消費者、関係業者間の顔の見える関係づくり 鹿児島県養鶏協会主催 消費者、関係業者間の顔の見える関係づくり 「鶏卵の安全な生産・流通」 鹿児島大学農学部獣医学科 獣医公衆衛生学教授 岡本嘉六 パート1 ● 日本における食中毒の発生状況と国際的比較 世界一安全な日本で、 世界一大騒動するのは何故か?
主要国の鶏卵消費量の推移 日本 年間1人当たり消費個数 200 250 300 350 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 年間1人当たり消費個数 世界一卵好きな国民 しかも、生で食べる国民 日本 アメリカ フランス ドイツ イギリス 150 主要国の鶏卵消費量の推移
食中毒患者数の推移:原因物質 (1996~2002) 1996 46,290 26,500 16,539 698 5,241 14,488 2,144 1,557 47 181 1997 39,989 23,697 10,926 611 6,786 5,407 2,378 2,648 216 211 94 1998 46,179 36,337 11,471 1,924 12,318 183 3,416 3,387 2,114 5,213 216 461 63 1999 35,214 27,741 11,888 736 9,396 46 2,238 1,517 1,802 5,217 134 310 67 2000 43,307 32,417 6,940 14,722 3,620 113 3,051 1,852 1,784 8,117 167 373 75 2001 25,862 15,753 4,949 1,039 3,065 378 2,293 1,656 1,880 7,371 112 251 76 2002 27,629 17,533 5,833 1,221 2,714 273 1,368 3,847 2,152 7,983 154 297 75 総数 細菌 サルモネラ ぶどう球菌 腸炎ビブリオ 腸管出血性大腸菌 病原大腸菌 ウエルシュ菌 カンピロバクター ウイルス 化学物質 植物性自然毒 動物性自然毒 香港で 新型 インフル エンザ 卵のSE 汚染問題 堺市 学校給食 事故 ニパ ウイルス 感染症 ダイオ キシン 報道 ウエスト ナイル熱 日本で BSE 発生 中国で 新型 肺炎
日本ではまだ散発的にしか発生していない多剤耐性サルモネラ DT104が、年間数千人規模で発生。 S. typhimurium DT104 人口が日本の半分の英国で、 サルモネラだけで日本の食中毒患者総数に匹敵している 卵を主な原因食とするSEだけで、 年間1~2万人 S. enteritidis (others) 報告数 日本ではまだ散発的にしか発生していない多剤耐性サルモネラ DT104が、年間数千人規模で発生。 図2.英国におけるサルモネラの報告数 出典:Zoonoses Report: United Kingdom 2000
米国における殻付卵を原因食とする サルモネラ食中毒による死亡者数 Salmonella Enteritidis Infections, United States, 1985–1999 Emerging Infectious Diseases, 10( 1), 2004 死亡者数 日本における「卵類およびその加工品」を原因食とする死亡者数 1995年と1997年に2名、1998年に1名の計3名に留まっている。 世界一卵好きで、しかも、生で食べる日本人 = 世界一安全性が高い卵! 2 2 1 米国における殻付卵を原因食とする サルモネラ食中毒による死亡者数
カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率 0.25 100 :カンピロバクター、 :サルモネラ 肉食民族では、家畜との付き合いが長く、その分、動物由来感染症も多い。 安全性が高い日本で大騒動するのは、自然観、生命観の相違か? 0.2 80 10万人当り死亡率 10万人当り罹患率 0.15 60 0.1 40 0.05 20 0.0014 日本 英国 米国 日本 英国 米国 カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率
パート2 ● 食中毒の発生防止には、「農場から食卓まで」の全ての関係者が努力しなければならない 卵は生きている = 呼吸する穴(気孔) ● 食中毒の発生防止には、「農場から食卓まで」の全ての関係者が努力しなければならない 卵は生きている = 呼吸する穴(気孔) ⇒ 細菌が侵入する 野鳥の卵は雛が育つまでなぜ腐らないか? 家庭の卵はなぜ腐るのか? 1.親鳥の愛情がないから 2.管理がずさんだから 3.無性卵だから
気室 卵白 気孔 半透膜 気孔がむき出しになり、細菌の侵入が容易になっている! 内外の卵殻膜の間にできた空間。ガス交換によって失われた水分と、卵殻で固定された卵容積を調整する。 卵白 オボアルブミン、リゾチーム、オボグロブリンなど多種類の抗菌性物質が含まれており、細菌が侵入しても簡単には増殖できない。 クチクラ 海綿状層 乳頭層 外卵殻膜 内卵殻膜 気孔 半透膜 空気は通すが、 液体や固体を通さない 卵殻 このような防護機構が働いて、親鳥が保温している間、細菌の侵入が防止され、卵内での増殖が阻止されている。 ところが、市販の卵は表面を綺麗にするため水洗されており、その際にクチクラがなくなってしまう。 気孔がむき出しになり、細菌の侵入が容易になっている!
米国では、全ての段階での制御温度を、7.2℃以下と法律で定めた。 日本では、保管温度の定めがない。流通と家庭の協力が不可欠! 卵の表面を濡らさない 表面が濡れると 表面が乾いていると、 細菌は動けない 運動性のある細菌が卵内に侵入する 卵温より高温の湿った空気に接すると、 結露が起きる! センター GP 輸送 問屋(市場) 小売店 帰宅途中 家庭の保管 産卵 40 30 20 10 卵温(℃) 理想的保管 現実は 米国では、全ての段階での制御温度を、7.2℃以下と法律で定めた。 日本では、保管温度の定めがない。流通と家庭の協力が不可欠!
25℃、乾燥条件での保存における洗卵の影響 無洗浄卵 洗浄卵 菌数/g 100 <106 <104 80 <103 60 <102 40 20 <10 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 保存期間(週) 25℃、乾燥条件での保存における洗卵の影響
卵温(産卵時42℃)は、集卵間隔によって異なる 洗浄液は、卵温より、6.7℃(20゚F)以上高いこと。 GPセンターにおける洗卵と乾燥 卵温(産卵時42℃)は、集卵間隔によって異なる 汚れた洗浄液が 気孔から 流入 冷水で洗浄 収縮 陰圧 米国基準 温湯で洗浄 洗浄液は、卵温より、6.7℃(20゚F)以上高いこと。 一般的には、43.4~48.9℃(110~120゚F) 乾燥 温風で、速やかに 膨張 陽圧 冷却 清浄な空気
パート3 ● 親鳥の体内で卵が形成される過程で、卵白や卵黄にサルモネラが入り込むことがある。 重度の感染 = 産卵停止 汚染卵はでない→ 小卵胞 ● 親鳥の体内で卵が形成される過程で、卵白や卵黄にサルモネラが入り込むことがある。 成熟卵胞 漏斗部 卵白分泌部 重度の感染 = 産卵停止 汚染卵はでない→ 峡部 子宮部 直腸 膣部 ↑軽度の感染 = 産卵継続 汚染卵を産む 総排泄腔
サルモネラ・エンテリティディス(SE)問題 ● SEは、英国を中心とする欧州および米国で、1970年代から流行し始めた。感染した採卵鶏の親鳥は無症状のまま産卵を続けるものもおり、卵白にSEが侵入してしまう。 産卵継続 汚染卵 孵化途中で死亡するのものあるが・・・・・・ 感染親鳥 産卵停止 保菌雛 概観から判らない介卵感染の制御は難しい 21日で孵化
鶏卵の生産過程におけるサルモネラ汚染の査定 感染若雌 殻付き卵の SE汚染率 SEの毒性の程度 0~60% 1万個に1個 採卵鶏群の 保菌率 汚染環境 卵の汚染率 5~70% 30%~ 10万 1 1~70% 汚染飼料・水 強制換羽の 有無 卵製品の SE汚染率 0~40% 危害緩和策としては、 サルモネラ陰性の雛と飼料を購入すること、鶏群の定期的なサルモネラ検査の実施などを定めた「家禽向上国家計画(NPIP)」が策定された。種鶏業者、孵化業者、飼料製造工場などの衛生管理基準が次々と規則に盛り込まれた。
インプット変数とSE陽性卵の年間生産数との相関 インプット変数名 相関係数 高度汚染/非強制換羽鶏群におけるSE陽性卵の頻度 10万羽以上の鶏群規模層におけるSE陽性鶏群の割合 軽度汚染/非強制換羽鶏群(小区分1)におけるSE陽性卵の頻度 高度汚染鶏群の頻度 10万羽以上の鶏群規模層における明らかなSE陽性鶏群の割合 廃鶏調査から計算された明らかなSE陽性鶏群の割合 環境試験の感度 強制換羽後のハイリスク日数 高度汚染/強制換羽鶏群におけるSE陽性卵の頻度 試験で陰性の鶏群における明らかな鶏群内割合 0.62 0.54 0.34 0.26 0.24 0.10 0.09 0.08 0.06 0.03
(d) S.Enteritidis清浄(S. Enteritidis Clean): この区分は、生産された種卵と雛がSalmonella enteritidis不在であると証明されていることを顧客に保証することを望む採卵用種鶏業者に用意されたものである。 種卵と雛 (1)公式州機関によって決定される下記の要件を満たした鶏群、ならびにそれが生産した種卵と雛。 NPIP NPIP=家禽向上国家計画 (i) 鶏群が「S.Enteritidis清浄」に由来するか、または、雛箱から採った胎便および発生後7日以内に死亡した雛のサンプルについて公認検査所により細菌学的にサルモネラを検査すること。 (ii) 鶏群に与えた飼料の全てが、下記の要件を満たすこと。 ペレットは、動物性蛋白を全く含まないか、あるいは、「動物性蛋白製品製造業(APPI)サルモネラ教育/低減実施要綱」の下で生産された動物性蛋白製品に限るべきである。蛋白製品は、最低14.5%水分含量で、製造工程を通して、最低87.8℃以上、最短20分以上最低73.9℃以上、70ポンド圧下で最低84.4℃以上、加熱されなくてはならない。・・・・以下省略
*:洗卵、乾燥、検卵、重量選別、包装、出荷 環境負荷を減らす副生物のリサイクルも、生活環境の安全性向上に欠かせない! 鶏卵生産農場がSE汚染を減らすには、その上流にある種鶏場や孵化場、飼料工場がSE汚染がないことを品質保証しなくてはならない 育種用基礎系統群、系統造成群、 海外に依存 原原種鶏農場(GGP) 農場段階においても、一般農家だけで安全性向上を図れるものではない! 飼料工場 原種鶏農場(GP) 廃鶏:食鳥センター 種鶏農場(PS) 穀類 (大半は輸入) 動物性 蛋白質原料 孵化場 育雛場 食品工場 割卵工場 インライン方式* 鶏卵生産農場 (コマーシャル鶏) 飲食店 卵問屋 オフライン方式* 消費者 小売店 GPセンター *:洗卵、乾燥、検卵、重量選別、包装、出荷 環境負荷を減らす副生物のリサイクルも、生活環境の安全性向上に欠かせない! 鶏卵の安全性と関わる養鶏産業システム
卵を買う時に、何を考えなければならないか? What should I consider when buying eggs? Buy uncracked Grade AA or A eggs from refrigerated cases only. Then, get them home quickly and refrigerate them immediately. If it’s hot outside or the distance is great, pack 冷蔵されている、ひび割れのないグレードAAまたはAの卵のみを購入しなさい。 そして、速やかに帰宅し即座に冷蔵庫に eggs and other perishable foods with ice or commercial coolant in an insulted bag or cooler in your car, rather than the trunk. Keep eggs refrigerated until you’re ready to use them. しまいなさい。暑い日や道のりが遠い場合は、パック卵とその他の腐り易い食品は、車のトランクではなくクーラーに入れるか、氷を入れた携帯クーラーで運びなさい。卵は、使うまで冷蔵しなさい。 サイズ(S、M、L、LL) 市販鶏卵に表示されている「品質・安全性規格」
5種の軽減策によるSE患者の予測数と減少率 軽減策の種類 SE患者数 減少数 減少率 ME ベースライン Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 期間 温度 期間と温度 661,633 584,884 575,621 522,028 561,065 567,681 496,225 449,910 76,749 86,102 139,605 100,568 93,952 165,408 211,723 11.6% 13.0% 21.1% 15.2% 14.2% 25.0% 32.1% 0.46 0.52 0.84 0.61 0.57 1.00 1.28 Ⅰ:家庭、公共施設および小売店における貯蔵期間の25%短縮、温度上昇機会の25% 減少、あるいはその両者の組合わせ。 Ⅱ:最大羽数規模層における鶏群のSE 陽性率を25%減少 Ⅲ:高度SE 汚染鶏群の25%減少 Ⅳ:SE 陽性鶏群の全卵の25%を転用 Ⅴ:最大羽数規模層における鶏群のSE 陽性率を25%減少とⅠとの組み合わせ ME :軽減策の弾力性
卵白: オボアルブミン、リゾチーム、オボグロブリンなど多種類の抗菌性物質が含まれており、細菌が侵入しても簡単には増殖できない。 パート4 ● 賞味期限 SE汚染があっても、そのままの菌数では食中毒を起こさない。 SEを増やさないことが重要! 卵白: オボアルブミン、リゾチーム、オボグロブリンなど多種類の抗菌性物質が含まれており、細菌が侵入しても簡単には増殖できない。 1960年代に行われた実験 ● 卵黄中 0.15%卵黄 混入卵白中 ● ● 大腸菌 卵白中
Humphry, T.J. (1994) 温度は、卵の保存におけるキーポイント 1.SEは卵の形成過程で卵白に入る 2.産卵当日のpH上昇前にSEは10倍に増える 3.卵白のもつ SE に対する発育抑制能は、 卵黄膜の破損により損なわれる 4.卵黄膜が破損するまでの時間は、温度に依存する Time(days) = 86.939 – 4.109 T + 0.048 T2 [ Temperature in ℃, 10 < T < 35 ] 賞味期限の根拠 5.卵黄膜破損後の発育速度は温度の二乗に比例する Growth Rate(log cfu/g/hr) = (-0.143 + 0.026 T)2 [ Temperature in ℃, 10 < T < 37 ]
保存温度 卵黄膜破損までの日数 発育速度 10 50.6 0.01 15 36.1 0.06 20 24.0 0.14 25 14.2 0.26 30 6.9 0.41 34 2.7 0.55 日 log cfu/g/hr 60 0.6 50 0.5 卵黄膜破損までの日数(Time) 40 0.4 30 0.3 発育速度(GR) 20 0.2 10 0.1 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 保存温度
Sanitary Food Transportation Act of 1990 Sec. 2. Findings (1) Americans are entitled to receive food and other consumer products that are not made unsafe as a result of certain transportation. (2) The American public is threatened by the transportation of products potentially harmful to consumers in motor vehicles an rail vehicles which are used to transport food and other consumer products; and (3) the risks posed to consumers by such transportation practices are unnecessary, and such practices must be terminated. 食品輸送衛生法 1990 第2節 事実認定 (1) アメリカ国民は、特定の輸送によって安全性が損なわれていない食品やその他の製品を受取る権利を有する。 (2) アメリカ国民は、食品やその他の製品の輸送に使う車両や貨車において、潜在的危害性食品の輸送による脅威に曝されている。 (3) そのような輸送が消費者にもたらすリスクは不必要であり、そうした行為は終わらせなければならない。 Transportation and Storage Requirements for Potentially Hazardous Foods 潜在的危害性食品の輸送および保管の要件 潜在的危害性食品: 細菌の発育に好適な「水分活性、pH、高蛋白質含量」を備えている食肉、食鳥肉、卵、魚介類、乳製品。 1998年に、保管温度について指導基準から規則への格上げ改正がなされ、冷蔵温度の上限を7.2℃とし、「殻付卵には、存在するかも知れないサルモネラに対する殺菌処理をしていないので安全な取扱いをする必要がある」との表示をすることとなった。
平成11年(1999)、食品衛生法施行規則の改定によって賞味期限表示が義務化された。 しかし、・・・・・ サルモネラ菌の増殖が起こらない期間は、たまごの保存温度によって決まります。英国のハンフリー博士の研究に基づいて算出されたものであり、その期間は、夏は短く、冬は長くなります。 賞味期限は、この算出された期間に、家庭における冷蔵保存(10℃以下)の7日間を加えたものです。 各季節の区分のうち平均気温の最も高い月を、区分のうちの基準月、そしてその気温を基準気温とします。 夏期(7~9月) 春秋期(4~6月、10~11月) 冬期(12~3月) 27.5 22.5 10.0 生食できる期限 (採卵後日数) 16 25 57 基準気温 東京の例 保存温度は、実際に保管された温度ではなく、季節毎の基準気温が用いられている。個々の流通業者の冷蔵義務は、全くない???
鶏卵のサルモネラ汚染問題 ● 卵白にSEが侵入した菌数はわずかであり、新鮮な状態で食べてもヒトが発症することはないが、流通過程で常温保管されるとSEが増殖して発症菌数に達する。 新鮮卵 卵黄膜がしっかりしている。 常温保管した卵 卵黄膜が脆弱化している。 期間より温度 保管不良 割卵状態 卵の鮮度を見分けよう 1.気室が大きくなったものは悪い(ゆで卵、塩水に浮く)。 2.卵黄の盛り上がりがなく、卵白が水様になったものは悪い(割卵)。 菌を増やさないため、農場から食卓までの温度管理が重要である
「顔つなぎ」による信頼から「契約」による信頼へ パート5 一般生産農場におけるGAP 「顔つなぎ」による信頼から「契約」による信頼へ ● インターネット取引が急成長している中で、不特定多数を相手とする食品関連業界は、新しい流通システムに挑戦しなければならない。 ● 国際流通においては、第三者検証のある保証書が重視され、顔見知りであることは付随的なことに過ぎない。これがHACCPの考え方の基礎である。 ● 第三者による認証を受けるためには、記録がしっかりしていないと始まらない。何を、どう記録するか? 面倒な記録を続けるための工夫とは?
一般生産農場における生産工程一覧図 大雛 飼料 環境 水 薬物 施設・設備 従業員 鶏卵市場 鶏卵生産農場がGAPを実施するには、その上流にある種鶏場や孵化場、飼料工場が品質保証を出せる体制作りが先行しなくてはならない 大雛 搬入 保管 給餌 飼料 搬入 健康管理 衛生動物 廃棄物 環境 殺菌 給水 水 産卵 指示書 添加剤 添加物 消毒薬 集卵 鶏舎 倉庫 設備 機材 洗浄 消毒 保守 薬物 施設・設備 洗卵 乾燥・殺菌 農場には日齢の異なる鶏がおり、日齢の進んだ鶏がSEに感染していると、若鶏に感染が広がる。日常作業を介して鶏舎外から作業員が持ち込む危険性もある・・・・・・・・ 検卵 健康管理 個人衛生 教育・訓練 保管 従業員 出荷 鶏卵市場 一般生産農場における生産工程一覧図
GAPは畜産物の安全性向上を目的とし、同時に、畜産物の安全性に対する不必要な不安を解消することによって需要の安定を図り、安全性に要する費用を適正に評価して価格に反映させるためのシステムである。このシステムが機能するためには、安全性確保のために設定されたGAP管理基準が正しく遵守されていることを証明する記録を付けることが必須である。 記録簿目次例 大項目と整理記号 中項目 小項目 記録責任者 Ⅰ 鶏群 搬入(A) 受領、ロット番号 ○山×夫 健康管理(B) 健康異常、診断依頼 産卵(C) 産卵数、異常卵数 給餌(D) 飼料ロット番号 給水(E) ニップル確認、水温 搬入 受領
スライドの都合で2枚になっているが、縦用紙で1枚に収める。 鶏群導入記録票例 IA 導入鶏舎番号 B3 同一鶏舎内の既存鶏群番号 区画番号 3,4 1 2 鶏群番号 0410B3 0312B3 0306B3 導入日時 導入羽数 種鶏場名 日齢 トリミング歴 銘柄名 保証書番号 サルモネラ 清浄、未清浄 ワクチン接種歴 (メーカー名、 接種回数、 最終接種日) ワクチン名 メーカー名 回数 最終接種日 マレック 伝染性咽頭気管炎 ニューカッスル 伝染性気管支炎 鶏痘 ・・・・・・・ 種鶏場名 TOKYO 保証書番号 T-1234567 スライドの都合で2枚になっているが、縦用紙で1枚に収める。
21 7 IA/16 年 月 日 時 記帳責任: ○山×夫 IA/15(ページ) 薬剤使用歴 使用日齢 処方箋(番号) 死亡雛 数 千羽当り割合 所見 異常雛 検査依頼 有無 依頼先 詳細頁 搬入車両の衛生 車内 出発時の消毒 輸送時の温度 輸送ケージの衛生 血便 下痢便 汚れ 搬入責任者名 (自筆) 所属 導入責任者名 死亡雛 21 7 検査依頼 ◯ ◯家畜保健所 IA/16 年 月 日 時 記帳責任: ○山×夫 IA/15(ページ)
導入時検査依頼記録票例 IA 検査依頼日時 依頼機関 ◯ ◯家畜保健所 導入日時 導入羽数 種鶏場名 TOKYO 日齢 死亡雛(d) 数 千羽当り割合 所見 21 7 異常雛(p) 検体番号 内容 検査結果 d1 鶏体 d2 腸 p1 糞便スワブ p2 o1 輸送ケージ内血便 ・・・ SE陽性 SE陽性 SE陽性 SE陽性 SE陽性 次ページに続く
経過(法令に基づく措置に対して、農場が対処した事項を箇条書きにする) 経過(検査結果に基づいて農場が自主的に対処した事項を箇条書きにする) 前ページから続く 衛生措置 殺処分 経過(法令に基づく措置に対して、農場が対処した事項を箇条書きにする) 日時:対処事項 ・・・・・・ 淘汰 隔離 その他 経過(検査結果に基づいて農場が自主的に対処した事項を箇条書きにする) ・・・・・・・ 年 月 日 時 記帳責任: ○山×夫 IA/16(ページ) 雛白痢などの法定伝染病を雛が持込んだ際に、農場全体の鶏群が法的殺処分となる場合もあることから、導入時に明確な手順を踏まないと種鶏場に損害賠償を請求することが難しくなります。
Ⅱ 鶏卵処理 集卵(A) 滞留卵、破卵 洗卵(B) 温度、殺菌料 乾燥(C) 温度 検卵(D) 異常卵 保管(E) 温度、時間 出荷(F) 滞留卵 滞留卵の問題点=常温で放置される時間が長くなる。 1.産卵後卵白のpHが上昇する迄にSE菌数が10倍に増えるとされているが、放置によってさらに増える。 2.その後産卵した卵と同一ロットとして賞味期限が設定されると、ロットの均一性がなくなる。 3.その結果、SEが想定した以上に増殖し、食中毒発生のリスクが大きくなる。
滞留はどうして起きるのか? ケージの構造(傾斜、金網の歪み) 鶏糞付着による汚れ 死亡鶏によるブロック 下痢や病死など、鶏の健康を損なうことが卵の安全性と密接に関係している。
破卵や軟卵を産むと、ケージ内の金網や、ベルトを汚す。そこで増殖した菌が通過する卵を次々と汚染する。 エレベータ 正常 集卵ベルト 破卵や軟卵を産むと、ケージ内の金網や、ベルトを汚す。そこで増殖した菌が通過する卵を次々と汚染する。 ベルト上の破卵 エレベータ接合部の破卵 破卵や軟卵を産まない 健康な鶏を育てる
滞留卵の放置を防ぐためには、定期的見回りが必要です。 何よりも、下痢や病死を防ぎ、正常な卵を産ませるため、鶏群の健康管理が基本。 それを補助するものとして、ベルトが停止している間に滞留卵をベルトに落とす機械装置を設置することも有効です。 ケージ構造上の問題は、設備更新時に十分検討すべきです。 何よりも、下痢や病死を防ぎ、正常な卵を産ませるため、鶏群の健康管理が基本。
鶏舎内日常点検票例(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ、X) XIA 鶏舎番号: B3 異常事項:所見、対応 詳細頁 点検項目 B3-1 B3-2 B3-3 B3-4 ⅠB-1 死亡羽数 20 削痩、顔面腫れ ⅠB/21 ⅠB-2 異常羽数 >100 下痢、淘汰、治療 ⅠB-3 薬物投与 × ○ 生菌用混合物 ⅤF/7 ⅠC-2 異常卵数 3 軟卵、小卵 ⅠC-2 滞留卵数 1 金網汚れ、洗浄 ⅡA-1 滞留卵 エレベータゴミ、清掃 ⅡA-2 破卵 ベルト、清掃 ⅢC-1 給餌器 給餌不良、保守依頼 ⅢC/5 ・・・・・ 鶏舎番号: ⅠB/21 ⅠB/21 ⅤF/7 異常卵数 滞留卵数 滞留卵 破卵 ⅢC/5 大項目 中項目 複数の大項目にある日常点検を必要とする中項目を1~2枚の用紙にまとめる。 ⅠC-2: Ⅰ(鶏群) C(産卵) ⅡA-1: Ⅱ(鶏卵処理 ) A(集卵 ) ⅢC-1: Ⅲ(飼料) C(給餌器)
湿度が高い時期に、管理が悪いとパイプ内で飼料が固まることがある。給水器が飼料の上部にあると、水滴が落ちてカビが着生する原因となることもある。 Ⅲ 飼料 搬入(A) 受領、ロット番号 保管(B) 温度、湿度、期間 給餌器(C) 保守点検 保守点検 湿度が高い時期に、管理が悪いとパイプ内で飼料が固まることがある。給水器が飼料の上部にあると、水滴が落ちてカビが着生する原因となることもある。
GAP基準としての薬物の使用管理に関する原則 Ⅴ 薬物 ワクチン(A) 指示書、投与 抗菌性添加剤(B) ○山×夫 抗菌性飼料添加物(C) 納品書、混合、投与 消毒剤(D) 納品書、使用 洗卵用殺菌料(E) 生菌用混合物(F) 納品書、投与 駆除剤・除草剤(G) その他(H) GAP基準としての薬物の使用管理に関する原則 1.全ての動物薬および薬品は、薬物管理獣医師の指示の下に、製造者の取扱注意を遵守して使用・管理しなければならない。 2.動物薬および薬品の使用・管理は、適切な教育・研修を受けた作業員のみが行うものとする。 3.動物薬および薬品の購入は薬物管理獣医師に指示された必要分のみとし、使い残しが出た場合には適正に処分して過剰な在庫を残さない。
薬品管理総括票例 Ⅴ 区分 薬物グループ 小区分 サブグループ 整理記号 A ワクチン B 抗菌性添加剤 d 飲水添加剤 B d f 薬品管理総括票例 Ⅴ 区分 薬物グループ 小区分 サブグループ 整理記号 A ワクチン B 抗菌性添加剤 d 飲水添加剤 B d f 飼料添加剤 B f C 抗菌性飼料添加物 D 消毒剤 E 洗卵用殺菌料 F 生菌用混合物 G 駆除剤・除草剤 H その他 H d Hf 「薬事法」および「動物用医薬品の使用の規制に関する省令」で規定された動物薬 「薬事法」および「動物用医薬品の使用の規制に関する省令」で規定された動物薬 生菌用混合物: 上記に該当しない飼料原料の「生菌剤(CE剤等)」など。 ビタミン剤など家畜の健康増進に使用され、安全性と関わらない製品。
抗菌性添加剤管理票例(薬剤名:ペニシリン) ⅤB 年月日 購入量 指示書番号 納入伝票番号 使用量 詳細頁 処分量 処理伝票番号 保管量 P041108 出荷制限期間指示書 年 月 日 指示に係る動物の所有者又は管理者の住所氏名 獣医師の住所 氏名 印 動物用医薬品の使用の規制に関する省令第4条の規定に基づき、下記のとおり指示する。 1.指示に係る動物の種類及び頭数 2.指示に係る動物の名号、性、年齢又は特徴 3.指示年月日及び出荷制限期間 年 月 日 生産物 動物 食用のために出荷してはならない期間 指示年月日 P041108
健康管理記録票例 IB 鶏舎番号 B3-3 日齢 死亡雛(d) 数 千羽当り割合 所見 削痩、顔面腫れ 20 異常雛(p) 下痢 >100 診断と衛生措置 管理獣医師の診断 伝染病の疑い 有、 なし 伝染病でない場合の管理獣医師の指示 検査依頼 検査材料 要、不要 薬剤投与 指示書番号 薬剤名: 出荷禁止期間: 管理獣医師名 (自筆) 衛生措置 指示に基づく措置の実施経過 自主的判断に基づく措置の実施経過 月 日(発見時):生菌用混合物投与 管理獣医師名 年 月 日 時 記帳責任: ○山×夫 ⅠB/21(ページ)
抗菌性飼料添加物を均一に混和する方法 悪い例 良い例 プレミックス 添加 混和 悪い例 配合飼料 少量のプレミックスをいきなり大量の飼料に添加すると、部分的に高濃度の付着が起こり、以後の混和によっても均一な濃度が得られない。すなわち、高濃度付着部分を食べた鶏で残留問題が発生する。容量に応じた飼料攪拌器を使って、下記のような階段希釈を実施することが重要である。 プレミックス 配合飼料 添加 混和 添加 良い例 混和 添加 混和 抗菌性飼料添加物を均一に混和する方法
育雛場 ワクチン接種計画と記録 一般生産農場における 追加免疫 ニューカッスル病(ND) 伝染性気管支炎(IB) 鶏痘(FP) 伝染性コリーザ(IC) 伝染性ファブリキウス嚢病(IBD) 鶏脳脊髄炎(AE) マレック病(MD) 採卵鶏のワクチン接種に関するGAP基準(例) 1.赤枠の7種については育雛場での接種を確認する 2.青文字の2種については業界と学会で検討する 伝染性咽喉頭気管炎(ILT) マイコプラズマ感染症(MG) 産卵低下症候群(EDS) トリニューモウイルス感染症(APV) トリレオウイルス(ARV) サルモネラ・エンテリティディス感染症(SE) 3.青丸の追加免疫については業界と学会で検討する 4.それ以外については、地域的流行情況を踏まえて検討する 産卵低下症候群(EDS) サルモネラ・エンテリティディス感染症(SE) ワクチン接種計画と記録 「総合ワクチネーションプログラム(鶏病研究会報、1999)」を参照のこと
養鶏業に獣医療がもっと貢献するために! ● 悪性伝染病の脅威は国際流通の進展によって強まっており、「家畜伝染病予防法」に基づく防疫体制の維持・強化が必要である。 ● 食の安全に関する農場段階の取組みに関する法整備を急ぐ必要がある。 家畜保健衛生所の獣医師は、法律に基づいてしか動けない。伝染病以外の食の安全について獣医師に協力を求める事項を養鶏業界は積極的に提言しよう! ● 農業共済制度の中で働く獣医師は、診療報酬の枠内でしか活動できない。食の安全や予防衛生指導について活動できるシステムに共済制度を改善する必要がある。 ● これらは、食の安全に関しての責任分担を明確化し、一般生産農家が背負い込んでいる責任を、家畜保健衛生所や農業共済の獣医師に転化するためのものである。
Ⅵ 清掃、機材(洗浄、消毒) 清掃、機材(洗浄、消毒) 鶏舎 鶏舎(A1) 清掃、機材(洗浄、消毒) ・・・・・・・ 鶏舎(B3) 清掃、機材(洗浄、消毒) 清掃、機材(洗浄、消毒) Preharvest HACCP in the Table Egg Industry: Hazard Analysis Critical Control Point System for Enhancing Food Safety. Pennsylvania State University 1997
洗浄・消毒の後は、環境サンプルを培養検査する Pennsylvania State University 1997 引きずり法(ドラッグ法): 滅菌ガーゼを付けたヒモを引きずって、鶏舎の床を所定距離移動し、それを培養する。 Preharvest HACCP in the Table Egg Industry: Hazard Analysis Critical Control Point System for Enhancing Food Safety. Pennsylvania State University 1997 堆積した鶏糞についても、同様の方法で定期的に採材し、培養検索する。
Ⅸ 環境 敷地衛生(A) 道路、塀、車両消毒 建物(B) 破損 衛生動物(C) ネズミ、野生動物、野良、害虫 廃棄物(D) 鶏糞、死体 衛生動物 ネズミ 鶏舎にはネズミの餌が豊富にあり、隠れる場所も無数にあります。サルモネラ等の病原菌を運ぶネズミを制御することは容易ではありません。米国では、専門の駆除業者の登録と駆除証明を要求しています。
Pennsylvania State University 1997 ネズミの数をモニターするためのトラップ ネズミの糞には23万個のSEがいる 捕獲されたネズミの数 ネズミ指数 Preharvest HACCP in the Table Egg Industry: Hazard Analysis Critical Control Point System for Enhancing Food Safety. Pennsylvania State University 1997
車両の消毒や鶏舎入り口での履替えと消毒は、ほとんどの農場で実施されていることであり、GAP基準は消毒液の交換・補充情況を確認することで足りる。
農場内日常点検票例(Ⅵ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ) XIA 関連する大項目 大項目+中項目 農場内日常点検票例(Ⅵ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ) XIA 点検項目 確認 異常事項:所見、対応 詳細頁 ⅨA 車両消毒設備が適切である × 消毒剤液量不足、追加 ⅨA 作業動線が汚れていない 水溜りがあり、補修を指示 ⅨA/3 ⅨB 建物外周に異常がない 床下通気口の網破損(B1) ⅥB/1 ⅨC 野生動物、野良の侵入がない 野良猫2頭、場外に出した ⅨD 衛生害虫の発生がない 蚊、ハエ ⅦA ローラーコンベア外周に異常がない ○ ・・・・・・・・・・・・・ 小項目番号 2005年 1月 1日 10 時 記帳責任: ○山×夫 XI A -1/ 13(ページ)
農場経営者 農場経営者 GAPに関わる農場組織図 生産管理統括者 生産管理統括者 衛生管理統括者 衛生管理統括者 事務 事務 管理獣医師 鶏群管理責任者 鶏群管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー 飼料管理責任者 飼料管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー 鶏卵処理責任者 鶏卵処理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー 薬物管理責任者 薬物管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー 施設管理責任者 施設管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー 廃棄物処理責任者 廃棄物処理責任者 ・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー 従業員教育・訓練責任者 従業員教育・訓練責任者 ・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー GAPに関わる農場組織図
基調講演 「農場から食卓までの食の安全システムとは」 地域における取組み 地域における取組み=民間の自主的取組 基調講演 「農場から食卓までの食の安全システムとは」 鹿児島大学教授 岡本嘉六 生産者 食肉センター 食品工場 家畜保健衛生所 食肉衛生検査所 輸送・流通業 報道機関 保健所 小売業・飲食店 安全性の 正しい知識 第三者認証機関 消費者 安全性の評価・格付け フードチェーンの全段階で、安全性向上の責任を公平に負担する社会システム
● 日本における食中毒の発生状況 < 総合対策の基本 > パート1 ● 日本における食中毒の発生状況 < 総合対策の基本 > ● 健康弱者(70歳以上の高齢者、14歳以下の若齢者、病弱者)に対する特別措置 食品衛生法に規定を追加する ● 安全性レベルの選択による自己防衛 安全性レベルの認証・表示(HACCP) ● 安全性に関する正しい知識の普及 自然毒の脅威についての啓蒙
食中毒患者数の推移 患者数(細菌) 患者数 40,000 (自然毒) 35,000 (化学物質) 細菌 100 200 300 400 100 200 300 400 500 600 30,000 25,000 自然毒 20,000 15,000 化学物質 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 食中毒患者数の推移
原因物質別にみた食中毒による死者数の推移 ● 化学物質による死亡者はいない ● 患者数では細菌の100分の1であった自然毒だが、死亡数は細菌とほぼ同等。自然毒は 致命率が高い! 20 18 16 14 年間死亡数 12 :総数 :細菌 10 :自然毒 8 6 4 2 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 原因物質別にみた食中毒による死者数の推移
食中毒患者数および死者数の年齢別割合 死者数 人口 患者数 20 40 60 80 100% 15歳 50歳 70歳 :0~4 :5~9 20 40 60 80 100% 食中毒患者数および死者数の年齢別割合 :0~4 :5~9 :10~14 :15~19 :20~29 :30~39 :40~49 :50~59 :60~69 :70~
年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数 累積死亡者数 年齢 (1996~2002) 4 2 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 累積死亡者数 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 ハイリスク者への特別対策 12 :動物性自然毒 :植物性自然毒 :大腸菌 :サルモネラ :ぶどう球菌 :腸炎ビブリオ 10 衛生教育 8 6 4 2 30~39 40~49 50~59 60~69 70~ 年齢 年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数 (1996~2002)
自然毒の脅威との戦いが人類史の一側面 文化(Culture;耕す) ボツリヌス毒 破傷風毒 ジフテリア毒 パリトキシン テトロドトキシン 50%致死量 μg/kg mouse 産生・保有 ボツリヌス毒 破傷風毒 ジフテリア毒 パリトキシン テトロドトキシン サキシトキシン 0.00003 0.0001 0.3 0.6 8.7 10 細菌 イソギンチャク類 フグ、ヒョウモンダコ 二枚貝 ボツリヌス毒 文化(Culture;耕す) 人間が改良を加えてきた物心両面の成果、とくに西洋では精神的生活に関わるものを「文化」とし、「文明」と区別する。危害を取り除いて<安全に食べる>ことが文化であり、「ナチュラル=非文化」は危険です。 青酸カリ 10,000 ギンナン中毒: 国内で過去約80人の患者が学会報告され、うち約30人が死亡 ボツリヌス毒の1億倍食べないと死なない 青酸配糖体:アミグダリン(ウメ、アンズ、モモ)、ドーリン(イネ科) ファゼオルナチン(アオイマメ)、リナマリン(キャサバ) 青酸配糖体を含む生薬: キョウニン(杏仁)、トウニン、ショウキョウ
米国の食品規格コード(Food Code ) 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である 1-201 用語の定義と適用範囲 (44)高感受性集団(Highly susceptible population)とは、次の理由で、一般集団の人より食品媒介性疾患に罹りやすい人をいう。 (i) 免疫低下者、就学前児童、老人 (ii) デイケア施設、腎臓透析センター、病院または療養所、看護付老人ホームなどの健康管理または補助生活を受けている人。 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である
カンピロバクター、セレウス菌、エルシニア、 薬剤耐性菌(MRSA、VRE)、カビ性肺炎 体力(免疫等) 毒素の強さ 菌の強さ(感染力、毒力等) 伝染病菌:数個で発病・死亡 一般健康成人 (15~69歳) コレラ菌 赤痢、腸チフス ボツリヌス菌 コレラ菌 妊婦、 学童、 病弱者、 糖尿病前期 食中毒菌:100万個以下で起きる 赤痢菌 ベロ毒素 腸管出血性大腸菌 O157、 ベロ毒素を産生するその他の大腸菌 食中毒菌:100万個以上で起きる 乳幼児、 70歳以上、 糖尿病中期 黄色ブドウ球菌 ウエルシュ菌 ETEC サルモネラ、腸炎ビブリオ、 カンピロバクター、セレウス菌、エルシニア、 大腸菌(EPEC、EIEC、ETEC) 感染すると2~3日で全身の皮膚が水泡と出血で覆われて死亡する。余りにも経過が早く、異様なので、「人食いバクテリア」と呼ばれている。 免疫低下者 (移植、HIV、癌) 糖尿病末期 腎透析患者 日和見菌:免疫低下者だけで起きる 薬剤耐性菌(MRSA、VRE)、カビ性肺炎 特殊菌:肝硬変患者だけで起きる 肝硬変 ビブリオ・バルニフィカス 食品媒介性感染症と体力:あなたはどのレベル? 体力が下がるほど、多種類の病原菌と、生死をかけて、戦わねばならない!
リスク管理と経費負担のモデル 衛生教育に掛かる費用 低 リスク・レベル 高 商品価格 衛生検査と監視に使われる税金 個人衛生 自主衛生管理 低 リスク・レベル 高 衛生教育に掛かる費用 自主衛生管理 商品価格 HACCP等の費用 法的規制 衛生検査と監視に使われる税金 一般健康成人 ハイリスク集団 リスク管理と経費負担のモデル
? 法的規制 リスク管理と経費負担のモデル 衛生教育に掛かる費用 低 リスク・レベル 高 商品価格 国民経済として 無駄な経費 個人衛生 低 リスク・レベル 高 衛生教育に掛かる費用 法的規制の水準を上げると、その分、衛生対策費と監視業務の経費を税金で賄わねばならない。赤字国債が問題となっている現状で、実行できますか? 法的規制 自主衛生管理 商品価格 HACCP等の費用 国民経済として 無駄な経費 ? 法的規制 衛生検査と監視に使われる税金 一般健康成人 ハイリスク集団 リスク管理と経費負担のモデル
パート2 ● 食品の安全性とは? あらゆる食品について、「ゼロリスク」はあり得ない! ● リスクレベルの決定=リスク・コミュニケーション ● 食品の安全性とは? あらゆる食品について、「ゼロリスク」はあり得ない! 「食品の品質と安全性システム」 FAO: Food Quality and Safety Systems - A Training Manual on Food Hygiene and the Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) System. 1998 「危害を減らすこととリスクを減らすことの関係を理解することは、適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要である。 不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえない(その他の何についても言えることだが)。」 ● リスクレベルの決定=リスク・コミュニケーション リスク低減には費用が掛かり、国民負担との兼ね合いである。
危ない食品とそうでない食品があるのではない! 閾値がない 化学物質 (発癌物質、 環境ホルモン) ▲ 栄養素 閾値がある 化学物質 健康への悪影響 生活習慣病 ● 普段食べている魚と野菜から、 胃袋で強力な発癌物質 ニトロソアミンが作られる! ● 栄養失調 危ない食品とそうでない食品があるのではない! NOAEL 無有害作用濃度 LOAEL 最小有害作用濃度 用量(摂取量) 世界保健機構 化学物質の用量・反応関係 化学物質の用量・反応関係 WHO: Hazardous chemicals in human and environmental health - A resource book for school, college and university students. 2000
食肉センターにおけるサルモネラ汚染: 米国の基準 陽性サンプル数の上限 サンプル数 陽性率 子牛 肉牛 挽肉 豚 豚ソーセージ ブロイラー 1.0 2.7 7.5 10.9 NA 23.6 82 58 53 55 NA 51 1 2 5 6 NA 12 NA :基準策定のため調査中であり、将来設定する。 食鳥センターの基準は別の法律であるが、ここでは併記した。 これは、食肉センターにHACCPを適用する法律を作成するための事前調査に基づいて策定された基準である。
大規模施設における豚と体のサルモネラ陽性率 11%( 55頭中6頭)の基準を定める根拠となった1998-1999の調査 陽性率(%) 施設数 割合(%) 規制によって廃棄する割合が高くなれば、価格が高騰するだけでなく、絶対量が不足する可能性がある。 安全性に絶対(100%)はあり得ない。「どの程度の安全性をどの程度の価格で」が問題なのである。 0.0 – 5.0 5.1 – 8.7 8.8 – 11 11.1 – 15 15.1 – 20 45.0 – 50 全体 12 3 1 17 71 18 6 100 11%( 55頭中6頭)の基準を定める根拠となった1998-1999の調査
羽数別サルモネラ陽性率からみた施設の割合 「ゼロ汚染」がタテマエの日本では、データに基づくリスク・コミュニケーションができない 1998年 羽数別陽性率 施設数 構成割合(%) 累積割合(%) 0-5% 5.1-10 10.4-15 15.1-20 20.1-23.6 23.7-30 35-40 45-50 計 27 20 10 8 4 5 1 76 35.5 26.3 13.2 10.5 5.3 6.6 1.3 100.0 35.5 61.8 75.0 85.5 90.8 97.4 98.7 100.0 「ゼロ汚染」がタテマエの日本では、データに基づくリスク・コミュニケーションができない Progress Report on Salmonella Testing og Raw Meat and Poultry Products(FSIS 1999/10)
● 食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされている。 パート3 ● 食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされている。 ● 衛生対策の強化には、モノも労働も必要です。その経費を公正に負担する社会システムを皆で考え、作り上げよう。
食肉の安全性に関わる社会システム(1) リスクが減るのは2箇所だけ リスク・レベルのモデル 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 調理時の加熱は細菌を殺滅する。 しかし、食材や料理を室温での放置すれば、菌は増殖する。 輸送距離が延びるにつれ、細菌増殖に必要な時間も長くなる。 温度管理等の法的基準もない。 病気 動物薬残留 食中毒菌 薬剤耐性菌 と畜検査員による法律に基づく検査 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(1)
? ? 食肉の安全性に関わる社会システム(2) リスク・レベルのモデル GAP QAP HACCP リスクは 残る! 農場 食肉センター 農場における 適正な衛生管理 病原体低減/HACCP Pathogen Reduction / HACCP 無菌の肉ができる訳ではない! リスク・レベルのモデル 解体処理工程など 食肉センターの 衛生管理 GAP QAP 消費者は ? ? HACCP リスクは 残る! 流通過程が 変わらなければ 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(2)
? ? 食肉の安全性に関わる社会システム(3) 食品輸送衛生法 (米国、1990) Sanitary Food Transportation Act GHP: Good Handling Practice 流通業における適正取り扱い規範 リスク・レベルのモデル GAP QAP 消費者 教育 流通過程の 衛生基準 ? ? HACCP 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実施することによって、初めてリスクが小さくなる。 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(3)
リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(残留農薬) 食品による健康障害の現状 農薬B~X 食品Ⅱ~X 農薬A 食品Ⅰ リスク・アナリシス リスクの低減目標 第三者による監視(モニタリング) リスクレベル 現状 改善後 生産段階 加工段階 流通段階 消費段階 処理段階 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 費用の発生 リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(残留農薬)
リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(細菌) 食品による健康障害の現状 食品Ⅱ~X 危害因子A 食品Ⅰ リスク・アナリシス リスクの低減目標 危害因子B~X 第三者による監視(モニタリング) リスクレベル 現状 改善後 生産段階 加工段階 流通段階 消費段階 処理段階 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 フードチェーンにおける温度などの衛生管理が悪いと細菌が増殖し、発症菌数を超える場合がある。途中でリスクが増加しない化学物質と比べて、細菌のリスク管理にはより多くの経費が掛かる。 リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(細菌)
HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準 全国的に統一された 適性農業基準(GAP) 農畜水産物の安全性向上のための社会システム ○○地域における 適性農業基準(GAP) ●●地域における 適性農業基準(GAP) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準 ○○県食品安全推進会議 ●●県食品安全推進会議 全国的に統一された 適性農業基準(GAP) 生産者、消費者、流通業者ならびに専門家が参加する 全国食品安全推進会議 品質保証計画(QAP) 第三者としての民間の認定機関・試験機関
(GAP;Good Agricultural Practice) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準例 適性農業基準とは (GAP;Good Agricultural Practice) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準例 チェックリスト 評価点 衛生管理コスト 認証マーク 非参加農場 50点未満 50点以上 60点以上 70点以上 80点以上 90点以上 無印 ★ ☆ ☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 適正価格で 自分に見合った 安全性を購入できる 市場価格 10%上乗せ 20%上乗せ 30%上乗せ 40%上乗せ 50%上乗せ
「BSE問題に関する調査検討委員会報告」 (2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会) 「食育基本法」 本年7月15日から施行 ・・・国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。・・・ 「BSE問題に関する調査検討委員会報告」 (2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会) 5)重要な個別の課題 ④ 食に関する教育いわゆる「食育」の必要性 今日の食品の安全性をめぐる事態に照らし、学校教育における食品の安全性や公衆衛生及びリスク分析などに係わる基礎的知識の習得・教育を強化する必要がある。農業や食品産業など、フードチェーン全般にわたる基礎的な知識および栄養や健康に関する教育も充実させる必要がある。 食品に、ゼロ・リスクはあり得ないこと、情報をもとに一人一人が選択していく能力を身に付けていくことの大切さの認識の普及が必要である。
農場から食卓までの食の安全システム: 農場から食卓までの食の安全システムとは 市民公開フォーラム 地域における取組み 地域における取組み 農場から食卓までの食の安全システムとは 鹿児島大学教授 岡本嘉六 食品は動物や植物などの生き物であり、「命をいただく」感謝の気持ちを忘れてはならない。 命を粗末にする一方で「安心」を求めても、神仏は応えないだろう。