米国における最近の課題: HIV感染症における非AIDS合併症ケア

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今 日 の ポ イ ン ト今 日 の ポ イ ン ト 糖尿病人口は予備群を含めると 2,050 万人1.1. 糖尿病は血糖値が高くなる病気 ただし自覚症状がほとんどありません 2.2. 血糖値が高い状態を「高血糖」といいます3.3. インスリンの作用が弱くなったために高血糖に なったのですが、高血糖は必ず改善できます.
血糖値の調節 膵臓 肝臓 筋肉 血 糖 脳 インスリン ↑ 200 g/ 日 120g/ 日 乳 酸 乳 酸 グリコーゲン グリコーゲン グリコーゲン グリコーゲン ( 食事 ) 脂肪組織 Plasma Glucose Blood Glucose 尿糖 血糖値は制御された値 であり制御機構が正常 なら全く血糖は上昇し.
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米国における最近の課題: HIV感染症における非AIDS合併症ケア Ann M. Khalsa, MD, MSEd, AAHIVS McDowell (HIV/AIDS) Healthcare Center, MIHS Arizona AIDS Education and Training Center Phoenix, Arizona, USA

症例のアウトライン Anneliese H. 糖尿病 高脂血症 抗ウイルス薬選択 Teri A. 冠状動脈疾患(CHD) C型肝炎

Anneliese – 症例の概略 42歳、ヘテロセクシャル、 白人女性、HIV+の診断 2002年 患者背景: 離婚、3人の子供の親権喪失 成人してから反復的なコカイン使用(2度のリハビリ実施) 幼児虐待歴あり 2007年 失業し、保険喪失 家族歴: 糖尿病、高血圧、双極性障害、冠動脈疾患(父親60歳で 心筋梗塞) 病歴: 糖尿病 高脂血症 子宮頚部異形成 気分変動を伴ううつ病

ARV施行期間1.5年, 副作用:EFVにより皮疹 Anneliese – 症例の概略 3/2009: クリニック変更、2年間処方なし 症状: 多尿、多飲症、15ポンド体重減少、逆流性食道炎 気分変動を伴ううつ病、性器ヘルペス PE: BMI 27, 胴囲 91cm, 血圧 110/70   2002-2007 3/2009 CD4 # / % 500s 82 / 6% HIV-1 RNA ARVにより検出限界以下 122,000 ARV TDF-FTC-ATVr ARV未施行 コメント ARV施行期間1.5年, 副作用:EFVにより皮疹 耐性なし その他の臨床検査値 Creat 0.81, Ur Prot neg TC 141 / TGA 758 / HDL 26 Gluc 253 / HgbA1c 9.6

Anneliese – ?# 1 Please VOTE 次のうち、早急に開始すべき治療はどれでしょうか? 抗HIV療法 日和見感染症予防 糖尿病治療 高脂血症治療 抗うつ薬 --- 正解はひとつではないかもしれません ---

Anneliese – ?# 1 次のうち、早急に開始すべき治療はどれでしょうか? 1) 抗HIV療法 2) 日和見感染症予防 2) 日和見感染症予防 3) 糖尿病治療 4) 高脂血症治療 5) 抗うつ薬 Check all that apply

Anneliese – ?# 1 正解 Answer 最も早急に行うべき治療は? 抗HIV療法開始 日和見感染症予防 糖尿病治療 高脂血症治療 抗うつ薬による治療開始 最終的な治療の成功のカギ  膵炎リスクの潜在 最終的な治療の成功のカギの可能性 Potential immediate complications 即時に起こりうる合併症 もちろんHIV治療は必要だが、CD4が低く糖尿病がコントロールできていない状況なので、緊急性という点では2)(PCP等)、3)が優先される。(国家試験にも出題されている) うつの既往があり、コカイン使用もあるので、長期的には5)のうつの治療が、HIV治療の成功のカギとなる可能性もある。

Anneliese – 症例フォローアップ 下記の治療を開始: ST合剤 800/160mg – 1日1回 (すべてdiscount pharmacy programで入手可能) 抗HIV薬は経済的な問題から行なわなかった 青木先生コメント: 米国では経済的な問題が薬剤選択に大きくかかわってくる。日本も将来的にはそのような可能性もある。 日笠先生コメント: ゲムフィブロジルは日本にはない薬剤だが、フィブラート系の薬剤であり、比較的安価なため米国では良く使用されている。 参考-1: 日本で使用可能な血糖降下薬(インスリン以外) 経口剤 ①スルホニル尿素薬(SU剤): トルブタミド(ヘキストラスチノン®ほか)、アセトヘキサミド(ジメリン®)、クロルプロパミド(アベマイド®)、グリクロピラミド(デアメリン®):第1世代、グリクラジド(グリミクロン®ほか)、グリベンクラミド(オイグルコン®ほか):第2世代、グリメピリド(アマリール®ほか):第3世代 ②ビグアナイド薬: メトホルミン(メトグルコ®ほか)、ブホルミン(ジベトス®ほか) ③α-グルコシダーゼ阻害薬: アカルボース(グルコバイ®ほか)、ボグリボース(ベイスン®ほか)、ミグリトール(セイブル®) ④チアゾリジン薬: ピオグリタゾン(アクトス®ほか) ⑤速効型インスリン分泌促進薬: ナテグリニド(ファスティック®ほか)、ミチグリニド(グルファスト®)、レパグリニド(シュアポスト®) ⑥DPP-4阻害薬: シタグリプチン(ジャヌビア®、グラクティブ®)、ビルダグリプチン(エクア®)、アログリプチン(ネシーナ®)、リナグリプチン(トラゼンタ®) 注射剤 ⑦GLP-1受容体作動薬: リラグルチド(ビクトーザ®)、エキセナチド(バイエッタ®) *糖尿病リソースガイド(創新社 糖尿病リソースガイド編集室、 提供: 糖尿病治療研究会、財団法人日本糖尿病財団、日本医療・健康情報研究所)→http://dm-rg.net/ 参考-2: ゲムフィブロジル 三共とファイザー製薬は、わが国で承認申請を行っていた高脂血症治療薬、ゲムフィブロジル(開発コード:CI-719、予定商品名:ロピッド)の申請を取り下げることでこのほど合意したと発表した。一部のスタチン系薬との併用で重篤な副作用が発生するとの報告があり、たとえ発売しても普及が見込めないなどの理由による(2002.12.16)。

Anneliese –?# 2 Please VOTE 2ヶ月後のフォローアップの際、メトホルミンとゲムフィブロジルを 続けていたが、随時血糖が301であった。次の糖尿病治療として どれが適切か? 強化食事療法 メトホルミン増量 メトホルミンにスルホニル尿素またはチアゾリンジオンを併用 短時間および長時間作用型インスリン --- 正解はひとつではないかもしれません ---

Anneliese –?# 2 1) 強化食事療法 2) メトホルミン増量 3) メトホルミンにスルホニル尿素またはチアゾリンジオンを併用 2ヶ月後のフォローアップの際、メトホルミンとゲムフィブロジルを続けて いたが、随時血糖が301であった。次の糖尿病治療としてどれが適切か? 1) 強化食事療法 2) メトホルミン増量 3) メトホルミンにスルホニル尿素またはチアゾリンジオンを併用 4)  短時間および長時間作用型インスリン --- Choose all that apply ---

Anneliese –?# 2 正解 Answer 次の糖尿病治療としてどれが適切か? 強化食事療法  カウンセリング実施 強化食事療法            カウンセリング実施 メトホルミン増量        850mgに増量 メトホルミンに             グリブリド追加 スルホニル尿素または チアゾリジン薬を併用 短時間および長時間作用性型インスリン →経済的な理由で選ばれなかった 柳澤先生コメント: 最近日本でも糖尿病治療薬の開発が盛んである。メトホルミン(メトグルコ®)の投与量は、最大2,250mgまで可能となったので、II型糖尿病の第一選択薬の一つとなっている。 中村先生: 本症例は随時血糖が非常に高く糖毒性の状態にあるので、経済的な問題がないのであれば、4)のインスリンで十分に血糖を下げてからメトホルミンに移行するのが良いのではないかと思われる。

Anneliese – ?# 2 ディスカッション 糖尿病治療の流れ: Hgb A1c 治療戦略 薬物療法 6-7 7-8 8-10 単剤療法 メトホルミン, TZD, またはスルホニル尿素, または新しい薬剤 7-8 併用療法 上記のうち2剤 8-10 強化併用療法 複数クラスの薬を高用量で使用 >10 インスリン 短時間および長時間作用性型 こちらは米国におけるガイドライン。 プライマリー医としては、まず単剤治療から始め、併用療法、強化療法、インスリンと順番に治療を強化していくということもある。 Am.Assoc.Clin.Endocrin. , Endocrine Practice 2007, 13:3-68; Am.Diab.Assoc., Diabetes Care 2010, 34:S11-S61.

Anneliese – ?# 2 ディスカッション 標準的な糖尿病薬物療法: 薬物療法 長所 短所 / リスク メトホルミン  インスリン抵抗性 体重増加なし  NASH, TGA, LDL 乳酸アシドーシスのリスク 腎・肝障害または 不安定心不全の注意 チアゾリジン薬 インスリン抵抗性  TGA,  HDL  内皮機能 体重増加 浮腫(心不全以外の要因による) 肝機能障害では注意 スルホニル尿素  インスリン分泌 低血糖症 インスリン 細胞機能不全に有効 柳澤先生コメント: チアゾリジン薬(ピオグリタゾン=アクトス®)の膀胱癌リスクが話題となり、日本では使用が避けられる傾向にあるようだ。

Anneliese – ?# 2 ディスカッション 推奨食事療法: 食物群 糖尿病 高脂質血症 脂肪:- トータル - 飽和 脂肪:- トータル - 飽和 - コレステロール < 30% < 10% < 300 mg/d 25-35% < 7% (LDLが高値の場合) < 200 md/d 水溶性繊維 25-50 g/d  10-25 g/d 炭水化物 “低炭水化物” 全粒粉、果物/野菜 50-60% 全粒粉、果物/野菜 その他  インスリン抵抗性: -  500-1000 カロリー - 5-7% 体重減少 植物ステロールと スタノール 高脂血症ガイドラインと比較して、糖尿病ガイドラインの方が食事療法など厳しいので、糖尿病ガイドラインに従っていれば高脂血症もコントロールができると考えて良い。 多くのクリニックでは必ずしも栄養士さんのサポートが得られるわけではないので、HIV診療医もこのようなことを知っておくのは良いこと。 カロリー摂取を抑え体重を落とすだけでもインスリン抵抗性を下げることができる。 (1日摂取総カロリーの%)

Anneliese – ?# 3 Please VOTE 2009年7月、 ART開始が可能となった。食事は不規則でアド ヒアランスに問題ありと自己申告している。 2-NRTIバックボー ンに併用する3剤目の抗HIV薬はどれが適切か? アタザナビル-リトナビル ダルナビル-リトナビル エファビレンツ ホスアンプレナビル-リトナビル ロピナビル-リトナビル

Anneliese – ?# 3 1) アタザナビル-リトナビル 2) ダルナビル-リトナビル 3) エファビレンツ 2009年7月、 ART開始が可能となった。食事は不規則でアドヒアランスに問題あり と自己申告している。 2-NRTIバックボーンに併用する3剤目の抗HIV薬はどれが適 切か? 1) アタザナビル-リトナビル 2) ダルナビル-リトナビル 3) エファビレンツ 4) ホスアンプレナビル-リトナビル 5) ロピナビル-リトナビル

Anneliese – ?# 3 Answer 第3の抗HIV薬オプション: アタザナビル-リトナビル ダルナビル-リトナビル エファビレンツ ホスアンプレナビル-リトナビル ロピナビル-リトナビル 制酸剤への注意 食中食直後服用 皮疹と気分障害の既往 食事の影響なし 中性脂肪の増加 中村先生コメント: この症例は制酸剤を使ってないが、食道炎があり将来使うかもしれないことを考慮してATVを避ける。 柳澤先生コメント: 代謝障害等もあるので、現在であればRALも候補となるのでは? Dr Khalsaコメント: RALも候補となり得るが、アドヒアランスが悪いことが明らかであれば、自分の場合はBIDの薬剤は選択しない。

Anneliese – 症例フォローアップ 3/2009 5/2009 7/2009 8/2009 1/2010 CD4 # 82 / 6%   3/2009 5/2009 7/2009 8/2009 1/2010 CD4 # 82 / 6% -- 71/10% 116/12% HIV-1 RNA 122,000 212 <75 ARV 薬物療法中止 なし ABC-3TC-FPVr - 同じ TC/TGA/HDL 141/ 758 /26 254 / 879 / 31 FBS/HgbA1c 253 / 9.6 318 / 8.1 269 / 7.7 薬物療法 - メトホルミン 500 bid -ゲムフィブロジル 600 bid -メトホルミン850 bid - グリブリド 10mg daily -同じ ウイルスはコントロールできたが、脂質、糖は改善できていない。

Anneliese – ?# 4 Please VOTE ウイルス抑制に達し、免疫学的にも回復し始めている。血糖 と脂質コントロールのために実施可能な追加のステップはど れか? 脂質血症の二次的原因の評価 高脂血症薬を追加する 血糖降下薬を追加する 食事と運動のライフスタイル改善の強化 抗レトロウイルスレジメンの変更 --- 正解はひとつではないかもしれません---

Anneliese – ?# 4 ウイルス抑制に達し、免疫学的にも回復し始めている。血糖と脂質 コントロールのために実施可能な追加のステップはどれか? 1) 脂質血症の二次的原因の評価 2) 高脂血症薬を追加する 3) 血糖降下薬を追加する 4) 食事と運動のライフスタイル改善の強化 5) 抗レトロウイルスレジメンの変更 --- check all that apply ---

Answer Anneliese – ?# 4 正解 ウイルス抑制に達し、免疫学的にも回復し始めている。血糖 と脂質コントロールのために実施可能な追加のステップはど れか? 脂質異常血症の二次的原因の評価 高脂血症薬を追加する 血糖降下薬を追加する 食事と運動のライフスタイル改善の強化 抗レトロウイルスレジメンの変更 --- これもオプション

Anneliese – ?#4 ディスカッション 高TG血症の二次的原因: 高TG血症の追加療法: 疾患: 高血糖、慢性腎疾患、HIV ライフスタイル: 飲酒、喫煙、運動不足、高炭水化物食、肥満 薬剤: エストロゲン、サイアザイド、-ブロッカー、 ステロイド、プロテアーゼ阻害剤 高TG血症の追加療法: ナイアシン: 高血糖の副作用が問題となる オメガ 3: 付加的な心保護効果 スタチン: 抗炎症および心保護効果 Dr Khalsaコメント: 米国では追加療法として、オメガ3を非常によく用いる。米国人は日本人と違いあまり魚を食べないこともあり、治療薬を使用する前にまずオメガ3を処方する。 山元先生コメント: オメガ3は、DHAとEPAを組み合わせたフィッシュオイル。日本では処方薬はEPAのエパデール®しかないが、両方入っていた方がTGを下げる効果が強い。日本ではサプリメントで購入するしかない。それほど高価ではないので、実際に患者さんに勧めることもある。最近の日本人は魚の摂取量が減ってきているので、必要性は増している。   柳澤先生コメント: 日本の現状では、フィブラートがすでに投与されているので、横紋筋融解症等を懸念してスタチンの併用は避ける傾向がある。当院でもフィブラートとスタチンの併用例はほとんどなく、スタチンではなくエゼチミブ(ゼチーア®)を併用する。 Dr Khalsaコメント: フィブラートとスタチンの併用については、米国でも注意喚起されているが、実際に使用している中で、併用で副作用が増強した経験はない。 数年前に発表されたACTG5186スタディで、高用量のオメガ3はフィブラートと効果が同様であることが示されている。オメガ3投与量は3,000㎎BIDで、TGが50%低下し、フィノフェブレートと同等だった。両者の併用でさらに30%の低下が認められた。米国では通常、オメガ3の投与を開始し、必要に応じフィブラートを追加する。さらに必要であればスタチンも追加する。 中村先生コメント: 合併症治療薬がどんどん増える。そうなると、ARTの変更も“オプション”ではなく、最初から選択肢の一つになるのでは? Dr Khalsa: 高TGがARTの影響によるものであればそう思う。この症例はもともと高TGの背景があったため、ART変更はあくまでもオプションと考えた。

Anneliese –症例フォローアップ 健康保険失効により10か月後に来院。カンジダ膣炎治療を 実施。 3/2009 7/2009   3/2009 7/2009 1/2010 12/2010 CD4 # 82 / 6% 116/12% 24/5% HIV-1 RNA 122,000 <75 26,053 ARV 治療中止 ABC-3TC-FPVr 同じ TC/ TGA/ HDL/ LDL 141/ 758 / 26/ -- 254 / 879 / 31/ -- 278/ 1904/ 27/ -- FBS/HgbA1c 253 / 9.6 269 / 7.7 334 / 11.8 治療 -Met.5002 -Gem.6002 -Met.8502 -Glyb. 101 保険の問題で治療が中断し、ウイルス量は増加し、脂質等もまた悪化してしまった。

Anneliese – ?# 5 Please VOTE 日和見感染症予防とゲムフィブロジル再開に加えて、 今回どのようにARVと糖尿病薬物治療を管理すべきか? 前のARVおよび経口糖尿病治療レジメンを再開する 前の薬物療法を再開し、インスリンを追加する 前の経口糖尿病治療レジメンを再開し、新しいARV レジメ ンを開始する 前の経口糖尿病治療レジメンを再開、インスリンを追加し た上で、新しいARV レジメンを開始する

Anneliese – ?# 5 日和見感染症予防とゲムフィブロジル再開に加えて、 今回どのようにARVと糖尿病薬物治療を管理すべきか? 2) 前の薬物療法を再開し、インスリンを追加する 3) 前の経口糖尿病治療レジメンを再開し、新しいARV レジメンを開始する 4) 前の経口糖尿病治療レジメンを再開、インスリンを追加した上で、新しいARV レジメンを開始する

Answer Anneliese – ?# 5 正解 日和見感染症予防とゲムフィブロジル再開に加えて、今 回どのようにARVと糖尿病薬物治療を管理すべきか? 前のARVおよび経口糖尿病治療レジメンを再開する 前の薬物療法を再開し、インスリンを追加する 前の経口糖尿病治療レジメンを再開し、新しいARV レジメ ンを開始する 前の経口糖尿病治療レジメンを再開、インスリンを追加し た上で、新しいARV レジメンを開始する 青木先生: 総合内科的になってきて難しいかと思うが、合併症へのアプローチは今後のHIV診療に必須であり、それゆえDr Khalsaを招聘した。 Dr Khalsa: 今後の選択肢を狭めないためにも前のARTを再開する。 山元先生: 米国ではインスリンは非常に高価な薬剤である(子供にインスリンを投与するために、母親が売春するという映画が・・・)。 Dr Khalsa: 理想的にはインスリン投与だが、この症例は経済的な問題があるし、以前の治療でインスリンなしになんとかできていたので、食事療法を再開し経口の糖尿病治療薬でコントロールできないかと考えて、1)を選択した。

Anneliese H –症例フォローアップ   3/2009 7/2009 1/2010 12/2010 3/2011 CD4 # 82 / 6% 116/12% 24/5% 37/7% HIV-1 RNA 122,000 <75 26,053 423 ARV 治療中止 ABC-3TC-FPVr 同じ ABC-3TC- FPVr TC/ TGA/ HDL/ LDL 141/ 758 / 26/ -- 254 / 879 / 31/ -- 278/ 1904/ 27 / -- 265/ 486/ 31/ 132 FBS/HgbA1c 253 / 9.6 269 / 7.7 334 / 11.8 302 / 10.6 薬物療法 -Met.5002 -Gem.6002 -Met.8502 -Glyb. 101 Dr Khlasa: 結果的に、TGはコントロールできたが、糖はコントロールできなかった。 柳澤先生: 2009年3月、2010年1月、12月はLDL測定値がないが? Dr Khalsa: 米国ではLDLは直接測定はルーチンでできず、通常は計算値を用いるため、TGが高いと算出できない。 柳澤先生: TGが4-500以下であれば計算式でLDLを算出できるが、最初の頃は 7-800以上と高値なので、式からの算出では信頼性が低いのだろう。

Anneliese – ?# 6 Please VOTE HIVおよび脂質の状態の初期改善がみられたが、糖尿 病のコントロールが不良のままであった。糖尿病コント ロールの追加のステップとして次の何をすべきか? メトホルミン増量 チアゾリジン薬追加 “食後血糖に有効な”薬剤を追加 短時間および長時間作用型インスリンを組み合わせたレ ジメンに変更する 長時間作用型インスリンを追加 日本ではここで糖尿病の専門家に紹介するということが通常である。

Anneliese – ?# 6 HIVおよび脂質の状態の初期改善がみられたが、糖尿病のコ ントロールが不良のままであった。糖尿病コントロールの追加 のステップとして次の何をすべきか? 1) メトホルミン増量 2) チアゾリジン薬追加 3)  “食後血糖に有効な”薬剤を追加 4) 短時間および長時間作用型インスリンを組み合わせたレジメンに変更する 5) 長時間作用型インスリンを追加

Anneliese – ?# 6 正解 Answer 糖尿病コントロールに追加すべきステップは? メトホルミン増量  不十分 メトホルミン増量  不十分 チアゾリジン薬追加  オプション “食後血糖に有効な”  自宅での血糖値測定 薬剤を追加 が必要 短時間および長時間作用性  アドヒアランス困難 インスリンを含むレジメンへ変更 長時間作用性インスリンを追加  HgbA1c >10の場合に インスリン推奨 日笠先生コメント: 食後血糖に有効な薬剤として、日本ではα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)がよく使用されるので、日本では3)を選ぶことも可能である。日本では日内変動や食後2時間血糖値がなんとか測定できるケースが多いが、米国では2-3時間かけて通院している患者さんが多く、食後血糖が測定できないという事情があるようだ。 中村先生コメント: この症例はすでにスルホニル尿素薬(SU剤)が投与されており、それにインスリンが加わるのであれば、体重増加に注意しなくてはならない。

Anneliese – ?#6 ディスカッション 現在のインスリン推奨 (HgbA1c >10): 持続型(Lantus, Levemir or NPH) ---プラス--- 速効型 (Aspart, Lispro, Glulisoline) インスリン オンセット ピーク 持続時間 Aspart (NovoLog) Lispro (Humalog) Glulisine (Apidra) 5-15m 30-90m <5h Regular 30-60m 2-3h 5-8h NPH 2-4h 4-10h 10-16h Glargine (Lantus) ピークなし 20-24h Detemir (Levemir) 3-8h 6-23h 山元先生コメント: インスリン治療は2000年代頃より治療薬の大きな進歩があった。この表で速効型と書かれているのは「超速効型」で、食前15分に打てば、食後2時間ほどでピークに達し、5時間後にはほぼ消失してしまう。一方、長時間型のインスリン製剤も同時期に使用されるようになり、これらを基礎分泌ベース薬として使用したり、あるいは経口薬と組み合わせて治療を行い、食後血糖値を見ながら速効型と持続型を組み合わせる、というような形に大きく変わってきている。日本でも糖尿病外来に通っている患者さんの治療はこのような形になってきている。HIV診療を行う上で、糖尿病治療の最新情報まで詳しくない場合もあると思うが、今後は知っておく必要があるだろう。 参考: インスリン製剤 ①超速効型インスリン: 作用発現時間は10~20分、最大作用時間は30分~1時間30分あるいは1~3時間、作用持続時間は3~5時間。食直前に投与。インスリンの追加分泌(食後高血糖)用として立ち上がりの良い優れた効果が特徴である。速効型に比べて作用時間がやや短い。インスリンアスパルト(ノボラビット®)、インスリンリスプロ(ヒューマログ®)、インスリングルリジン(アピドラ®) ②速効型インスリン: 作用発現時間は30分~1時間、最大作用時間は1~3時間、作用持続時間は5~8時間。食前30分に投与。超速効型ができるまでは、追加分泌用はこの製品のみだった。レギュラーインスリンとも呼ばれる。生合成ヒト中性インスリン(ノボリンR®、イノレットR®)、ヒトインスリン(ヒューマリンR®) ③持効型溶解インスリン: 作用発現時間は1~2時間、作用持続時間は約24時間。最大作用時間に明らかなピークはない。中間型と比べてよりスムースに基礎分泌を補うことが可能。インスリンデテミル(レベミル®)、インスリングラルギン(ランタス®) ④中間型インスリン: 作用発現時間は30分~3時間、最大作用時間は2~12時間、作用持続時間は18~24時間と製剤によって異なる。生合成ヒトイソフェンインスリン(ノボリンN®、イノレットN®)、中間型インスリンリスプロ(ヒューマログN®)、ヒトイソフェンインスリン(ヒューマリンN®) ⑤混合型インスリン: インスリンの追加分泌を補う超速効型あるいは速効型製剤に一定量のプロタミンを加えたもの、あるいは中間型を組み合わせた製剤。作用持続時間は15~24時間で、超速効型+中間型には超速効型25%、30%、50%が、速効型+中間型には速効型30%、40%、50%がある。インスリンリスプロ混合製剤(ヒューマログミックス®)、二相性プロタミン結晶性インスリンアスパルト(ノボラピッドミックス®)、生合成ヒト二相性イソフェンインスリン(ノボリン®、イノレット®)、ヒト二相性イソフェンインスリン(ヒューマリン®) *インスリン製剤一覧表(創新社 糖尿病リソースガイド編集室)→http://dm-rg.net/1/img/table_insulin/insulinchart.pdf

Anneliese – ?#6 ディスカッション 追加する糖尿病の薬物療法: 食後血糖値 ( 微小血管障害): Glinides + 不規則な食事 - 腎または肝障害、高価 -Glucosidase - 胃腸の副作用; グルコース錠でレスキュー inhibitors    -腎または肝障害 Sitagliptan + 体重減少 - 下痢、高価  胃内容排出(満腹): Exenatide    + 体重増加なし, 低血糖症が軽微 Pramlinitide + 体重減少, -インスリンとともに注射、高価 Dr Khalsaコメント: 新たな糖尿病治療コンセプトの一つとして、微小血管障害を抑制する、つまり食後血糖を下げることが必要と考えられるようになり、本症例の場合も次のステップとして、食後血糖値を測定しひつように応じその治療を加えることである。 柳澤先生コメント: 使用可能な糖尿病治療薬は最近増えている。最近ではDPP4阻害薬やGLP-1受容体作動薬。これらの治療は専門家に相談することになる。 注) 血糖降下薬については、8ページ目を参照。 Glinides = 速効型インスリン分泌促進薬 (ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド) α-Glucosidase inhibitors = α-グルコシダーゼ阻害薬 (アカルボース、ボグリボース、ミグリトール) Sitagliptan = DDP-4阻害薬のひとつ (ほかにビルダグリプチン、アログリプチン) Exentatide = GLP-1受容体作動薬のひとつ (ほかにリラグルチド) Pramlinitide : 肥満症治療薬、アミリン(ホルモン)のアナログ。日本では未発売。

Anneliese H –症例フォローアップ   3/2009 7/2009 1/2010 12/2010 3/2011 6/2011 CD4 # 82 / 6% 116/12% 24/5% 37/7% 58/8% HIV-1 RNA 122,000 <75 26,053 423 <40 ARV 治療中止 ABC-3TC-FPVr 同じ TC/ TGA/ HDL/ LDL 141/ 758 / 26/ -- 254 / 879 / 31/ -- 278/1904/27 265/ 486/ 31/ 132 312/ 502/ 35/ 166 FBS/HgbA1c 253 / 9.6 269 / 7.7 334 / 11.8 302 / 10.6 87 / 7.1 薬物療法 -Met.5002 -Gem.6002 -Met.8502 -Glyb. 101 -Lantus HS この症例は糖尿病のコントロールはうまく行ったが、次はコレステロールのコントロールをしなくてはならない。米国では安い食糧ほど高カロリーであることが多く、貧しい患者の場合、高脂血症のコントロールは容易ではない。

症例のアウトライン Anneliese H. 糖尿病 高脂血症 抗ウイルス薬選択 Teri A. 冠状動脈疾患(CHD) C型肝炎

Teri A –症例の概略 53歳、ヘテロセクシャル、白人女性 2010年8月、心筋梗塞で入院した際に、HIV+ および HCV+ と診断 高リスク因子があり、血小板減少症および高トランスアミ ナーゼ血症の既往があったため検査実施 2000年 HIV- 、HCVは検査せず HCV感染源 : 前パートナー (2002-2009) HIV感染源不明 リスク因子:薬物常用歴および売春歴

Teri A –症例の概略 2010年4月 アリゾナに転居する前は受診歴なし 病歴: 2002年 閉経 2010年1月 帯状疱疹 STDs および 骨盤内感染症, 妊娠6回、 出産1回(帝王切開) 自然流産2回、治療による流産3回 背景: コカインおよび覚せい剤 1984-2002 売春 1995-2003 喫煙: 1日1箱30年 父親による幼少期性的虐待 家族歴: 母親 大腸癌 父方の祖父 60歳代に心筋梗塞で死去 父親 アルコール中毒

Teri A –冠動脈疾患オーバービュー 2010年8月 急性心筋梗塞で入院: 起床時喫煙で、発汗と息切れを伴う胸部の重苦しさ あり 心電図: 前外側胸部誘導における陰性T波およびST 低下を伴う徐脈 (HR=50) 連続的なトロポニン-I 上昇: Time (hr): 1 hr 5 hrs 8 hrs 18 hs 21 hrs (NL <0.06) 0.05 1.05 1.81 4.68 5.06

Teri A – 冠動脈疾患オーバービュー 以前の症状はサイクリング時の労作時呼吸困難のみ 救急にて、ニトログリセリン軟膏, アスピリン, integrilin (抗血小板薬), 低分子ヘパリン, βブロッカーにより改善 心臓カテーテル検査: 左前下行枝 中隔枝分岐部付近40% 閉塞性病変 右冠動脈 起枝部50% 閉塞と遠位部ほぼ完全閉塞 治療: 血栓摘出術と右冠動脈遠位部の経皮経管冠動 脈形成術

Teri A –冠動脈疾患オーバービュー 心臓超音波検査: その後退院 局所壁異常なし 中程度-重度の拡張機能障害を伴う重度の左房拡大 軽度の肺高血圧症 左室収縮能は保持 軽度の僧帽弁逆流を伴う正常弁 その後退院

Teri –冠動脈疾患?#1 Please VOTE 退院後HIV外来受診。本症例の冠動脈疾患の治療 として適切でないものは? α-ブロッカー β-ブロッカー ACE 阻害剤 アスピリン スタチン オメガ 3

Teri –冠動脈疾患?#1 退院後HIV外来受診。本症例の冠動脈疾患の治療 として適切でないものは? 1) α-ブロッカー 1) α-ブロッカー 2) β-ブロッカー 3) ACE 阻害剤 4) アスピリン 5) スタチン 6) オメガ 3

Teri –冠動脈疾患?#1 正解 Answer 退院後HIV外来受診。本症例の冠動脈疾患の治療 として適切でないものは? α-ブロッカー: 冠動脈疾患にベネフィットなし β-ブロッカー: 心筋梗塞後のCVD転帰改善 ACE 阻害剤:  一酸化窒素, 心筋梗塞後のCVD転帰改善 アスピリン: 血小板凝集阻害 スタチン: 一酸化窒素,  LDL オメガ 3:  内皮機能,  HDL

Teri –冠動脈疾患?#1 ディスカッション 一般的な冠動脈疾患のマネジメント: β-ブロッカー 目標心拍数 50-60 β-ブロッカー 目標心拍数 50-60 ACE阻害剤 糸球体内圧 により クレアチニン値20-30%  アスピリン 1日81-325 mg スタチン 第1ゴール LDL <70-100 オメガ3 第2ゴール HDL >40 運動 一酸化窒素 禁煙  血管痙攣, アテローム発生など うつ 心筋梗塞後15-20% の頻度で発症                独立した死亡予測因子 Dr Khalsaコメント: 米国ではACE阻害薬が糸球体内圧減少に有効かどうかのマーカーとして、クレアチニン値が20-30%上昇することを確認している。2カ月確認し、さらに上がるようであれば中止するが、上昇が30%未満ならそのまま続ける。 柳澤先生コメント: ACE-I(日本ではARB)を投与することは賛成だが、クレアチニンが上昇すれば減量してクレアチニンが上がらないようにコントロールしている。 Dr Khalsaコメント: 患者を3年間追跡した12のRCTのメタアナリシスの報告があり、それによると、クレアチニンが30%上昇した患者ではCKBへの進展率が減ったことが示されている。糸球体内圧が低下し、タンパク尿が減少し、尿細管細胞への障害が減れば、腎障害への進展は減る、という考え方である。

Teri –冠動脈疾患症例ディスカッション 冠動脈疾患フォローアップ: 下記の薬物療法: メトプロロール25 mg 1日2回 アスピリン 81 mg 1日1回 リシノプリル 2.5 mg 1日1回 オメガ3 カプセル 1000 mg 1日2回 禁煙を繰り返し推奨する エクササイズの推奨 労作時呼吸困難および疲労(HCV、貧血による) HCV治療中は、アトルバスタチン延期 山元先生コメント: ACE-Iは米国では安価なのでメインに使用される。日本でもそういう時代が来るかもしれないので、簡単に復習しておくことが必要。 中村先生コメント: 日本では心筋梗塞後、比較的早期からアトルバスタチンを使用するが、この症例では何故延期したのか? Dr Khalsaコメント: この症例は最初はスタチンが投与されていたが、HCV治療開始でスタチンを中断した。これは肝臓の専門家の意見だった。

Teri – ARV ?#2 Please VOTE 冠動脈疾患とHCV感染を合併している場合、 抗HIV薬で最も使用しやすいものはどれか? アバカビル エファビレンツ ロピナビル ラルテグラビル リトナビル テノホビル

Teri – ARV ?#2 冠動脈疾患とHCV感染を合併している場合、 抗HIV薬で最も使用しやすいものはどれか? 1) アバカビル 1) アバカビル 2) エファビレンツ 3) ロピナビル 4) ラルテグラビル 5) リトナビル 6) テノホビル

Teri – ARV ?#2 正解 Answer 冠動脈疾患とHCV感染を合併している場合、 抗HIV薬で最も使用しやすいものはどれか? アバカビル  コホート研究で心筋梗塞との関連性 エファビレンツ 高脂血症のリスク ロピナビル  コホート研究で心筋梗塞との関連性 ラルテグラビル リトナビル  高脂血症のリスク テノホビル  腎毒性のリスク(HCV & 腎萎縮) 日笠先生コメント: ABCと心筋梗塞は、DADでは関連あり、FDAメタアナリシスでは関連あるとは言い切れない、という相反する報告があるが、実際の臨床で問題になっているか?  Dr Khalsaコメント: 米国でもコントロバーシャルである。ABCが心筋梗塞を誘発するメカニズムの説明がついていないこともあり、個人的には、心筋梗塞リスクがあり、腎障害リスクもある患者さんがいて、腎障害リスクの方が心筋梗塞リスクを上回るようであれば、TDFではなくABCを選択する。本症例の場合は、実際に心筋梗塞発症後であり、未治療のため治療選択肢が数多くあるので、他の薬剤を選択した。 山元先生コメント: ABCとリバビリンはともにグアニシンアナログなので、相互作用でHCV治療効果が下がる危険性もあるのでは? Dr Khalsaコメント: 確かに、ABCとの併用でHCVの治療効果が下がった、あるいはリバビリンの血中濃度が下がったという報告もある。 中村先生コメント: EFVは高脂血症リスクで使用しにくいとされているが、むしろ今後使用するであろうIFNの副作用としてのうつとの重複を考慮し避けるという考えもあるのでは? Dr Khalsaコメント: 確かに重要な点である。 柳澤先生コメント: 日米で複数の報告があるが、HCVはCKDと関連が強いとされるので、重複感染の場合はTDFは使いにくいと思われる。

Teri – 抗レトロウイルス治療 ベースライン:薬剤耐性なし、 HLA B*5701 陰性 ARV: 2010年10月 3TC-ETV-RAL 開始   9/23/2010 11/4/2010 3/10/2011 白血球 3500   4300  5200 リンパ球 1200   1900 2400 CD4 T 細胞絶対数 257 345 426 CD4 % ヘルパー T 細胞 21 22 23 CD4/CD8 比 0.3 0.4 HIV-1 RNA 量 11813 (H) <75 検出なし 柳澤先生コメント: 3TC+ETV+RALという組み合わせは全く馴染みがなく、バリアが低そうなので、確かに心筋梗塞がありABCが使用しにくい、腎障害の観点からTDFが使用しにくいということもあるが、ガイドラインで推奨されているレジメンの選択はできないのか? Dr Khalsaコメント: これらの薬剤の使用経験がなければ、ガイドライン推奨レジメン、例えばABC/3TC+RALも選択の余地がある。私自身は、ETVを未治療患者にも既治療患者にも使用した経験が多数あり、十分な効果があると感じている。 青木先生コメント: TDFの腎障害が問題になってから、Dr KhalsaはNRTIを使わないレジメンを処方されるようになったと聞いている。 日笠先生コメント: AZTは貧血が問題、心筋梗塞発症例なのでABCも使用しにくい、腎萎縮でTDFも使用しにくいといった症例の場合は、やはりNRTIスペアリングレジメンになるのかもしれませんが、どれを選ぶかは、とても難しいですね。 中村先生コメント: ABCと心筋梗塞との関連は懐疑的なので、自分ならABCを選択するが、このようなレジメンを知ることができたのは勉強になった。

Teri – HCV ?#3 Please VOTE 冠動脈疾患を考慮した場合、C型肝炎の治療は どのようにすべきか? 貧血のリスクがあるため、心筋梗塞後1年間、ペグ化 インターフェロンとリバビリンの使用を避ける 患者の状態が安定していればいつでもHCVを評価し、 治療を行なう 薬剤毒性のため、ペグ化インターフェロンとリバビリン の使用を完全に避ける 顕著な肝線維化へ進行し始めた場合のみ、HCV治療 を検討する

Teri – HCV ?#3 冠動脈疾患を考慮した場合、C型肝炎の治療は どのようにすべきか? 貧血のリスクがあるため、心筋梗塞後1年間、          ペグ化インターフェロンとリバビリンの使用を避ける 2) 患者の状態が安定していればいつでもHCVを評価し、治療を行なう 3) 薬剤毒性のため、ペグ化インターフェロンとリバビリンの使用を完全に避ける 4) 顕著な肝線維化へ進行し始めた場合のみ、HCV治療を検討する

Teri – HCV ?#3 正解 Answer 冠動脈疾患を考慮した場合、どのようにC型肝炎を治 療したらいいか? 貧血を避けるためペグ化インターフェロンとリバビリンは 1年間使用しない: 注意深く経過観察、ただし禁忌ではない 患者の状態が安定していればいつでもHCVを評価し、 治療を行なう ペグ化インターフェロンとリバビリンの使用は完全に避 ける:心毒性はない HCV治療は顕著な肝線維化の場合のみ:待つ必要なし

Teri – HCV ?#4 Please VOTE 次のパラメータのうち、HCV治療の反応性に 影響しないものはどれか? 空腹時血糖値 HCV RNA量 ルーチンの肝超音波検査所見 肝生検

Teri – HCV ?#4 次のパラメータのうち、HCV治療の反応性に 影響しないものはどれか? 1) 空腹時血糖値 1) 空腹時血糖値 2) HCV ジェノタイプ 3) HCV RNA量 4) ルーチンの肝超音波検査所見 5) 肝生検

Teri – HCV ?#4 正解 Answer 次のパラメータのうち、HCV治療の反応性に 影響しないものはどれか? 空腹時血糖値 HCV RNA量 ルーチンの肝超音波検査所見 肝生検 反応性不良と関連: インスリン抵抗性 GT 1 高RNA量 関連なし 繊維性架橋形成

Teri A – HCV ステージング結果 2010年12月 腹部超音波検査: 2011年1月 腹部CT : 2011年3月 肝針生検: 2010年12月 腹部超音波検査: 1.5 cm 大のSOL及び肝脾腫 左腎萎縮 (7.7cm長 vs 12.4 cm / 右) 腹水なし 2011年1月 腹部CT : 肝結節形成, 孤立性血管腫 左腎皮質瘢痕 2011年3月 肝針生検: 中程度 の門脈, 門脈周囲および小葉の炎症 散見される線維性架橋形成を伴うStage 2-3 門脈域線維化

Teri – HCV ?#4 ディスカッション 予後因子 治療成功の予想因子 年齢 53 歳 No BMI 23 Yes 予後因子 治療成功の予想因子 年齢 53 歳 No BMI 23 Yes ジェノタイプ 3a Yes HCV RNA 2,186,720 No 線維形成 一部架橋 No/Yes 血糖値 93 Yes CD4 ARV開始後=426 Yes HIV RNA ARV開始後= <40 Yes 薬物/飲酒 なし Yes 精神神経疾患 なし Yes

Teri – ARV 治療フォローアップ HIV 治療: 3TC-ETV-RAL 10/2010~ HCV治療: RBV-PegIFN2a 5/2/2011~   9/23/2010 11/4/2010 3/10/2011 6/6/2011 8/31/2011 CD4 T 細胞数 257 345 426 348 250 CD4 % ヘルパーT 細胞 21 22 23 31 46 CD4/CD8 比 0.3 0.4 0.6 1.1 HIV-1 RNA 量 11813 (H) <75 検出せず Hep C RNA 定量, bDNA -- 2,186,720 18,992 <5 中村先生コメント: HCV治療薬として、新規PI(テラプレビル)が発売となった。Peg-INF+RBVと組み合わせて使用し、初回治療で治療効果が70%と高く、今後期待される薬剤であり、肝炎の治療費助成の対象にもなる。しかし皮疹や貧血が強く、RBVの減量が必要な場合もある。HIVとの重複感染の場合は、抗HIV薬との相互作用が問題となる。現時点で相互作用の少ない抗HIV薬として、RAL、ATV、EFVなどが挙げられる。 Dr Khalsaコメント: HCV治療に新しい薬剤が登場することは非常に喜ばしい。しかしHIVとの重複感染患者での相互作用を検討した報告はまだ予備的なものだけであり、注意が必要である。ちなみに米国では非常に高価であり、なかなか使用する機会がない。

Adapted from EACS Guidelines October 2011 非感染性合併症のスクリーニング Adapted from EACS Guidelines October 2011 http://www.europeanaidsclinicalsociety.org/ Disease Assessment Follow-Up Frequency Comments CVD Risk assessment Framingham score EKG Conditional Consider prior to PI with potential conduction problems HTN Blood pressure Annual Lipids TC, HDL, LDL, TG Repeat fasting prior to medical intervention Diabetes Fasting plasma glucose 6-12 m HgbA1c or oral GTT if fasting glucose > 100-125 mg/dl (5.7-6.9 mmol/L) Renal CKD, DM, HTN, CVD, HCV, medications, family history eGFR 3-12 m More often if: CKD or risk factors present; or if on nephrotoxic drugs (ARV: TDF, IDV, ATV; OI: ganciclovir, amphoterocin; etc.) Urine dipstick: protein, blood Every 6 mo if eGFR <60 ml/min Spot urine Prot:Creat If proteinuria 1+ or eGFR <60 ml/min Bone Calcium, PO4, AlkPhos 2 y FRAX score in patients >40 yr DXA scan In at-risk patients 25OH Vit D In at-risk patients: malabsorption, PO4 wasting, dark skin, CKD, dietary deficiency, lack of sunlight exposure HIVは慢性疾患となり、広範なプライマリーケア的要素が必要となってきたが、全てを覚えておくことは困難である。 この表は、EACS(欧州エイズ学会)が2011年10月改訂しWEBで公開したガイドラインに掲載されているが、さまざまな合併症の評価を非常にわかりやすくまとめている。

非感染性合併症のスクリーニング - 続き Disease Assessment Follow-Up Frequency Comments Liver Risk assessment Annual More frequent on hepatotoxic drugs ALT/AST, AlkPhos, Bilirubin 3-12 m NeuroCog Screening questions 2 yrs Rule out confounding conditions Depression 1-2 yrs More frequent in at-risk patients Cancer Mammography 1-3 yrs W: 50-70 yrs or W/M: high risk history Cervical Pap Colposcopy W: Sexually active For  ASCUS Pap DRE and Anal Pap Anoscopy MSM: evidence preliminary M/W: high risk (HPV dis or RAI) Ultrasound and AFP 6 mo Patients with cirrhosis – from any cause DRE  PSA M >50, or high risk FOBT or Colonoscopy 5-10 yrs 50-75 yrs, or high risk