東洋病因・病機学 熊本大学東洋医学研究会
「病因」の種類 1.外因 2.内因 3.不内外因
外因 外因とは外部から身体を侵襲する邪のことで、風・寒・暑・湿・燥・火(熱)の六淫(六邪)のこと。これらは自然界に元々存在する六気であり、六気に過不足が生じたり、季節外れなどにより人体に影響を及ぼし、疾病を発生した場合に六淫(六邪)と呼ばれる。
六邪の特徴と症状 六邪の種類 風邪 寒邪 暑邪 湿邪 燥邪 熱(火)邪 季節性 春 冬 夏 梅雨 秋~冬 無し 特徴 人体の上部や肌表を犯す 陽気の衰退 炎熱の性質 濁りと停滞性 肺機能の低下 熱性・かき乱す 症状 頭部の症状 体表の症状 寒気・手足の冷え、腹痛 高熱・多汗、のどの渇きなどの症状 身体がだるい・重い 疾病の経過の長期化 空咳や痰息、胸痛 熱性の症候 精神不安定
・内因とは、喜・怒・憂・悲・思・恐・驚の七種類の感情(七情)の失調を指す。
七情が病気を引き起こすメカニズム 五行 木 火 土 金 水 五志 怒 喜 思 憂・悲 恐・驚 五臓 肝 心 脾 肺 腎 五臓の機能 精神状態、臓腑の活動を伸びやかに保つ=疎泄機能 精神活動の中枢である神を蔵す 消化吸収の中枢、胃と表裏関係 呼吸の中枢 水液の循環・代謝・排泄のコントロール 症状 頭痛・脳卒中・動悸・不眠 集中力低下・不眠・不安 胃潰瘍 咳・息切れ 大小便の失禁
不内外因 ・不内外因とは、外因や内因以外の全ての病因を指し、一般に飲食の不摂生・過度の労働・節度のないセックス・外傷・中毒・寄生虫感染・有毒生物による刺傷あるいは咬傷などをいう。
病機 ~中医学で病気になるメカニズム~ 1. 基本的な病機 (邪正相争と陰陽失調) 2. 気血津液と精の病機 3. 五臓六腑の病機
何かが悪さをしている! 勝つと病気に!! (邪正相争) 基本的な考え方 その① VS 外からの悪いもの (外邪) 飲食物、 体の抵抗力 基本的な考え方 その① 何かが悪さをしている! 外からの悪いもの (外邪) 飲食物、 ウイルス 体の抵抗力 体内からの悪いもの (内邪) 正気 邪気 VS 勝つと病気に!! (邪正相争)
基本的な考え方 その② 陰陽のバランスがくずれると…? 月 日 臓 腑 体に不調が! (陰陽失調) 血・津液 気 陽実 陰実 陰虚 陽虚
気 血 津液 生命力の源 目に見えないエネルギーとして体をめぐり機能している 血液+血液循環 気・熱・津液・栄養などの運搬役 血以外の体内の水分 唾液・涙・汗など
気血津液病機1 気 の病機 (1) 気虚 :気の量の不足(先天の精や水穀 の気の不足と いった気の生成・ 供給 不足) (1) 気虚 :気の量の不足(先天の精や水穀 の気の不足と いった気の生成・ 供給 不足) (2) 気陥 :気の上昇力が低下した状態 (3)気滞・気鬱 :気の流れが悪くなっている状態 気の作用のうち温煦作用(人体を温め、体温を維持す る)を独立させた場合、これを「火」と呼ぶ。温煦作用 が低下すると体が冷えた状態、「陽虚」になる。
気血津液病機2 血 の病機 (1)血虚:血の量の不足 (気の不足による血の生成・供給不足) (2)血熱:熱邪の侵入や、寒邪が侵入後に化熱する 血 の病機 (1)血虚:血の量の不足 (気の不足による血の生成・供給不足) (2)血熱:熱邪の侵入や、寒邪が侵入後に化熱する ことで血が熱を帯びた状態 (3)血寒:寒邪の侵入や寒の内生などにより、 血が寒を帯びた状態 (4)血瘀:血の流れが悪い状態であり、 うっ滞した血から作られる物質が瘀血
気血津液病機3 津液 の病機 (1)津液不足:水穀の気の不足による津液の 生成不足、あるいは熱や発汗過多に よる津液の消費過多によって起こる 生成不足、あるいは熱や発汗過多に よる津液の消費過多によって起こる (2)津液過多:津液が局所的に過剰になった状態。 停滞した津液は浮腫を起こすほか、 熱で蒸されたり、寒で凝滞して痰を 形成。 痰は新たな病を引き起こす病因でも あり、痰飲病機として独立させる こともある。
瘀血 痰飲 病理産物 になる 血虚・血瘀・気虚などで 血の流れが悪くなり生じるもの (例)血栓 ※津液の過剰 → 湿 気血津液が病的な物質に変化すると・・・ 病理産物 になる 瘀血 血虚・血瘀・気虚などで 血の流れが悪くなり生じるもの (例)血栓 ※津液の過剰 → 湿 痰飲 痰・・・湿がくさったもの、粘り気がある (痰、咳、喘息の原因) 飲・・・湿があふれかえったもの (むくみ、下痢の原因)、さらさらしている
精 ~気血津液を生み出す 「もと」~ 不妊症、 成績不良など もの忘れなど ちょっと発展 不足すると 不足すると 食べ物からの 「後天の精」 精 ~気血津液を生み出す 「もと」~ 食べ物からの 「後天の精」 母親にもらった 「先天の精」 不足すると 不足すると 不妊症、 もの忘れなど 成績不良など
肝 胆 心 脾 胃 肺 腎 小腸 大腸 膀胱 木 火 土 金 水 臓 病機 腑 多臓器にわたる病機 ・肝気鬱結 ・肝火上炎 ・肝陽上亢 ・肝風内動 ・寒滞肝脈 ・肝経湿熱 胆 ・胆鬱痰擾 心 ・心火亢盛 ・心脈痹阻 ・痰瘀迷竅 ・熱邪逆心 小腸 ・小腸実熱 脾 ・中気下陥 ・脾不統血 ・湿邪困脾 ・湿熱蘊脾 胃 ・食滞胃脘 ・胃寒 ・胃熱 肺 ・風寒犯肺 ・飲邪干肺 ・痰湿阻肺 ・風熱犯肺 ・熱邪壅肺 ・燥邪犯肺 大腸 ・腸虚滑泄 ・大腸液虧 腎 ・腎精不足 ・腎気不固 ・腎不納気 膀胱 ・膀胱湿熱 木 火 土 金 水 臓 病機 腑 多臓器にわたる病機 心腎不交 肝火犯肺 肝脾不調 肝胃不和
肝 胆 心 脾 胃 肺 腎 小腸 大腸 膀胱 木 火 土 金 水 臓 病機 腑 ・肝気鬱結 ・肝火上炎 ・心火亢盛 多臓器にわたる病機 ・肝陽上亢 ・肝風内動 ・寒滞肝脈 ・肝経湿熱 胆 ・胆鬱痰擾 心 ・心火亢盛 ・心脈痹阻 ・痰瘀迷竅 ・熱邪逆心 小腸 ・小腸実熱 脾 ・中気下陥 ・脾不統血 ・湿邪困脾 ・湿熱蘊脾 胃 ・食滞胃脘 ・胃寒 ・胃熱 肺 ・風寒犯肺 ・飲邪干肺 ・痰湿阻肺 ・風熱犯肺 ・熱邪壅肺 ・燥邪犯肺 大腸 ・腸虚滑泄 ・大腸液虧 腎 ・腎精不足 ・腎気不固 ・腎不納気 膀胱 ・膀胱湿熱 木 火 土 金 水 臓 病機 腑 多臓器にわたる病機 心腎不交 肝火犯肺 肝脾不調 肝胃不和
邪とは東洋医学でいう病気の原因のこと。 気血津液に異常があると不調の原因になる。 それぞれの臓腑に関係する機能が失われると病気になる。 ポイント 邪とは東洋医学でいう病気の原因のこと。 気血津液に異常があると不調の原因になる。 それぞれの臓腑に関係する機能が失われると病気になる。
『中国漢方医語辞典』,成都中医学院/中医研究院/広東中医学院編著,(1980),株式会社中国漢方. 参考文献 『中国漢方医語辞典』,成都中医学院/中医研究院/広東中医学院編著,(1980),株式会社中国漢方. 『医学生のための漢方医学[基礎編]』,安井廣迪,(2008),東洋学術出版社. 『プロが教える 東洋医学のすべてが分かる本』,平馬直樹監修,(2011),ナツメ社. 『標準東洋医学』,仙頭正四郎,(2006),金原出版会. 『絵でわかる 漢方医学』,入江祥史,(2010),講談社. 『カラー図解 東洋医学 基本としくみ』,仙頭正四郎,(2011),西東社. 『漢方中医学講座―基礎理論編』,入江祥史編著,医歯薬出版株式会社.