地方公務員災害補償基金 富山県支部 平成22年7月23日 認定請求手続 地方公務員災害補償基金 富山県支部 平成22年7月23日
公務災害認定の要件 以下の2つの要因が認められることが必要 1.公務遂行性 2.公務起因性
公務遂行性 疾病の場合 負傷の場合 =任命権者の支配下にあること =公務に内在する個々の有害因子を受ける危険にさらされている状態 =公務に内在する個々の有害因子を受ける危険にさらされている状態 ・公務起因性の第一次判断基準 負傷の場合 =任命権者の支配下にあること ・施設管理下にあれば公務に従事していなくても認められる(休憩時間) ・施設管理下でなくても公務に従事していれば認められる(出張)
公務起因性 負傷の場合 疾病の場合 =経験則上傷病等の発生が公務に内在する危険の具体化したものであること =経験則上傷病等の発生が公務に内在する危険の具体化したものであること ・公務従事中であれば、反証がなければ公務起因性ありとされる ・休憩時間など公務に従事していない時は、勤務場所等の施設の設備の不完全や管理上の不注意に起因することが証明される必要あり 疾病の場合 =公務と疾病の間に相当因果関係(相対的に有力な役割を果たしたと医学的に認められること)があること ・公務における有害因子の存在 ・有害因子の曝露条件 ・発症の経過及び病態
公務上の負傷の認定基準 公務上の災害として認められる場合 1.職務行為等に起因する負傷 2.出張又は赴任期間中の負傷 3.特別の事情下の出退勤途上の負傷 4.レクリエーションに参加中の負傷 5.勤務場所又はその付属施設の設備の不完全又は管理上の不注意によるもの 6.入居が義務付けられている宿舎の不完全又は管理上の不注意による負傷 7.職務遂行に伴う怨恨による負傷 8.公務上の負傷又は疾病と相当因果関係をもって発生した負傷 9.1~8のほか、公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな負傷
公務上の負傷の認定基準 ただし、1~9に掲げる場合であっても、 (1) 故意又は本人の素因によるもの (2) 天災地変によるもの (1) 故意又は本人の素因によるもの (2) 天災地変によるもの (3) 偶発的事故によるもの(私的怨恨含む) については公務外となる。 ⇒公務起因性が認められないため
公務上の疾病の認定の基本的な考え方 負傷の場合と異なり、発症原因が公務によるものか、本人の素因によるものかの判断が難しい(公務起因性の問題) 公務上の有害因子によって、基礎疾患又は既存疾病の自然経過を超えて著しく増悪し、発症したと医学的に認められるか? =たまたま公務中に発病したというのでは×
公務上の疾病の認定基準 1.公務上の負傷に起因する疾病 2.職業性疾病 3.その他公務に起因することが明らかな疾病 ・上記2と同様の考え方 ・何ら素因を有していなかった者が負傷により発病した場合だけでなく、疾病の素因があって早晩発病する程度であった者が負傷によって発病時期が著しく早まった場合などでも認められる 2.職業性疾病 ・当該疾病にかかるそれぞれの業務に伴う有害作用の程度が当該疾病を発症させる原因となるに足るものであり、かつ、当該疾病が医学経験則上当該原因によって生ずる疾病に特有な症状を呈した場合は、特に反証のない限り公務上 3.その他公務に起因することが明らかな疾病 ・上記2と同様の考え方
心臓・脳血管疾患の認定 心臓・脳血管疾患は、高血圧等の血管病変又は動脈瘤等の基礎的病態が、加齢や一般生活等における諸種の要因によって増悪する ⇒医学経験則上、血管病変等を著しく増悪させ、発症原因とするに足る強度の肉体的・精神的負荷があったと認められることが必要(過重負荷) ①職務に関連してその発生状態を時間的、場所的に明確にしうる異常な出来事・突発的事態に遭遇したこと ②通常の職務に比較して特に過重な職務に従事したこと ③過重負荷を受けてから症状の顕在化までの時間的間隔が医学上妥当であること
精神疾患に起因する自殺の認定 自殺は一般に様々な要因が影響するため、以下の要件のいずれかに該当し、かつ、本人の個体的・生活的要因が主因となって自殺したものではないことが必要 1.異常な出来事・突発的事態に遭遇したことにより、驚愕反応等の精神疾患を発症したことが、医学経験則上明らかに認められること 2.異常な出来事・突発的事態の発生、又は行政上特に困難な事情が発生するなど、特別な状況下における職務により、通常の職務に比較して特に過重な職務を行うことを余儀なくされ、強度の肉体的疲労、精神的ストレス等の重複又は重積によって生じる肉体的、精神的に過重な負担に起因して精神疾患を発症していたことが医学経験則上明らかに認められること ※精神疾患そのものの認定についてもこの基準を準用する
認定請求にあたって 認定請求時には以下のポイントを考慮 1.公務遂行性(公務中の事故か?)が立証できているか? 2.公務起因性(公務と傷病に相当因果関係があるか?)が立証できているか?
具体事例その1 A消防組合B消防署救急係 消防吏員 男性 41歳 腰部捻挫 A消防組合B消防署救急係 消防吏員 男性 41歳 腰部捻挫 交差点での自動車事故により、車内に残っていた負傷者を救助するため、同僚職員と2人で抱きかかえようとした際に、タイミングがあわず、一人で全体重を受けることとなり、腰部に電撃通を覚えた。翌日の受診で腰部捻挫と診断 被災翌日の診断では腰部に顕著な変性は無かった 負傷者の体重は54kgで著しく重いものではなく、要救助者を抱き上げて搬送する動作は、被災職員本人の業務においては通常の動作
具体事例その1 腰部内部組織の損傷による腰痛は、日常生活においてもしばしば生じるものであることから、単に公務遂行中に腰痛が発生したという事実だけでは公務上の災害と認められない 公務上の認定にあたっては、理事長通知「腰痛の公務上外の認定について」の記の1により、次の2つの要件を満たしていることが必要 腰部の負傷又は腰部の負傷を生ぜしめたと考えられる通常の動作と は異なる動作による腰部に対する急激な力の作用が、公務遂行中に突発的なできごととして生じたと明らかに認められるものであること 腰部に作用した力が腰痛を発症させ、腰痛の既往症を再発させ、又は基礎疾患を著しく増悪させたと医学的に認めるに足りるものであること
具体事例その1 運転者の体重は著しく重いものではなく、搬送行為自体は本人の業務で通常行われるもの しかし、運転者が車内に残っており、運転席のドアと運転者との間の狭い空間に入り込んで体を傾ける必要があった 同僚職員とのタイミングが合わず、運転者の体重のほとんどを1人で受けることになった 本人の腰部に急激な力が突発的に作用し、その結果、本件腰痛を 発症させたものと認められる(公務上)
具体事例その2 A教育委員会B共同調理場 主任調理技師 男性 58歳 腰椎捻挫 A教育委員会B共同調理場 主任調理技師 男性 58歳 腰椎捻挫 調理業務の無い日に企画された、調理技師全員参加による除草作業に従事 朝6時から約2時間、肩掛け式電動草刈機で除草 草刈機で刈れない場所を鎌で刈った後、刈った草等をパッカー車に積み込もうとしてしゃがんで手を伸ばした際、腰部に激痛が走り動けなくなった 被災後の主治医所見で、「腰部退行性変化を認める」とされた
具体事例その2 医学的知見によれば、年齢相応かそれ以上の強度の変性があり、いつでも、些細な動作でも腰痛を発症しうる状態であったと考えられる 草刈機や鎌で草を刈る動作や、しゃがみ込む動作は腰部に過度の負担がかかるような不自然なものではない 手を伸ばす、しゃがみ込むといった動作も除草作業としては通常の動作であり、本人はそれらの動作を自ら意図したとおりに行ったに過ぎず、足が滑った、転倒した等の事情も認められない 一連の動作が本人の有していた脊柱の病変という基礎疾患を 自然的経過を超えて著しく増悪させたものとは認められない (公務外)
通勤災害の認定 通勤による災害、すなわち、職員が勤務のため、住居と勤務場所との間の往復、複数就業者の就業の場所から勤務場所への移動又は住居と勤務場所との往復に先行若しくは後続する住居間の移動を、合理的な経路及び方法により行うこと(公務の性質を有するものを除く。)に起因する災害をいう。
通勤災害の認定 「勤務のため」 =当該移動が全体としてみて、勤務と密接な関連をもって行われるもの (1)「勤務のため」と認められる場合の例 =当該移動が全体としてみて、勤務と密接な関連をもって行われるもの (1)「勤務のため」と認められる場合の例 ・途中で勤務又は通勤に関係あるものを忘れたことに気付き、取りに戻る場合 ・レクリエーション(公務災害と認定される場合)に参加する場合 ・遅刻して出勤、あるいは早退する場合 (2)「勤務のため」と認められない場合の例 ・途中で自己都合により引き返す場合 ・任意参加の親睦会等に参加する場合 ・勤務終了後、勤務場所で相当時間にわたり私用を弁じた後、帰宅する場合
通勤災害の認定 「合理的な経路及び方法」 =社会通念上、移動に用いられる経路及び方法のうち、一般に職員に用いられると認められる経路及び方法 =社会通念上、移動に用いられる経路及び方法のうち、一般に職員に用いられると認められる経路及び方法 ○問題となるのは、通勤届と異なる経路及び方法をとっていたとき (1)「合理的な経路」と認められる経路の例 ・交通事情によりやむを得ず迂回する経路 ・自動車通勤者が燃料補給及び修理のためガソリンスタンド等へ立ち寄る経路 ・共稼ぎの職員が子どもを保育所等に連れていく(迎えにいく)経路 (2)「合理的な方法」と認められる方法の例 ・通常公共交通機関を利用している者が、①勤務終了後の私用のため、自動車 を利用して出勤する場合、②遅刻状態にあるため、間に合うようにタクシーを利用した場合、③雨天のため、妻に自家用自動車で送らせた場合
逸脱又は中断 ・逸脱=通勤とは関係のない目的で合理的な経路からそれること ・中断=合理的な経路上で、通勤目的から離れた行為を行うこと 逸脱又は中断した場合、その間及びその後に発生した災害 は、原則として通勤災害とはならない。 ただし・・・ 逸脱・中断が日用品の購入、その他これに準ずる日常生活上必要な行為 であり、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合には、 経路に復した後の災害については通勤災害として取り扱う。
逸脱又は中断