現代の金融入門 第7章3節「金融危機後の規制監督」 (p.245-p.256)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
資本市場論 (9) 債券投資分析 - 金利の期間構造 - 三隅隆司 1. 短期金利と長期金利の関係 1990 年 12 月 1994 年 6 月 1992 年 4 月 1993 年 2 月 1996 年 6 月 1999 年 1 月 1994 年 1 月 日本銀行 HP のデータより作成 2 はじめに.
Advertisements

有形固定資産の取得原価 有形固定資産は、取得原価から原価売却累計額を 控除した金額で、バランスシートに計上。 取得原価は、取得の方法に応じて決定。 (購入 自家建設 現物出資 交換) 第8章 第2節第2節.
第8章 貯蓄,投資と金融システ ム 1.アメリカ経済における金融機関と市場 ( ↑ 日本経済でもほぼ同じ) 金融システムは、ある人の貯蓄と別の人の投資 を結びつける。投資の例として、 起業のための設備投資 住宅を購入する 金融システムは、金融市場と金融仲介機関の2 つのカテゴリーに分けられる 1 8.
経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
1 (第 14 週) 第5章 間接金融の仕組 み § 1 銀行の金融仲介機能 ( p.91 ~ 98 ) ① 仲介機能 ② 情報生産機能 ③ 資産転換(変換)機能 ④ 銀行貸付けにおける担保の役割 § 2 貸付債権の証券化とサブプライム問題 ( p.99 ~ 104 ) § 3 銀行以外の金融仲介機関.
金利、金融政策及び資金循環 金利の概念 金利体系 日本銀行の政策手段 資金循環. 金利の概念 金利とは:資金の貸借取引における資 金の価格である。 金利の機能:資金の配分や景気の調整。
資産運用の考え方 08bc172k 村杉な つみ. ポートフォリオのリスクと管 理 ポートフォリオ:個人や企業が保有する トータル の資産。中身は株式、 債券 投資信託、外貨金、 外国株式 など様々なもので 組み立てられている。 分散投資によって.
QE 出口戦略 利上げ先行型. 前提 主張 1 超過準備対策として利上げは有効である 主張 主張 1 超過準備対策として利上げは有効である 主張 2 保有資産の売却は経済に悪影響を与える 主張 3 利上げは経済の安定に寄与する 以上三点により、 QE 出口戦略利上げ先行 型を主張します.
08BC172K 村杉 なつみ. 銀行への公的資本注入額 預金保険機構が主たる担い手と なって公的資金が注入された。 公的資金の使用途 ①破綻した金融機関 18兆6162億円 ②金融機関からの資産の 買取 9兆6483億円 ③破綻前金融機関への 資本注入 12兆3869億円 ④その他 6兆1539億円.
増資インサイダー問 題 2012/06/22 加島 小泉 林. 増資インサイダーとは 企業の公募増資等のインサイダー情報を 入手したヘッジファンド等が 空売りを用いて利益を得ること 公募増資の 情報を得る 買い戻し 公募増資発表 &空売りで 株価下落 空売りを 行う 利益 を 得 る!
第 6 章 金融政策と金融規制・ 金融監視政策の関係 07 BA 035 W 板津昌宏. 多くの中央銀行の金融政策の目的は 中央銀行はどの様な金融政策を行うべきか? 物価の安定を通じた経済の安定物価と雇用の安定 資産価格の安定を目的に掲げる国はな い.
金融危機の経済学 ~第3章~ 2007 年のサブプライム・パニッ ク 07 bc 101y 3年 椎野裕希.
経営の科学 第 6 回 社会工学域 竹原 浩太. 今後の予定 10/22 企業金融とは何か(今回) 10/29 企業の資金調達の多様化 11/5 企業の最適資本構成 11/12 信用リスク 11/19 期末試験.
第5章 活性化する国際分散投資 と 日本経済の影響. ネットとグロスの違い 資本移動の場合 日本 外国 100 億円 50 億円 ネットの資本移動 100-50=50億 円の黒字 グロスの資本移動 100+50= 150 億 円.
◇業界研究レポート 金融業界 SIGNAL.
第1章 金融の基本的要素 Q.4~Q /5/6 棚倉 彩香.
世界ソブリンバブル衝撃のシナリオ 第8章国債バブル崩壊のシナリオ
証券会社 08年度決算とビジネスモデル                08BA231C 松江沙織.
21世紀のアメリカ経済 藤女子大学人間生活学部 内田 博
証券化とデリバティブ 会計ファイナンス学科 08BC41B 尾崎 敦史.
現代の金融入門 第6章 3.証券化の光と影 2010年5月21日 08BC101 Z 高橋幸弓.
労働市場マクロ班.
金融危機後の規制について ~時価会計、ディスクロージャー~
市場経済 金融市場メリット 需要と供給 2つの金融 経済循環 証券取引所・証券会社 資本主義経済 銀行
(第7週)第2章(3) 前回のおさらいとキーワード: ■ システミック・リスク ■ セーフティー・ネット ・ 競争制限的規制
空売り規制について 09BD135D  柿沼健太郎.
金融法人分析 九州大学ビジネススクール 村藤 功 2014年10月22日.
藤女子大学人間生活学部 内田博 現代資本主義分析
マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間
第3章 実態経済に大きな影響を及ぼす金融面の動向
金融市場ミクロ班.
現代の金融入門   -第1章 金融取引- 08BA210Y  一二三 春菜.
現代の金融入門 第5章 3節 企業統治の変質と再生
マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間
量的質的金融緩和は 日本にとってプラスか? 否定派.
『手に取るように金融がわかる本』 p.202~p.223 part1~5
これだけでわかる日本の金融(6章9~16節) 08ba036z 入江 洋志.
日本のバブルと米国の サブプライムバブルとの比較
08ba036z  入江 洋志 現代の金融入門 第五章 1~2節.
2010年6月25日 09BA390L 山村美帆 金融の規制強化・制度改革 ~アメリカ~.
日本における ベイルイン導入の是非 〜否定派〜
第5章 発展する金融市場と 新しい金融商品(前半)
貯蓄税導入の是非 ~否定派~ 松村・田邉・川村・藤山.
第8回講義 文、法 経済学 白井義昌.
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
第7章 どのように為替レートを 安定化させるのか
金 融 統 計 金融市場の基本概念 金融統計の体系 マネーサプライ統計 金利統計 資金循環分析 証券投資分析.
世界景気動向に注目 ~金融危機から世界同時不況へ~ 班員 新井 翔平 石川 雅祥 江淵 達郎 岡 雄介 南里 留実.
EU統一金融監督機関設立の是非 肯定派 神野 光祐 工藤 祐之介 長谷川 雄紀 山下 真弘.
日本にとって、どちらが望ましいか ~確定給付年金 VS 確定拠出年金~ 確定拠出年金派
金融の基本Q&A50 Q41~Q43 11ba113x 藤山 遥香.
開発金融論 第3章 銀行型システムか市場型システムか
銀行向け 公的資本注入 08BA154K 高橋 和真.
金融の基本Q&A -Q21~Q24-  小瀬村愛子.
株式と投資信託の双方の特性を兼ね備えた商品
最近の中国と通貨に関する動向 08ba231c 松江沙織.
財務諸表とは テキスト第3章 田宮治雄.
世界金融危機とアジアの通貨・金融協力 日本国際経済学会関東支部研究会2010年1月9日.
バブルの発生と崩壊 2年9組495番 2309495       矢吹太一郎.
バブルの発生と崩壊 4年9組495番 2309495       矢吹太一郎.
デフレ・スパイラル 2009年以降の事例から 長谷川 正
中野報告 「事業再生と中小企業金融の課題」 へのコメント
サブプライム問題と 世界の金融危機 演習1 水津 安井 小川.
金融政策と貸出金利 講義⑮ 目次 設備投資の変化要因 「市場金利」って何?!?! 借入金利とリスクプレミアム 市場金利と短期金利
第5章 貨幣と金融市場.
財務サイクルと情報フロー                田宮治雄.
「今後証券化が証券市場を 発展させていくかの是非」
岩本 康志 2013年5月25日 日本金融学会 中央銀行パネル
第7章  銀行システムの役割.
2009年7月 為替相場講演会資料 株式会社三菱東京UFJ銀行/東アジア金融市場部
Presentation transcript:

現代の金融入門 第7章3節「金融危機後の規制監督」 (p.245-p.256) 08ba231c 松江沙織

銀行の自己資本充実度とリスク管理体制に対する公的当局による監督 1項 : 政府の失敗 現代における望ましいプルーデンス効果  公的当局による監視活動   ⇒銀行の経営状態とガバナンス体制の監視 異常なし⇒全面的に行動の自由を認める 異常あり⇒直ちにしかるべき是正措置をとる 銀行の自己資本充実度とリスク管理体制に対する公的当局による監督 今回の金融危機により プルーデンス政策のあり方に 欠陥があることが分かった 信用秩序の維持 と 預金者の保護 事後的な対応の面での早期是正措置

1項 : 政府の失敗 システム危機 従来 今回 つまり米国の金融規制監督体制に欠陥があった 銀行間の債権債務関係の存在を通じて危機が伝播 本来、プルーデンス政策を適切に実施していれば防止可能 銀行間の債権債務関係の存在を通じて危機が伝播 ↓ 1つの銀行の支払い不能が取り付けを誘発 従来 ヘッジファンドや投資専門会社は..   資金調達において高いレバレッジをかけていた 負債の満期限が運用対象に比べて短期であった 不安に駆られた資金提供者が一斉に解約を求めたり借  り換えに応じなくなったりした 今回 つまり米国の金融規制監督体制に欠陥があった

【非伝統的金融とは】 1項 : 政府の失敗 非伝統的金融に対する規制監督の不備 影の銀行システムとよばれるゾーン   影の銀行システムとよばれるゾーン 1,相対取引のため、不透明な取引が行われている 2,会計の連結決算の対象外のため、母体の業績には反映しない 3,投資ビークル、ヘッジファンドは非公開で資本規制などの 規制がなく、金融当局の監視もない

1項 : 政府の失敗 非伝統的金融に対する規制監督の不備 1994. 米商品先物取引委員会(CFTC) OTCデリバティブに対する規制を提案 財務省、FRB、SECの反対 今回の米国での金融危機の発生は 政府の政策対応の失敗によるものが大きい 規制監督上の無作為が放置されてきた 2004. 米証券取引委員会(SEC)     大手投資銀行に対し自己資本比率規制緩和     ⇒高レバレッジの認可 2004-2007. サブプライム・ローン急増     劣悪な融資基準、不透明な取引横行の看過

2項 : 市場型システミック・リスク 市場型システミック・リスクとは  金融機能の分解が進行し、市場型間接金融が発達し たことからシステム危機に至るメカニズムが変容し、 予期しないほどのマーケット・インパクト、市場流動 性の蒸発が起こること。  特定の(あるいは特定の種類の)資産市場で価格が 急落し、これが市場流動性の低下に繋がることから発 生する。

2項 : 市場型システミック・リスク 通常 資産価格下落 トレーダーによる買い 価格回復 しかし 資産価格急落 トレーダー介入せず 市場流動性=取引の実行のしやすさ   ⇒最終的な売り手と買い手、トレーダー、マー      ケット・メーカーによって確保できる ネガティブ・フィードバック 通常 資産価格下落 トレーダーによる買い 価格回復 ポジティブ・フィードバック しかし 資産価格急落 トレーダー介入せず 下落の一方 トレーダーが損失を被っているとリスクをとれない!

2項 : 市場型システミック・リスク トレーダーの活動停止による市場流動性の低下 悪循環に陥り、売りが売りを呼ぶ さらなる資産価格の下落 その市場でファンディングを行う主体の資産流動性低下 悪循環に陥り、売りが売りを呼ぶ さらなる資産価格の下落 他の資産価格に伝播 広範な資産市場における 突然の流動性の枯渇

市場型システミック・リスクに対し、従来からのプルーデンス政策の第一の柱である自己資本利率規制は有効! 3項 : 規制監督体制の見直し 今回の金融危機を経て、規制監督体制などの枠組み を見直す動きが見られる 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 規制監督体制 市場型システミック・リスクに対し、従来からのプルーデンス政策の第一の柱である自己資本利率規制は有効! ⇒市場型システミック・リスクはトレーダーなどが    レバレッジをかけるほどより発生しやすくなると  考えられる   資産価格の下落がトレーダーの自己資本を毀損する度合いが大きくなる 外部からの資金調達の必要性が大きくなり、「市場流動性低下→資金流動性低下→一層の市場流動性低下→…」といった悪循環に陥りやすくなる

CoreTier1がどれだけあるかを重視する考え 3項 : 規制監督体制の見直し 劣後債は本来、Tier1(自己資本の中核的自己資本)を構成する資本である。 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 規制監督体制 返済や配当支払の義務がある(負債的性格)ため しかし 危機時のバッファーになりにくい。 CoreTier1は、劣後債や優先株などを控除した自己資本である。 普通株と利益剰余金で構成される。 CoreTier1がどれだけあるかを重視する考え

すべて自己資本比率規制にあるわけではないが、対策が講じられるべきである 3項 : 規制監督体制の見直し 景気後退期 BIS規制 貸倒れ損失増大 プロシクリカリティの原因が すべて自己資本比率規制にあるわけではないが、対策が講じられるべきである 自己資本毀損 貸出抑制 景気悪化 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 規制監督体制 景気拡大期 たとえば 景気拡大期にバッファーとして追加的な資本の積み上げを求め、 景気後退期にその取り崩しを認めるような自己資本比率規制の枠組みを設ける 資産価格上昇 積極的な貸出し 景気過熱 自己資本増大

市場価格はファンダメンタル価格を反映していないのでそうした時価での評価は適切ではない 3項 : 規制監督体制の見直し 時価会計 資産の下落に応じて損失を計上しなければならない 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 規制監督体制 損失を穴埋めするために保有資産を売却 しかし システミック・リスク的な状況下で 市場価格はファンダメンタル価格を反映していないのでそうした時価での評価は適切ではない

3項 : 規制監督体制の見直し 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 個々の金融機関の経営の健全性の 監督(ミクロ・プルーデンス政策)では不十分 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 規制監督体制 システム全体の安全性に 配慮すること(マクロ・プルーデンス政策)の必要性 米国では   システミック・リスク規制当局の創設が提案されている

論点 OTCデリバティブ取引規制の 望ましいあり方について