ダブル・ マージナリゼーション.

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ダブル・ マージナリゼーション

Double marginalization:  サプライチェーン上に二つの参加者がいるとき,お互いの制約によりトータル利益は独占利益より少なくなる. Asymmetric information:  サプライヤーはバイヤーのコストや利益の構造を知ることができない.しかし,バイヤーの行動は購買量に現れ,従ってサプライヤーは取引オプションを提供する際にこのような情報の非対称性を考慮しなければならない.

問題: バイヤーの購買量が少ないとき,サプライヤーは利益をバイヤーに譲渡してでも販売量を増やすべきか? バイヤーのコスト構造に関する情報はサプライヤーにどのようなメリットを与えるか? サプライヤーにとって複雑な取引関係を設計するメリットはあるか? Double marginalization 効果はどのような条件のもとで克服できるか?

価格 需要 供給 量 生産量=40 製造 卸売 小売 総利益=40×(10+20+25)=2200 Pc Mc 25 Vc 20 Pb Pb Mb 20 Vb 20 Pa Pa Ma 10 Va 20 製造 卸売 小売 総利益=40×(10+20+25)=2200

供給者利益増=360 消費者余剰=780 C’=60 40 64 128 販売量 総利益=64×40=2560 Pc=115 供給者利益増=360 消費者余剰=780 Mc 25 Pc=100 Mc 40 Vc 20 Pb C’=60 Vc 20 40 64 128 販売量 総利益=64×40=2560 (比較:40×(10+20+25)=2200)

C’=60 40 55 128 販売量 総利益=55×40=2200 Pc=115 Mc 25 Pc=100 Vc Mc 20 40 Pb

価格 (y) (1) (115-100)/(40-64)=(100-y)/(64-x) y1=140-5x/8 (2) (115-100)/(40-55)=(100-y)/(55-x) y2=155-x (115,40) (100,64) (100,55) 需要(x)

価格を115円から100まで下げたときに、需要が40から50までにしか増えなかったとしたら、利益はどうなるのか?

価格 (y) (3) (115-100)/(40-50)=(100-y)/(50-x) y3=175-1.5x (115,40) (100,64) (100,50) 需要(x)

ポイント1: ダブルマージナリゼーションの影響は製品種類により異なる。 ポイント2: 需要の価格弾性値が小さい製品は組織を統合しても利益が増えない場合がある。

需要が40より少ない場合いはどうなっているのか?

需要曲線

売り上げ曲線

ポイント3 販売量を伸ばしても売り上げが伸びない場合がある。

総利益曲線

ポイント4 利益は2時関数(放物線)であり、販売量がある一定量を超えると値下げのために利益は逆に減少する。 ポイント5 価格を合計マージナルコスト(限界費用=商品1個あたりのコストの合計:20+20+20=60)より下げると利益はマイナスになる。

マージナル利益を考える。

価格 需要 供給 量 生産量=40 製造 卸売 小売 マージナル利益=10+20+25=55 Pc Mc 25 Vc 20 Pb Pb Mb Vb 20 Pa Pa Ma 10 Va 20 製造 卸売 小売

マージナル利益=単価-マージナルコスト

ポイント6 小売は販売量を増やさないほうがマージナリ利益が高い

小売の最適生産量

ポイント7 小売はダブルマージナリゼーションが存在する場合、最適な販売量以上販売量を伸ばそうとしない。

小売と卸の販売量増加に伴う損得を考える △rp1=750-1000=-250 △wp=1200-800=400 x y1 y2 y3 mp 139.375 154 173.5 10 20 49.375 133.75 145 160 100 200 437.5 127.5 135 400 750 30 121.25 125 130 300 600 937.5 40 115 800 1000 50 108.75 105 500 60 102.5 95 85 1200 70 96.25 700 1400 80 90 75 55 1600 △rp1=750-1000=-250 △wp=1200-800=400

報奨金制度の導入 販売量を40から60に増やすと 報奨金導入 小売は250円の損失 卸売りは400円の利益増 卸売りが小売に報奨金300円を支払う 条件として販売量を60までに伸ばす (そのためには価格を下げなければならない) 利益 小売=300-250=50円増、総利益=1000+50=1050円 卸売り=400-300=100円増、総利益=800+100=900円

ポイント8 卸は利益を増やすために、場合によってはマージンを譲っても販売量を伸ばす必要がある。

問題: バイヤーの購買量が少ないとき,サプライヤーは利益をバイヤーに譲渡してでも販売量を増やすべきか? バイヤーのコスト構造に関する情報はサプライヤーにどのようなメリットを与えるか? サプライヤーにとって複雑な取引関係を設計するメリットはあるか? Double marginalization 効果はどのような条件のもとで克服できるか?

情報の非対称性 卸の情報 小売の情報 卸(サプライヤー)の仕入れ価格=30円 卸のコスト=20円 卸のマージン=20円 卸価格=70円 販売量=40 小売価格=115円 販売量を64に増やすためには価格を100円まで下げる必要があること。(需要曲線) 小売の情報 卸値=70円 販売コスト=20円 マージン=25円

卸には販売コストが分からないとする ケース1:販売コスト=10円と見積もる ケース2:販売コスト=30円と見積もる

ケース1 小売の利益=(100-70-10)×64=1280円 115円時の利益=(115-80)×40=1400円 報奨金設定値=(1400-1280)*1.5=180円 小売の答え: 販売コスト20円であるので、価格を100まで下げると360円損になり、180円の報奨金では赤字。

ケース2 小売の利益=(100-70-30)×64=0円 115円時の利益=(115-100)×40=600円 報奨金設定値=(600-0)*1.5=900円 価格を100円まで下げたときの卸の利益増は400円だから、900円あるいは600円の報奨金を出すことはできない。 卸の決定:報奨金を出すことをやめる。

ケース3 小売価格を108円まで下げる。 需要は50まで伸びる。 小売の利益=(108-70-30)*50=400円 115円時の利益=(115-100)*40=600円 小売の損=600-400=200円 報奨金=200*1.5倍=300円 卸の利益増=20円×10個=200円   卸の結論:価格を108円まで下げたときの卸の利益増は200円、報奨金を300円にすると100円利益減、報奨金を200円にしても卸の利益増はゼロ。報奨金は出さないことにする。

問題: バイヤーの購買量が少ないとき,サプライヤーは利益をバイヤーに譲渡してでも販売量を増やすべきか? バイヤーのコスト構造に関する情報はサプライヤーにどのようなメリットを与えるか? サプライヤーにとって複雑な取引関係を設計するメリットはあるか? Double marginalization 効果はどのような条件のもとで克服できるか?