「私たちの活動」を記録しよう! -アーキビストからのご提案- 東日本大震災に関する書類・写真・動画の整理・保存講習会 -被災支援活動の経験・ノウハウを活かすためにー 2013-12-13@国立国会図書館 「私たちの活動」を記録しよう! -アーキビストからのご提案- 立教大学共生社会研究センター 平野 泉izhirano@rikkyo.ac.jp
0. はじめに 立教大学共生社会研究センターとは 0. はじめに 立教大学共生社会研究センターとは
=「市民活動の記録」のアーカイブズ
1. アーカイブズとは
作成・収受されて蓄積され、並びにその持続的価値 ゆえに保存された文書。 (2) アーカイブズを保存し、閲覧利用できるようにする アーカイブズ:Archives 業務遂行の過程で個人又は組織により 作成・収受されて蓄積され、並びにその持続的価値 ゆえに保存された文書。 (2) アーカイブズを保存し、閲覧利用できるようにする 建物又は建物の一部。 (3) アーカイブズを選別、取得、保存、提供することに 責任をもつ機関又はプログラム。 International Council on Archives, Multilingual Archival Terminology, http://www.ciscra.org/mat/
どことなく、官僚的 きちんと整った階層的組織 整備されたルールと手続き ルールと手続き通りの業務 ルールと手続き通り作成される文書 ルール通りファイルして管理 ルール通り保存・利用
2. 市民の活動とアーカイブズ
2. 市民の活動とアーカイブズ やむにやまれず とるものもとりあえず 初めに行動ありき →活動を終えるころ、「記録」に思いをいたす
活動が生み出した知恵と経験を共有 2-A. 印刷・出版物: 報告書・ニューズレターなど 2-B. 活動が生み出した様々な記録 =アーカイブズ
アーカイブズがたどる運命 永続的 一時的 組織の一部 活動中は自ら母組織のルールや方針に従い管理 活動中は自ら管理 終了後は母組織へ? 単独で活動 永続的に自ら管理、 しかし…? 終了後は…?
3. 手間ひまかけて残す意味とは
3-1. そもそも、なければ活動できない 権利・義務の証拠として 活動について説明を可能に 様々なリスクや紛争に備えて 3-1. そもそも、なければ活動できない 権利・義務の証拠として 活動について説明を可能に 様々なリスクや紛争に備えて 参照すべき知識・経験の集積として
3-2. 社会的責任を果たすために 説明責任 透明性 倫理的な行動 ステークホルダーの利害の尊重 法の支配の尊重 国際行動規範の尊重 3-2. 社会的責任を果たすために ISO26000:2010 組織の社会的責任に関する手引き (Guidance on Social Responsibility) 説明責任 透明性 倫理的な行動 ステークホルダーの利害の尊重 法の支配の尊重 国際行動規範の尊重 人権の尊重
新しい仕組み・価値を生み出すメッセージの発信 3-2. 社会的責任を果たすために 日本NPOセンター「信頼されるNPOの7つの条件」 http://www.npo-hiroba.or.jp/7requirement/index.html. 明確なミッションと継続的な事業展開 財政面での自立性 意思決定の自律性 情報の積極的公開 開かれた組織 事務局体制の整備 新しい仕組み・価値を生み出すメッセージの発信
3-2. 社会的責任を果たすために 震災後の支援活動 →たくさんの人びとに、そして社会にも 大きなインパクトを与えている 社会的責任を果たすためには、 記録をつくり、管理し、残すことが必要
3-3. 記憶し、記憶されるために Armelle Le Goff, “Les archives des ONG : Une mémoire à partager. Guide pratique en 60 questions.” International Council on Archives, p.8, 2004. http://www.ica.org/?lid=10105 NGOにとって、自らのアーカイブズを保存することは、現在と未来に生きるすべての人びとの 既知・未知の要求に応えるための連帯の行為であるとともに、忘却を避けることで「はかなさ」を乗り越えるための手段でもあります。
アーカイブズを保存しない組織は、 忘れ去られる運命にあるのです。 3-3. 記憶し、記憶されるために Armelle Le Goff, “Les archives des ONG : Une mémoire à partager. Guide pratique en 60 questions.” International Council on Archives, p.8, 2004. http://www.ica.org/?lid=10105 アーカイブズを保存しない組織は、 忘れ去られる運命にあるのです。
「記憶」という仕事を担う
他の、どこにもないかもしれない 「私たち」にしか知り得ないことがある 「私たち」だけの経験や思い 被災者の経験や思い すぐに公開はできなくても、未来のために
アーカイブズを通して 私たちの「いま」の活動を 空間と時間の中にしっかりと位置づける
4.アーカイブズの基本的性格 業務遂行の過程で作成・収受 オリジナルでユニーク 権利・義務を発生させ、立証する力 コンテクストなしでは意味をなさない
「コンテクスト」の重要性 誰が・いつ・何を・どこで・何のために・どのように 「コンテクスト」の重要性 誰が・いつ・何を・どこで・何のために・どのように
例:宇井純公害問題資料コレクション
東京大学構内で バラまかれた ビラのスクラップ
講演と映画の会「松川事件」 (東大松川守る会) 東大で宇井純が入手してスクラップ+スクラップブックのタイトルに年代 →誰でも容易に解釈可能
5. 記録のライフ・サイクル 現用 半現用 非現用 非現用 組織アーカイブズ オフィス 中間書庫等 アーカイブズ 収集アーカイブズ 非現用 5. 記録のライフ・サイクル 現用 半現用 非現用 組織アーカイブズ オフィス 中間書庫等 アーカイブズ 収集アーカイブズ 非現用 非現用 非現用
みずからが、みずからの記録を みんなのために みらいに向けて (北川 2003:292) 原則は 3つの「み」 みずからが、みずからの記録を みんなのために みらいに向けて (北川 2003:292)
なぜ保存するのか 業務のため 社会的責任のため 記憶のため →使えなければ、意味がない
7. 保存し、使うためにまずすべきこと: 方針を立てる(archival policy) 誰のために、何のために、何を保存するのか 誰に、いつ、何を利用可能とするか 法規、ルール、組織、予算、人員、設備、 ノウハウ、スキル.... 方針を立て、ルールを作ったらそれを文書化し、記録とともに保存する
具体的業務 評価・選別(appraisal) 取得(acquisition) 3. 受け入れ登録(accession) 具体的業務 評価・選別(appraisal) 取得(acquisition) 3. 受け入れ登録(accession) 4. 編成・記述(arrangement & description ) 5. 保存(preservation) 6. 公開・利用(access)
7-3-1. 保存し・使うための整理 ー守るべき原則 (フォンド尊重の原則) 出所原則 原秩序尊重の原則 記録は、そもそも業務がしやすいような秩序に →そうした秩序を尊重することによって、 記録を業務のコンテクストと確実に結びつける
記録管理の国際標準 ISO 15489: よい記録の要件 真正性 信頼性 完全性 利用性
あれがどのように作られ、保存されていれば、 「借用」の事実を100年後の人も理解し、 信じられるのか? 例えば「借用証」問題 あれがどのように作られ、保存されていれば、 「借用」の事実を100年後の人も理解し、 信じられるのか?
ときに相反する2つの価値 社会的 責任 組織の 利益
ときに相反する2つの価値 保存 アクセス
ときに相反する2つの価値 プライバシー アクセス
ときに相反する2つの価値 著作権 など アクセス
複数の価値をどこで均衡させるか? →時代や地域、文化によって異なる
アーカイブズに「正解」はない →経験を共有し、学び合うことが大切
ご静聴ありがとうございました。 izhirano@rikkyo.ac.jp