脳とこころ:認知神経科学 ネットワークと新しい視点

Slides:



Advertisements
Similar presentations
4 班 大杉拓未 地井哲也 久富秀平 山間史園 佐々木貴浩 荒木耕太 池本洋平 沼田恭佑.  「ゲーム脳」という言葉が昔流行った。  言葉通り、ゲームが脳に本当に悪影響を及ぼ すのか気になったから。
Advertisements

キー・コンピテンシーと生きる 力 キー・コンピテンシー – 社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力 – 自律的に行動する力 – 社会的に異質な集団で交流する力 生きる力 – 基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと, 自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え, 主体的に判断 し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力.
教育と発達. 能力とは何か(まとめ) 能力=何かできること 教育との関連での条件 – 価値ある能力であること – 訓練で発達可能であること – 教えることが可能であること ふたつの階層性 – 価値的な階層 – 発達の規定性としての階層.
第2章 なぜ発達心理学を学ぶのか? 道案内 1 準備 (0) 授業を始める前に * (1) 発達心理学とはどんな学問か? 2 知覚の発達 (3) 子供に世界はどう見えるか? 3 認知の発達 (4) 子どもはものごとをどう理解するか (5) 子どもは心をどう理解するか 4 感情の発達 (6) 子どもに愛情を注ぐこと.
心理測定論 信号検出理論.
音楽・情報・脳 音楽は人類にとって普遍性の高い行動領域 =脳の聴覚系・報酬系神経ネットワークを活性化 =美しさ・安らぎ・感動をもたらす
区間グラフにおける区間表現からMPQ-treeを効率よく構成するアルゴリズム
学習動機の調査 日下健 西原直人 津川眞希 吉田優駿 山下剛史.
マンガ読解のプロセスモデル マンガリテラシーとマンガ読解力
心理学基礎論 4月14日 感覚・知覚① 感覚の測定.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
(北海道情緒障害教育研究会 春のセミナーのご案内)
脳の活動部位の探求 (脳科学の方法).
非合理的な意志決定に関する fMRI研究:神経経済学を中心に
脳活動計測で 「指先の動きを再現する」技術
木島伸彦 慶應義塾大学 パーソナリティ心理学  クロニンジャー理論 1 木島伸彦 慶應義塾大学.
機械創成工学科は、機械工学分野の学問領域をベースに、人工物の創成すなわちPioneer engineeringを目指している学科です。
第2章 記憶のしくみを知る 効果的な授業をするために(1)
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
心理学測定法 水曜2限 担当:小平英治.
自律学習と動機づけ 教育心理学の観点から 2011/2/19 上淵 寿 (東京学芸大学).
分布の非正規性を利用した行動遺伝モデル開発
「存在の肯定」を規範的視座とした作業療法理論の批判的検討と 作業療法・リハビリテーションの時代的意義 田島明子
レッツ倶楽部 京都山科 美容器具・健康器具紹介
臨死体験 Near-Death Experience
Geneticsから Epigeneticsへ
「カウンセリングナースの役割と 教育システム」
注意と眼球運動.
第4章 子供はものごとを どう理解するか?.
脳血管障害 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 緊急処置 一般検査 画像検査 治療 診断
誘発電位の基礎 九州大学大学院医学研究院 脳研臨床神経生理 飛松省三.
第2章 なぜ発達心理学を学ぶのか?.
大脳辺縁系.
生命科学基礎C 第3回 神経による筋収縮の指令 -ニューロン 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
専門演習Ⅰ 国際経済学部 国際産業情報学科 2年 石川 愛
スポーツ経営学 第4回目 スポーツ経営学の特徴.
2007年10月14日 精神腫瘍学都道府県指導者研修会 家族ケア・遺族ケア 埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 大西秀樹.
こころを育てるICT、IoT情育空間:小児、成人、高齢の精神医工学
脳活動に関するデータ データの種類 データの特徴 脳波・脳磁図・fMRI画像 脳活動とパフォーマンスの関係はきわめて冗長。
埼玉医科大学国際医療センター核医学 松田博史
脳活動をモニターできる functional MRI とは何か?
奈良女子大集中講義 バイオインフォマティクス (9) 相互作用推定
米山研究室紹介 -システム制御工学研究室-
深層学習を用いた音声認識システム 工学部 電気電子工学科 白井研究室 T213069 林健吉.
がん患者の家族看護 急性期にあるがん患者家族の看護を考える 先端侵襲緩和ケア看護学 森本 紗磨美
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
脳とこころ:認知神経科学 ネットワークと新しい視点
Chemistry and Biotechnology
未使用メモリに着目した 複数ホストにまたがる 仮想マシンの高速化
北陸先端科学技術大学院大学 中田豊久,金井秀明,國藤進
心理科学・保健医療行動科学の視点に基づく
ニューロマーケティング H 経営学科3年 李 ミヌ.
サーマルプローブを用いたイオン温度計測の新しいアプローチ
明星大学 情報学科 2012年度前期     情報技術Ⅰ   第1回
混信回避行動 Df = f相手 – f自己 Df > 0 ? or Df < 0 ? 発電周波数 それが混信回避行動です。
秘匿リストマッチングプロトコルとその応用
通訳研究分野の概観図 General Map of Interpreting Studies
子どもの性格は生まれつき? ー性格の決定因と発達ー
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
イメージや意識通りの動きの習得 ~野球の打撃において~
教育と発達.
メルボルン スウィンバ-ン大学脳科学研究所
社会情報学系 研究室ごとの履修モデル (履修推奨科目).
第20回応用物理学科セミナー 日時: 2月25日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8階第2セミナー室
明星大学 情報学科 2014年度前期     情報技術Ⅰ   第1回
北大MMCセミナー 第23回 Date:2014年3月6日(木) 16:30~18:00 ※通常と曜日が異なります
逆運動学(Inverse Kinematics) 2007.5.15
学習指導要領の改訂 全国連合小学校長会 会長 大橋 明.
Presentation transcript:

脳とこころ:認知神経科学 ネットワークと新しい視点 http://cognitivens.web.fc2.com/ 神経・臨床心理 脳とこころ:認知神経科学 ネットワークと新しい視点 http://cognitivens.web.fc2.com/

Ⅰ.脳と心:認知神経科学 1.認知神経科学とは

認知神経科学とは 認知神経科学は心、行動と脳の関係を研究する学問 最近のfMRIなどの脳機能画像技術の進歩で発展した 理系と文系が融合する研究領域である 心、行動と脳はお互いに説明し合う関係にある その意味で循環的。らせん階段のようなもの 脳機能画像法は電気・磁気を計測するものと、脳血流を測定するものがある それぞれ、長所、短所がある 現在、認知神経科学の現状は基礎研究から応用研究へ

脳機能画像法の比較 ERP MEG PET fMRI NIRS 時間分解能 ○ ○ × △ △ 空間分解能 × △ △ ○ △ 非侵襲性 ○ ○ × ○ ○ 実験の制約 ○ △ ○ × ○ 経済性 ○ × × × ○ 電気・磁気 脳血流

Ⅰ.脳と心:認知神経科学 2.認知神経科学的心のモデル

短期的な記憶のモデル Atkinson & Shiffrin (1968) Baddeley & Hitch (1974) ワーキング・メモリ Atkinson & Shiffrin (1968) Baddeley & Hitch (1974)

今回 提案するモデル INTERNAL ENVIRONMENT Memory System EXTERNAL ENVIRONMENT Motor System Sensory System Control System EXTERNAL ENVIRONMENT Emotion System ヒトの脳機能を2つに分ける:自己の内部、外部とインタラクトする系 前者は情動・動機づけと記憶の系を持ち、後者は感覚と運動の系を持つ その2つが交わるところに認知的制御の系を考える 全体が己Self

3.脳画像法による脳機能の捉え方 ニュ-ロン活動記録との比較 Ⅰ.脳と心:認知神経科学 3.脳画像法による脳機能の捉え方 ニュ-ロン活動記録との比較

ニューロン活動の記録 一般に、ニューロン活動の記録は限られた脳領域で行われることが多い 多くの場合、記録したニューロン活動を分類して、各タイプの比率をだす そして、各タイプのニューロンの機能を推定する ニューロンの活動を記録しているので、何を測定しているかは明瞭 しかし、他の領域のニューロンの活動に関しては一般に不明で、別の実験が必要

ニューロン活動記録研究の データの表現の例 Fujii et al., JNP02 Hoshi & Tanji, JNP06

脳機能画像法 EEG, MEGは脳の全体的な電気・磁気活動を測定、PET, fMRI, NIRSは間接的に脳活動を推定 脳全体の活性をみることができる それゆえ、脳領域間の関係、ネットワークが重要になる→EEG, fMRIにおける機能結合の重視 脳機能を単一の領域でなくネットワークで捉える 以下の講義では、認知的制御系と他の系の関係を中心に、これまでとは異なる視点から、興味深いテーマも含めて紹介する

脳機能画像研究のデータ表現 差分法 Zhang et al., JNS13 rule関連の実験 Reorder > Rehearse Blumenfield & Ranganath, JNS06

大規模ネットワーク fMRIの機能結合のデータ に基づいて、脳機能を複数 のネットワークで表現する。 左図上は7ネットワーク、下 は17のネットワークである。 様々な認知機能や精神疾患をネットワークの活動で捉えようとする。  上の図で紫紺:視覚、青:感覚運動、緑:背側注意、紫:腹側注意、クリーム:辺縁、橙:前頭頭頂、赤:デフォルト 7 17 Yeo et al., JNP11

大規模ネットワークによる表現 node 課題は閾値付近 の音の検出 Sadaghiani et al., PNAS15

エラーと大規模ネットワーク Neta et al., JNS15 エラーによる活性 エラーによる活性が いろいろなネットワーク にまたがっている

ネットワークの発達 Gao et al., CC15

Psychopathyとネットワーク 前頭頭頂ネットワークFPN、デフォルト・ネットワークDMN、帯状弁蓋ネットワークCON PsychopathではFPNのIPSとDMNの背側前部帯状回、楔前部、CONの前部島皮質との機能結合が減少している FPNの頭頂間溝IPSとの機能結合   上段がpsychopath   中段がNon-Psychopath   下段が両者の差 Filippi et al., JNS15 より広く、Menon, TICS11に総説がある

テンカンとネットワーク 発作起始時速波活動(赤丸)とネットワーク(水色) S1, S4はデフォルト・モード・ネットワーク ネットワーク内で活動が広がる 上原、他 臨床神経学2014

提案するモデル 認知的制御系と 他の系との関連 を中心に INTERNAL ENVIRONMENT Memory System EXTERNAL ENVIRONMENT Motor System Sensory System Control System EXTERNAL ENVIRONMENT Emotion System ヒトの脳機能を2つに分ける:自己の内部、外部とインタラクトする系 前者は情動・動機づけと記憶の系を持ち、後者は感覚と運動の系を持つ その2つが交わるところに認知的制御の系を考える 全体が己Self