農村部の貧困問題 1978年の中国の一人当たりGDP340㌦ 12年で6071㌦→ただし13億の人口と所得格差

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農村部の貧困問題 1978年の中国の一人当たりGDP340㌦ 12年で6071㌦→ただし13億の人口と所得格差 78年の貧困人口2億5000万人    農村人口に占める貧困率30.7% 07年1479万人 同1.6% 新貧困線(年収2300元)  1億2238万人(2010年)→8249万人(2013年)                            (「人民網」2014年3月11日) 貧困対策を救済から扶助へ しかし世銀基準でみると09年でも1億5747万人     (1日1.25㌦以下)       (人口の11.8%)

第2節 貧困問題 表1 農村部における貧困発生率の推移 年次 貧困線(元) 貧困人口(万人) 貧困発生率(%) 旧貧困線 新貧困線 第2節 貧困問題 表1 農村部における貧困発生率の推移 年次 貧困線(元) 貧困人口(万人) 貧困発生率(%) 旧貧困線 新貧困線 旧貧困人口 新貧困人口 旧貧困率 新貧困率 1978 100 25,000 30.7 1980 130 22,000 26.8 1985 206 12,500 14.8 1990 300 8,500 9.4 1995 530 6,500 7.1 2000 625 865 3,209 9,422 3.4 10.2 2001 630 872 2,927 9,030 3.2 9.8 2002 627 869 2,820 8,645 3.0 9.2 2003 637 882 2,900 8,517 3.1 9.1 2004 668 924 2,610 7,587 2.8 8.1 2005 683 944 2,365 6,432 2.5 6.8 2006 693 958 2,148 5,698 2.3 6.0 2007 785 1,067 1,479 4,320 1.6 4.6 2008 1,196 4,007 4.2 資料:中国統計局『中国農村住戸調査2009』57頁、張東生ら『中国住民収入分配年度報告2009』55頁により作成。 2

貧困問題 1,都市部の貧困問題 問題意識: 討論:  貧困問題 1,都市部の貧困問題 問題意識:  農村部の貧困が激減している一方、近年、都市部の貧困が急浮上して注目されている。それはなぜか。 貧困線の設定および問題点 最低賃金制度 都市貧困の推定 中国政府の取り込み 討論:    労働法の実施、最低賃金の引き上げによる労働賃金の上昇問題の経済成長・外資導入への影響 3

世銀の推計 (世銀基準の貧困)1.25㌦(PPP)/day以下 08年 13.1% 09年 11.8% 所得階層 所得の分布    08年 13.1%  09年 11.8% 所得階層      所得の分布  最高20%      47.1%  次の20%      23.2%  3番目の20%    15.3%  4番目の20%    9.7%  最下位の20%    4.7%

都市部の貧困問題 都市最低生活保障線 96年(88万人)00年(382万人)02年(1930万人 世界銀行の基準(1㌦/日)02年4.4% 最低生活保障受領者 01年(1170万人)               08年(2335万人) 家計調査に基づくと99年の貧困率6.7% それに出稼ぎ者の貧困を加えると同7.4% 07年 教育による貧困の解消を

急増する都市失業 計画経済の時代~鉄飯碗、大鍋飯 (偽装失業、隠蔽された失業) 改革開放政策以降 若年者の失業(当時は待業といった)  若年者の失業(当時は待業といった)  (86年79.2%、87年85%)  80年代後半以降、とくに98年以降下崗急増  公式の失業率は4.3%(09年、08年より0.1P上昇) 12年の年末都市失業率4.1%

新しい労働契約法(08年1月から) *勤続10年または2回連続して固定期間労働契約を締結した場合終身雇用を締結する義務 *契約終了時に労働補償金支払い義務 →広東省のある企業(07年12月に)  勤務歴8年以上の工員7000人が一斉退職  (駆け込みでリストラ?)

失業問題 表2 都市失業率の推移 ベンチマ-ク 登録失業 調整失業 推計失業 CHIP 政府機関調査 年次 (人口センサス) 失業率  失業問題 表2 都市失業率の推移 ベンチマ-ク 登録失業 調整失業 推計失業 CHIP 政府機関調査 年次 (人口センサス) 失業率 失業率* 1980 4.9 4.0 1982 4.2 3.2 1985 1.8 2.6 1990 2.5 1995 7.7 2.9 4.3 9.6* 1996 3.0 4.8 8.8 1997 3.1 5.5 10.0 4.5 1998 10.8 6.3 1999 4.4 11.7 11.6* 5.9 2000 11.5 6.8 7.6 2001 3.6 5.6 2002 6.1 2003 6.0 2004 5.8 2005 5.2 2006 4.1 2007 5.3 2008 10

失業の問題点 ①都市戸籍を持つ者で、登録した者だけに限られている(農村からの出稼ぎ労働者含まれず) ②労働年齢以内(16歳以上で、男性50歳、女性45歳以下)(早期退職者は含まれず) ③年1回の調査 ④下崗労働者は含まれていない ⑤失業の隠蔽がある

失業者急増の要因 下崗失業→3つのセーフティーネット (01年から下崗は失業に順次組み入れるハズ →実際にはそのようにならず)  →実際にはそのようにならず) 経済状況が良い地域では2つのセーフティーネット 雇用吸収力の低下(就業弾力性    96年の0.14から00年0.10に) 農村からの出稼ぎ労働者

99年の失業者の内訳  下崗失業率5.6%(失業者の48.5%)  若年失業率2.6%(同22.6%)  早期退職2.0%(同17.7%)  登録失業者1.3%(11.2%) 再就業工程 職業訓練、就職斡旋、第3次産業の推進 需給ギャップの拡大 若年層の失業の急増  蟻族  2013年卒業の大学生の内定率28.24%    (「人民網」2013年5月6日)

出稼ぎ者の推移 出稼ぎ者(00年7800万人→07年1.36億人→2012年2億6261万人) うち16~30歳の割合62%  うち16~30歳の割合62% 「八〇后、九〇后民工」(一人っ子、年齢若く、「三高一低」 3Kの仕事と低賃金に満足せず 内陸部にも大型外資企業が進出

出稼ぎ労働者の推移2012年(都市就業者3億7102万人、出稼ぎ労働者2億6261万人 70.8%) 出稼ぎ労働者の推移2012年(都市就業者3億7102万人、出稼ぎ労働者2億6261万人 70.8%) 表3 出稼ぎ者の推移 年次 出稼ぎ労働者       (100万人) 都市就業者        (100万人) 出稼ぎ/都市労働者 の比率 (%) 2000 78.49 212.74 36.9 2001 83.99 239.40 35.1 2002 104.70 247.80 42.3 2003 113.90 256.39 44.4 2004 118.23 264.76 44.7 2005 125.78 273.31 46.0 2006 132.12 283.10 46.7 2007 136.49 293.50 46.5 資料:中国統計局『労働調査』。 DU・XUE (2010)。 16

本田汽車零件製造有限公司のスト 2010年年5月28日「人民網」

労使のミスマッチ 2014年2月12日『国際商報』

世代による仕事観(「人民網」2013年9月3日) *08年の就職者の42%が3年内に転職 七〇后 残業オタク 貯蓄依存 社長の近く 八〇后 残業拒否 借金依存 社長を避ける 九〇后 出社拒否 (天職ではない) 親依存 社長は自分 *08年の就職者の42%が3年内に転職

都市・農村格差 1950年代より重工業中心の発展戦略 →鋏状格差 農業戸籍と非農業戸籍 出稼ぎ(低賃金労働者の確保) 二重構造の経済社会  農業戸籍と非農業戸籍 出稼ぎ(低賃金労働者の確保) 二重構造の経済社会 (都市・農村格差 08年には3.3倍)→実際は福祉や社会保障も加えると6倍以上に 06年 農業税の廃止、 07年 9年間の義務教育の無償化

第4節 所得格差 図1都市-農村格差(左目盛は人民元の収入、右目盛は倍率) 22

地域格差 計画経済により三大地域の区分 四大地域の新しい区分 地域格差発生の歴史 「先富論」による地域格差の拡大 地域格差の拡大(表4)  地域格差 計画経済により三大地域の区分 四大地域の新しい区分 地域格差発生の歴史 「先富論」による地域格差の拡大 地域格差の拡大(表4) 政府の是正政策:西部大開発プロジェクトとその効果 23

第4節 所得格差 表5 ジニ係数の推移 調査年次 都市 農村 全国 ジニ係数 変化率 % 1988 0.233 0.338 0.382 第4節 所得格差 表5 ジニ係数の推移 調査年次 都市 農村 全国   ジニ係数 変化率 % 1988 0.233 0.338 0.382 1995 0.286 22.7 0.416 23.1 0.445 16.5 2002 0.319 11.7 0.366 -12 0.454 2.0 2007 0.478 5.3 2008 0.34 0.38 資料:CHIP 1988, 1995;2002, 2007年は李・岳(2004)、2007年は李実(2010)、2008年は政府公表値である(張、2010、239頁)。 24

所得格差(世銀データ) ジニ係数 0.421 0.426 0.425 0.426 0.392 0.357 0.355 0.324

第4節 所得格差 表6 不平等の国際比較 国・地域 ジニ係数 上位20%対下位20%の比 年次 南アフリカ 0.58 20.5 2000 第4節 所得格差 表6 不平等の国際比較 国・地域 ジニ係数 上位20%対下位20%の比 年次 南アフリカ 0.58 20.5 2000 ブラジル 0.55 19.4 2007 メキシコ 0.48 11.5 2006 フィリピン 0.44 9.0 中国香港 0.43 9.6 シンガポール 0.425 9.7 中国 0.42 8.3 2005 タイ 8.1 2004 アメリカ 0.41 8.4 インドネシア 0.39 6.6 ロシア 0.38 6.9 インド 0.37 5.6 イギリス 0.36 7.2 1999 イタリア 6.5 フランス 0.33 1995 カナダ 5.5 日本 0.321 3.4 2003 韓国 0.32 4.7 1998 バングラデシュ 0.31 4.4 ドイツ 0.28 4.3 資料::World Bank WDI Database。 26

第4節 所得格差 図2 中国のクズネッツ曲線(1978-2008) 27

第4節 所得格差 図4 教育と所得の関係(横軸=年数、縦軸=元) 28

終わりに 主な結論 1,国際基準では貧困人口がまだ多く、貧困解消の道はまだ遠いと思われる。また、近年都市貧困が急増し、新しい問題として注目すべき。 2,都市失業率は続々と上昇している。特に若年層の失業は目立っている。 3,西部大開発などの政府政策の実施による地域格差は少しずつ縮小しているが、格差実体は依然として大きい。 4,農村・都市住民の所得分布は悪化している。また、都市部住民の所得格差拡大のスピードは農村住民よりはやい。 5,所得格差の拡大には都市戸籍など政策の影響が大きいが、経済の市場化の推進により教育の格差などの市場要因は所得格差の主な要因となっている。 29

終わりに 政策意味 (1)貧困対策:より有効な政策が必要。 都市貧困対策の強化 出稼ぎ世帯貧困問題に注意すべき    都市貧困対策の強化    出稼ぎ世帯貧困問題に注意すべき (2)都市失業対策:労働構造・失業構造の改善 (3)格差対策:累進税の導入 貧困・失業・格差問題の社会・政治・経済への影響(最近の社会・政治動向) 問題の是正の長期的経済成長への意味 30