グローバリゼーションと経営戦略 Globalization

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グローバリゼーションと経営戦略 Globalization 経営学Ⅰ グローバリゼーションと経営戦略 Globalization

グローバリゼーション ここ数10年に起こった経営環境の大きな変化に国際化(グローバリゼーション)がある。企業がその事業範囲を世界に広げる理由として、1)既存市場における優れた業績と競争優位性を新しい市場で活用するため、2)新しい競争優位性をグローバリゼーションによって獲得することを目的として進めるケースがある。

グローバリゼーション カテゴリー グローバル化に言っても、ある企業は単に自社の商品を時々輸出するものから、販売のライセンスを海外の企業に譲渡するもの、海外に独立した事業部をおき積極的に海外の市場に合わせた事業をおこなうものまで色々あり、単純に何がグローバル化か幾つかの違った区分がある。海外での事業展開への参入の度合いで区分することができる。 ステージ1 時々自社の商品を海外からの注文で輸出する。 ステージ2 販売事業を海外に作り、販売を積極的におこなう。 ステージ3 製造技術や販売ノウハウなどを海外の企業にライセンスして、その海外企業が商品の製造販売をおこなう。 ステージ4 海外に製造拠点を設立する。 ステージ5 海外に独立した事業部あるいは会社を立ち上げ、その会社の経営陣が全ての経営戦略を設定し実行する。 ステージ6 大部分の企業への投資が海外からの投資家によっている。 こうした違いは、またその企業がグローバル化によって直面する様々な問題に違いをもたらします。

グローバリゼーション ナイキのケース ナイキは設立当時、低コストで高品質のスニーカーを日本で生産し、アメリカ市場ではブランドと流通の確率に集中して、競争優位性を構築した、その後、アメリカ市場での強力なブランド力を活用して世界に事業を展開し、そのグローバル。ブランドはきわめて強力になった。また日本の生産原価が上昇すると、コストの安い韓国、台湾、インドネシア、タイに生産拠点を移した。 当初ナイキは、日本の安い生産原価を活用して競争優位を目指し、その後、アメリカにおける強力なブランド力の優位性を他国で活用し、その後、生産場所を移転して、低コストという競争優位性を維持したのである。

グローバリゼーション IBMのケース IBMはその顧客のビジネス・ニーズに対応したテクノロジーを提供することでビジネスを展開している。IBMが提供する商品・サービスにはパーソナル・コンピューター、サーバー、ウエブ・ホスティング、各種ソフトウエアー、などがある。IBMのCEOであるルイス・ガストナーがIBMの経営ビジョンをこう語っている。 IBMは最先端の情報技術の研究・開発・製造技術を持っている。その商品はコンピューター、ソフトウエアー、通信機器、情報ストレージ機器、マイクロプロセッサー等幅広い情報技術に広がっている。そして、世界中にいるわが社のプロフェショナルな技術者はこれらの情報技術を顧客のビジネスの価値創造に役立つようにサービスを提供する。 このバストナーのビジョンを実現するための幾つかの経営戦略をIBMは決定したが、そのうちの1つに、IBMは初めてグローバル・ウーマン・リーダー会議を開催した。この会議には、81人の女性経営管理者が19の違った国から集められた。この会議の目的は、何がIBMの女性マネージャーにとって、彼らの成功の妨げとなっているのか洗い出し、それに対する対応策を作成することであった。その会議で洗い出された問題点として以下のものが示された。 IBMの企業文化は非常に男性中心である 女性従業員がその仕事の役割と個人的な役割のバランスを取ることが困難である 女性従業員にはほとんどアドバイザー的なサポートをする人材が与えられない。 IBMの企業文化は女性従業員にあまりリスクのある仕事を与えない これらの問題点を解決することがIBMの世界戦略を進める上で非常に重要であり、ガストナーの経営ビジョンを実現する上で必要不可欠であると認識された。

グローバリゼーション 戦略的メリット 既存の市場で持つ競争優位性を新しい地域で活用する 新市場で、既存の市場では得られない、より多くの競争優位性を得る。 多数の市場で事業展開することで競争優位性を得る。 ある特定の国で事業を展開することでコスト優位性をえる。 事業の一部を外国に移すことで、政府の政策の違いを活用する。 学習を奨励するために、新しい国に参入する企業もある。 ライバルの戦略的意思決定や活動に影響を与えるために、海外に進出する。

グローバリゼーション 戦略的デメリット 企業が外資系だと認識されると、消費者グループ、競合する現地企業、政府官僚の間で敵意が生まれる。こうした企業に対する疑惑や、外資系企業には国内企業と同じ誠実さが期待できないといった感情が生まれやすい。 本社から物理的にはるか離れた場所で経営されるので、情報の収集も周知徹底も困難で、マネージャーの管理が行き届きにくい。 組織設計や人事方針を決定する際に文化の違いを考慮しなければならない。 現地の税制や法律・規則を学び、経営方針に組み入れなくてはならない。 外国通貨による取引が生じるので、キャッシュフローの不確実さが増し、大きなリスク要因になる。 政治環境もことなり、環境や法制の違いについての理解が足りなければ、手痛い罰を受けることになる。

グローバリゼーション 地域への対応:中国のビール市場 進行経済では、法的な環境、輸送、コミュニケーション、電力などのインフラ状況が異なるため、海外企業が有効な戦略を立案することは非常に困難である。たとえば、1990年代に中国のビール市場に参入しようとしたビール・メーカーの事例を見るとしよう。 この時期、中国市場は年約10%の伸びを示しており、21世紀の初めには中国が世界最大のビール市場になると考えられていた。加えて、国内のビール・メーカーは都市地域に集中しており、全体市場のシェアが4%以上のメーカーは存在しなかった。 しかし、外資が中国で競争するためには、もとの戦略と事業のやり方を大きく変更しなければならなかった。中国政府は、海外のビール・メーカーに国内メーカーと提携するよう要求したが、適当なパートナーはなかなか見つからなかった。電力のインフラも未整備で、頻発する停電に対応できるような柔軟な製造工程が必要だった。きれいな水を十分に確保することも問題だったし、中国南部から香港へコンテナ輸送する費用のほうが香港からヨーロッパやアメリカへの輸送費よりも高かった。温度管理されている輸送手段がなくビールがだめになってしまうことが多く、大規模で効率のよい流通業者も存在せず、国営のビール・メーカーは、2000社近い流通業者を用いていたが、在庫管理もうまくおこなわれていなかった。 このような環境では、キリンやアンハイザーブッシュなどが自国で活用していた競争優位性を発揮することは難しかった。自国では、規模の経済を活用し、全国的な宣伝広告によってブランド地位を確立し、安定したエネルギー源や清潔な水を使い、大規模生産で効率を上げ、中堅から大型の流通網によって製品を良好な状態でタイミングよく供給することができた。しかし、この戦略を中国で再現することはほとんど不可能であった。 実際数多くのビール・メーカーが参入したが、1998年の時点で、中国市場で利益を上げている企業はない。

グローバリゼーション 地域への対応:習慣や信条 企業が現在の戦略を異なった外部環境に応用する際には、社内的な課題も起こる。企業の社内コンテクストは社会コンテクストと結びついている。カリフォルニア州のシリコンバレーにあるハイテク企業では、その企業に勤めるエンジニアはよく転職する、シリコンバレーの企業は従業員の離職にともなう費用を最小化する人的資源政策をもっているが、安定した終身雇用制が強い社会コンテキストで事業を展開してきた企業は大幅な企業内部の政策の変更を余儀なくされるであろう。

グローバリゼーション 地域への対応:習慣や信条 国の文化の違いを説明する研究は多くされている。その1つに、文化的な特性を2軸、①個人主義・集団主義、②ヒエラルキー的・平等的で研究したものがある。 個人主義・集団主義という指標は、個人が集団に強い義務感をもたずに、規範と整合した行動が取れる可否かを示している。 権力格差とは、社会がどれだけ組織内の権力分布の不均等を許容するかにより決まる。 図によると、似ている国であっても、組織面でできることの違いがあることがわかる。

グローバリゼーション ダイムラーとクライスラー ダイムラーとクライスラーが1998年に合弁したとき、上級マネジャーの報酬体系の違いは大きな問題となった。アメリカの上級マネジャーの報酬は平均するとヨーロッパ企業の上級マネジャーの報酬よりもはるかに高く、この例でも、クライスラー側の報酬はダイムラー側の2倍か3倍だった。新しく合弁した企業では、社内の公平という観点から、これほどの格差を続けることができなかった。しかし、クライスラーの社員の給与を下げると、多くの社員、それも最も市場価値のある社員が辞めることになる。そこで、ヨーロッパの文化的コンテクストとしては大きなコストがかかり問題は大きかったが、ドイツのマネジャーの給与を上げる決定がなされた。

グローバリゼーション 効率化 最低コストで製品を生産し、流通できる企業は「グローバルに効率的」と考えられるが、実際、事業をどこに立地すべきか、何箇所でおこなうべきかなど、企業が付加価値活動をどう設計し、グローバルな効率を達成するかは難しい課題である。規模の経済、輸送費用、原材料費の格差の活用、分散するオペレーションのマネジメントなど多様な要素のバランスをとりつつ、コストを最小化するグローバルなサプライチェーンの設計が必要である。 インテルは、1960年代に設立された当初、販売以外の全ての活動をシリコンバレーでおこなっていた。その後、半導体業界のコスト競争が激しくなると、労働集約型で特別な技能を必要としない活動を海外に移した。その後、シリコンバレーにハイテク企業が集まり、生活費用も事業費用も上昇するにつれて、インテルはシリコンバレーからアメリカ国内の人件費が安い地域に生産拠点を移し、技術クラスター(集団)も海外に置くようになった。生産活動に必要な最新のエンジニアリングを得るため、アメリカの若いエンジニアがアイルランドに異動する場合は研修や異動に補助金を出すなど、新しい地域で働くエンジニアを特別に採用したこともある。

グローバリゼーション 学習 企業が多数の国で事業を展開する戦略を立案し、組織を設計する努力を続ける中で、最近重要性を増してきた課題は急速な技術の進歩である。グローバル化された業界で競争優位性を維持するためには、新しい組織能力を構築するための学習が必要である。 世界的に事業を展開する企業は、多様な問題と解決法の知識を持つ。各地域で、地域の顧客や仕入先、競合、技術についての情報を集められるし、集めた情報を活用する人的資源も各地に分散している。そこで、グローバル企業は、1国で事業を展開する企業よりも、多様な問題の捉え方や解決方法を手に入れる。 ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)は、メキシコ湾地域での新海洋の油井採掘機の価格が急騰したとき、採掘機を効率的に使ってコストを下げようとした。その地域のドリル・エンジニアは、地域の競合と自社の業務効率を測定し、自社が最も優れていることを突き止めたが、世界各地にあるBP事業の生産性に比べてみると、ドリル用ビットとドリル工具を精密に組み立てれば、さらに業務を改善できることがわかった。こうしてBPは1年以内にメキシコ湾地域の油田1つあたりに要する掘削時間を半減させることに成功した。

グローバリゼーション 組織設計 これまでの多国籍企業は、2つのアーキテクチャーのいずれかを選んできた。1つは、ヨーロッパの多国籍企業であるネレスやシェル、ユニリーバ、フィリップスなどが採用する高度に分散した、国を基礎とする連邦型構造(federation structure)である。この連邦型企業は、国ごとに研究機関から販売まで全ての機能をもち、製品の特色や価格を決定し、仕入れ業者との関係を構築した。本社は、持ち株会社程度の役割しか果たさず、各国の事業の展開にはほとんど口を出さない。もう1つは、1980年代に松下やトヨタなど日本企業が採用した、密接に結合した中央集権型構造(centralized structure)である。中央集権型は巨大かつ強力な本社が世界中のあらゆる意思決定を行い、各地域組織は本社に知識を伝え、市場の情報を送るパイプの役割と、中央管理された生産施設から出荷される製品の流通ポイントの役割を果たす。

グローバリゼーション 組織設計 構造 利点 弱点 産業 連邦型 地域への対応力の強さ グローバル・レベルの効率の低さ 国によって嗜好が異なり、ビジネスのやり方が国特定の規制に大きく影響されるような産業 中央集権型 グローバル・レベルの高い効率 地域への対応力の弱さ コストが競争優位性の鍵である汎用品

グローバリゼーション 組織設計 1990年代に入ると、多国籍企業の多くが連邦型と中央集権型のモデルの中間型を求めるようになってきた。例えば、連邦型であったユニリーバは、国境を越えた製品開発や市場への導入のコーディネーションをすることで、各国の組織を結び付けようとしている。また、トヨタは元来の中央集権的なモデルから地域でのバリエーションを進めている。 また、新たな企業形態としてクリストファー・バートレットとスマントラ・ゴーシャルは、トランスナショナル企業モデルを提唱した。トランスナショナル企業とは、地域への対応とグローバル・レベルの効率という従来の2極的な考えを否定して、企業レベルではなく、企業の活動レベルで分析しようとするものである。規模の経済が重要となる生産のような活動は中央におかれるが、マーケッティングなど地域への対応がより重要な活動は分散される。 自動車業界に最近見られるプラットフォーム生産の動きは、トランスナショナル型の企業の好例である。デザイナーとエンジニアはまず世界中の消費者の嗜好に共通項がある自動車の特性や部品を洗い出して、プラットフォームを設計する。そこからこの基本プラットフォームに、各地域に特有の特性を付け加える。こうすると世界共通の特色については、世界レベルの規模の経済を実現できるし、多様性が必要な特徴については地域の需要にあわせることができる。

対外投資のキャッシュフロー 例題 ある企業が対外投資を計画していて、1個当たり50ドルの価格で1ヶ月に6000個の販売が予想される。現在この会社は同じ市場で、1個当たり60ドルの価格で4000個を輸出している。ところが、来年には輸入割当制度が施行される予定があり、主な競合他社はこれを回避するため、現地に拠点を設けようとしている。この会社が、もし追随して投資をおこなわなければ、輸出は単価50ドルで1500個になると推定される。もし投資をおこなえば、輸出は1000個に下落するだろう。この商品の製造原価は国内で生産した場合1商品あたり20ドルで、さらに輸出にかかるコストは1商品あたり2ドルになります。また、新しく海外で製造した場合の製造コストは25ドルです。では、この海外投資によって得られると見られる売上高はいくらになるのか。さらに、この海外投資の総額がいくらまでならあなたはこの投資を行いますか。簡単に説明してください。

対外投資のキャッシュフロー 例題 ある会社が、海外の組立工場に投資し、親会社から部品を購入する計画を立てている。部品の市場価格は30ドル。この価格では親会社の利益は8ドルになる。組み立てコストを10ドル上乗せした上で、子会社は完成品を50ドルで販売するものとする。本国と輸出先国で課される税率はそれぞれ30%と40%である。現在の移転価格で、企業としての税引き後キャッシュフロー(利益)はいくらか。また、移転価格を40ドルにするといくらになるか。

政治的リスク 政治的リスクを伴う事件は多種多様でありその影響もさまざまである。ここでは、幾つかの例を挙げる。 税制や外貨規制の方向転換。特に、差別的もしくは恣意的なものへの転換 現地生産、資金調達、雇用習慣に関する受入国の立法処置 外資企業を商業的に差別すること 現地での資金借入に対する制限 民間企業同士の契約に対する政府の干渉 十分な補償を伴わない収容権行使 政治的暴動や内戦によって生じた施設破損または職員への危害