タンパク質(Protein) ~基本的なことについて~
タンパク質の機能的分類 種類 作用 例 酵素 生体内反応の触媒 構造タンパク質 結合組織、細胞間などの構成成分 収縮・運動タンパク質 Alcohol dehydrogenase,α-amylase, Hexokinaseなどなど 構造タンパク質 結合組織、細胞間などの構成成分 Collagen,elastin,fibroin,keratin, fibronectin,laminin 収縮・運動タンパク質 筋肉の収縮、細胞の運動に関与 Actin,myosin,troponin,tubulin 防御タンパク質 生体の防御反応に関与 Immunoglobulin,fibrinogen,prothrombin, Interferon,metallothionein 調節タンパク質 代謝調節に関与 Growth hormone,insulin,calmodulin 輸送タンパク質 物質輸送に関与 Lipoprotein,transferrin,hemoglobin 貯蔵タンパク質 栄養 Glutenin,oryzenin,casein,ovalbumin Alcohol dehydrogenase,α-amylase, Hexokinase(解糖系) Collagen(皮膚、軟骨、腱など),elastin(靭帯),fibroin(絹糸),keratin(毛,つめ、皮膚など), fibronectin,laminin(細胞の接着、伸展) Actin,myosin,troponin(筋肉),tubulin(微小管、繊毛) Immunoglobulin(抗原抗体反応),fibrinogen,prothrombin(血液凝固), Interferon(ウイルス感染防御),metallothionein(重金属の解毒) Growth hormone,insulin(ホルモン),calmodulin(カルシウムイオン結合タンパク) Lipoprotein(脂質輸送),transferrin(鉄輸送),hemoglobin(酸素の輸送) Glutenin(小麦),oryzenin(米),casein(乳汁),ovalbumin(卵白)
多数のアミノ酸が枝分かれすることなく、一列にペプチド結合した高分子化合物 タンパク質の定義 多数のアミノ酸が枝分かれすることなく、一列にペプチド結合した高分子化合物 N末端 C末端 ペプチド結合 ペプチド結合 タンパク質の一般的な特徴 約16%の窒素を含みます。 20種のアミノ酸から構成されます。 約80個以上のアミノ酸がペプチド結合しています。 性質は構成アミノ酸の種類と結合順序によります。 種類と結合順序は遺伝子によって決まります。
アミノ酸の構造 R H OH N C C O H H アミノ酸(Amino acids):アミノ酸は上図のような基本構造を持っており、炭素原子を中心にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)が結合しています。生体を構成するタンパク質中には20種類のアミノ酸が存在しますが、それらの違いはRの部分に何が結合しているかの違いです。たとえばグリシンはRの部分に水素原子(H)が結合しています。 シスチンとメチオニンは硫黄(S)を含みます。とくにシスチンの硫黄はタンパク質内でジスルフィド結合(S-S)を形成し、タンパク質の高次構造形成に重要です。
アミノ酸の立体構造 鏡 - - COO COO 不斉炭素 不斉炭素 ※ C ※ C NH3 + + CH3 NH3 CH3 H H L-アラニン D-アラニン グリシン以外のアミノ酸にはRの部分に炭素原子が付いています。これによってアミノ酸にはその立体構造からL型(Levorotatory:左:L-form)とD型(Dextrotatory:右:D-form)の2種類の立体構造が存在します。この2つの構造はちょうどもとの像と鏡に映った鏡像の関係にあり、決して重ね合わせることができません。これを光学異性体といいます。体を構成する蛋白にはL型のみが存在します。
ペプチド結合とは? + + アミノ酸1 アミノ酸2 C R1 OH O H N R2 H OH N C C O H H R1 H R2 H 脱水縮合 強酸や蛋白分解酵素により加水分解 R1 H R2 H OH + H O 2 N C C N C C O H H O H
ペプチド結合の二重結合性 ペプチド結合は共鳴構造をとるので、-CO-NH-結合が二重結合性を帯び、ほぼ平面構造をとる。 - C R1 O N H R2 H ・ R1 H O R2 + C N C C + C N H - O H H R1 左図のーCO-NH-結合は自由回転できないが、-CO-CH-結合及びーNH-CH-結合は回転することができるのでペプチド鎖は様々に折れ曲がる。 O H H N C C C N C H R2 H O
タンパク質中の各種の結合 結合エネルギー タンパク質の立体構造は、ペプチド結合やーS-Sー結合のような共有結合のほかに・・・ 1)水素結合 2)疎水結合 3)静電結合 4)ファンデルワールス力 のような弱い非共有結合により保持されている。 結合エネルギー 共有結合 ・・・・・・・・・・・・・ 水素結合 ・・・・・・・・・・・・・ 疎水結合 ・・・・・・・・・・・・・ 静電結合 ・・・・・・・・・・・・・ ファンデルワールス力 ・・・ 約210~630kJ/mol 約8~30kJ/mol 約16~35kJ/mol 約4~12kJ/mol <4kJ/mol
タンパク質の構造 ・・・・・・・ ・・・・・・・ 一次構造(Primary Structure) 蛋白を構成するアミノ酸の配列およびジスルフィド結合(S-S)の位置の情報をいいます。 ・・・・・・・ ・・・・・・・ G V L I A 二次構造(Secondary Structure) アミノ酸鎖は3D空間で水素結合により規則的な反復配列構造をとります。これを二次構造といいます。二次構造にはα-Helixやβ-Sheetがあります。 α-Helix構造はアミノ酸3、6残基ごとに1回転するらせん構造のことで、タンパク質中には右巻きらせん構造のみが存在します。らせん1回転の高さは5、4Åです。 β-Sheet構造は2~8本の隣接するペプチド鎖間で水素結合が形成されて、ひだのついた布のような構造をとります。隣り合う2本のペプチド鎖の方向が同じものを平行β構造、逆方向のものを逆平行β構造と言います。 共有結合よりもはるかに弱い水素結合や分子間力で保持されているので加熱、PH変化、尿素、有機溶媒、界面活性剤などの添加で容易に構造が変化します。
三次構造(Tertiary Structure) ポリペプチド鎖が折りたたまれてできている立体構造で二次構造(αへリックス、βシート)と不規則構造部分からなる。機能的、構造的にまとまった部分をドメインと呼ぶ。 三次構造の保持力はアミノ酸の側鎖間の相互作用であって、特殊な残基間の水素結合(チロシンとカルボキシル基など)システイン残基間のS-S結合、静電結合、疎水結合などであるが、なかでも疎水結合がもっとも大きく寄与する。有機溶媒や界面活性剤などで処理して疎水結合を切ると三次構造は壊れ、タンパク質は変性する。
四次構造(Quaternary Structure) 複数のポリペプチド鎖が非共有結合で会合し、特定の空間的配置(サブユニット構造)をとる構造をいいます。各ポリペプチド鎖をプロトマーまたはサブユニットと呼び会合体はオリゴマーと呼ぶ。サブユニットの数により二量体、三量体、四量体などと呼ぶ。 サブユニット間の接触部分は多数の疎水結合、水素結合、イオン結合から成る比較的広い領域で、この接触面が互いに相補的であるので結合に方向性を生じ、各サブユニットは特定の空間配置をとることができる。