Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と 制度・施策の全体像の理解 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と 制度・施策の全体像の理解 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解 訪問介護の意義 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
訪問介護の意義 在宅介護の目的と訪問介護の役割の理解 <考えられる役割> 訪問介護の対象は、「心身の障害により、日常生活を営むことが困難な人」であり、人格をもった人間がその対象である。 何のためにという目的は、「日常生活の営みの支援を通して、命を守り、生きる意欲を引き出す」ことになる。 訪問介護は、在宅介護の要と位置付けられ、その中核としての担い手が訪問介護員であり、訪問介護に対する期待と役割を正しく伝えることが、訪問介護員のモチベーションを高めることにつながる。 <考えられる役割> ①家庭における介護力を増強し、家族の介護負担を軽減することによって、家族の生活を守ってい くこと。また、病状の変化を見逃さず、的確に情報を伝え、重度化を防止する。 ②家事機能の低下による生活障害の増大を防止すること。欠落している家事機能を補完し、一人 暮らしはもちろん、家族の基本的な生活基盤をつくりあげ、介護状態の発生を予防すること。 ③利用者の生活の自立度は、家族の介護意識に大きく左右されることから、在宅における介護の 意味や価値を訪問介護員の実践を通して家族に働きかけ、家族の介護力を引き出し、合理的な 介護体制をつくりあげる。 ④利用者の病状の変化を観察し、医療につなげ、重度化を防ぐことが重要な役割となる。 ⑤利用者のADL(日常生活動作)を正確に判断し、自立の可能性の判断を専門職に求め、要介護者 の自立へ向けて住宅改善を本人や家族へ働きかけていくこと。 ⑥経済負担の軽減を図るためにも、適切なサービスの活用方法をサービス提供責任者とともに考 えていくことが必要。導入の時期の判断と同時に、サービスを受け入れられる状況を家庭のなか につくっていくことが重要。 ⑦生活障害をもたらしている問題を地域の共通課題へと広げ、安心して老後をゆだねられる地域づ くりをするために、常に地域に向かって発言していくことが必要。 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
訪問介護を提供するうえでの職業倫理(1) ≪ヘルパー憲章≫ 1982年 日本ホームヘルパー協会 1 私たちホームヘルパーは、常に社会福祉に携わる者としての誇りをもって仕事にあ たります。 1 私たちホームヘルパーは、常に愛情と熱意をもって利用者の自立を助け、家庭の維 持と発展を援助します。 1 私たちホームヘルパーは、利用者の尊厳を守り、常に利用者の立場に立ちながら 仕事にあたり、利用世帯や地域住民から信頼されるホームヘルパーになります。 1 私たちホームヘルパーは、常に服装や言語に気をつけ、笑顔を忘れず、仕事上で 知り得た他人の秘密は口外しないことを約束します。 1 私たちホームヘルパーは、常に研鑽に努め、在宅福祉の第一線にある者として、自 ら資質向上に努めます。 最終用語改正:2002年 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
訪問介護を提供するうえでの職業倫理(2) 日本介護福祉士会 倫理基準(行動規範) (利用者本位、自立支援) 1.介護福祉士は、利用者をいかなる理由においても差別せず、人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを 意識しながら、心豊かな暮らしと老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します。 2.介護福祉士は、利用者が自己決定できるように、利用者の状態に合わせた適切な方法で情報提供を行います。 3.介護福祉士は、自らの価値観に偏ることなく、利用者の自己決定を尊重します。 4.介護福祉士は、利用者の心身の状況を的確に把握し、根拠に基づいた介護福祉サービスを提供して、利用者の自 立を支援します。 (専門的サービスの提供) 1.介護福祉士は、利用者の生活の質の向上を図るため、的確な判断力と深い洞察力を養い、福祉理念に基づいた 専門的サービスの提供に努めます。 2.介護福祉士は、常に専門職であることを自覚し、質の高い介護を提供するために向上心を持ち、専門的知識・技術 の研鑚に励みます。 3.介護福祉士は、利用者を一人の生活者として受けとめ、豊かな感性を以て全面的に理解し、受容し、専門職として 支援します。 4.介護福祉士は、より良い介護を提供するために振り返り、質の向上に努めます。 5.介護福祉士は、自らの提供した介護について専門職として責任を負います。 6.介護福祉士は、専門的サービスを提供するにあたり、自身の健康管理に努めます。 (プライバシーの保護) 1.介護福祉士は、利用者が自らのプライバシー権を自覚するように働きかけます。 2.介護福祉士は、利用者の個人情報を収集または使用する場合、その都度利用者の同意を得ます。 3.介護福祉士は、利用者のプライバシーの権利を擁護し、業務上知り得た個人情報に ついて業務中か否かを問わ ず、秘密を保持します。また、その義務は生涯にわたって継続します。 4.介護福祉士は、記録の保管と廃棄について、利用者の秘密が漏れないように慎重に管理・対応します。 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
訪問介護を提供するうえでの職業倫理(3) (総合的サービスの提供と積極的な連携、協力) 1.介護福祉士は、利用者の生活を支えることに対して最善を尽くすことを共通の価値 として、他の介護福祉士及び保 健医療福祉関係者と協働します。 2.介護福祉士は、利用者や地域社会の福祉向上のため、他の専門職や他機関と協働し、相互の創意、工夫、努力に よって、より質の高いサービスを提供するように努めます。 3.介護福祉士は、他職種との円滑な連携を図るために、情報を共有します。 (利用者ニーズの代弁) 1.介護福祉士は、利用者が望む福祉サービスを適切に受けられるように権利を擁護し、ニーズを代弁していきます。 2.介護福祉士は、社会にみられる不正義の改善と利用者の問題解決のために、利用者や他の専門職と連帯し、専門 的な視点と効果的な方法により社会に働きかけます。 (地域福祉の推進) 1.介護福祉士は、地域の社会資源を把握し、利用者がより多くの選択肢の中から支援内容を選ぶことができるよう努 力し、新たな社会資源の開発に努めます。 2.介護福祉士は、社会福祉実践に及ぼす社会施策や福祉計画の影響を認識し、地域住 民と連携し、地域福祉の推 進に積極的に参加します。 3.介護福祉士は、利用者ニーズを満たすために、係わる地域の介護力の増進に努めます。 (後継者の育成) 1.介護福祉士は、常に専門的知識・技術の向上に励み、次世代を担う後進の人材の良き手本となり公正で誠実な態 度で育成に努めます。 2.介護福祉士は、職場のマネジメント能力も担い、より良い職場環境作りに努め、働きがいの向上に努めます。 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
介護保険制度の概要 介護保険制度は、高齢化の進展に伴い、要介護高齢者の増加、介護期間の長期化など、介護ニーズは増大する一方、核家族化の進行や介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況が変化するなか、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして平成12(2000)年に施行された。 自立支援:単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを越えて、高齢者の自立を支援することを理念とする。 利用者本位:利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度 社会保険方式:給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用 利用者からみた従前の制度と介護保険制度の違い 従前の制度 介護保険制度(創設時) 行政窓口に申請し、市町村がサービスを決定 医療と福祉に別々に申込み 市町村や公的な団体(社会福祉協議会など)中心のサービス提供 中高所得者にとって利用者負担が重く、利用しにくい 利用者自らサービスの種類や事業者を選んで利用 介護サービスの利用計画(ケアプラン)をつくって、医療・福祉のサービスを総合的に利用 民間企業、農協、生協、NPOなど多様な事業者によるサービスの提供 所得に関わらず、1割の利用者負担※ ※平成27年8月から、一定以上の所得がある場合は2割負担 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
介護保険制度における訪問介護サービス 介護保険法に位置づけられるサービスにおいて、サービス提供責任者が配置されているサービスは、介護給付の「訪問介護」、総合事業を実施していない市町村における予防給付の「介護予防訪問介護」、総合事業を実施している市町村における生活支援サービス事業の「訪問型サービス」である。 総合事業を実施していない市町村 <予防給付> ○介護予防サービス ・介護予防訪問介護 ・介護予防通所介護 ・介護予防訪問看護 ・介護予防通所リハビリ ・介護予防居宅型料要管理指導 など ○地域密着型介護予防サービス ・介護予防小規模多機能型居宅介護 ・介護予防認知症対応型通所介護 など <地域支援事業> ○介護予防事業 ○市町村の実情に応じたサービス <介護給付> ○施設サービス ・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 ○居宅サービス ・訪問介護 ・訪問看護 ・通所介護 ・短期入所 など ○地域密着型サービス ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ・小規模多機能型居宅介護 ・夜間対応型訪問介護 ・認知症対応型共同生活介護 など 総合事業を実施している市町村 <総合事業> ○介護予防・生活支援サービス事業 ・訪問型サービス ・通所型サービス ・生活支援サービス ○一般介護予防事業 (全ての高齢者が利用可) ・介護予防普及啓発事業 ・地域介護予防活動支援事業 ・地域リハビリテーション活動支援事業 など <予防給付> ○介護予防サービス ・介護予防訪問看護 ・介護予防通所リハビリ ・介護予防居宅型料要管理指導 など ○地域密着型介護予防サービス ・介護予防小規模多機能型居宅介護 ・介護予防認知症対応型通所介護 など Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
訪問介護サービスの運営基準とは ・「訪問介護における院内介助の取扱いについて」平成22年4月28日(事務連絡) 介護保険サービスにおいては、サービス提供にあたって事業所が行なわなければならない事項や留意すべき事項など、事業を実施する上で求められる運営上の基準が定められている。 訪問介護サービスは、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号)」の第2章(第4条から第43条)に規定されており、これらは訪問介護事業所、訪問介護事業所の従業者が遵守しなければならない事項である。 サービス提供責任者についても、同基準に規定されているため、サービス提供責任者として訪問介護サービスを管理していくためには、同基準を理解するとともに、制度改正等に伴う最新情報に注視しなければならない。 ●その他の通知等 訪問介護サービスを適正に提供するためには、基準だけでなく、訪問介護員が業務を行うにあたり判断の基準となる解釈通知等も理解する必要がある。 ・「訪問介護における院内介助の取扱いについて」平成22年4月28日(事務連絡) ・「平成20年4月以降における通院等介助の取扱いについて」平成20年4月25日(障障発第0425001号) ・「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」平成21年12月25日 ・「医療・介護関係従事者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」平成22年9月17日(老発0917第1号) ●都道府県等による集団指導 介護保険事業所(居宅サービス・施設サービス)に対して、介護給付等対象サービスの内容及び介護報酬請求の適正化に関して周知徹底を図るため、都道府県や市町村等による集団指導が実施される。 運営基準の詳細は、Ⅰ訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解の『サービス提供責任者の役割』で解説する。 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
障害者総合支援法の概要 地域社会における共生の実現に向けて、障害福祉サービスの充実等障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」が施行された。 これにより、「障害者自立支援法」が「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」とするとともに、障害者の定義に難病等を追加し、平成26年4月1日から、重度訪問介護の対象者の拡大、ケアホームのグループホームへの一元化などが実施された。 障害福祉サービスは介護保険サービスと内容的に重なるものも あります(たとえば、ホームヘルプサービスなど)。このようなサービスは、介護保険サービスを利用できる場合(65歳以上で介護が必要になった場 合、40~64歳で「特定疾病」によって介護が必要になった場合)には、まず、介護保険によるサービスを優先して利用することになる。次いで、介護保 険ではカバーしきれない場合について、障害福祉サービスを利用することになる。 出典:厚生労働省 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
障害者総合支援法における訪問介護サービス 障害者総合支援法に位置づけられるサービスにおいて、サービス提供責任者が配置されている訪問系サービスは、「居宅介護」「重度訪問介護」「行動援護」「同行援護」「重度障害者等包括支援」である。 市町村 介護給付 訓練等給付 ・居宅介護 ・重度訪問介護 ・行動援護 ・同行援護 ・療養介護 ・生活介護 ・短期入所 ・重度障害者等包括支援 ・施設入所支援 ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) ・就労以降支援 ・就労継続支援 ・共同生活援助 自立支援給付 障害者・児 自立支援医療 ・(旧)更生医療 ・(旧)育成医療 ・(旧)精神通院公費 等 補装具 地域生活支援事業 ・相談支援 ・コミュニケーション支援、日常生活用具 ・意思疎通支援を行う者の養成 ・障害者やその家族、 地域住民等が自発的に行う活動に対する支援 ・移動支援 ・障害者に対する理解を深めるための研修・啓発 ・地域活動支援センター ・福祉ホーム ・成年後見制度利用支援事業 ・市民後見人等の人材の育成 ・活用を図るための研修 支援 ・広域支援 人材育成 等 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解 都道府県
介護保険における訪問介護サービスの利用状況 第1号被保険者数の推移 第1号被保険者数は2013(平成25)年度末で3,202万人となっており、そのうち前期高齢者(65歳以上75歳未満)は1,652万人、後期高齢者(75歳以上)は1,549万人で、第1号被保険者に占める割合はそれぞれ51.6%、48.4%となっている。 要介護(要支援)認定者数の推移 認定者数は2013(平成25)年度末で584万人となっており、そのうち第1号被保険者は569万人、第2号被保険者は15万人である。第1号被保険者のうち、前期高齢者は72万人、後期高齢者は497万人で、第1号被保険者の認定者に占める割合は、それぞれ12.7%、87.3%となっている。 訪問介護サービスの需要の状況 サービス受給者数 サービス費用額 訪問介護事業所数 介護給付 予防給付 2013(平成25)年5月~2014(平成26)年4月審査分 2013(平成25)年度 2013(平成25)年5月~2014(平成26)年4月審査分 2013(平成25)年度 参考資料:厚生労働省 平成25年度介護保険事業状況報告、平成25年度介護給付費実態調査、平成12・18・25年度介護サービス施設・事業所調査 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
障害福祉における訪問型サービスの利用状況 居宅介護 重度訪問介護 行動援護 同行援護 重度障害者等包括支援 サービス利用者数の推移 事業所数の推移 単位:人 単位:人 単位:人 単位:人 単位:人 単位:件 単位:件 単位:件 単位:件 単位:件 参考資料:厚生労働省介護サービス施設・事業所調査 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
地域包括ケアシステムとは 「地域包括ケアシステム」の法律上の定義 〇 地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律 〇 地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律 第2条 この法律において「地域包括ケアシステム」とは、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制をいう。 出典:厚生労働省 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
地域包括ケアシステムの構築が求められる背景(1) 1 国民が望んでいることへの対応 〇 介護が必要になった場合でも自宅での生活を希望する国民の割合が高い。(P14,15参照) 2 人口構造、世帯構造等の変化、認知症の人の増加に対応 〇 寿命の延伸に伴い、人生90年時代を迎える一方、それに伴い認知症の人の増加も著しい。 〇 医療依存度の高い要介護者が増加し、人生の最終段階の在り方への関心も高まってきている。 〇 一人暮らし世帯、老夫婦のみの世帯の割合の増加も著しい。 〇 一方、支え手世代の人口は減少しており、自助・互助・共助・公助で支え合い、要介護高齢者の尊厳を保持する具体的な体制づくりが求められている。 3 介護保険法に規定されている理念の具体化 〇 在宅重視、介護予防、医療と介護の連携、自助努力などは、介護保険法に規定されていること。 ・ 保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。(第2条第2項)【介護予防】【医療と介護の連携】 ・ 保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。 (第2条第4項)【在宅重視:住み慣れた環境での生活の継続】 ・ 国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。 (第4条)【自助】 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
地域包括ケアシステムと人生の最終段階 (参考) 地域包括ケアシステムの構築にあたっては、平成25年12月に公布された「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(通称「社会保障プログラム法」)において、人生の最終段階の在り方についても言及されているので、参考までに関係条文を紹介する。 第四条(医療制度) 4 政府は、医療従事者、医療施設等の確保及び有効活用等を図り、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、今後の高齢化の進展に対応して地域包括ケアシステム(地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制をいう。)を構築することを通じ、地域で必要な医療を確保するため、(略)必要な措置を講ずるものとする。 ●政府にこんな努力義務を課してもどうかと思う。 ●患者の意思が表明されていないのですから。「意思」が分からないから「医師」が困っている。 ●究極の自己決定である。 5 政府は、前項の医療提供体制及び地域包括ケアシステムの構築に当たっては、個人の尊厳が重んじられ、患者の意思がより尊重され、人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境の整備を行うよう努めるものする。 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
地域包括ケアシステムの目指す姿 Ⅰ 訪問介護サービスの基本視点と制度・施策の全体像の理解
地域包括ケアと訪問介護の在り方 1 高齢者にとっての地域包括ケアとは 1 高齢者にとっての地域包括ケアとは ① 高齢者の心身機能が低下し、日々の生活に不自由が生じても、住み慣れた居宅(プライバシーの保障された生活の拠点<自宅やサービス付高齢者住宅など> )において、できるだけ主体性の高い暮らしを営めるよう、必要な支援を活用することができて、やがて訪れる人生の最終段階を穏やかに過ごし人生を全うすることであると言える。 ② そのためには、医療職と介護職とのコミュニケーションと協働の下で、高齢者が要介護状態になることの予防、また、例え要介護状態になった場合でもその軽減または悪化の防止を念頭に、「活動」や「参加」などの生活機能全般の維持向上に寄与するケアが提供されなければならない。 ③ さらに、日常生活上でちょっとした不便なことの支援や認知機能が低下している人への権利擁護も図られなければ、住み慣れた環境での生活は困難になる。 2 地域包括ケアと訪問介護 〇 要介護状態になった高齢者が、住み慣れた居宅での生活を継続するためには、まず日々の暮らしに必要な生活機能の不自由をカバーしてくれる「生活支援の専門職」の存在が必要である。 〇 生活支援の専門職とは、単に利用者の生活行為を代行・支援するのではなく、その行為を通して、生活に不自由を抱えている利用者のプライドに配慮し、生命を活性化させる意欲を引き出し、生活機能の維持向上に寄与する知識と技術を駆使する職種である。 〇 このようなケアを実践するのが訪問介護であり、他の専門職であるケアマネジャー、医療関係者、福祉関係者等やインフォーマルサポートを含めたケアチームの一員として機能するためには、サービス提供責任者の果たす役割は極めて重要である。 〇 さらに、今後は、ターミナルケアにおける訪問介護の役割も高まるものと思われる。