図書委員広報 二〇〇七年一学期 国語科文庫ランキング 一学期貸し出し数ランキング タイトル 著者 1 星の王子様 2 博士の愛した数式 2007年7月14日号 今年度より、国語科教員室の前に、国語科文庫ができました。名前を書けば借りられるということと、教室の近くで借りられることがウケて、利用者が増加しています。 さて、図書委員会では、一学期のうちで、最も借りられた本を調査すべく貸し出し履歴の集計作業を行いました。(下表) 第五位からご紹介します。 一学期の第五位に輝いたのは、早稲田大学文学部出身、最年少で芥川賞を獲得したのも記憶に新しい、綿矢りさの書いた「インストール」となりました。 突然、学校生活から堕落する主人公朝子はゴミ捨て場で小学生の青木君と出会う。謎の少年青木君はチャット風俗で一儲けをしないかと朝子に持ちかける。最初はキーボードすら打てなかった朝子であったが、トラブルを乗り越えていき、成功する。しかし、だんだん朝子は現実を見直し始めていく…という物語。 そして第四位、入試論説文読解で苦しめられた人も多いのではないでしょうか、養老孟子策「バカの壁」がランクイン。 「人間同士が理解し合うというのは根本的には不可能である。理解できない相手を、人は互いにバカと思う」ということを主題としたもので、知りたくないことに関しては思考停止してしまう人間についての分析をした本。十分に吟味して書かれたとは思えないほど、前後の文章で 二〇〇七年一学期 国語科文庫ランキング 言っていることが百八十度変わる奇怪な文章が続いて読みにくいが、論説文の好きな方にはお勧め。 そして第三位、元○○嬢であったらしい青春小説作家、山田詠美の「ぼくは勉強ができない」。 勉強よりも素敵で大切なことがある。十七歳の時田秀美はそう考える。学校に居心地の悪さを感じ、さまざまなことに疑念を持つ。「女にもてるか否か」を基本的な基準として考え、世界を見つめる秀美の生活を描いた青春小説。ちょうど青春真っ盛りの学院生にも読んでほしい一冊。 第二位は、またもや早稲田大学文学部出身、小川洋子の書いた「博士の愛した数式」だった。ちなみに、作者は阪神ファン。 交通事故による脳の損傷で記憶が80分しか持続しなくなってしまった元数学者「博士」と、博士の新しい家政婦である「私」、そしてその息子「ルート」の心のふれあいを描いた作品。博士は生活で出現するありとあらゆる数値を数学的なものに絡めて考えてしまう数学狂、しかしどこか人間味がある。そんな博士の症状は徐々に進行していき…映画化もされた感動作。 そして第一位は、児童文学作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの放つ有名作、「星の王子様」となった。 児童文学と侮るなかれ、人生の本質的な事象を、誰が読んで も理解できる表現で的確に描写しきっている傑作だ。小惑星に孤独に生きる王子は様々な星を渡り歩き、そこに生きる大人達の寂しい姿に疑問を抱く。その問いには、半分大人となった学院生もハッとさせられることは間違いない。私も個人的に推薦する一冊。 話題作の貸し出しが目立った、来学期はあまり話題作となっていない作品にも手をつけてはいかがだろうか。 一例を挙げると、「カンバセイション・ピース」「星新一のショートショート」など 一学期貸し出し数ランキング タイトル 著者 1 星の王子様 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 2 博士の愛した数式 小川洋子 3 ぼくは勉強できない 山田詠美 4 バカの壁 養老孟子 5 インストール 綿矢りさ 6 天使の見つけ方 おーなり由子 7 ノルウェイの森 村上春樹 8 4TEEN 石田衣良 9 ビタミンF 重松清 10 海辺のカフカ は、国語科文庫にあるものでは図書委員会にも愛読者が多いので、お勧めできる。図書館の方ではチャールズ・ブコウスキーの「街で一番の美女」もお勧め。非常に特徴のある読みやすい文体による、奥の深い短編がいくつもはいっている傑作である。 学院生の図書離れが叫ばれる中、面白い本はどんどん入荷されている。夏休みへ入る前に、何か本をかりてはどうだろうか。 (文章 3D 山田航平)