新生児医療の現状   全国と滋賀県 1997年7月25日、県立小児保健医療センターで行われた乳幼児健診従事者研修会での講演に使用したスライドです。 (滋賀医科大学小児科 青谷裕文 作成) ? 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?)

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新生児医療の現状   全国と滋賀県 1997年7月25日、県立小児保健医療センターで行われた乳幼児健診従事者研修会での講演に使用したスライドです。 (滋賀医科大学小児科 青谷裕文 作成) ? 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?) 未熟児にはどれくらい障害がおこるのか?

疑問 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?) 未熟児にはどれくらい障害がおこるのか?

出生児数と合計特殊出生率  1995年の合計特殊出生率(15才から49才までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は0.42と過去最低を記録した。  合計特殊出生率が2.1を下回ると人口は減少する。

都道府県別 合計特殊出生率(1995) 1995年の滋賀県の合計特殊出生率は、1.5台で全国平均の1.42をやや上回る。(94年は1.67であった。)

人口推移の予測 2910年をピークに減少傾向となると推測される。

出生率の推移 出生率(人口1000対出生数) 減少傾向だが、93年から横ばい。 滋賀県は全国よりおおむね1高い。

人口の推移(全国との比較) 滋賀県は人口増加県である。

出生数の推移(全国との比較) 出生数は全国と同じく減少パターンを示すが、滋賀県では人口の増加に伴って出生数はやや増加に転じている。

! 結論 新生児は減っているのか? 最近数年に関しては減っていない。 全国的には下げ止まり。 滋賀県ではわずかに増加傾向? しかし、10年後ごろから減少する予測。

疑問 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?) 未熟児にはどれくらい障害がおこるのか?

低出生体重児(2500g未満)の出生数 1994年、低出生体重児は全国で9万人生まれた。 滋賀県ではおよそ900人ほどと推測される。

極低出生体重児(1500g未満)の出生数

超低出生体重児(1000g未満)の出生数

滋賀県の主要新生児施設に入院した 低出生体重児数 (1995年新生児医療施設全国調査) 滋賀県の主要新生児施設に入院した 低出生体重児数   (1995年新生児医療施設全国調査)

! 結論 低出生体重児は増えているのか? 特にここ数年間で急速に増加している。

疑問 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?) 未熟児にはどれくらい障害がおこるのか?

新生児死亡率(全国との比較) 滋賀県の新生児死亡率は、1990年頃よりほぼ横ばいとみてよい。わずかに全国平均より高い。

早期新生児死亡率(全国との比較) 滋賀県の早期新生児死亡率は、ほぼ全国平均でゆるやかに改善中である。

(旧)周産期死亡率 周産期死亡率の定義は95年から変わった。

(新)周産期死亡率 周産期死亡率の定義は95年から変わった。 旧周産期死亡は在胎28週以後の後期死産と早期新生児死亡の合計であったが、95年から在胎22週以後の死産と早期新生児死亡との合計に改められた。また、率を計算する母数は、旧では出生1000対であった、新では出産(出生+22週以後の死産)1000対である。 滋賀県はほぼ全国平均である。

滋賀県の新生児死亡数と早期新生児死亡数 滋賀県の新生児死亡数は、1990年頃よりほぼ横ばいである。 1995年の新生児死亡数は33例である。同年、滋賀県の主要な新生児医療施設(NICU)で死亡した新生児は24例である。残りの9例は積極的な集中治療を受けずに死亡していると推定される。

出生体重別死亡率(新生児期)の推移 日本小児科学会新生児医療調査小委員会による5年ごとのハイリスク新生児医療全国調査。 主要新生児集中治療施設1169施設での成績集計である。 すべての体重グループで死亡率は改善を示している。 石塚 1996

生存例中の最低出生体重・最低在胎期間 最低体重 最低在胎期間 368g 26週3日 男児 大阪府 385g 23週6日 女児 香川県 368g 26週3日 男児 大阪府 385g 23週6日 女児 香川県 390g 27週2日 女児 茨城県 これらより低体重の297g~360gの8例が報告されたが、7例は0-6日、1例は7-27日に死亡した。 最低在胎期間 22週6日  600g 男児 東京都 22週6日  610g 男児 山形県 20週が4例、21週が8例いたがすべて早期新生児期に死亡した。 (1995年新生児医療施設全国調査)

体重別新生児死亡率 (1995年新生児医療全国調査) 滋賀県の死亡率は、極低出生体重児では全国並、 1500g以上の児で少し悪い。 単位:%

疑問 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?) 未熟児にはどれくらい障害がおこるのか?

超低出生体重児NICU入院児の 新生児期死亡率(体重別) 全国(193施設)     滋賀医大 800g未満 n=800 n=17 800~1000g n=13 n=797 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

超低出生体重児NICU入院児の 新生児期死亡率(在胎週数別) 全国(193施設)      滋賀医大 在胎27週未満 n=972 n=18 在胎27週以後 n=621 n=12 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

総合発達評価の判定基準 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

超低出生体重児NICU入院児の3歳時予後 (800g未満) 全国(193施設)       滋賀医大 n=800 n=17 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

超低出生体重児NICU入院児の3歳時予後 (800g以上) 全国(193施設)          滋賀医大 n=797 n=13 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

超低出生体重児NICU入院児の3歳時予後 (体重別) 全国(193施設)     滋賀医大 800g未満 n=800 n=17 800~1000g n=13 n=797 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

超低出生体重児NICU入院児の3歳時予後 (27週未満) 全国(193施設)         滋賀医大  n=972 n=18 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

超低出生体重児NICU入院児の3歳時予後 (27週以後) 全国(193施設)          滋賀医大 n=12 n=621 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

超低出生体重児NICU入院児の3歳時予後 (在胎週数別) 全国(193施設)      滋賀医大 在胎27週未満 n=18 n=972 在胎27週以後 n=621 n=12 超低出生体重児の3歳時予後全国調査 中村 1995

! 結論 未熟児はどれくらい助かるのか? 未熟児にはどれくらい障害がおこるのか? (全国では?滋賀県では?) 生存率 正常率         (全国では?滋賀県では?)                 生存率        正常率 1000~1500g     95%        おそらく90%程度 800~1000g      80~90%     80~90% ~800g(micropremie) 60~70%     70~80%       滋賀県は1500g以上の児でやや死亡率が高い。       正常率はおそらくすべてのグループで全国並?

! 作成 滋賀医大小児科 青谷裕文 発達予後のデータについては滋賀県全体のものがないため、滋賀医大のデータを使用しました。 作成  滋賀医大小児科 青谷裕文 発達予後のデータについては滋賀県全体のものがないため、滋賀医大のデータを使用しました。 データの解釈についてはあくまでも青谷の主観とお考え下さい。 赤ちゃんの写真は「ベビーサイエンス 赤ちゃんはすごい」(メディカ出版)から宮崎雅子氏撮影のものを無断で借用してしまいました。どうかお許し下さい。