1~3ヶ月齢子馬の難治性化膿性肺炎潰瘍性腸炎および付属リンパ節炎 ロドコッカス・エクイ感染症 1~3ヶ月齢子馬の難治性化膿性肺炎潰瘍性腸炎および付属リンパ節炎
ロドコッカス・エクイ感染症 本病は世界中の馬生産地で発生が報告され、子馬に病原性を示す強毒株は、飼育環境土壌中に広く分布する。 発生地域に生まれた子馬(主として生後1ヶ月以内)は、毎年春から初夏にかけて、土壌中の強毒株に暴露されて経気道感染する。 感染子馬は嚥下した気道分泌液中の強毒株が腸管内で増殖し、糞便中に多量の強毒株を排出して、飼育環境を汚染する。 散発的に発生する牧場が多いが、汚染が進むと地方病的に発生する。
原因菌 血液寒天培地で培養したR.equi コロニー。 隣接したコロニーは融合しやすい。 Rhodococcus equi が原因菌で、自然界に広く分布する無芽胞のグラム陽性桿菌で、球菌~短桿菌(1μm×~5μm)の多形性を示し、しばしば弱い抗酸性を示す。 Actinomyces, Arcanobacterium, Nocardia属と一緒に放線菌群と呼ばれていた。 本菌は硫化水素を産生せず、炭素源としてクエン酸を利用せず、粘液酸を発酵しないなどの生化学的特徴を示す。
ロドコッカス・エクイ感染症の症状 多くの症例では30~50日齢時に38.5~40.0℃の発熱を示し、漸次、鼻漏・発咳などの呼吸器症状を呈する。 聴診では肺胞音の異常(乾性の粗励)や明瞭な気道音が聴取され、重症例では挙動不安、あるいは運動を嫌うようになり、横臥姿勢をとることが多くなる。 腹腔内膿瘍を形成したものでは削痩、関節炎・骨髄炎では跛行を示す。 臨床症状をほとんど現さずに病勢が進行し、呼吸困難になった状態(鼻翼の拡張や腹式呼吸)で発見され、数日で死亡する場合もある。 発見・診断が遅れた症例では致死率が高い。 ロドコッカス感染症の関節炎
ロドコッカス・エクイ感染症の病変 肺の多発性膿瘍形成 化膿性気管支肺炎で、急性例では赤色肝変化巣に微小膿瘍を認め、慢性例では小豆大から鶏卵大の様々な多発性膿瘍を形成する。 二次病巣として前腸間膜リンパ節、腸付属リンパ節、小腸パイエル氏板の化膿由来の膿瘍を形成する。 これらの膿瘍は直径数10 cmに及ぶ腹腔膿瘍を形成することがある。 敗血症に伴い四肢・脊椎の関節炎や骨髄炎として病変が残ることがある。
ロドコッカス・エクイ感染症と株の毒力レベル Rhodococcus equiの強毒株は子馬の化膿性肺炎から分離される。 中等度毒力株は豚の下顎リンパ節からのみ分離されるが、豚における病原性はよくわかっていない。 無毒株は家畜の飼育環境以外にも広く土壌に生息し、馬と豚以外の動物では日和見感染症を起こすことがある。 強毒株は肺胞マクロファージ内での殺菌に抵抗性を示し増殖する細胞内寄生菌である。
ロドコッカス・エクイ感染症の診断法 病巣からの菌分離が確定診断となる。 呼吸器型では気管洗浄液を分離材料とする。 CAMP試験。 縦に Corynebacterium pseudotuberculosis。 直角の線状は R. equi の2つの分離株 病巣からの菌分離が確定診断となる。 呼吸器型では気管洗浄液を分離材料とする。 汚染された臓器、糞便、土壌からの菌分離にはNANAT選択分離培地を用いる。 発熱や呼吸器症状が認められた3ヶ月齢以内の子馬では、ELISAによる血清抗体価の測定が感染子馬のスクリ-ニンングに有効である。
ロドコッカス・エクイ感染症の予防・治療 海外では免疫血清が市販され、生後数日の子馬に投与されて、生後数日の子馬に投与し、効果を上げている。 毎日の検温や定期的な血液検査が感染子馬の発見に役立つ。 早期発見・早期診断が重要で、治療を成功させるとともに、感染子馬を早期に隔離して牧場環境を汚染させないことが、感染の拡大防止に役立つ。 わが国ではgenntamicinと他剤との組み合わせが主流となっており、rifampicinやazithromycinを組み合わせて使用すると効果が高い。