国際経済の基礎10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月6日 マクロ経済と国際収支1 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月6日
日本経済と貿易 日本の貿易相手の地域としてアジアが一番 それでは国別ではどうでしょうか? 日本が一番貿易をしている国は? 国際経済の基礎10 日本経済と貿易 日本の貿易相手の地域としてアジアが一番 それでは国別ではどうでしょうか? 日本が一番貿易をしている国は? その国とは輸出が多いか,輸入が多いか? 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 国際経済の基礎10
貿易赤字と黒字 日本と外国の輸出入 日本のアメリカへの輸出は日本のアメリカからの輸入を上回っている これを輸出超過あるいは貿易黒字といいます 国際経済の基礎10 貿易赤字と黒字 日本と外国の輸出入 日本のアメリカへの輸出は日本のアメリカからの輸入を上回っている これを輸出超過あるいは貿易黒字といいます 反対に中国からの輸入は輸出を上回っている.貿易赤字という 日本の貿易黒字の決定を知るにはマクロ経済学的な見方が必要 国際経済の基礎10
貿易収支はマクロ的な要因で決定 貿易黒字の原因は両国のマクロ的な要因 貿易黒字:国内の過剰な生産,外国の過剰な消費 貿易の裏側には国際投資 外国人労働者と労働問題 国際経済の基礎10
マクロ経済学と完全雇用 日本経済全体をどのように診断するか 失業,産出量,経済成長,インフレーションはどのように測定されるだろうか? 国際経済の基礎10 マクロ経済学と完全雇用 日本経済全体をどのように診断するか 失業,産出量,経済成長,インフレーションはどのように測定されるだろうか? 国際経済の基礎10
分かり易く言うと たくさん消費したい=高い経済成長 失業者にはなりたくない=低い失業率 安く買いたい=低いインフレ率 国際経済の基礎10
ミクロとマクロ ミクロ経済学 (microeconomics)-企業や消費者に焦点を当てる,経済の小さい単位で考える 国際経済の基礎10 ミクロとマクロ ミクロ経済学 (microeconomics)-企業や消費者に焦点を当てる,経済の小さい単位で考える マクロ経済学(macroeconomics)-経済全体の動きを分析する,日本経済等 経済全体の動きをどう捕らえるか? マクロ経済政策とは 国際経済の基礎10
日本人 生産のためには労働が不可欠 少子高齢化 2006年に初めて人口が減少 2050年には1億60万人まで減少 晩婚化 国際経済の基礎10 日本人 生産のためには労働が不可欠 少子高齢化 2006年に初めて人口が減少 2050年には1億60万人まで減少 晩婚化 子供を生まなくなった 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 国際経済の基礎10
1.経済成長 普通,国の人口は僅かでも増えていく 経済全体の産出量よりもその増加率が重要な指標 成長率=増加率 国際経済の基礎10 1.経済成長 普通,国の人口は僅かでも増えていく 経済全体の産出量よりもその増加率が重要な指標 成長率=増加率 1人当たりの平均的に利用可能な財とサービスに注目 毎年2%の増加率(2倍は35年), 毎年1%だと70年かかる 国際経済の基礎10
Gross domestic product 国際経済の基礎10 1.1国内総生産 様々な財(今川焼,クルマ),産出量? 最終的な財の金額を合計すればよい 国内総生産 GDP Gross domestic product ある国内での一定期間に市場向けに生産されたすべての最終財とサービスの総貨幣価値 国際経済の基礎10
この教室を一つの経済と考える マツイが今川焼きを作る 生産 マツイがイチローにそれを販売 イチローの支出 支出 マツイの収入 収入 マツイが今川焼きを作る 生産 マツイがイチローにそれを販売 イチローの支出 支出 マツイの収入 収入 同じ金額(生産,支出,収入) 借金も同じ!ヤワラがナカタから金を借りる ヤワラの借金=ナカタの資産 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 最終財アプローチ 次の主体を考える 消費者 企業 政府 外国 国際経済の基礎10
最終財アプローチ 消費(consumption) C 投資(investment) I 政府購入(government) G 国際経済の基礎10 最終財アプローチ 消費(consumption) C 投資(investment) I 政府購入(government) G 輸出(export) X 輸入(import) M 純輸出:X-M GDP=C+I+G+X-M 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 国際経済の基礎10
日本のGDP(p.302) GDP(2002年)項目 金額(10億円) 消費 284000 投資 119000 政府購入 87000 純輸出 6000 GDP 497000 国際経済の基礎10
三面等価 イチローが今川焼きを生産 それをナカタが購入→代金の支払い イチローの所得 GDPは三つの側面が常に等しくなる 最終支出 付加価値 国際経済の基礎10 三面等価 イチローが今川焼きを生産 それをナカタが購入→代金の支払い イチローの所得 GDPは三つの側面が常に等しくなる 最終支出 付加価値 所得 国際経済の基礎10
付加価値アプローチ 生産された物は多くの段階を経て最終的な購入主体へ到達する 流通段階が増えれば企業全体の金額は増加する 国際経済の基礎10 付加価値アプローチ 生産された物は多くの段階を経て最終的な購入主体へ到達する 流通段階が増えれば企業全体の金額は増加する そうした重複は生産を正しく測れない 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 付加価値アプローチ 付加価値=企業収入 ー中間財の費用 GDP=全企業の付加価値の合計 国際経済の基礎10
中間にヨドバシカメラ 松下は20000円の費用で作ったデジカメをヨドバシカメラに25000円で販売 国際経済の基礎10 中間にヨドバシカメラ 松下は20000円の費用で作ったデジカメをヨドバシカメラに25000円で販売 それをヨドバシカメラは消費者に30000円で売る 経済主体 金額 松下電器産業 20,000 ヨドバシカメラ 25,000 消費者 30,000 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 中間にヨドバシカメラ/2 国際経済の基礎10
松下が消費者に直販 松下は20000円の費用で作ったデジカメを消費者に30000円で直接販売する 経済主体 金額 松下電器産業 20,000 国際経済の基礎10 松下が消費者に直販 松下は20000円の費用で作ったデジカメを消費者に30000円で直接販売する 経済主体 金額 松下電器産業 20,000 消費者 30,000 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 松下が消費者に直販/2 国際経済の基礎10
付加価値で測る どちらも消費者は30000円を支払っている 重複を避けるために付加価値で計算する 松下=5000円,ヨドバシ=5000円 国際経済の基礎10 付加価値で測る どちらも消費者は30000円を支払っている 重複を避けるために付加価値で計算する 松下=5000円,ヨドバシ=5000円 松下=10000円 これに最初の費用20000円を加える 国際経済の基礎10
所得アプローチ 生産された物の売上は誰かの所得になる 企業収入=賃金+利子支払い+中間財の費用+間接税+減価償却+利潤 国際経済の基礎10 所得アプローチ 生産された物の売上は誰かの所得になる 企業収入=賃金+利子支払い+中間財の費用+間接税+減価償却+利潤 企業の付加価値=企業収入ー中間財の費用 企業の付加価値=賃金+利子支払い+間接税+減価償却+利潤 GDP=企業の付加価値 国際経済の基礎10
総生産は総所得に等しい GDP=賃金+利子支払い+間接税+減価償却+利潤 総生産は総所得に等しい 国際経済の基礎10 総生産は総所得に等しい GDP=賃金+利子支払い+間接税+減価償却+利潤 総生産は総所得に等しい 注意!株価の上昇によるキャピタルゲインは生産による所得の増加ではない.GDPには含まれない 企業利潤は,配当として個人に分配されようと内部留保されようと生産の価値の一部 国際経済の基礎10
日本のGDP(2002年) 最終財アプローチ 所得アプローチ 消費 284 雇用者所得 264 投資 119 営業余剰 90 政府購入 87 間接税 37 純輸出 6 固定資本減耗 97 合計(兆円) 497 国際経済の基礎10
GDPの動きを見る 経済は普通成長する 四半期毎の次のグラフは右上がり しかし,良く見るとガタガタしている部分もある 絶対額ではなく成長率を見る 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10
経済成長率 経済は毎年僅かに変動する 絶対額よりもその成長率を見る 国際経済の基礎10 経済成長率 経済は毎年僅かに変動する 絶対額よりもその成長率を見る =(今年のGDP-前の年のGDP)/前の年のGDP ×100 (単位は%) 年の成長率がプラスならばGDPは増加 成長率が高いときもあれば低いときもある 経済活動の状況を景気という 景気の良し悪しを経済成長率で測る 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 国際経済の基礎10
景気 経済は波打ちながら成長していく 好況(A)→後退(B)→不況(C)→回復(D)→好況(E) E 山 A B D C 谷 国際経済の基礎10
2失業 失業-就業する意思と能力がある人が生産活動に従事していない状態 経済的困窮,生活水準の低下,自尊心を傷つける 国際経済の基礎10 2失業 失業-就業する意思と能力がある人が生産活動に従事していない状態 経済的困窮,生活水準の低下,自尊心を傷つける 若者の失業:人的資源の喪失,将来の労働生産性の低下 中高年の失業:病気や怪我をしやすい,家族への影響 国際経済の基礎10
セーフティー・ネット 失業は地域の損失 大規模工場の閉鎖は町中の失業をもたらす. 炭坑町:夕張は財政再建団体に初めてなる 失業保険の給付 国際経済の基礎10 セーフティー・ネット 失業は地域の損失 大規模工場の閉鎖は町中の失業をもたらす. 炭坑町:夕張は財政再建団体に初めてなる 失業保険の給付 町おこしのための追加的な財政支出に失敗 外国では人種的な対立の発生.人種別の失業率の違い.外国人労働者の問題 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 2.1失業統計 失業も率で測る 失業率(unemployment rate)とは就業しておらず求職活動をしている人数の総労働力人口に対する比率 総労働力人口=就業者数+失業者数 2002年の日本,就業者数が6330万人 失業者数が360万人 国際経済の基礎10
2002年日本の失業率 失業率=失業者数/労働力人口 =失業者数/(就業者数+失業者数) =360万人/(6630万人+360万人) 国際経済の基礎10 2002年日本の失業率 失業率=失業者数/労働力人口 =失業者数/(就業者数+失業者数) =360万人/(6630万人+360万人) =0.054=5.4% 国際経済の基礎10
国際経済の基礎10 国際経済の基礎10
失業の形態 1年以上失業している長期的失業は深刻 夏の北海道の牧場で働くような季節性のある労働がある. 季節によって変化する失業は季節的失業という. 世の中には成長する産業と衰退産業がある ある職業から他の職業へ移るときに起きる失業を摩擦的失業という. 国際経済の基礎10
構造的失業 失業者がどれくらいの期間失業するのか? 失業期間をみると2001年には全体で4.3か月、男性5.6か月,女性3.1か月となっている 長期的失業は構造的要因.構造的失業とは労働需要と供給の間で労働者の質や地域にミスマッチがあるために起こる失業 景気後退期に増加して,好況期に減少する失業は循環的失業という 国際経済の基礎10
Gross domestic product 国際経済の基礎10 復習 マクロ経済学は経済全体の動きを分析する その目的:高い経済成長,低い失業率,低いインフレ率 国内総生産 GDP Gross domestic product 国際経済の基礎10
復習 ある国内での一定期間に市場向けに生産されたすべての最終財とサービスの総貨幣価値 消費 consumption C 国際経済の基礎10 復習 ある国内での一定期間に市場向けに生産されたすべての最終財とサービスの総貨幣価値 消費 consumption C 投資 investment I 政府購入 government G 輸出 export X 国際経済の基礎10
GDP=C + I + G + X – M 復習 輸入 import M GDPは三つの側面が常に等しくなる 最終支出,付加価値,所得 国際経済の基礎10 復習 輸入 import M GDP=C + I + G + X – M GDPは三つの側面が常に等しくなる 最終支出,付加価値,所得 国際経済の基礎10
復習 付加価値=企業収入ー中間財の費用 GDP=全企業の付加価値の合計 生産された物の売上は誰かの所得になる 総生産は総所得に等しい 国際経済の基礎10
復習 GDP成長率=(今年のGDP-前の年のGDP)/前の年のGDP ×100 (単位は%) 経済は波打ちながら成長していく 好況→後退→不況→回復→好況 就業する意思と能力がある人が生産活動に従事していない状態を失業という 失業率=失業者数/労働力人口 国際経済の基礎10