生体内へのエネルギー・信号伝達     低侵襲な磁気エネルギー伝達

3.5 生体内へのエネルギー・信号伝達 磁気の非侵襲もしくは低侵襲 非接触(ワイヤレス) (1) 医用機器 体内埋め込み機器の電力 3.5 生体内へのエネルギー・信号伝達 ■ 医療技術とエネルギーとの係りに磁気を利用する利点    磁気の非侵襲もしくは低侵襲  非接触(ワイヤレス) ■ エネルギーを体内に伝送(TETS)     (1) 医用機器     体内埋め込み機器の電力      電気刺激用電力(FES)       体内の計測機器の電力    (2) ハイパーサーミア      熱源の供給 ■ 非接触エネルギー伝送の問題     経皮を磁界が曝露       機器の熱的な損失(SAR)    体内 皮膚 体外 レシーバー 装置 トランスミッター 装置 エネルギー伝送において,磁気とのかかわりは非接触・ワイヤレスによる低侵襲での動力の伝達。 ポインチング エネルギー P 信号伝送 経皮的電力伝送

内埋め込み医療機器への電力 (1) 小電力機器 (WからmW程度) 心臓ペースメーカ,電気刺激(FES)などの 例  例    2次電池(75 mAh)の充電     励磁周波数f= 10 kHz, 受電電力 W= 0.4W,     効率約 h= 85-90%,磁束密度 B= 1mT以下 (2) 大電力機器 (mW - 数100W程度) 補助人工心臓や自走式の磁気マイクロマシン     補助人工心臓の充電・駆動     励磁周波数f= 50-200 kHz, 受電電力 W= 20- 50 W, 体内医療機器への電力伝送  小電力機器 としては,ペースメーカーや機能的電気刺激   大電力機器としては,補助人工心臓 東北大学医工学研究科提供

完全埋込型波動型補助人工心臓の駆動 この図は,経皮的電力伝送ならびに通信伝送を用いた完全埋め込み式補助人工心臓の駆動 東北大学医工学研究科提供

誘導加温法によるがん温熱療法 磁界による直接的熱源を体内に送るものとして,がん温熱療法がある。  磁界による直接的熱源を体内に送るものとして,がん温熱療法がある。  対外から交流磁界を印可し,体内の磁性体の磁気損失などにより加温するものである。加温体としては磁性微粒子,感温磁性フレーク,磁性インプラント,などの磁気損失を利用するものや渦電流損失を利用するものがある。  この図は,NMR用造影剤のデキストランマグネタイトを利用した例を示す。

発熱要因:ネール緩和、ブラウン緩和による発熱 デキストランマグネタイトの発熱特性 熱容量 [W/cc] km : 係数(実験値) (=2.410-3 W/Hz/(mgFe/cc)/T2/ml) km : 実験から得られた係数 f : 印加磁界の周波数 (既知)   f= 140 kHz B : 磁束密度 B= 20-25 mT Dw : 重量濃度 この式は,デキストランマグネタイトによる発熱量を実験的に調べたものである。発熱は,ブラウン緩和によるヒステリシス損であり,有効な熱量を得るには100KHz, 20-25 mT 磁界が必要である。 発熱要因:ネール緩和、ブラウン緩和による発熱 発熱量は,磁束密度B,磁性微粒(磁性流体)の濃度D の計測が重要

うさぎ体内の誘導加温による温度上昇 誘導加温法による動物実験 1730mm 約5分間で45℃に! 830mm 730mm 加温装置 電流:440A,共振周波数:140kHz, 消費電力:3.5kW ,重量:150kg 1730mm 730mm 830mm 約5分間で45℃に! 皮膚下は渦電流の影響なし! これが金沢大学で開発した加温装置である。この場合,温度センサによる腫瘍部温度制御がある,2-3分で設定温度に達している 励磁用パンケーキコイル うさぎ体内の誘導加温による温度上昇                       (提供金沢大学) うさぎを用いた加温実験

まとめ 磁気応用分野での新展開による医療へのシーズ技術を調査 磁気の機能を 4種類に分類 医療機器での磁気の評価・ガイドライン 磁気の機能を 4種類に分類  刺激作用 センシング,アクチュエータ エネルギー 医療機器での磁気の評価・ガイドライン      医療へ適用できる要素技術としての        安全で機能的なシーズ技術 心筋の部位を高周波により加熱(50-60℃で30-60秒)し、ピンポイントに凝固壊死させる療法

パルス磁場効果のメカニズム 第一候補: 誘導電場 E (渦(うず)電流 あるいは誘導電流) E 電場の振動に追従し 氷晶も動く。 サンプル 第一候補: 誘導電場 E (渦(うず)電流 あるいは誘導電流) B Pulsed MF (7mT, 10Hz) Ambient fields (Without pulsed MF) B E - 氷結晶に対する刺激 電場の振動に追従し 氷晶も動く。 - パルス磁場による誘導電場が氷結晶に刺激を与えた結果、 せん熱による氷結晶融解(せん熱融解)が、より長い時間、 サンプル内部で均一に進行した、と考えられる。 39

凍結プロセスに対するパルス磁場効果の実験 0.1 sec 7 mT ~10mT 20 μsec Max. 10mTの場合: dB/dt=50T/s 室温⇔マイナス45℃で制御 冷凍庫内部で分光・顕微観察するシステム パルス磁場発生 コイル 冷凍庫内部 研究用冷凍庫 CCDファイバー・ スコープ(光源付) 磁界 細胞培養系 水溶液 40