動物実験棟の増改修要求 バイオサイエンス教育・研究センター 動物実験部門 平成19年3月2日 学長ヒアリング それでは資料をもとに説明させていただきます。これは動物実験部門のある建物の外観を示しています。右奥の窓の多い建物はRIセンターで昭和53年に建てられ、3年前に改修を終えております。 手前の2階部分が52年に建てられた動物実験部門のA棟で、奥の3階部分が57年に建てられたB棟です。動物実験部門はA、B両棟併せて2700㎡あります。 A棟は主に犬、ネコ、ウサギなどの微生物コントロールがなされていないCONV動物を飼育するために作られました。B棟には犬、ネコ、ウサギの実験室と、病原体のいないSPF動物を飼育するSPF区域及び感染実験区域があります。 次のページをご覧ください。 バイオサイエンス教育・研究センター 動物実験部門
動物実験棟の構造と空調の不良 配置図 1階 B 棟 2階 A 棟 3階 1. (写真1) 2. (図1) (写真2) 平成19年3月2日 学長ヒアリング 動物実験棟の構造と空調の不良 配置図 1階 B 棟 2階 SPF実験室 1. (写真1) 2. A 棟 これは動物実験部門の配置図です。 この建物は主にCONV動物を飼育することを目的に建てられましたので、配置図に示すように中央廊下方式です。写真1、2 は2階のSPF区域入り口付近ですが、クリーンな動物や実験器具の持ち込み(写真1)と、汚染床敷の排出(写真2)が同じ場所で行われており、清浄区域と汚染区域の境界が確保できていません。このような構造から、SPF区域に病原体が侵入する危険が常にあります。 また、B棟1階の黄色く塗った部分はCONV区域で、2階の緑に塗った部分はSPF区域です。緑に塗った部分の一部に斜線が施された黄色の部分があります。ここはSPF実験室ですが、1階の斜線をしたCONVの実験室と同じダクトで結ばれていることが2年前に判明しました。そのため図1に示すようにCONV区域の排気がSPF区域に流れ込む構造になっていました。これを改善したところ、空調機の出力が弱いこともあり温度コントロールができず、冬には15度以下、夏には30度を超えることがあり実験者から苦情が出ています。 さらに、A棟2階の青く塗った部分はウサギやネコの飼育室でしたが、学内の自助努力により改修工事を行い、マウスを飼育できるようにしました。この部分をSPF区域と記してはいますが、実はただの閉鎖空間で、高性能フィルターを装備したSPF空調にはなっていません。次のページをご覧ください。 (図1) (写真2) 3階
使用動物数の増加と施設面積 2.全国一狭小な施設面積(表1) 1.使用動物種の変化と動物数の増加(図1) 3.過密な飼育室(写真1) 平成19年3月2日 学長ヒアリング 使用動物数の増加と施設面積 1.使用動物種の変化と動物数の増加(図1) 2.全国一狭小な施設面積(表1) 3.過密な飼育室(写真1) 図1には使用動物種と動物数の変化を示しています。 25年前(1980年)にはイヌ、ネコ、ウサギ、ラットが使用動物数の60%をしめ、残りがマウスで、動物の使用総数は7000匹程度でした。 それがこのところ遺伝子改変マウスの使用が増え、3年ほど前からは動物の使用総数は4万匹を超えています。 表1は医学部をもつ国立大学法人の動物実験施設の面積と収容動物数を示しています。左端と右端はそれぞれの順位です。 秋田大学を赤で示していますが、総床面積は2700㎡と42施設中最下位です。それに対して動物の収容数は全国で11番目で、旧帝大に次いでいます。 収容総延数が467万匹ということは、一日に約13,000匹の動物を飼育していることになります。面積が最下位で収容数が11番目ということから写真1に示しているように飼育室は超過密状態です。 次のページをご覧ください。 (国立大学法人動物実験動物施設協議会平成17年5月調べ)
過密飼育と病気の発生 3.MHV(マウス肝炎ウイルス)汚染事故 1.動物室の稼働率(表1) 4.利用者のアレルギー発症状況(表3) 平成19年3月2日 学長ヒアリング 過密飼育と病気の発生 1.動物室の稼働率(表1) 3.MHV(マウス肝炎ウイルス)汚染事故 平成15年5月2日にB棟のSPF区域にMHV汚染発生 平成16年4月2日に復旧 1)被害匹数 約20系統 約3,000匹 2)復旧対策費 約3,000万円 稼働率 秋田大学 42大学平均 平成15年度* 平成17年度 マウス室 149% 86% 79% ラット室 81% 74% 57% ウサギ室 47% 53% 54% イヌ室 46% 72% 43% 4.利用者のアレルギー発症状況(表3) 調査対象者 回答者 発症者 有症者率 秋田大学 83人 41人 49% 大学関係* 2,762人 610人 22% 研究機関* 592人 145人 24% 製薬企業* 1,457人 376人 26% * 国立大学動物実験施設協議会(平成17年5月調べ) 2.微生物学的モニタリング成績(表2) *山内ら(鹿児島大学)による調査 5.改正動物愛護法 「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」 過密状態を数字で表したものが表1です。平成15年度のマウス室の稼働率は149%でした。これでは実験結果や動物福祉にも問題がでるため、先に述べましたように改修工事を行いマウスの飼育室を増やしました。その結果、平成17年度では稼働率が86%になりました。それでも全国平均よりも稼働率は高いです。 表2にはマウスの微生物学的モニタリング成績を示しています。過密飼育したこともあり、黄色で示す病原体に汚染されたSPF飼育室が散見されます。空調機や建物の構造不良からこれらの病原体が他の飼育室に広がる危険性もあります。3.に記しましたように、実際に平成15年にB棟のSPF区域に病原性の高いマウス肝炎ウイルスが発生しました。平成16年4月2日に復旧しましたが、約1年間実験に支障を来し、復旧費に3,000万円もかかりました。 また、利用者に動物由来のアレルギーが発生しております。表3にはアレルギー発症状況を示していますが、当施設利用者の半数が動物由来のアレルギーをもっています。適切な空調制御がなされている他施設に比べ2倍の有症率となっています。労働安全衛生の面からも問題となります。 さらに、 5に示すように昨年の6月から改正動物愛護法が施行されています。法律の下に作られた「実験動物の飼養及び保管に関する基準」には管理者の義務が明記されました。管理者とは大学では学長になります。学長は動物実験施設に関し衛生状態の維持及び管理が容易な構造とすること、使用者が実験動物に由来する疾病にかかることを予防することとされています。 動物実験に関しては愛護団体による情報開示請求も頻繁に行われていますので、文部科学省からも適切な飼養管理を行うように「研究機関等における動物実験等に関する基本指針について」が出されています。 次のページをご覧ください。 平成18年6月1日施行 管理者は(大学では学長) 、 実験動物に過度なストレス がかからないように、適切な温度、湿度、換気、明るさ等を保つこと。 床、内壁、天井及び附属設備は、清掃が容易である等衛生状態の維持及び管理が容易な構造とすること。 実験動物管理者及び使用者が実験動物に由来する疾病にかかることを予防するために、必要な健康管理を行うこと。
設備の老朽化と修理点検整備費の増加 A棟 設置後30年を経過 B棟 設置後25年を経過 空調機改修工事から15年を経過 平成19年3月2日 学長ヒアリング 設備の老朽化と修理点検整備費の増加 A棟は設置後30年を経過し、B棟は設置後25年を経過しています。 30年以上経過した建物、特に耐震構造が不十分な建物は優先的に改修されるようですが、動物実験部門の建物は残念ながらと言いますか、耐震構造の基準を満たしているようです。 しかし、A、B両棟とも壁面に病原体が繁殖する原因となるひび割れが多数生じております。特にA棟は壁も薄く、写真1,2に示すように冬季間にはおびただしい結露が生じ、カビや緑膿菌による感染症の発生が危惧されています。写真2の壁に見られる筋が結露で、床が水浸しになっています。 空調機は24時間フル稼働のため経年劣化は他の建物に比べ3倍以上の早さで進みます。 そのため15年前に空調機の改修工事を行いましたが、それから15年を経過し、最近ではまた頻繁に故障するようになりました。 グラフは平成14年から19年までの修理費点検整備費をしめしております。ご覧いただけるように修理費は年々増加しております。またここには計上しておりませんが、一昨年に暖房用の装置が故障し学長裁量経費にて修理していただいております。 飼育室の結露 A棟 設置後30年を経過 B棟 設置後25年を経過 空調機改修工事から15年を経過 空調機は24時間フル稼働のため経年劣化が早い (写真1) (写真2)
人と動物の安全を考慮した“増築” 急増する遺伝子改変動物等への対応 動物愛護法を遵守した飼育 労働安全衛生対策の強化 学外実験者の受け入れ 平成19年3月2日 学長ヒアリング 人と動物の安全を考慮した“増築” 1階 急増する遺伝子改変動物等への対応 動物愛護法を遵守した飼育 労働安全衛生対策の強化 学外実験者の受け入れ 2階 これは動物実験棟を増改修する場合の図です。 黄色い部分が従来の建物で今回改修を必要とする部分です。そして青い色が増築する部分です。 1階部分をCONV区域とし、2階、3階部分を全てSPF区域とします。 建物の構造だけでなく不十分な空調設備も改修し、アレルギーを防ぐために飼育室の吸排気を一方向システムにします。 増築部分の1階には犬、猫、猿などの大型動物のための飼育区域と実験区域を整備する。 2階部分には免疫不全動物を含む遺伝子改変マウス、ラットのための飼育区域と実験区域を整備する。 3階部分には遺伝子改変動物の作成及び解析のための実験室を整備する。 3階
1階
2階
3階
大学からの補助 機器及び動物移転費 500万円 マウス系統保存費 1,000万円 仮設動物舎設置費 1,000万円
B棟1階
B棟2階