Acquired Immunodeficiency Syndrome (AIDS)

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Acquired Immunodeficiency Syndrome (AIDS) 後天性免疫不全症候群 Acquired Immunodeficiency Syndrome (AIDS)

後天性免疫不全症候群(AIDS, エイズ)はヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)感染によって引き起こされ、重篤な全身性免疫不全によって特徴づけられる疾患であり、高い発症率・死亡率と予防・治療の難しさから、人類が直面する最も深刻な医療問題の一つとなっている。

1981年にアメリカではじめての症例が報告されてから、ほぼ20年経過した現在、保健医療上、世界でもっとも重要な感染症として位置づけられている。特に、社会基盤の貧弱な多くの途上国では、感染の拡大を防止する様々な国家的施策を試みられているが、一部の国を除いては、いまだに多くの新しい感染者を生み出している。

原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、主として細胞性免疫の中心的な役割を担うCD4陽性ヘルパーリンパ球に感染し、破壊することで、免疫機能を低下させ、種々の全身的、局所的な合併症を引き起こす。現在、有効なワクチンはなく、また幾つかの作用機序の異なる薬剤を組み合わせて行う治療法も、ウイルスを完全に駆逐できるまでにはいたっていない。

 一、 病 原 体    レトロウイルスRetrovirus科、レンチウイルスLentiviridaeに属するヒト免疫不全ウィルスHuman Immunodeficiency Virus (HIV)で、抗原性、遺伝子構造によってHIV-1およびHIV-2が認められている。 世界的な流行の原因となっているのは、HIV-1であり、後者は、西アフリカとその関連諸国などで散発例があり、またインドでは局地的な蔓延がみられている。

HIV 粒子の構造(模式図)

  HIVは直径110nmのRNA型エンベロープウイルスで、約9,500塩基からなる2コピーのRNAゲノム、逆転写酵素などを含む砲弾型のコア(キャプシド)と、それを取り囲む球状エンベロープによって構成される。ウイルス粒子の外側を構成するエンベロープには、外側に突き出している糖タンパク質gp120と脂質二重膜を貫通する糖タンパク質gp41からなるスパイクがある。エンベロープタンパク質は、ヘルパーT細胞やマクロファージ表面膜に存在するCD4分子に対する特異的な結合活性をもち、ウイルスが標的細胞に感染・侵入する過程で重要な役割を果たす。

 二、 疫 学 伝染源:患者とキャリア    主な感染源は血液と精液、膣分泌液である。母乳、唾液、涙、尿や髄液からもHIV分離の報告はあるが、母乳以外は感染源としての意義は低い。 伝染経路     性行為が、一般成人での感染経路として最も多い。ウイルス保有者とのコンドーム等で防御しない性交、汚染血液の傷口侵入、感染母親から新生児へ胎盤あるいは産道を介して、および感染母親による母乳栄養が、感染経路となる。

HIVに汚染された血液および血液製剤によっても生じる。輸血や血液製剤および注射針の共用(静脈麻薬やホルモン剤を注射する際の)などが問題となる。注射器事故による抗体陽転例は1年以上観察した約1、600例中2例である。飛沫感染、飲食物感染や通常の接触による家族内感染例の報告はない。 ヒトの感受性は、普遍的である。現在のところ、WHOによれば、抗体陽性者は5年以内に20~50%がARC(AIDS Related Complex)になり、10~30%がエイズになる。自然経過による致命率は、エイズ発症後5年以内で95%である。

世界におけるHIV/AIDS 流行の現状とHIVサブタイプの世界分布

 三、 メカニズム     HIVはCD4とよばれる細胞膜蛋白質を受容体として細胞に感染する性質をもつため、細胞性免疫を統御する中枢細胞であるCD4陽性のヘルパーT細胞やマクロファージに感染し、破壊する。そのため、細胞性免疫の著しい機能低下が起こり、全身性の免疫不全状態が引き起こされ、様々な日和見感染症や日和見腫瘍、中枢神経障害など多彩で重篤な全身症状が起こる。

四、臨床所見 潜伏期 エイズ発症まで2~10年、あるいはそれ以上。小児では短い。 症状 潜伏期 エイズ発症まで2~10年、あるいはそれ以上。小児では短い。 症状     HIV感染の自然経過は急性初期感染期、無症候期~中期、エイズ発症期の大きく3期に分けられる:       急性初期感染期       無症候期~中期       エイズ発症期

HIV感染症のCDC分類

五、 検 査 1.Rt: WBCとRBC 、尿Pro+ 2.T cell 、 CD4+T cell 、 CD4/CD8<1  五、 検 査 1.Rt: WBCとRBC  、尿Pro+   2.T cell  、 CD4+T cell  、 CD4/CD8<1 3.HIV抗体あるいは抗原+

 六、 診 断 HIV感染症の診断 1. HIVの抗体スクリーニンク検査法(酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)等)の結果が陽性であって、以下のいずれかが陽性の場合にHIV感染症と診断する。    i.抗体確認検査(WesternBlot法、蛍光抗体法(IFA)等)       ii.HIV抗原検査、ウイルス分離及び核酸診断法(PCR等)等の病原体に関する検査(以下、「HIV病原検査」という。

  2. ただし、周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後18か月末満の児の場合は、少なくともHIVの抗体スクリーニンク法が陽性であり、以下のいずれかを満たす場合にHIV感染症と診断する。   i.HIV病原検査が陽性。     ii.血清免疫グロフリンの高値に加え、リンパ球数の減少。CD4陽性Tリンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数/CD8陽性Tリンパ球数比の減少という免疫学的検査所見のいずれかを有する。    母体由来のIgG抗体が胎盤を通過できるため、この移行抗体が完全に消失するまでの生後15カ月程度までは、児の抗体検査からは感染の有無を判断できない。

II. AIDSの診断 Iの基準を満たし、IIIの指標疾患 (Indicator Disease)の一つ以上が明らかに認められる場合にAIDSと診断する。

III. 指標疾患(Indicator Disease)   2.クリプトコッカス症(肺以外) 3.コクシジオイデス症 i.全身に播種したもの ii.肺、頸部、肺門リンパ節以外の部位に起こっ たもの 4.ヒストプラズマ症 ii.肺、頸部、肺門リンパ節以外の部位に起こっ たもの 5.カリニ肺炎(注)原虫という説もある

原虫症 6. トキソフプラズマ脳症(生後1か月以後) 7. クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの) 8. イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)

C. 細菌感染症 9. 化膿性細菌感染症(13歳末満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、二つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの) i.敗血症 ii.肺炎 iii.髄膜炎 iv.骨関節炎 v.中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍 10. サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く) 11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)※ 12.非定型抗酸菌症 i.全身に播種したもの ii.肺、皮膚、頸部。肺門リンパ節以外の部位に起こったもの

D. ウイルス感染症 13. サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、肝。脾、リンパ節以外) 14. 単純ヘルペスウイルス感染症 i. 1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの ii. 生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの 15. 進行性多巣性白質脳症

E. 腫瘍 16. カポジ肉腫 17. 原発性脳リンパ腫 18. 非ホジキンリンパ腫 LSG分類により i. 大細胞型、免疫芽球型 ii. Burkitt型 19.浸潤性子宮頸癌※

F. その他 20. 反復性肺炎 21. リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳末満) 22. HIV脳症(痴呆又は亜急性脳炎) 23. HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病) ※ C11活動性結核のうち肺結核及びE19浸潤性子宮頸癌については、HIVによる免疫不全を示唆する症状または所見がみられる場合に限る。

七、治療     エイズ治療はこれまでの10年間で急速な進歩をとげ、感染者に大きな福音をもたらしている。AZT(azidothymidine)を代表とする逆転写酵素阻害剤(reverse transcriptase inhibitor, RTI)に加え、近年、優れたプロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor, PI)が開発され、逆転写酵素阻害剤2種とプロテアーゼ阻害剤(あるいは非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤)1種との組み合わせによる多剤(3剤)併用療法(highly active antiretroviral therapy, HAART)が奏効している。この治療法の導入により、先進国における日和見感染症の頻度や、エイズによる死亡者数が95年以来40%も減少してきている。

 抗HIV薬を投与開始する適応 ・HIV/AIDS関連症状あり:CD4陽性リンパ球数およびHIV RNA(RT-PCR)検査値にかかわらず、治療を開始する。 ・症状なし(無症候性キャリア期):CD4<500個/mm3あるいはHIV RNA>20、000の場合、予測される患者の予後と患者の希望により、治療を行う。 ・CD4>500個/mm3(*)かつHIV RNA<20、000の場合、多くの専門家は治療せず、経過観察を行う。

HIV感染症に対する3剤併用療法に用いられる抗HIV剤とそれらの推奨される組み合わせ

 八、 予 防     HIVの感染予防の鉄則は、他の感染症と同様に感染経路を断つことである。HIVの感染経路は、1.経血液、2.性的接触、3.母子感染の3種(その他、臓器・角膜移植などによる稀な感染例が知られている)であり、感染予防の基本はこれら3経路を遮断することにある。蚊による刺咬や、握手、抱擁、軽いキスなどの日常的な接触(カジュアル・コンタクト)によっては感染しない。

1.経血液経路の遮断:汚染血液・血液製剤による輸血の危険を回避するための血液スクリーニング。薬物乱用者との薬物の回し打ち(ニードル・シェアリング)を行わないこと。 2.セーフ・セックスの実行:コンドームの使用。不特定多数のパートナーとの性交渉を避ける。感染のリスクの高い肛門性交をさけることなど。 3.母子感染の防止策:感染した母体から約30%の頻度で児に感染するが、感染母体および出生児への抗ウイルス薬(AZTやネビラピン)の投与によって、感染を防ぐことができる。

    感染予防の究極の方法はワクチンである。しかし、HIVが抗原構造の多様性と著しい変異性を示すこと、HIVが免疫応答の中枢にあるヘルパーT細胞そのものを破壊することなどに加えて、ワクチン開発研究のための優れた動物モデルがないことなど様々な要因から、ワクチンの実用化の目途はまだたっていない。新たな感染の90%が高価な薬物療法の恩恵を享受できない開発途上国に発生していることを考えると、有効なワクチンの一日も早い開発が望まれる。