Microsoft Excel 2010 を利用した 2項分布の確率計算

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Microsoft Excel 2010 を利用した 2項分布の確率計算 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi@si.aoyama.ac.jp Twitter: @aterao

1.エクセルを利用した 2項分布における成功確率の計算 ベルヌーイ試行おいて x 回成功する確率P{X=x} は,エクセルの BINOM.DIST 関数を用いて求められる.この関数名の由来は Binominal Distribution (2項分布)である. 例題:サイコロを投げる.1の目がでることを「成功」とする.3回投げた時の成功回数の確率分布は,2項分布となる.テキスト表3(p.95),図2(p.96)参照.

エクセルシートの準備 「成功回数」「2項係数」「成功確率P{x}」を記録する列を用意する.サイコロは3回投げるので,成功回数は0回から3回である. BINOM.DIST 関数で P{x} を求めることができる. 2項係数は, テキスト表3との照合の ためと,後で行う検算の ために入れてある.

COMBIN 関数 すべて成功あるいはすべて失敗という試行結果の系列は1通りしかない. その他は複数とおりの系列がある.2項係数はいくつの系列があるかを表す. 2項係数を計算するエクセルの関数は COMBIN 関数である.たとえば, COMBIN(3, 2) は,3C2 を計算して,3を返す. この関数名の由来は COMBINATION である.

2項係数の計算 n 回の試行で x 回成功する系列の数(2項係数)を計算する書式は,=COMBIN(n, x) である.たとえば,サイコロ投げ(1が成功)を3回行って1回成功する系列の数を求めるには,以下のように =COMBIN(3, 1) と入力する.

2項係数を計算する列で,それぞれの成功回数(0回から3回)に対応する2項係数を計算する.COMBIN(3, 0) から COMBIN (3, 3) までを順に入力すると,下図のようになる.

参考:PERMUT 関数 COMBIN 関数は,n 個のものから x 個のものを選ぶ組み合わせの数を計算する. 類似の関数に PERMUT 関数がある.これは, n 個のものから x 個のものを選んで並べる,並べ方の数を計算する関数である.たとえば,PERMUT(3, 2) は,3P2 を計算して,6を返す. この関数名の由来は PERMUTATION (順列)である.

BINOM.DIST 関数 BINOM.DIST 関数を用いて,P{x} を計算する.この関数は,成功数 x,試行回数 n,成功確率 p を指定して, =BINOM.DIST(x, n, p, FALSE) と書く.最後の FALSE は P{x} を求める場合の指定である.これを TRUE とすると,後述する部分和の計算になる.

成功確率の計算 BINOM.DIST 関数を挿入し,成功確率 P{x} を求める.

2項分布 下図のような確率分布(2項分布)が得られる.

検算 検算を行ってみよう.BINOM.DIST 関数を用いずに,成功確率 P{x} を計算する.これは,表3(テキスト p.96)に示されているように,2項係数,成功確率.失敗確率から計算できる.たとえば,1回成功する確率は,

「検算」のための列を用意して,式を入力していく.下図では指数部分を直接に数値(1乗および2乗)で入力してある.これは改良可能(次ページ).

BINOM.DIST関数を用いた計算結果と,検算の結果が一致していることを確認しよう. 指数部分の書き方を工夫した. 1か所だけこの式を用いれば,あとはコピペ.

グラフ 最後に,確率分布のグラフを描く.これは詳細を記さないので,各自やっておくこと.

2.エクセルを利用した 2項分布の部分和の計算 2項分布において,特定の成功回数 k の確率P{k} ではなく,k 回以上(あるいは以下)の成功が得られる確率 P{X≧k} (あるいはP{X≦k})が問題となることはしばしばある. テキストの付録の表III(p.293)は,試行回数n が10までの,「x0 回以上の成功」の確率を与えている.x0 = 0 ならばこの確率は当然1なので,表には x0 = 1 から n までの確率が載せられている.

補間 成功確率 p が0.5を超える場合は表に載せられていないので,「成功」と「失敗」を読み替える.(テキスト p.100) 0.5以下の成功確率で,この表に掲載されていないものに対する部分和 s については,線形補間を行う必要がある.たとえば,テキスト p.100 で説明されている,n = 10, p = 0.33, x0 = 3の場合,表IIIにあるのは,p = 0.30 に対応する 0.6172 と,p = 0.35 に対応する 0.7384 である.よって,・・・

以下の比例式を解いて,s = 0.6972 を得る.この比例式の意味は次のページ.

BINOM.DIST関数による部分和の計算 エクセルのBINOM.DIST関数は,最後の引数(関数への入力値)に TRUE を指定することで,2項分布の部分和を求めるために用いることができる.ただし,テキスト付録の表IIIと異なり,この関数は成功回数が k 回「以下」の確率を返す. たとえば,BINOM.DIST(3,10,1/6,TRUE) は,成功確率1/6の試行を10回繰り返すとき,成功回数が3回以下(0, 1, 2, 3回のいずれか)である確率を返す.

BINOMDIST関数による部分和の計算 さいころを3回投げて,1の目が出る「成功」が k 回以上である確率を,BINOM.DIST関数を用いて求めよう.k の値が1から3までについて2項分布の部分和を計算する( 0回以上の成功確率は1 ).たとえば,2回以上の成功確率は, 1 – BINOM.DIST(1, 3, 1/6, TRUE) として計算できる. 成功回数が1回以下の確率

BINOMDIST関数による部分和の計算 2回以上の成功確率 1 – BINOMDIST(1, 3, 1/6, TRUE) 最初の引数である 1 のかわりに, 下図では A4 – 1 と入力している.

BINOM.DIST関数による部分和の計算 下図のように,2項分布の部分和(k 回以上成功する確率)が計算できる.

検算 検算は容易である.部分和を構成するP{x} をすべて加えればよい.たとえば,1回以上成功する確率は,P{1}+ P{2}+ P{3}で求められる.