シミュレーション論Ⅰ 第9回 様々なシミュレーション:販売と在庫管理.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
統計学 第3回 西山. 第2回のまとめ 確率分布=決まっている分布の 形 期待値とは平均計算 平均=合計 ÷ 個数から卒業! 平均=割合 × 値の合計 同じ平均値でも 同じ分散や標準偏差でも.
Advertisements

基礎オペレーションズリサーチ 第10回 ~在庫管理~ 担当:蓮池隆. 在庫管理はすごく重要! 例:コンビニでの品ぞろえ  お客さんは気まぐれ(全然来ない時もあれば, どっと来る時もあり)  だけど,いついっても品切れしてない  店のスペースは限られている Q:どうやって品ぞろえを確保しているのか?
シミュレーション論Ⅰ 第10回 様々なシミュレーション:金利とローン返済. 第9回のレポート ポアソン分布に従う乱数列(乱数表)から乱数を記入 する。 乱数値をその日の客数として、仕入部数が 8 ~ 12 のと きの利益を記入する。 10 日分のシミュレーションをおこない、総売上と最も 利益の高かった仕入部数を調べる。
放射線の計算や測定における統計誤 差 「平均の誤差」とその応用( 1H) 2 項分布、ポアソン分布、ガウス分布 ( 1H ) 最小二乗法( 1H )
シミュレーション論Ⅰ 第 7 回 待ち行列のシミュレーション(2). 第 6 回のレポート(解答例) 乱数表より乱数を記入し、到着間隔・サービス時間にした がってグラフを作成する 例) 最大待ち人数:2人 最大待ち時間:5分 平均待ち時間:3分.
問題解決のアプローチ 南山大学 数理情報学部 情報システム数理学科 稲川敬介. OUTLINE 問題解決のアプローチ  最適化手法と OR ( オペレーションズ・リサーチ ) OR の事例  悪魔の城へ  捕えられたネズミ  最適化 実践的な OR まとめ.
第 13 回 在庫管理 1 【大和運輸のイノベーション(前回のまとめ)】 B2C ( C2C )の時代へ 【在庫管理とは】 適正な在庫の水準と補充は?
2班 石川真希 石川雄一 伊藤豪浩 糸瀬徳 井上祐紀 井上善喬
第1節 問題解決の工夫 1 情報を活用しよう 2 問題解決の工夫.
第1回 確率変数、確率分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
疫学概論 ポアソン分布 Lesson 9.頻度と分布 §C. ポアソン分布 S.Harano,MD,PhD,MPH.
シミュレーション論Ⅰ 第6回 待ち行列のシミュレーション.
データ構造と アルゴリズム 第十二回 知能情報学部 知能情報学科 新田直也.
統計解析 第7回 第6章 離散確率分布.
第八回  シンプレックス表の経済的解釈 山梨大学.
全加算回路 A, Bはそれぞれ0または1をとるとする。 下位桁からの繰り上がりをC1とする。(0または1)
電子情報工学科5年(前期) 7回目(21/5/2015) 担当:古山彰一
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved
シミュレーション論Ⅰ 第2回 シミュレーションとモデル化.
シミュレーション論 Ⅱ 第5回 ランダムウォーク.
ISDASインターネット分散観測: ワームの平均寿命はいくらか?
第4回 (10/16) 授業の学習目標 先輩の卒論の調査に協力する。 2つの定量的変数間の関係を調べる最も簡単な方法は?
様々なシミュレーション:金利とローン返済
シミュレーション論 Ⅱ 第12回 強化学習.
放射線の計算や測定における統計誤差 「平均の誤差」とその応用(1H) 2項分布、ポアソン分布、ガウス分布(1H) 最小二乗法(1H)
シミュレーション論Ⅰ 第4回 基礎的なシミュレーション手法.
経済・経営情報コース コース紹介.
シミュレーション論Ⅰ 第3回 シミュレーションと経済・社会システム.
第7回 二項分布(続き)、幾何分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
情報基礎A 第14週プログラミング 実際のデータ処理での応用(2)
シミュレーション論Ⅰ 第2回 シミュレーションとモデル化.
経済情報入門Ⅱ(三井) 公共事業と社会保障.
シミュレーション論 Ⅱ 第5回 ランダムウォーク.
ビールゲーム第二回発表資料 11班.
モデリング&シミュレーション 第二回発表資料
母集団と標本:基本概念 母集団パラメーターと標本統計量 標本比率の標本分布
2003年度 データベース論 安藤 友晴.
需要パターンを考慮した 発注方式の比較検討
セブンイレブンの発注・納品時間変更による 廃棄物量と店舗利益への影響
シミュレーション論 Ⅱ 第12回 様々なシミュレーション手法(3) 強化学習.
シミュレーション論 Ⅱ 第14回 まとめ.
第6章 連立方程式モデル ー 計量経済学 ー.
小間田 春彦 高 雷 小林 磨生 小針 由香 小林 亮 毛塚 智彦
確率・統計Ⅰ 第3回 確率変数の独立性 / 確率変数の平均 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
在庫管理 東京工業大学 曹徳弼 内容 在庫の分類 ABC管理 ロット編成手法 EOQ WW法 新聞売り子問題 発注方式.
ミクロ経済学第9回 企業と費用2:費用最小化.
市場調査の手順 問題の設定 調査方法の決定 データ収集方法の決定 データ収集の実行 データ分析と解釈 報告書の作成 標本デザイン、データ収集
事業リスク分析をベースとした 意思決定・事業評価手法
産業組織論A 8 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年5月30日
データモデリング エンティティの切り出し.
ウィルスって どの位感染しているのかな? 菊池研究室  小堀智弘.
確率と統計2009 第12日目(A).
「経営システム工学総合実験」 モデリング&シミュレーション 第2回
様々なシミュレーション:金利とローン返済
情報経済システム論:第13回 担当教員 黒田敏史 2019/5/7 情報経済システム論.
シミュレーション論 Ⅱ 第1回.
シミュレーション論Ⅰ 第7回 シミュレーションの構築と実施.
メンバー 高野 芳光、高橋 敦史、高橋 裕嗣 高橋 祐帆、高山 陽平、田嶋 麻子
経営学研究科 M1年 学籍番号 speedster
第5回 確率変数の共分散 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
疫学概論 ポアソン分布 Lesson 9.頻度と分布 §C. ポアソン分布 S.Harano,MD,PhD,MPH.
人工知能特論II 第8回 二宮 崇.
卒業テーマの発表 在庫量の効率管理    卒業テーマの発表        ------在庫量の効率管理      a6p21502 Huang Ping.
在庫最適化システム WebInvのご紹介 Log Opt Co., Ltd..
様々なシミュレーション:社会現象のシミュレーション
第8回 ポアソン分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
サプライ・チェイン 在庫最適化システム WebSCMのご紹介
経営システム工学総合実験 23班 研究企画 1G03H136 山本 亮 1G03H137 葉 寛明 1G03H138 横尾 英俊
企業ファイナンス 2009年10月21日 実物投資の意志決定(2) 名古屋市立大学 佐々木 隆文.
情報基礎A 第14週プログラミング 実際のデータ処理での応用(2)
Presentation transcript:

シミュレーション論Ⅰ 第9回 様々なシミュレーション:販売と在庫管理

在庫管理 在庫管理:原材料や商品の在庫量を適正に保つように計画・管理すること。 なぜ在庫管理が必要か? 在庫が少なすぎる→受注に応じられずに利益を失う 在庫が多すぎる→保管費用などがかさんで損失となる

需要が常に一定であれば定期定量方式が合理的だが、実際には需要は一定でないことがほとんど 在庫管理の方式 定期定量方式:一定の期間ごとに一定の発注量で商品を仕入れる方式。 需要が常に一定であれば定期定量方式が合理的だが、実際には需要は一定でないことがほとんど ↓ 発注時期または発注量のどちらかを固定 定期発注方式:発注時期を固定 定量発注方式:発注量を固定(発注点方式)

在庫管理の基本モデル 商品の需要が一定として、定期定量方式の最も単純な場合を考える。 発注は在庫が0になったときにおこなう 発注と同時に商品が納入される モデル化に使用する記号は以下のとおりとする。 R :商品の年間需要量 Q :1回あたりの発注量 C0 :1回あたりの発注費用 C1 :商品1単位あたりの年間保管費用 C  :総在庫費用(=年間発注費用+年間保管費用)

Cを最小にする発注量Q*を上式から決定すればよい 在庫管理の基本モデル(2) 年間の平均在庫量は Q/2 となるから、年間の総在庫費用は以下のようになる。 在庫にかかる費用を最小にするにはどうすればいいか? Cを最小にする発注量Q*を上式から決定すればよい 発注費用 保管費用

経済的発注量を求める 総在庫費用を最小にする最適な発注量のことを経済的発注量(Economic Order Quantity: EOQ)という。 経済的発注量Q*は、総在庫費用CをQで微分してdC/dQ=0 とすることで求められる。 上式はEOQ公式、またはハリスの経済的ロット公式、もしくはウィルソンのロット公式と呼ばれる。

EOQ公式を導出する 問:総在庫費用の式を微分して0とおき、EOQ公式を導出せよ。 参考:1/Q=Q-1 総在庫費用 総在庫費用の微分

最適発注量を求める 問:ある商品の年間総需要Rが5,000台、1回あたりの発注費用C0が16,000円、商品1単位あたりの年間保管費用C1が4,000円のとき、最適発注量Q*とそのときの総在庫費用C*を求めよ。 最適発注量 総在庫費用

解答 最適発注量 (台) 総在庫費用 (円)

その他の在庫モデル 実際の在庫管理においては、需要は一定ではなく変動する。 発注してからすぐに納入されるわけではなく、リードタイムと呼ばれる調達期間がかかる。 品切れをおこした場合には品切れ損失が起こる。 通常、品切れに対応するために需要の変動を考慮した余分の在庫=安全在庫を持っておく。 上記の詳しいことについてはオペレーションズ・リサーチ等の書籍を参照のこと。

新聞売り子問題 在庫管理の問題と本質的に同じ問題として、新聞を仕入れて販売するモデル(新聞売り子問題)がある。 1部 c 円で仕入れた新聞を a 円で売る。 客は1日平均 m 人やってくるが、毎日の客数 x は変動する。 売れ残りが発生すると仕入分の損失となり、品切れを起こすとその分の利益を逃すことになる。 新聞売り子が得る利益を最大にする1日の最適発注部数を求める。

新聞売り子問題 1日あたりの仕入部数を y とすると、x 人の客が来たときの利益 f (x,y) は となる。日々の客数の確率分布が分かっていれば、期待利益と最適発注部数を計算で求めることもできる。

参考:ポアソン分布 離散的な自然現象が発生する確率は、ポアソン分布という確率分布に従うことが多いことが知られている ポアソン分布: ここで P(N=k) は単位時間に平均でλ回発生する事象がちょうど k 回発生する確率

参考:ポアソン分布(2) 例:平均10のポアソン分布のグラフ

参考:ポアソン分布(3) ポアソン分布に従う事象の例: (Wikipediaより引用) 1時間に特定の交差点を通過する車両の台数。 1mlの希釈された水試料中に含まれる特定の細菌の数(細菌数検査における最確法)。 1ページの文章を入力するとき、綴りを間違える回数。 1日に受け取る電子メールの件数。 1分間のWebサーバへのアクセス数。 例えば、1時間あたりのウィキペディアの最近更新したページの編集数もおおよそポアソン分布。 1マイルあたりのある通り沿いのレストランの軒数。 1ヘクタールあたりのエゾマツの本数。 1立方光年あたりの恒星の個数。

モンテカルロ法による新聞売り子問題のシミュレーション 乱数を用いて日々の客数を生成し、最適な発注部数を調べるシミュレーションをおこなう。 仕入れ価格 c = 80 販売価格 a = 120 日々の客数 x が平均10人で、ポアソン分布に従うものとして乱数表(ポアソン乱数表)を作り、客数を決定する。 仕入量 y を8部、10部、12部として、最も利益の高い仕入量をシミュレーションにより調べてみよう。

シミュレーションの手順 ポアソン分布に従う乱数列(乱数表)から乱数を記入する。 乱数値をその日の客数として、仕入部数が8、10、12のときの利益を記入する。 10日分のシミュレーションをおこない、最も利益の高かった仕入部数を調べる。 仕入れ価格 c = 80 販売価格 a = 120 1日の客数 x (乱数表から決定) 仕入量 y (8部、10部、12部) 1日の利益

シミュレーションの記入例 仕入れ価格 c = 80 販売価格 a = 120 1日の客数 x (乱数表から決定) 仕入量 y (8部、10部、12部) 利益 日数 乱数 利益(8部仕入) 利益(10部仕入) 利益(12部仕入) 1 8 320 160 2 9 280 480 3 6 80 -80 -240 4 13 400 5 7 10 総利益

第9回のレポート 新聞売り子問題のシミュレーションをおこない、最も利益の高かった発注部数を調べて記入せよ。 ポイント:ポアソン乱数表を用いて10日分のシミュレーションをおこない、仕入部数(8、10、12)ごとに総売り上げを計算する→最も高かったものを記入。 次回はノートパソコンを使用します。 しっかり充電したうえで持参してください(ノートPCをお持ちでない場合はなくても構いません)