創造性教育に関する実践的研究 -小学校における創造性教育の実践と効果の測定-

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創造性教育に関する実践的研究 -小学校における創造性教育の実践と効果の測定- 日本創造学会 研究会 2013/5/25 創造性教育に関する実践的研究 -小学校における創造性教育の実践と効果の測定- 弓野 憲一(静岡大学 名誉教授/日本創造学会 会長)        塩田 真吾 (静岡大学教育学部 専任講師)

自己紹介 ▶ 塩田 真吾 (静岡大学教育学部 専任講師) 専門は教育工学,創造性教育。博士(学術)。  ▶ 弓野 憲一 (静岡大学 名誉教授/日本創造学会 会長)     専門は教育心理学,創造性教育。教育学博士。    コーネル大で,思考力・創造力を伸ばすアメリカの大学・大学院    教育に触れ,なぜ日本の大学ではそれが難しいかを考察する。    以後,創造性を育てることのできる教師を養成するべく,大学や    小中学校の授業を通して研究・実践を重ねる。  ▶ 塩田 真吾 (静岡大学教育学部 専任講師)     専門は教育工学,創造性教育。博士(学術)。    弓野先生とともに静岡において創造性教育研究会を開催し,    特に初等教育及び教員養成課程における創造性教育について    研究・実践を重ねる。

発表目次 1.学校教育における 「学びと創り」 2.小学校における創造性教育の実践的研究 3.教員養成における創造性教育の実践的研究 4.今後に向けて

創造性を伸ばすには ▶ 学習には 「学び」 と 「創り」 がある。東洋や日本では、 学びが強調される。しかし、西欧先進国の学習は 学びと創りをくり返す。 ▶ 学校で創造性を伸ばすには、a)授業を改善すること、 b)挑戦をほめること、c)創造的行動をほめること、 d)Howのみでなく、What、Why疑問を増やすこと、 e)正答のみではなく思考の過程を評価すること、 f)データ・事実に基づく議論・ディベートを奨励すること 等が有効であろう。

日本の教育の弱点 山川健次郎 <履歴> ▶ 九州帝国大学が開校した時の学生に対する訓示の中に、  <履歴>     嘉永7年(1954)会津生まれ    慶應4年(1868)戊申戦争に参加    明治4年(1871)アメリカに留学    明治12年(1879)日本初の物理学教授    明治34年(1901)東京帝国大学総長    明治44年(1911)九州帝国大学初代総長 ▶ 九州帝国大学が開校した時の学生に対する訓示の中に、  「日本の学生はハウ、どのようにという問いには深く注意するが、   ホワイ、なぜなのかという言葉を発しない」。  100年後も日本の教育の弱点になっている。

学問・科学技術の創発・進展 ▶ 現在の日本------科学技術の先進国   しかし、学校教育の中には、科学技術を創発し独自に発展させる基礎教育が足りない。 ▶ 学問・科学技術の創発・進展には、  「ウォッツ」「ホワイ」「ハウ」疑問が密接に関連する。  「学び」に価値を置く日本の学校や社会では、 もっぱら「ハウ」疑問が優先される。  西欧先進国の教育には、「ハウ」とともに「ウォッツ」「ホワイ」 が大切にされる。

学びと創り ▶ 学びとは何か ▶ 創りとは何か 「学び」の語源は「まねる」にあるという。学ぶことの第一義的な意味がまねるにあるとすれば、   「学び」の語源は「まねる」にあるという。学ぶことの第一義的な意味がまねるにあるとすれば、   まねる人とまねられる人(対象)が必要になる。その対象には、言葉、新しい知識、行動、スキル   価値、好み等々が含まれる。人はそれらの諸対象を教師・親・家族・友人・社会を通じて、さらに   は本・教科書・各種のメディア等を通じて獲得していく。 ▶ 創りとは何か   作りと創りの動詞の形は「作るmake」と「創るcreate」である。   作る: モデルや設計書があり、モデルをまねて作品を描いたり、設計書に従って「もの」を完成する。   創る: 幼児のブロックを用いたタワーづくりであっても、他人の作品をまねたのではなく、その子独自       のイメージによってそれを完成した場合には、「創る」と言う語が用いられる。このことから、       創りには、他の人のまねではなく作者独自の何かが加わったものであることがわかる。       それゆえ創りは、美術・音楽や工作のみでなく、学校・家庭で奨励できる。   ***** 創りは常に間違いを含んでいる。試行錯誤が要求される。******      ⇒「創り」を実施することが、「創造性の教育」に有効。

学びと創りの特徴(弓野2012) 学び 創り ① 新学問・新科学技術創出 内包しない 内包する ② 学習の効率 高い 低い ③ 教材の真偽  ① 新学問・新科学技術創出 内包しない 内包する  ② 学習の効率 高い 低い  ③ 教材の真偽 全て真 判断必要  ④ 知識の範囲 狭い 広い  ⑤ 知識の忘却 起きやすい 起きにくい  ⑥ 学習に対する責任 低または中  ⑦ 知識に対する自信  ⑧ 自己の関わり  ⑨ 議論 あまり無し 有り  ⑩ 議論に使える知識 自信なし   自信有り  ⑪ 創造性の伸張 期待できない 期待される  ⑫ 場の雰囲気 厳粛  自由・のびやか

▶ 日本の学校における創り 日本と西欧の学校における創り ▶ 西欧先進国の授業には学びとともに創りが常にある   現職教師の意見: 「図画・工作」の中に少しと「総合学習の時間」に少し、               「創り」を意識した授業 ▶ 西欧先進国の授業には学びとともに創りが常にある   ・ アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フィンランド    例:「創造的作文: creative writing」 「ドラマ: drama」    例:日本の算数では「12-7」。アメリカでは「12は何と何に分けられますか」      フィンランドの合科の授業では、「もてなす」をキーワードにして、一人の      生徒に対する「もてなしのある誕生会」を企画し実施していた。お祝いの      言葉、音楽、飾り付け、料理等、まさしく創りの教育が実践されていた。      英国の小学校 4年生--- 教師は、あなたの意見は、を求めていた。

学びと知能 ▶ 日本の教育では「学び」が強調される。 学びの語源は「まねる」あるという。まねるためには、 まねるためのモデルや手本が必要とされる。 学校教育におけるモデルや手本は、教科書、学説、 教師の行動や価値観等であろう。 ▶ 学びの中心にある知的能力は「知能」である。 日本の教育の主流である、教科書の理解・記憶・再生 が中心の学習の高さと速さは、「知能」と密接に関係 することが実証されている。

創りと創造性 ▶ 創りには「私:自己」が深くかかわる。 「私の意見」「私の考え」「私の表現」「私らしいもの」等々 である。 ▶ 創りを奨励する中で出現する、その子の最も優れた所産 が、その子の創造性に当たる。 ▶ 「ほめる」ことで、創りの中でその子のもっている創造性を 伸ばすことが可能になる。 ▶ 創りは多くの失敗と試行錯誤を必要とする。 間違いを受け入れて、ねばり強く問題解決を励ます必要 がある。

英国の創造性教育 2000年より:QCA-Project 2003年1000の小・中学校導入 教科内、クロスカリキュラム     教科内、クロスカリキュラム 「創造性のとらえ方」  ① 想像  ② 目的をもった想像   ③ 所産の独自性  ④ 所産は目的に照らして価値が    あるか 実施例   ・Victoria Primary(Leeds) ・Teachers’ Kit より

発表目次 1.学校教育における 「学びと創り」 2.小学校における創造性教育の実践的研究 3.教員養成における創造性教育の実践的研究 4.今後に向けて

小学校における創造性教育の実践的研究 静岡 創造性教育研究会 ▶ 概要 弓野先生を代表として,週に1回,静岡大学で研究会を   ▶ 概要    弓野先生を代表として,週に1回,静岡大学で研究会を     行う。メンバーは,研究者,大学生,院生,小学校教員,     NPO関係者など10名程度。   ▶ これまでの内容        - 「学びと創り」 について     - 創造的活動と創造的態度測定項目の検討     - 英国の創造性教育指導書の検討     - 小学校の各教科における創造性教育の検討     - 総合的学習での創造性教育の検討

小学校における創造性教育の実践的研究 創造性の手法(創造技法)を各教科の授業で用いることで, 千葉県内の小学校6年生2クラス 現在の研究の概要 ▶ 研究の目的   創造性の手法(創造技法)を各教科の授業で用いることで,    子どもたちの創造性がどのように変容するかを明らかにする。 ▶ 研究対象   千葉県内の小学校6年生2クラス ▶ 研究方法   2クラスを実験群と統制群にわけ,実験群では,各教科で   創造技法を活用した授業を約3ヶ月間(5月~7月)行う。   授業前,授業中,授業後,2か月後の計4回の質問紙調査   で評価を行う。

小学校における創造性教育の実践的研究 ▶ たくさんのアイデア/あなたのアイデアを出させる 創造性をのばす授業づくり ▶ たくさんのアイデア/あなたのアイデアを出させる    →間違ってもよい,正解を導き出すことだけが目的ではない。 ▶ 研究者の視点で考えさせる    →常に疑問から始まる。正解があるわけではない。 ▶ 考える必然性をもたせる    →なぜそれを考えるのか,現実社会とリンクさせながら        考えさせる。(現実課題の創造的問題解決) ▶ ほめる    →創造性をのばすほめ方

小学校における創造性教育の実践的研究 創造性をのばすほめ言葉 e.g. - 自分らしいことを言えたね。 - 最後まであきらめずに頑張れたね。 弓野憲一・山崎彩乃(2010)  「個性的能力と創造性に関する教師と大学生のほめ言葉比較」,  日本創造学会論文誌 vol.14  e.g.    - 自分らしいことを言えたね。    - 最後まであきらめずに頑張れたね。    - たくさんのことを考えついたね。    - みんながびっくりするようなアイデアだね。    - その考えは思いつかなかったよ。    - 思わず他の人もその発想を使いたくなっちゃうね。    - 粘り強く考えたね。    - そういう視点は新しいね。

小学校における創造性教育の実践的研究 授業づくりの具体例 【理科】 ▶ 導入に時間をかけ,問いをたくさん生成させる   → ひとつの問題に対して,多くの可能性を児童に出させる。     e.g. (ろうそくの燃え方)         火事を消すにはどうすればよいだろう? ▶ 複数の変数を取り上げる   →きまった手順通りに(1つの変数で)実験させるのではなく,       様々な実験方法を考えさせる。    e.g. (ろうそくの燃え方)       より長く燃やすには? より大きく燃やすには?       より明るく燃やすには? より熱く燃やすには?

小学校における創造性教育の実践的研究 授業づくりの具体例 【理科】

小学校における創造性教育の実践的研究 授業づくりの具体例 【算数】 ▶ 文章問題を自分でつくってみよう (分数のかけ算)

小学校における創造性教育の実践的研究 授業づくりの具体例 【算数】

小学校における創造性教育の実践的研究 授業づくりの具体例 【算数】

小学校における創造性教育の実践的研究 授業づくりの具体例 【算数】

小学校における創造性教育の実践的研究 ▶ 歴史学者になってみよう →(縄文時代の学習) ▶ 時代と時代の移り変わりのドラマを作成しよう 授業づくりの具体例 【社会】  ▶ 歴史学者になってみよう    →(縄文時代の学習)      ある土器を見せ,そこからいろいろと想像をさせる。      どのようなことが考えられるだろうか。  ▶ 時代と時代の移り変わりのドラマを作成しよう    →なぜ,時代が変わったのかということをいろいろな視点      から考えていく。      家族の一日をイメージしながらドラマをつくらせる。

小学校における創造性教育の実践的研究 授業づくりの具体例 【社会】  大仏に関する問いの生成

小学校における創造性教育の実践的研究 ▶ クリエイティブ・ライティング → 物語や詩を読むだけでなく,自分でつくってみよう。 授業づくりの具体例 【国語】  ▶ クリエイティブ・ライティング    → 物語や詩を読むだけでなく,自分でつくってみよう。      創造的作文。  ▶ 視点を変えて考えてみよう    → 物語の読解の学習では,主人公の視点だけでなく,      主人公の友達の視点だったら,第三者の視点だったら,      と視点を変えて考えさせる。

小学校における創造性教育の実践的研究 創造性教育の評価(質問紙調査) ▶ 創造的態度の評価 ▶ 創造的行動の評価 ▶ 自尊感情の評価  → 探究心,冒険心,独創性,持続性,自主性(積極性)に関する    質問項目(計15問/4件法) ▶ 創造的行動の評価   → 活動を行ったかどうかに関する質問項目(計15問/4件法) ▶ 自尊感情の評価 → 子どもたちの自尊感情に関する質問項目(計10問/4件法)

小学校における創造性教育の実践的研究 ▶ 創造的態度の評価 → 探究心,冒険心,独創性,持続性,自主性(積極性)に関する  → 探究心,冒険心,独創性,持続性,自主性(積極性)に関する    質問項目(計15問/4件法)

小学校における創造性教育の実践的研究 ▶ 創造的行動の評価   → 活動を行ったかどうかに関する質問項目(計15問/4件法)

小学校における創造性教育の実践的研究 ▶ 自尊感情の評価 → 子どもたちの自尊感情に関する質問項目(計10問/4件法)

小学校における創造性教育の実践的研究 創造性教育の評価(質問紙調査) ▶ 子どもたちの創造性の評価  Q. ここに空き缶があります。ジュースをいれて飲むこと以外に,    どんな使い道があるでしょうか。    できるだけたくさん考えてください。  Q.右の絵を見て,できるだけたくさんの    質問を考えてください。    この絵を見ただけではわからないことや    疑問に思ったことについて質問してみよう。  Q.どうしてこの絵のような状況になったと思いますか?    考えられることをできるだけたくさん書いてください。

発表目次 1.学校教育における 「学びと創り」 2.小学校における創造性教育の実践的研究 3.教員養成における創造性教育の実践的研究 4.今後に向けて

教員養成における創造性教育の実践的研究 第2条 教育の目標 「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、 創造性を培い・・・」 問題の所在/創造性育成の重要性   ▶ 新教育基本法      第2条 教育の目標       「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、        創造性を培い・・・」   ▶ 新学習指導要領(小・中)     総合的な学習の時間      第1 目標       「問題の解決や探究活動に主体的,創造的,        協同的に取り組む態度を育て…」

教員養成における創造性教育の実践的研究 子どもたちは,多くの時間を学校で過ごすため, 創造性を育成するためには,学校での取り組みが 不可欠。 問題の所在/学校(教員)の役割   ▶ 学校での取り組みが不可欠      子どもたちは,多くの時間を学校で過ごすため,      創造性を育成するためには,学校での取り組みが      不可欠。   ▶ 教員の働きかけが重要      創造性を育成するために,教員が授業で      どのように子どもたちに働きかけるかが重要となる。

教員養成における創造性教育の実践的研究 教員養成課程において創造性について学ぶ機会は ほとんどない。創造性教育を学校で展開できる資質 問題の所在/創造性について学ぶ機会   ▶ 教員養成課程の問題      教員養成課程において創造性について学ぶ機会は     ほとんどない。創造性教育を学校で展開できる資質     を磨く機会も,創造技法を学ぶ機会も少ない。  cf. ニューヨーク州立大バファロー校では,    「修士レベルで教員の研修が行われており,創造性教育     を学校で展開できる資質が磨かれている」(弓野2005) ⇒アメリカの創造性教育では創造技法が広く活用されている。

教員養成における創造性教育の実践的研究 ① 創造的な教育への興味・関心の喚起 ② 創造技法の理解 ③ 学校での創造的な授業実施への意欲 研究の目的  本研究では,教育学部の学生を対象に「創造的授業力」を育成するための実践を行い,その過程を振り返り,得られた知見を明らかにすることを目的とする。   ▶ 創造的授業力の育成     ① 創造的な教育への興味・関心の喚起     ② 創造技法の理解     ③ 学校での創造的な授業実施への意欲

教員養成における創造性教育の実践的研究 「大気と圧力」 (中学校・理科) ①「コップの中に水を満たし,ハガキをかぶせ 創造技法の検討/従来指導   ▶ 従来の指導方法からの検討     「大気と圧力」 (中学校・理科)      ①「コップの中に水を満たし,ハガキをかぶせ        逆さまにする」(実験)の内容について説明し,        予測させる。      ②結果を示し,その原因について考えさせる。      ③大気圧について説明する。 佐賀県教育研究センター2006   

教員養成における創造性教育の実践的研究 従来の指導方法 ⇒「実験(結果の提示)」⇒「原因の考察」⇒「解説」 創造技法の検討/従来指導 従来の指導方法     「実験の提示」⇒「予想(話し合い)」      ⇒「実験(結果の提示)」⇒「原因の考察」⇒「解説」    実際の科学研究では,「ある決まった実験(結果)」が       最初から用意されているわけではない。

教員養成における創造性教育の実践的研究 最初から用意されているわけではない。 創造技法の検討/従来指導   実際の科学研究では,「ある決まった実験(結果)」が       最初から用意されているわけではない。  e.g.大気圧で言えば,「大気圧があるようだ」という仮定の     もと,「どうしたら大気圧が検証できるか」を考え,様々     なアプローチから「どういった実験をするか」(研究方法)     を検討し,その結果を考察するという手法が取られる。     また,実験は,「どんな場合でも同じ結果になるのか」と     いう再現性が重視され,様々な仮定のもと実験が繰り返     される。   

教員養成における創造性教育の実践的研究 ⇒「なぜ,どうして」という問いをつくり,物事を深く広く 創造技法の検討/問いの生成法    「科学者は『なぜだろう』『どうしてだろう』とその事象の     生起原因ついて仮設を立て,さまざまな方法を用いて     その因果関係を実証してきた。」(弓野2005)   ⇒「なぜ,どうして」という問いをつくり,物事を深く広く     理解する過程は,「創造の過程」そのものであろう。   「実験の提示」⇒「予想(話し合い)」      ⇒「実験(結果の提示)」⇒「原因の考察」⇒「解説」        「実験そのものに対する問い」

教員養成における創造性教育の実践的研究 ストラテジー1: 特定な方法で生徒に問いを始めさせる。 創造技法の検討/問いの生成法   生徒に問いを作らせることで,広く深い理解を促す創造技法    ストラテジー1: 特定な方法で生徒に問いを始めさせる。              「もし~」,「なぜ~」    ストラテジー2: 質問のもとになる刺激を与える。    ストラテジー3: 答えの提供と問いの要求。    ストラテジー4: 困惑しているポイントについての問いを              要求する。    ストラテジー5: 一連の学習に対する達成度を見る問いを              用意する。 Richard White,Richard Gunstone(1992)

図2 あなたは理科の授業が得意ですか,好きですか? 教員養成における創造性教育の実践的研究 教育学部での実践   「授業心理学」の特別授業    被験者      授業心理学の受講生である教育学部2年生38名,      3年4名,4年生1名(男性15名・女性28名)    図1 あなたは文系ですか,理系ですか?    図2 あなたは理科の授業が得意ですか,好きですか?

教員養成における創造性教育の実践的研究 本授業では,教員を目指す学生に創造的授業力を 授業の概要 ① 創造的な教育とは(弓野)   本授業のねらい     本授業では,教員を目指す学生に創造的授業力を    身につけさせることを目的とする。     中学校理科の「大気圧」を題材とし,単に実験の予想や    考察で終わらずに,問いを生成し,実験方法を検討する    ことの有効性に気づかせたい。  授業の概要     ① 創造的な教育とは(弓野)     ② 「問いの生成法」を用いた中学校理科「力と圧力」       に関する模擬授業(塩田)     ③ 授業のふりかえりと創造的授業力の育成(弓野)

授業を実施するにあたり,教授方法についての 教員養成における創造性教育の実践的研究 教授方法の工夫   授業を実施するにあたり,教授方法についての    議論を重ね,以下の3点を工夫点とした。     ① 「大気圧」に関する模擬授業の実施     ② 模擬授業の中での「問いの生成」,        学生同士のディスカッションの実施     ③ プロジェクター,カメラなどのICTの活用

実際のスライド    なぜ,コップの水は落ちなかったのか? 表面張力で くっつく  コップの中<大気圧 大気圧

変数に着目し,「もし~」ではじまる文を考えて, 実験してみてください。 実際のスライド でも,どんな場合でも同じ結果になるのでしょうか。 変数に着目し,「もし~」ではじまる文を考えて, 実験してみてください。

では,空気に重さがあることを実感できるような 実際のスライド  模擬授業    「大気圧」 とは・・・     ⇒ 地球を取り巻く大気の重さによる力 では,空気に重さがあることを実感できるような 実験方法を考えてみてください。 「もし,空気に重さがあるなら・・・」

実際のスライド    例えば・・・

実際のスライド 空気が抜けると 圧力が小さくなる  吸盤の中<大気圧

② 実験方法の提示⇒実験ではなく, 実験方法そのものに関する 問いを考える 実際のスライド 今回の模擬授業では・・・   今回の模擬授業では・・・      ① もし~,なぜ~という問いの生成     ② 実験方法の提示⇒実験ではなく,       実験方法そのものに関する       問いを考える

教員養成における創造性教育の実践的研究 次の3点について事前・事後の質問紙で評価(③は事後のみ) ①学生が大気圧を理解したか  次の3点について事前・事後の質問紙で評価(③は事後のみ)  ①学生が大気圧を理解したか    ⇒大気圧に関する10題の問題の正答数で比較  ②学生が問いの生成法を理解したか    ⇒ 「気圧に関して,『もし~』,『なぜ~』で始まる文章を      できるだけたくさんつくりなさい」という課題を出し,      その文章の数で比較  ③学生が創造的な教育に興味・関心を持ったか,    学生が学校での創造的な授業実施への意欲を持ったか    ⇒ 「この授業を学校現場で行いたいか」(事後・5件法)      感想の自由記述

教員養成における創造性教育の実践的研究 ①学生が大気圧を理解したか ⇒大気圧に関する10題の問題の正答数で比較   ①学生が大気圧を理解したか    ⇒大気圧に関する10題の問題の正答数で比較  事前の平均が10問中7.20問,事後が10問中8.11問であった。      対応のあるt 検定を行ったところ,有意差が見られた。

教員養成における創造性教育の実践的研究 ②学生が問いの生成法を理解したか ⇒ 「もし~」,「なぜ~」で始まる問いの生成数   ②学生が問いの生成法を理解したか    ⇒ 「もし~」,「なぜ~」で始まる問いの生成数    事前の平均が1.41個,事後の平均が2.04個であった。      対応のあるt 検定を行ったところ,有意差が見られた。

図3 あなたはこの授業を学校現場で実施してみたいですか? 教員養成における創造性教育の実践的研究   ③学生が創造的な教育に興味・関心を持ったか,     学生が学校での創造的な授業実施への意欲を持ったか    ⇒ 「この授業を学校現場で行いたいか」 (事後・5件法)    図3 あなたはこの授業を学校現場で実施してみたいですか?    「ぜひ創造的な授業を実施したい」と答えた学生が25.7%,「創造的な授業を実施したい」と答えた学生が74.2%であった。

教員養成における創造性教育の実践的研究 学生の自由記述の定量分析 「面白い」,「興味深い」といった肯定的な意見が多く見られた。 順位 形容詞句 頻度 1 面白い 10 2 楽しい 6 3 よい 5 4 興味深い 新鮮だ 順位 動詞句 頻度 1 思う 11 2 やる 9 3 考える 7 4 実践する 5 「面白い」,「興味深い」といった肯定的な意見が多く見られた。 また,「実践する」,「やる」といった今後の学校現場での実践に                 結びつくと考えられる意見も見られた。

教員養成における創造性教育の実践的研究 学生の自由記述(一部) ・自分で変数を変えた実験を考えたことが楽しかった。実際に ・自分で変数を変えた実験を考えたことが楽しかった。実際に   実践して子どもたちが楽しそうに取り組む様子が目に浮かん  だ。教師が考えた実験を単にやらせるだけでなく、子ども自身  に考えさせ、実践させることが大切だと分かった。(2年・女子) ・とても面白かったです。新鮮でした。創造力を伸ばすのによい  授業だと思いました。(2年・男子) ・実際に自分の疑問を考え行うことは、実験による体験を身に  付ける上でも、創造力を働かす点でも有意義だと感じた。 (2年・女子)

教員養成における創造性教育の実践的研究 ① 創造的な教育への興味・関心の喚起 ② 創造技法の理解 ③ 学校での創造的な授業実施への意欲 研究の目的  本研究では,教育学部の学生を対象に「創造的授業力」を育成するための実践を行い,その過程を振り返り,得られた知見を明らかにすることを目的とする。   ・創造的授業力の育成     ① 創造的な教育への興味・関心の喚起     ② 創造技法の理解     ③ 学校での創造的な授業実施への意欲     事前事後の問いの生成数の変化,アンケート結果,     自由記述などから概ね目標を達成できたと考えられる。

発表目次 1.学校教育における 「学びと創り」 2.小学校における創造性教育の実践的研究 3.教員養成における創造性教育の実践的研究 4.今後に向けて

今後にむけて ▶ 研究の精緻化 → 対象数を増やし,より定量的,定性的に研究を行いたい。 ▶ 対象の多様化  ▶ 研究の精緻化    → 対象数を増やし,より定量的,定性的に研究を行いたい。  ▶ 対象の多様化    → 学校教育だけでなく,様々な学びにおける創造性教育を      実践的に研究を行いたい。   → 特に,現在一緒に研究を行っている環境教育NPOと共に,      環境教育というフィールドで,対象を広げて研究を行いたい。  ▶ 教員,教員養成の学生への広がり    → 現場の教員,学生に興味を持たせ,実践の輪を広げたい。 

ご清聴ありがとうございました 静岡大学教育学部 塩田真吾   esshiot@ipc.shizuoka.ac.jp