BIEP成果報告 -穴あきラメラネマチック(PLN)相 が形成するバブルの表面張力-

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BIEP成果報告 -穴あきラメラネマチック(PLN)相 が形成するバブルの表面張力- 京都大学大学院 理学研究科  物理学第一教室 ソフトマター物理学研究室  吉岡 潤

概要 留学先: ドイツ連邦共和国 マクデブルグ大学 非線形現象研究室 受入研究者: Prof. Ralf Stannarius 留学先: ドイツ連邦共和国        マクデブルグ大学       非線形現象研究室 受入研究者: Prof. Ralf Stannarius 期間: 2011年 6~9月 ・留学先での研究の様子 ・留学の目的 ・得られた成果 報告内容

液晶とは :固体(結晶)と液体の中間の状態。 ◆液晶 棒状分子 の系で発現することがある。 液体 固体(結晶) ネマチック液晶 (分子の向きだけそろっていて重心位置は自由に運動している状態。)

サーモトロピック液晶とリオトロピック液晶 サーモトロピック(T)液晶相 (協同的な配向秩序) ネマチック(N)相 スメクチック(S)相 :棒状分子 同時に有した系を つくる。 リオトロピック(L)液晶相 (ミクロ相分離構造) ラメラ(L)相 ミセル相 :水分子 親水基 疎水基 :界面活性剤分子

本研究の混合系 ・7CB分子 協同的な 配向秩序 ミクロ相分離構造 ・BI分子 ネマチック(N)相 ラメラ(L)相 相系列 結晶相 42℃ 30℃ 協同的な 配向秩序 ミクロ相分離構造 ・BI分子 炭化水素(メソゲン)鎖 フッ素鎖 相系列 結晶相 スメクチックC(SC)相 ラメラ(L)相 スメクチックA(SA)相 等方(I)相 96℃ 60℃ 80℃

7CB‐BI混合系の濃度‐温度相図+組織観察 N (BI20%,43℃) PLN PLN (BI20%,35℃) L(SA) (BI50%,35℃) L N I I+N I+L 温度 [℃] L-N中間相 穴あきラメラネマチック (PLN)相が発現 7CB BIの濃度 [wt%] BI

PLN相の構造モデル N相 PLN相 L相 表面張力が発生 低 高 BIの濃度

7CB-BI混合系における層間隔 L BIの濃度が減少するにつれて層間隔は減少 PLN I+L 高 層間隔 [Å] BI90% BI80% 低 層間隔 [Å] BI90% PLN L I+L BI80% pure BI 層間隔 BI70% BI60% BI50% BI40% BI30% BIの濃度が減少するにつれて層間隔は減少 BI25% BI20% 温度 [ ̊C]

ラメラ相の膨潤 層間隔が増加する場合 膨潤 層間隔が変化しない場合 膨潤 両親媒性分子の密度が減少 表面張力が増加

L-PLN転移における表面張力 L相 L相 PLN相 BIの濃度増加に伴い、層間隔が減少 表面張力を減少させるため、穴が発現 BIの濃度 高 低

液晶バブル 1/(P-P0 ) [1/Pa] スメクチックバブル 2R [mm] バブルを作製することで、表面張力σが測定できる。 スメクチック(S)相 液晶バブル スメクチックバブル 1/(P-P0 ) [1/Pa] 2R [mm] バブルを作製することで、表面張力σが測定できる。 R. Stannarius and C. Cramer, Europhys. Lett., 42 (1), pp. 43-48 (1998)

滞在日程 2/24: 留学生として受入を依頼→受諾 6/15,16: 京都→マクデブルグ 6/17: 研究室見学、実験開始 6/24: 実験装置が組みあがる 6/29: 日本での研究についてプレゼン 8/24: マクデブルグでの成果報告 9/5: マクデブルグ→ウィーン 9/6~10: 国際学会(Liquid matter conference) に参加 9/11,12: ウィーン→京都 マクデブルグ大学  ゲストハウス(滞在先)

マクデブルグ大学 非線形現象(Stannarius)研究室 スメクチックバブルの破裂ダイナミクス 0.0ms 0.2ms 0.4ms 0.6ms 0.8 ms 回転円筒中における粉体の分離 初期状態 回転 500回転後 23000回転後

表面張力測定 箱(温調付き) 橙色 フィルター バブル カメラ ハロゲンランプ 圧力 センサー 注射器

PLN相 表面張力測定 PLN バブル (BI20%) P-P0 [Pa] R [mm] バブルを作製することで、表面張力σを測定。

表面張力σの濃度依存性 (32◦C) σ [mN/m] BIの濃度 [wt%] L PLN L-PLN 相転移において表面張力が変化

表面張力σの温度依存性(L-PLN相転移) σ [mN/m] 温度 [ ̊C] PLN L I I+L N PLN L L→PLN相転移において表面張力が減少

得られた成果 ・研究成果 バブルを作製することで、棒状液晶-フッ素鎖両親媒性液晶混合系の空気界面における表面張力を測定。  バブルを作製することで、棒状液晶-フッ素鎖両親媒性液晶混合系の空気界面における表面張力を測定。  PLN-L相転移で表面張力は有意に変化し、それらがPLN相の安定化に関連している可能性が示唆された。 ・非線形現象(Stannarius)研究室の研究スタイルや考え方に触れることができた。 ・英語でコミュニケーションを取る練習が出来た。

謝辞  留学の費用を出して頂いたGCOEプログラムに、深く感謝致します。  ご清聴、どうもありがとうございました。